嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《Re:助けて》1

 こんにちは、金森 尚人(26)でーす。独身でーす、彼女居ない歴イコール年齢でーす、魔法使い候補でーす。
 ちなみにオタクでメタボでニートです。日がな一日アニメ見たりエロいサイト行ってはもにょもにょしたりと、いやホント、生きる価値の無いクズでした♪
 ――はい。クズ男『でした』。
 今は、なんと! クズ男から一転、美少女です。美☆少☆女です!! きゃっほー♪
 ――はい。いわゆるTS転生ってやつですね。
 金森 尚人、享年二十六歳。死因は、不摂生からくる脳溢血……かな? たぶん。なにぶん『前世』の今わの際の記憶なんて曖昧ですから。あっはっは♪
 ――はい。まあ、そんなことはどーでもいいんです。
 自分で言うのもなんですが、『前世』の自分なんて最低でしたからね。正直、忘れたい過去。消し去りたい汚点ってやつです。
 なので、まあ俺は――『俺』、改め『わたし』は、今を生きようって思ってます。今の『佐々岡 蜜柑』としての生を楽しんで行こうって思ってます。いえーい♪
「はふぅ……。萌え萌えです~♪」
 わたしは一人、部屋の隅に立てかけられた姿見を前に呟き、今日も今日とて自画自賛。
 かあいいなぁ。萌えるなぁ、と。そうやって現実逃避ぎみに思い、どうしてだか見える光景すべてがアニメやマンガの絵柄にしか見えないという不思議さは深く考えない。
 気にしない。
 たとえ全部が全部、二次元にしかうつらなくても。わたしはただ脳天気に、鏡にうつった長髪黒髪サラサラヘアーの日本人形みたいな美少女をまえに相好を崩しまくる。
 佐々岡 蜜柑は今年で六歳。金森 尚人が醜悪すぎる容貌だったせいもあるんでしょうが、ホント、今のわたし、かわいい! 萌える! さいこー♪
 ――はい。ナルシスト全開ですね。
 しかしまあ、傍目からは可愛い服着てポーズとって微笑んでるだけの幼女って図だから、微笑ましいだけで問題なし。……というか、まさか自分自身の愛らしさに身悶えてるなんて、普通は思わないでしょう。佐々岡 蜜柑はまだ六歳ですし。
 なので――

 たとえば、鏡のまえで服をはだけさせても。

 たとえば、官能的な手つきでもって体を弄っていても。

 たとえば、そんな幼女の痴態を眺めて楽しむのが趣味なんだとしても。

 たぶん、なにをやっているのかはわからないのでは、と。たぶん、『俺』がロリコンだから、なんて思わないでしょう。……まぁ誰にも見られないよう細心の注意をはらっていたりするんですが。
「んふぅ~、たんのーたんのーです~♪」
 思わず、にへら~、と笑う。
 鏡に映る、ほとんど全裸に近い幼女を眺め、だらしなく、笑う。
 その柔らかく、きめ細かく、もちもちっとした白い肌を堪能しながら。脳内で『蜜柑』を『尚人』の手で好き放題に弄り回しながら。行為に感じるではなく、見える背徳的な情景に胸をドキドキと昂ぶらせて。
「んぅ~♪」
 笑う。佐々岡 蜜柑の痴態に。
 笑う。金森 尚人の欲望のままに。
 笑う。
 笑う。笑う。
 ――はい。まさしく変態ですね。
 …………ですが、そこまでにしておけば良かったんです。
 たとえ、着る服が、もう無くても。たとえ、そろそろこの『遊び』に飽きはじめていたのだとしても。
 それでも――……そのさきを、望んではいけなかったんです。
「んふぅ……♪ そ・れ・で・は~、本日のメインイベントを~♪」
 果たして、わたしは取り出す。
 あらかじめ用意していた、蜜柑の父親が隠し持っていたエッチなDVDを、それはそれは嬉々として。
「きゃっほー☆」
 ――はい。そのときのわたしは、それがどれだけそのあとの人生を狂わせるかを……知りませんでした。











