嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《なのはさん。》第二稿β

《魔法少女リリカルなのは~doppelganger~》






 目をあけた。
 星が見える。今は夜らしい。
 複数の月が見えた。どうやら地球ではないらしい。……とうぜんか。
 ああ、それにしても……痛い。仰向けにただ寝転がり、考える。感じる痛みと、どうにも自由にならない四肢から重態らしいことを察する。
 そして左の視界が――無い。……まあこれは、もう慣れていること。
 呼吸は、浅くだがしている。……もっとも、いつまで保つかはわからないが。
 ここは、どこだろう? 記憶をさぐり、空からあたりへと視線を転じながら更に思案する。……これも走馬灯と言うのか、たしかに私の生きてきた十九年もの人生とその最後の光景は覚えてる。そして覚えているからこそ……私が生きてるわけ、ないんだけどな。
 これはやっぱり夢? 
 ……でも、痛みがある。見上げればどこかの世界の夜空があり、嗅覚などは先ほどから形容しがたい、硫黄と鉄と何か生物が焦げるような、一言でいうならイヤな匂いを捉えている。
 天国ではない。地獄というには生なましい。
 つまり私は、やはり生きているのだろう。そう改めて結論づけ、『さて本当にここはどろだろう?』と変わらずからだを横たえながら考えていると、
『――残念、キミはたしかに死んだよ』
 声が、響いた。
 ……これは、念話? 鼓膜ではなく頭で直接聞く感覚からそう判断し、唯一うごかせる右目だけで辺りをみまわした。
 そして、
『やあ』
 隣。私の顔の横。
 地面に転がった、ボロボロのぬいぐるみと目があった。
 …………。
 ……まさか、ね。
『いや、その「まさか」だよ』
 声は、たぶん男の子のもの。そして念話のようでいて違う、独特の通話。まるでこころに直接声をとどかせるかのようなそれは――……いや、ちょっと待って。
 目を丸くする。今、この声の主はなんと言った? と言うか、今、私は何も言っていないし念話のように強くおもってもいない。
 だというのに――
『疑りぶかいのは結構だけどさ。もう半分は理解してるんだし、認めたら?』
 ……こいつ、やっぱり私のこころを直接読んでる。
 しかも、
『そ。ボクはキミの目の前に転がってるぬいぐるみさ』
 …………どうしよう。
 私、とうとうおかしくなっちゃったのかな。
『はは、かもね』
 ……笑って肯定されると逆に腹が立つんだけど。
 というか、あなた――何?
『神さま』
 …………ああ、やっぱり私、おかしくなっちゃったんだ。
『かもね♪』
 ……………………。
 ……はぁ。私は内心でため息を一つ。このままでは話が進みそうにないとおもい、改めて自称・神さまとやらに話を振ることに。
 ……あなたは何? どういう存在なの?
『はは。何と答えたところで否定しようと思いつつ、同時に肯定して話を進めようなんて面白いマルチタスクの使い方をするね』
 …………へえ。私は『彼』の台詞に小さく感嘆する。あなた、私の並列思考ぜんぶが読めるのね。
『ま、ね』
 声は、どこまでも軽く。
『でも……うーん。キミは「神さま」ってのが胡散臭いって思ってるんだろ? それじゃあ「天使」や「精霊」ならどう? ――あ、同じ? うーん……でも、ボクの存在は、その概念が一番近いんだけどなぁ』
 軽く。飄々と。
 それが何でもないことのように告げた。

『ボクはキミの願いを――「やり直したい」っていう望みをきいた存在だからね』

 …………。
 ……え? 私は呆然とぬいぐるみを見つめ、
『――おっと。説明はとりあえず後にしようか』
 果たして、その言葉に私が反論する間も無く、

「――君、大丈夫!?」

 声が、ふって来た。
 それは女の子の声。私は視線だけをそちらに向け――息を呑んだ。
「うごかないで。ひどいケガだ」
 そう言ってフワリと舞い降りて来たのは、十代半ばだろう少女で。
 白いマントと黒い制服を着た、金の髪の女の子で。
 つまり――フェイト・テスタロッサ、だった。

 ◇◆◇◆◇

 駆けつけた、そこに居たのは小さな女の子で。
 服の代わりに汚れと血とを赤黒くその身に纏いながら、倒壊した施設と死肉とで彩られた廃墟の中心で。
 栗色の髪の。
 私のよく知る少女より幼い容姿の。

 高町なのはとよく似た子が、そこに居た。

「君は――」
『フェイトちゃん急いで! その子のバイタル、けっこうヤバいの!』
 疑問の言葉はエイミィからの通信で遮られ、私は我にかえる。そうだ、私がいま一番にしなければいけないのは――

