宿に戻ったモンモランシーとキュルケ、そしてタバサの三人は、三人ともに思った。
――まさか早速、傷薬が必要になるとは思わなかった、と。
自分たちが出掛けている間、先日まで重態であった青年は、あろうことか無理を強いて子爵と決闘をした。それだけでも信じられないのに、その挙げ句、右手の骨を複雑骨折するという重傷を負い、もとから無かった体力を使い果たしてか起きられなくなったと言うのだから呆れてしまう。
「あ、あなたねえ! 明日にはアルビオン行くってわかってて何やってんのよっ!!」
ベッドに横たわるエリオの傍らに座り、彼の手のルイズにより巻かれた不格好な包帯を外しつつモンモランシー。青年の話を聞き終え、憤怒の形相に若干涙目をプラスした顔をエリオに向け、思いっきり怒鳴った。
……て言うか、わたしの買い物は無駄?
今朝、せっかく明日のためにと買い集めた傷薬の原料は、それが原料であるがために使えない。それがとてつもなくもどかしい。そんなワケでモンモランシーは彼を睨みつけて言う。
「エリオ! あなたまだ貴族を舐めてるの!? そもそも昨日の今日で、どうして子爵と決闘なんてしてんのよっ!!」
「い、いえ。そ、そういうワケでは無――って痛!」
ブチ切れ状態の少女を前に引きつった笑みを浮かべてエリオ。起き上がれず寝たきりでありながら未だ栗色の長髪美人のままの彼は、モンモランシーに反論しようとし、痛みに顔をしかめて彼女の隣に座る少女を見た。
「自業自得」
「…………はい」
巻き毛の少女と一緒になって自分の怪我の治療をしてくれていたタバサは、心なしか責めるような視線を向けて、ポツリ。彼女としても念の為にと買っておいた傷薬をまさか皆の目の前で使う羽目になるとは思っていなかったため、若干不機嫌であった。
「すみません。ご迷惑をかけます」
そんな余人には無表情にしか見えないタバサの顔を見てエリオはうなだれて謝る。彼は身内に感情を面に出さない娘がいるため、なんとなくでも少女の思いを知れるのだった。
傷薬の値段を訊くのは……やっぱり野暮、かな?
モンモランシーと二人、タバサが買って来たらしい魔法の軟膏を自分の手に塗っている少女を眺めつつ思う。おそらくは厚意でだろうそれの値段を問うのは、何だか気が引けた。
……後でなにかお礼をしよう。
そう思い、今の手持ちを思い返す。最近はルイズに何もかもを出して貰うのは忍びないと思い、学園の厨房でアルバイトに励んでいたため雀の涙ほどだが個人のお金が無いこともない。いつかの治療費や衣食住を賄ってくれた少女への恩返しのためにこつこつと貯めているのだが、仕方ない。なんだかんだで彼女ら三人にはお世話になっているし、足りなければ後で管理局にでも問い合わせて幾らかあっちの貯金を両替して貰おう。
などと青年が考えている間に治療を終えて包帯を巻き直していたモンモランシーは最後にしっかりと端を止めて口を開いた。
「はい、おしまい! もうあんまり無茶しないでよ?」
「あ、はい、すみません」
ジロリと睨みながら言う少女に反射的に謝るエリオ。それから『あれ?』と不思議そうな表情を彼女に向けて首を傾げて口を開く。
「あの……別に無茶はしてませんよ?」
多少の無理はしたが、無茶はしていない。自分の限界を正しく把握した上で予め予想していた範囲内での戦闘に留めたという自負があるエリオは少女の言葉にやんわりと反論した。
「この怪我にしても予想通りっていうか、ほとんどわざとですし」
言いつつ右手をぶらぶらと振る。
もともとワルドとの決闘では負傷するのを前提とした作戦立てをしていたし、それが必要だったからこそ負傷して問題ない右手で攻撃を受けたのだが、
「はあ!? ちょっ、ちょっと待ってよ! わざとって何!? あなた、自分から怪我するようにしたって言うの!?」