 魔法少女リリカルなのは SS




《Re:助けて》











 ――…………………………………………。
 ……………………。
 …………ん?
「あ。起きた?」
 声に、まぶたをこすって視界の霞みを払ってから反応する。
「……あれ?」
 ここ、どこだっけ?
 寝ぼけてる~? と笑う、栗色の髪の少女をぼんやりと見ながら欠伸を一度。ふぁあ……。
 ……って、ああ、そうか。
 ゆっくりと、彼女の膝もとから体を起こす。ああ、そうです。わたしは――
「おはよう、みかんちゃん♪」
「ん♪ おはよーです、なのはちゃん」
 笑顔の挨拶に笑顔で。
 それから、お昼ごはんをいっしょにとった他の二人にも挨拶を。
 おはよーですぅ。
 ふふ。おはよう、みかんちゃん。
「……っていうか、その挨拶おかしくない?」
 もうお昼すぎよ、と。呆れ混じりで返す級友――アリサ・バニングスちゃんに、そーかなー? って笑顔を傾けてとぼけながら、うーん、と伸びる。
 うん、良い天気。
 過ぎ行くそよ風に、今やベリーショートになるまで短く切った黒髪を流し。青空を仰いでは、春の陽光に瞳を細める。
「あ。これが『春眠、暁を――」
「違うわよ!」
 はい、今日もアリサちゃんの突っ込みは冴えてますねー。
「ちなみになのはちゃんは『暁』って漢字で書けますですかー?」
 とりあえず今まで膝枕をしていてくれたらしい栗毛の少女――高町なのはちゃんに話題を振る。
「ふえ!? ……え? あれ? アカツキって漢字、習ってたっけ?」
 おお、慌ててる慌ててるですー。まあ、なのはちゃんて国語苦手みたいですからねー。そりゃ、いきなりじゃ慌てますですよねー。
「うーん……たぶんまだ学校じゃ習ってない、かな?」
 うんうん唸ってるなのはちゃんにそう助け舟を出すのは、仲良しグループの三人目――月村すずかちゃん。
 彼女は、はきはきツンデレ少女のアリサちゃんに、にゃーにゃー小動物チックななのはちゃんとは違う、ほんわかおしとやかお嬢さまって感じの女の子で。じつは、この子たちとわたしが仲良くなるキッカケになったのがすずかちゃんだった。
 ……っというか、わたしもまさか彼女たちが『前』にアニメでみた女の子たちだとは思わなかったです、はい。
「あ。や、やっぱりそうだよね! ……よかったぁ。じゃあべつになのはがわからなくてもおかしくないんだぁ」
 そう胸をなで下ろし、ホッと息をつくなのはちゃんにしても、そう。まさか彼女が、あの『魔法少女リリカルなのは』の主人公だとは思わなかった。
 ……というより、普通は気づかないですって。
 『海鳴市』や『聖祥大付属』とか彼女たちの名前なんかを聞いて、なんか聞き覚えがあるよーなー? って頭を傾げてたけど。それで、じつはここはアニメの世界だったんだ! だからわたしの目はぜんぶをアニメ絵にしちゃうんだよ! な、なんだってー!? って発想には繋がらないですって、普通。
「はい。ちなみに『暁』の漢字がわかる人ー、挙手ですー」
「「…………」」
「にゃー!? そ、そーいうのはイジメだと思うよ、みかんちゃーんっ」
 最初の最初の、この学校に入学してすぐの頃。なんかいろいろとデジャヴュを感じていたわたしは、だけどそれをあまり気にせず。クラスの子たちに片っ端から声をかけ、話しかけ、クラスが違う子や学年の違う子とすら友だちになろーと笑顔を振りまいていた。
 ――……はい。たぶん、さみしかったんです。
 金森 尚人が引きこもりのニートであり、某巨大掲示板でぐらいしか言葉を交わすことの無かった学生時代と終生だったから、というのもある。せっかくこうして転生できたんだし、そーいうのをやり直したかったから、というのも。
 ……だけど、
 わたしの本音は――
「えー? イジメじゃないですよー。誰もなのはちゃんが『おばぁかさん☆』なんて言ってないですし、思って――……あれ?」
「……ね、ねえ、みかんちゃん? な、なんでそこで首を傾げるのかな? アリサちゃんは何で視線を逸らし――って、すずかちゃんはどーしてニコニコしてなのはの頭をなでてくれるのかな?」
 ――……今はもう、小学三年生の春。
 うろ覚えの『リリカル』はさておき。佐々岡 蜜柑はこうして今年も笑顔でいられそうです。
「あ。もうそろそろ予鈴かな?」
「そうね。じゃあもう教室に戻りましょうか」
「おー☆」
「…………みんな。ちょっとなのはとお話、しよう?」