しかし当然、そんな事情も覚悟も知らないモンモランシーは不機嫌いっぱいの表情を青年に向けて怒鳴り返す。
「冗談言わないでよ! て言うか、なんでわざと怪我する必要なんてあるのよ!?」
そんな、ベッドに横たわるエリオに半ば覆い被さるようにして怒鳴るモンモランシーを青年は苦笑を浮かべて、なるべく彼女を刺激しないようにゆっくりと口を開く。
「いえ、これぐらいの怪我なら問題ありません。右手が使えなくてもデルフリンガーは左手一本で振り回せますし、しっかりと固定すれば問題なく戦闘を――」
「そういうことじゃないでしょう!!」
モンモランシーはそんな青年の言葉をピシャリと遮り、胸倉を掴んで睨む。
「戦闘って何よ!! あなた、もしかしてこんな状態でまだ戦う気なの!?」
まだ戦える。だから問題ない――そんな理由を少女は許さない。そんな理由で怪我をしても大丈夫なんてこと、あるワケがないとモンモランシーはエリオの目を真っ直ぐに見つめて怒鳴る。
「あなた正気!? 少しは逃げようとか明日っからはせめて動かないようにしようとかって思わないの!?」
明日――戦時下であるアルビオンに彼らは行く。そしてそれに自分たちは付いて行けない。
これから先、青年が怪我しても治療出来ない。これから先、自分たちは彼の無茶な振る舞いを諫められない。
だからこそモンモランシーは今、怒鳴る。
「それ以前に、なんで子爵と決闘なんかしたのよ!? あなた昨日まで――」
それを、
「ありがとうございます」
やんわりと遮って、エリオは微笑む。
「んなっ!?」
その不意の微笑に別の意味で真っ赤になるモンモランシー。言おうとしていたことや内心の憤り、その他すべての事柄が『ボン』と一瞬で頭から抜け落ちたように少女は絶句する。
そんな少女の頭に手を伸ばし、優しい瞳を向けてエリオは言う。
「心配してくれてありがとうございます。ですが大丈夫です。僕は無茶だけはしませんから」
平時であれば『どの口が言えるのよ!?』などと怒鳴り返すところだが、今の少女はそれどころではない。青年の必殺技『エリオスマイル』と『頭なでなで』という最強コンボに思考回路をショートさせられているため真っ赤になって何も言えない。
「大丈夫です」
少女の瞳を真っ直ぐに見つめながら、告げる。
自分のことを真剣に心配し怒ってくれる友人に、微笑んで言う。
「避けられるべき戦いは避けますし、自分の状態もちゃんと把握しています」
少女の言う無茶と青年の思う無茶は違う。
それをわかった上でエリオは、尚『大丈夫』と告げる。
「……心配、いりません」
エリオは笑う。自分のことを真剣に思ってくれる少女のために笑いかける。
……無茶はしません。
呆然とするモンモランシーの頭を撫でながら、思う。
僕は負けません。絶対に。
自分のことを思ってくれる人のために。自分のことを大切に想ってくれる人たちのために。
「信じて下さい」
無茶はしない。『死んでも勝つ』や『無理を承知で』とは考えない。
無理はしない。勝てないと思えば逃げるし大怪我をするとわかっていれば他者に頼りもする。
……僕は一人じゃないから。
死なない。
落ちない。
絶対に。
「……………………うん」
――思いは、伝わる。それが真剣であればあるだけ、伝わる。
モンモランシーは赤い顔のまま静かに頷いた。
もう、青年の覚悟の前に自分には言えることなんて無いのだと内心で悲しみながら――。
「あら、なんだか良い雰囲気みたいね?」
ちなみにキュルケも同じ部屋にいたが、一人ベッドから離れたテーブルに座って買ってきた装飾品を物色していたり。
◇◆◇◆◇
モンモランシーら三人が帰って来るやエリオを任せて部屋を出たルイズはワルドの誘いで一階の酒場に居た。
「――キャルゥを置いて行くって……どうして!?」
向かい合わせの席に座り、今後のことを話し合っていた矢先、少女は子爵の言葉に食ってかかった。
「どうして、とは?」