 ◇◆◇◆◇

 思えば、わたし、月村すずかの初めての友だちは、彼女――佐々岡 蜜柑ちゃんだった。
「あ、そーです、すずかちゃん。このまえ借りた本、スッゴくおもしろかったですよー!」
 昼食のあと。いつもの屋上からの帰り道。なんだかんだでなのはちゃんともすっかり笑顔で手を繋ぐ状態へと戻した蜜柑ちゃんは、わたしへと変わらぬ笑顔で話しかけてくる。
 ……うん。やっぱり蜜柑ちゃんは変わらないなぁ。
 ちょうど出会ったばかりの頃を思い返していただけに、改めてわたしは彼女の本質を再認識する。
「あ。もしかしてそれで、お昼……」
 寝ちゃったんだ。そう少しだけ顔を曇らせて言うと蜜柑ちゃんは笑顔をわずかに引きつらせ、視線をあからさまに逸らした。
「……ぴゅーぴゅ~」
「あんた、口笛吹けなかったのね……」
 蜜柑ちゃんがわたしの勧めたそれをおもしろかったと言ってくれたのは、あたりまえだけど嬉しい。
 だけど、それでうたた寝しちゃうぐらいに疲れさせてしまったんじゃ――
「す、すずかちゃーん!」
「え? なに、みかんちゃ――わふッ!?」
 わたしが自分の考えに沈みかけるのとほとんど同時に、みかんちゃん。なぜだが満面の笑顔で飛びつき、わたしに抱きついてきた。
「んふぅ♪ すずかちゃんて、やっぱりいい匂いですねー」
 …………もう。また蜜柑ちゃんは。
 わたしの胸に、まるで子猫が甘えるみたいに顔をすり寄せる彼女に内心で苦笑し、そっと蜜柑ちゃんの、女の子にしては短すぎるように映る黒髪を撫でる。
「ほら、蜜柑ちゃん。教室、いこ?」
 さらさら、と。指先をすぎる髪の感触に瞳を細め、そっと彼女の手をにぎる。って、あ。寝ぐせ。
 わたしは今度は表面上で苦笑し、それとなく蜜柑ちゃんの頭を手ぐしで整えようとする。……もう。蜜柑ちゃんて、どうにも容姿や格好に無頓着というか大ざっぱだよね。
「ほら。せっかく可愛いのに、もったいないよ?」
「えー? すずかちゃんの方が、ぜんッぜん可愛いですよー?」
 そうかな?
 そーですよー、と。わたし達はそうしてたわいないことで笑みを交わす。
「はいはい、二人とも可愛い可愛い」
 だからとっとと教室帰るわよー、と。半分呆れながらアリサちゃん。にゃはは、と笑ってこちらを眺めていたなのはちゃんにもそれとなく急ぐよう促し、歩き出す。
「……っていうか、なに廊下の真ん中で可愛い可愛い言いあってんのよ。恥ずかしい」
「えー? ――あ。もしかしてアリサちゃん、妬いてるですかー?」
 んなわけないでしょ!
 だいじょーぶです。わたしはアリサちゃん好きですよー、と。やっぱり蜜柑ちゃんは笑顔で言い、アリサちゃんは照れたのかそっぽを向いてズンズン早足で先を行く。
「あー。待ってくださいですよー」
 そしてそれをすぐに追いかける蜜柑ちゃん。……相変わらず、こういうときの反応は早いなぁ。
「わたし達も急ご、なのはちゃん」
「うん♪」
 すこし遠くで、ひっつくな、アリサちゃんラブ~、という微笑ましいやり取りをしている二人を見ながら、わたし達は改めて教室へと急ぐ。
「あ。やっほーですよー☆」
 果たして、教室の扉を開けるや、みかんちゃん。変わらぬ笑顔をいっそう輝かせ、片手を振り回してクラスメートのもとへ。
 ……うん。ほんと、元気だなぁ。
 さっそく教室中の子どもたちに挨拶し、話しかけ、笑いあっている蜜柑ちゃんを眺めて、思う。こういう誰とでも笑いあえるのっていうのは、ちょっと、わたしには真似できないなぁ、と。
「――あーいうとこ、ちょっと羨ましいわよね」
 果たして、まるでわたしの内心を代弁するかのような台詞をつぶやき、軽く肩をすくめて見せるのはアリサちゃん。
「あの子だと、普通に友だち百人とか居そうよね」