対してどこまでも涼しい顔でワルド。明日のアルビオンに彼を連れて行かない――その言葉にどうして少女が反論しようとするのかわからないと言った体で返す。
「彼女が足手まといなのは火を見るより明らかだろう?」
「そ、そんな――!!」
ルイズはそんな子爵の態度に困惑を隠せない。
エリオが、足手まとい? ――そんなわけない、とルイズは信じて疑わない。
なにせ彼はあんな状態で子爵と決闘し、辛くも勝利して見せたのだ。故にこそ足手まといなんてことは無いと思うし、それは子爵自身が一番わかっているはずだと思っていた。
「どうして……? だってキャルゥはあなたに――」
そもそも決闘自体が彼の実力を計るためであったはずだし、その勝利の条件に青年の同行を認めるという話だったはずだ。
そう思い、反論するルイズにワルドは、
「勝敗は関係ないよ」
首を左右に振って苦笑する。
「そもそもあれは彼女の実力を計るためのものだろう? それにキャルゥは確か――」
――僕が勝ったら、ルイズを戦争に連れて行かないと約束して下さい。
――彼女がそれを望むならともかく。それ以外の理由で、ルイズを戦争に巻き込まないと約束して下さい。
「ぁ――!」
――? きみが勝ったら、アルビオンに連れて行って欲しい、という条件では無いのかね?
そう。確かに彼は、言った。
――そもそも決闘事態の目的が、僕が足手まといかどうかを調べるためです。……ならそれは、勝ち負け以前でしょう?
勝敗など関係ないと彼自身が言っていた。
「――もう一度訊くが……。ルイズ、きみは今の彼女の状態を足手まといでないと思うかい?」
「それは……」
ルイズは困惑の色を濃くし、ワルドから視線を外した。
「…………」
彼の言わんとしていることがようやくわかった。
足手まとい――そう言われれば確かに、と今度は素直に頷けた。彼の状態を思えばこそ、頷けた。
……エリオ。
ルイズは顔を俯けて、思う。
彼が何のために戦ったかを。青年が誰のために無理をしたかを考える。
「確かに、彼女は強いが……」
そんな少女にワルドは柔らかい笑みを向けて言う。
「今の彼女を連れて行くのは、些か酷ではないかな?」
「…………」
ルイズは言葉を返せない。
彼の状態を思えばこそ、返せない。
「ルイズ。彼女がなんのために無理をするか、きみならわかっているだろう?」
そんな少女にワルドは優しく諭すように言う。
「今日は僕が相手だったから良い。でも明日は? これから先、もしアルビオン貴族に襲われた時、彼女はまた無理をするだろう。そして――」
「そうね」
遮る。
それ以上を言わせたくなかったので、ルイズは頷いて返す。
「……そう、ね」
誰のため――それを思えばこそ、彼を行かせてはいけないと思った。
俯けていた顔を、上階にある彼の部屋の方へと向けて、思う。
……悩む時間は、もうおしまい。
ワルドか、
エリオか、
悩んでいられる時間は、もう――無い。
決めた。
わたしは、
――ワルドを選ぶ。
そう決めた。
……エリオは殺させない。
自分のために頑張ってくれる者をこれ以上傷付けたくない。カルディナの時のような思いは、もうしたくない。
だから――
「…………」
ルイズは席をたった。
向かうは青年の部屋。
もしかしたら、これが最後の会話になるかも知れないと怯えながら、
ルイズは大切な者をこれ以上傷付けないために、
エリオを置いて行く――そう決心した。
◇◆◇◆◇
エリオの治療が一段落するやモンモランシーとタバサの二人はまた買い出しに、キュルケはそれに付き合うためにそれぞれ部屋を出た。
そんなワケで青年が一人、見た目は美女のままベッドに横たわっていると、
「――……エリオ」
小さなノックとともに少女の呼び声。
「ルイズ?」
エリオは少し寝ようかと思い閉じていた瞳を開け、呼びかけに答えた。
? どうしたのかな?
普段の少女ならノックはしない。それは彼女が失礼なのではなく自分が使い魔で少女が主であるからこその気安さで、青年もそのことを不快には思っていなかった。
「エリオ……。入っていい?」
「え?」
そんな少女は、しかし今日に限って初めてのノックと、その上入室の窺いを青年にした。
な、なんで……?
エリオは困惑しながら向こう側に少女のいるだろう扉を見た。
「え、ええ。どうぞ」
体はまだ起こせそうに無い。エリオは寝たままとりあえず少女の入室を許可する。
う〜ん……やっぱり昨日のことが原因かな?
「ご、ごめん!」
ルイズの態度がなんだかよそよそしい。その原因には悲しいことに思い当たることが二、三あるエリオは、少女が遠慮がちに入って来るやすぐに謝った。
「え……?」
ルイズはそんな青年の態度に虚をつかれて入り口で立ち尽くす。
「ごめん! 昨日の、えっと、頬を、て言うかお腹ぶったり、ぶったり、ぶったりしてごめんっ!」
対して拝むようにして謝っていたので気付かない。しかもさり気なく『ぶったり』の数が一つ多いのだがそれにも気付いてない。そう言えばちゃんと謝ってなかったことに今更ながらに気付いて青年には余裕がなかった。
「あ、あと――む、胸!」
そんなワケなので彼には自分がまた地雷を踏んでいることに気付いていない。
「だ、大丈夫です! 例え平坦でもルイズは女の子で、だからきっとこれから大きくなります! い、今がぜんぜん、全く、これっぽっちも無くてもこれから――!」
平坦。
ぜんぜん。
全く。これっぽっちも。
キョトンとしていたルイズはそんな青年の台詞に、次第に顔を俯けて行く。
「え、えっと……。き、きっとまだ大丈夫です! ……たぶん」
ルイズの肩が震えていた。そのことに気付いて同情するような、憐れむような視線を少女の真っ平なそこへ向けながら段々と声を萎ませて行くエリオ。
「……………………」
駄目かも知れない。そう、目が口ほどに物を言っていた。
そして、
「……ねぇ、エリオ?」
それが、トドメ。
ルイズは顔を上げた。笑顔だった。それはもう見事な笑顔だった。
「え?」
エリオはそれを見て背筋に冷たいものが走る。何故かは理解出来ないが幾多の戦場をかけて培ってきた戦士としての勘が『すぐ逃げろ!』と言っていた。
「あ、あれ? な、なんで……?」
ルイズの笑顔を前にエリオは困惑の表情を向けた。
少女の笑みが怖い。
本能が告げる。もう手遅れだ、と。しかしそれが何故だかは今だにわからない。
「エリオ。お願いだから正直に答えてね?」
「え、あ、はい」
わからないが、動かない体が必死に逃げ出そうとしていた。
「わたしの胸って、これから大きくなると思う?」
「は、はい、きっと!」
にこやかにルイズ。それに困惑混じりながらも笑顔で頷いて返すエリオ。女の子は胸のことを気にするらしいと考え本人としては精いっぱい元気付けているつもりだった。
「大丈夫です! 初めはみんなルイズと同じで胸なんてありませんから!」
それが故に、やっぱり地雷を踏んでいることに全く気付いていない。
そして、
「そ、そそそそうよね。み、みみみみんな、初めはわたしみたいにぺったんこよね」
にこにこ笑顔のルイズを前に、
「そうです! ぺったんこでもこれからきっと大きくなります!」
握り拳を向けて力説するエリオは、
「って、あ、あれ? な、なんでルイズは杖を……? え? ちょっ、ま、待っ――!?」
ドカン、と。
当然の帰結として、その日、エリオの泊まる部屋からベッドが無くなったのだった――。
◇◆◇◆◇
吹き飛んだベッドに変わりエリオは床にシーツを敷いてそこに寝かされていた。