 昨日、あのドラマみた?

 わ、忘れたです! だ、だれかー! 撮ってないですかー?

 あ、わたし撮ってる。今度見に来る?

 わあ! 行くです行くですよー。って、ああ、そう言えばこのまえは宿題のプリントありがとですー!

「みかんちゃんて、人見知りとかしないもんね……」
 教室中を笑顔で歩きまわり、みんなを笑顔に変える少女を眺めながら、回想する。
 ……あれは、まだ一年生になったばかりの頃。
 あのときのわたしは、今にもまして人見知りがはげしくて。人付き合いどころか、まともに視線をあわせて思いを伝えることすらできなかった。
 だから、学校では他人に壁をつくるみたいに誰とも関わらないよう努め。毎日、本ばかりを読んで時間を潰していた。
 それなのに、蜜柑ちゃんだけは、そんなわたしの作った壁など気にせず、わたしに話しかけてくれて……。

 ――なに読んでるですかー?

 ――すずかちゃんて本当にご本が好きなんですねー。

 ――今度、すずかちゃんの好きなご本のお話、聞かせてほしいですー。

 誰とでも。誰にでも。
 そして、何度も。
 佐々岡 蜜柑ちゃんは笑顔で話しかけ、話しかけられ、笑いあえる。
 それが、どれだけ――
「……っていうか、あの子の場合、なにも考えてないだけでしょ?」
 そう皮肉って言うアリサちゃんも、たぶんわたしと同じ思い。
 年相応に、子どもらしく。無邪気に笑い、話せる、そんなみかんちゃんのことを羨ましいと思っている。
「蜜柑ちゃんは『子どもらしい子ども』として振る舞ってるだけなんじゃないかな?」
 いつの間にか、隣に居たはずのなのはちゃんも蜜柑ちゃんの傍らで笑っていて。いつの間にか、彼女の周りには笑顔が集まっていた。
「笑って話しかけて、笑って話をきいて。そしてまた笑って、笑いあってお互いを知り合う」
 佐々岡 蜜柑ちゃんのしていることは、たったのそれだけ。
 勉強もスポーツも関係なく。家柄も性別も関係なく。彼女はいつも変わらぬ笑顔を咲かせ、誰かと笑いあっている。
 そして、そんなそれだけのことが――
「……そうね。でも、まあ。それがまた、難しいのよねぇ」
 果たしてわたし達は、そんななんとも子どもらしくないことを言いあって笑いあい、教室のなかへと歩き出す。
 皆、新しい学年に上がったばかりなのに、いつの間にか仲良く笑いあっているクラスに瞳を細めて。