当然、節々は痛いしシーツ一枚では肌寒いがそれを言うワケにはいかないので青年は黙って少女の仕打ちに耐える。
「――え? ここで、別れる……?」
さり気に怪我が増えて痛々しい外見になっていたが気にする者はいない。エリオは新たに額に巻かれた不格好な包帯をいじりつつ口を開いた。
「そ、そうよ。あ、明日っからはワルドに守ってもらうから、あ、あんたはみんなと学院にでも帰ってなさい」
ボロボロの姿で横になる青年の傍らで膝をつき腕組みしつつそっぽを向いてルイズ。エリオのことを心配そうにチラチラと窺いつつ、不機嫌顔のまま言葉を次ぐ。
「い、今のあんたは足手まといでしょう? だ、だから置いて行くの」
言いつつ顔を俯ける。
「だって……あんたは怪我してるし……。ワ、ワルドが強いのは知ってるわよね」
自分の言葉を黙って聞く青年を見られない。だから顔を逸らして言葉を止めない。
「わ、わたし……ワルドと結婚……するから……。だから……これからはワルドに守ってもらうから……」
胸が痛む。どうしようもなく、苦しい。
……これでいい。
そう思い続けていないと泣いてしまいそうだった。
「だから……あんたはもう、ゆっくり休んで――」
もう、休んでいい。
もう十分。
もうあなたがいなくても大丈夫。
……もう無理をしないで。もうわたしのために怪我をしないで。
「――ルイズ。僕は、」
そんな少女の思いを知ってか知らずか青年は言葉を遮り、
「感謝してるわ……。本当に……今日までありがとう」
それを更に遮ってルイズ。潤んだ瞳を青年に向け、精いっぱいの笑顔で言った。
……ありがとう。
今日までこんな自分のために頑張ってくれてありがとう。
どんなに怪我してもわたしなんかのために戦ってくれて本当にありがとう。
今日まで……ありがとう。
「大丈夫……明日っからはワルドが――きゃっ!?」
どさ……。
そんな少女の言葉を、エリオは伸ばした手で彼女を強引に引き寄せて止めさせた。
それがあまりにも突然だったためルイズは青年の胸に体を乗せて目を白黒させる。
「それでも僕は――君を守るよ」
「――――っ!?」
抱き締め、耳元に口を寄せて言うエリオにルイズはビクリと肩を震わせて硬直。引き寄せられ、青年の上に倒れかかったまま固まる。
「ルイズの言う通り、明日は学院に帰るよ」
そんな少女を強く抱き締め、エリオは尚も言葉を続ける。
「でも、何かあったら僕を呼んで」
これ以上、怪我をして欲しくない。そんなルイズの気遣いを青年は理解した上で告げる。
「僕はいつでも君を守るから」
瞳を閉じる。
本当は、ずっと近くで彼女を守りたいと思いながら、我慢して見送る。
決闘の前に自分の過保護っぷりを諫められたが故に、これ以上少女を過小評価はしない。ルイズならきっと大丈夫だと、信じてあげようと思う。
大丈夫。彼女の言う通り、ワルド子爵の実力なら安心して任せられる。
……だけど、
それでも、
「ルイズ……。僕はいつまでも……君の最強の使い魔です」
少女を離し、その顔を真っ直ぐに見つめて告げる。
「大変な時は僕を呼んで。助けがいるんなら僕を呼んで。僕は絶対に君を守るから」
笑顔で。
対称的に今にも泣き出しそうな少女の顔を見つめて、言う。
「……うん」
ルイズは頷く。
「うん……!」
頷いて、青年の胸に顔を埋める。
「ありが、とう……!」
そんな少女の肩をエリオは優しく抱き締める。
ルイズはそれ以上何も言わない。肩を震わせ、青年の服を力いっぱい握り締めながら、決して涙を流さないように努力する。
翌日の別れを今生のものとしないために、少女は絶対に泣かないと決めていたから――。
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