 ◇◆◇◆◇

 季節が移ろい。学年が変わり。たぶん昨日よりすこしだけ大きくなりながら、それでもわたし、高町なのはは、高くて遠い空を仰いで小さくため息。
 ……将来のこと、かぁ。
 ふと、今日の授業を思い返す。
 将来のこと。大きくなったら何をするか、ということ。
 まだ九歳のわたしでも知っている、たくさんの仕事。たくさんの進路。わたしは――……わたしには、何ができるんだろう?
「わたしはですねー、できるならすずかちゃんのメイドさんになりたいですー」
 それは帰り道で。そう言えば、まだみかんちゃんには聞いてなかったと思い出し、ふと、彼女に将来のことを尋ねてみての回答。
 って、え? め、メイドさん? その答えの、あまりの突拍子の無さにわたしは目を白黒させる。
「うーん……ここはやっぱりファリンさんに弟子入りするべきですかねー?」
「って、まさか本気!?」
「……というか、ノエルに、じゃないんだ」
 いつものニコニコ笑顔を軽く傾げて言うみかんちゃんに、アリサちゃんは驚き、すずかちゃんは苦笑する。
 ……え? うそ、本当に?
「ふむぅ……もしくはアリサちゃんの犬、とかです?」
 …………あーなんだ、冗談か。
 わたしは苦笑し、もっとまじめに答えなさい! わんわん、ごめんなさいですわんー! というみかんちゃんとアリサちゃんのやり取りを眺める。
「……もう。ちゃんとこたえないとダメだよ、蜜柑ちゃん」
 なのはちゃんが困ってるよ、と。すずかちゃんがみかんちゃんを軽くたしなめるのを、わたしは、にゃはは、と苦笑して見やる。
 ……うん。困ってはいないけど…………できれば教えてほしいな。
 なんだかんだで何でもできて。なんだかんだで、みんなの中心に居て。……わたしのなりたいわたしに、たぶん一番近い、みかんちゃんの夢。みかんちゃんが何を目指してるのかを、参考までに。
「ふみゅぅ? ちゃんと、ですか?」
 果たして、そこで、アリサちゃんの腕を首に巻き、頭を抱えられるように軽く締められていたみかんちゃんが、はじめて声に落ち着きを宿し――
「では、まじめにお答えしますですよー」
 フッ、と。彼女はわたしがはじめてみた、とても大人びた微笑を浮かべて、
「ズバリ、わたしは――」



 わたしは――…………大人になんて、なりたくない。



 そう、言った。
 そしてすぐ、ニッコリ。いつもの笑みを浮かべ、ずっと子どもでいたいですー、と。みかんちゃんはさっきまでの、どこか神秘的な雰囲気を霧散させるように明るく言葉を続けた。
「ずっと子どもなら、ずーっとなのはちゃんとアリサちゃん、すずかちゃんとこうしてられるですー♪」
 ……………………。
 …………みかんちゃん。
「……あんたねぇ。だから、ちゃんと答えなさいって言ってんでしょうが」
 そう呆れながらみかんちゃんを解放するアリサちゃんは、たぶん、さっきの彼女の表情を見ていない。見えてなかったから、それを冗談だと思い、ずっと一緒にいたいという言葉に照れてる。
 …………だけど。
 だけど、さっきのは――
「アリサちゃん、ラブです~♪」
「って、ちょッ!? あ、歩きづらいから抱きつくなぁ!」
 きゃっほー☆ アリサちゃんが怒ったですー♪
 こ、こら逃げんな! 待ちなさいー!
「…………みかんちゃん」
 駆けていく二人を、わたしはぼんやりと眺める。……考える。
 大人になんてなりたくない。ずっと子どもでいたい、かぁ……。
 ふと、また空を仰ぎ見る。
 青い、蒼い、空。遠く、広く、大きな、空。
 そっと、手をかざす。
 ……小さな、手。なにも掴めない、小さな小さなわたしの手。
 そしてまた、考える。
 将来の自分。大人の、自分。……なりたいわたし。
 そうして、ふと、瞳を閉じて。遠くで聞こえる、友だちの声に頷きを一つ。
 ……うん。そうだね。ずっと、か。…………うん。それもいいかもね。
 ……………………でも、
「わたし、は――」
 果たして、瞳を開けて。わたしはすこし遠くで待っている友だちのもとへ駆け出す。
 ……胸のうちでくすぶる、わけのわからない衝動を持て余しながら。
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