『――フェイト、ちゃん?』

 その念話に、またしても目を剥いた。
 ……え? 状況も忘れ、まじまじと少女を見た。いまの念話……『なのは』?
『……フェイトちゃん?』
 二度目の問いにハッとする。まさ、か……私と同じ!?
 プロジェクトF。その単語を思い浮かべた瞬間、まるで鈍器で殴られたかのような衝撃を感じ、知らず一歩後退していた。そんな……! まさかなのはを――
『フェイトちゃん!!』
 ッ! ふたたびのエイミィの声に私は即座に思考を切り替えた。うん。考えるのも調べるのもあとだ!
「……大丈夫」
 私は笑みをつくり、少女を抱き上げた。……軽い。見た目、四つか五つぐらいだろう少女の軽さと、その左目をみて眉を寄せた。
 ――ことの発端は、次元震の感知。
 その震源地へと急行する私たちアースラクルーは、その次元震の発生源を知っていた。
 すなわち――ジュエルシード。
 その蒼き宝石が、少女の左目だった。
『……フェイトちゃん』
「あ。……うん」
 私は少女のかたわらに落ちていたボロボロのぬいぐるみをひろい、彼女の胸にのせた。
 ――ここは、まちがいなく震源地。
 ところどころに開いた虚数空間。吹き飛んだのだろう施設。その中心にいた、唯一の生存者にして発生源。それが――彼女。
「いま、アースラに連れて行くから」
『……アースラ』
 やっぱり、と思う。
 抱いた少女の、ポツリとこぼしたような念話に確信する。
 やっぱりこの子は、なのはのコピー。なのはの記憶をもった、人造生命。……もう一人の、なのは。
 だったら――
「……大丈夫、なのは」
 胸に抱いた、小さな彼女に私は笑みを向け、力強くうなずいて言った。
「私がぜったい、助けるから」
 ぜったいに。
 こんどは、私が。
 君が、私にしてくれたように。
『…………うん』
 少女は果たして、そのうなずきを最後に瞳を閉ざした。
 ――それが、出逢い。
 私たちと、彼女の。
 もう一人のなのはとの邂逅、だった。

 ◇◆◇◆◇

 ――次元航行艦アースラ。
 艦長、クロノ・ハラオウン。通信主任、エイミィ・リミエッタ。
 それから執務官のフェイト・テスタロッサ・ハラオウン。
 白い天井を見上げ、白いベッドとシーツの中で思い返すは、昨日された自己紹介と現状報告。
 ……私は、高町なのはのコピー、らしい。
 聞けば、巡航任務中だった彼らは、とつぜんの次元震の発生を感知し、その発生源がジュエルシードと知ってうろたえ、急行したそこで私を見つけたそうだ。
 そして私の、左目の代わりに埋め込まれていたのがジュエルシード。……どうやらジュエルシードを新しいエネルギー源として使えないかと研究していた施設があって、そこで生まれたのが私であり、唯一の成功作でもあるらしい。
 二、三彼らと言葉を交わしてわかったのは、私はプレシア・テスタロッサが娘のアリシアを模してフェイトを作ったように、私も高町なのはを模してつくられ、記憶を与えられたモノだと勘違いされているということ。
 ……まったく。私は、『高町なのは』ではないのに。私はただの、元・次元犯罪者なのに。
 でも、まあ……その勘違いはそのまま利用させてもらおうとも思っていた。
 なにせ、
『ボクの説明が面倒だから』
 抱いていたぬいぐるみがしゃべった。……というか、頭に直接ひびいた。
 私はそちらへと目を向け、修繕したらしいすっかり綺麗になったウサギのぬいぐるみを睨んだ。
 ……これは、どういう理屈か私以外に知覚されてない。声はもちろん、アースラの計器や一流の魔導師たちにすら感知されていないようだった。
 つまり、
『ボクが神さまだって、ようやく信じられる』
 …………。
『はは。こころを読むなって「言われ」てもね。それは無理だよ』
 ……はぁ。内心でため息を一つ。現状、もっとも不可思議である『彼』にようやく思考を傾ける。……というか、問う。あなた、なに?
『神さま――って言っても信じちゃくれないだろうから、べつの言葉で言うよ。ボクはキミのこころの一部さ』
 …………。
 ……は?
『キミはボクをぬいぐるみを介してしゃべってると認識しているみたいだけど、それは正確じゃない。ボクの声を聞いたキミがぬいぐるみという別の存在を認識し、キミがそこにボクを「固定した」からココから声を響かせてるように感じるだけさ』
 ……………………。
 …………。
 ……つ、つまり?
『ボクはキミが願った「やり直し」によって堕とされた神さま。キミが歪めてしまった因果率に引きずられて一次元落ちた存在。時の概念に縛られない、四次元の人。キミたちを見下ろしていたモノ。つまり――神さま』
 …………。
 ……つまり?
『……………………キミ、もしかして……バカ?』
 ……私は無言でぬいぐるみの首を絞めた。
『いや別に痛覚なんて無いし』
 ……ちっ。
『はは。まあ要するに、キミの半身てこと。今やボクはキミのこころの一部。ボクの存在もこの声も、キミのこころに在るってこと』
 …………。
 ……こいつ、どうしてこうもわかりにくいことばかり。
『じゃあさ。ボクはキミをテレビの向こう側から見ていた人間で、キミはテレビの中で動いていたキャラクターっていえばわかる?』
 ……ああ、なるほど。その言葉でようやく、『彼』の言わんとしていることが想像できた。
 つまり、二次元より上の存在。テレビの中の時の流れに縛られず、そもそもが関係ない。
 つまり…………神さま。
 …………。
 ……はぁ。
 私はまたため息を一つ。からだ中の包帯やケガを無視し緩やかな動作で上体を起こした。
 ……それで、神さま。あなたは、これからどうするの?
『とくに何も。ボクは「ここの」時間に縛られないしキミが死んだらもとに還る。だから、キミのしたいこと――キミの望みである「リセット」を見ているよ』
 ……そう。
『キミは?』
 私は――と、答えを返す前に、扉のスライドする音を耳にしてそちらへ向いた。
「あ。……おはよう、なのは」
 そこに、朝食だろう、いくつかの食べ物の乗ったトレイを手に笑顔を咲かせた
フェイトをみつけた。
 ……ああ、そうだ。彼女を見て、改めておもう。
 私の、願い。
 それは――

 ◇◆◇◆◇

 肩より少し下までの栗色の髪。五つかそこらだろう、幼い容貌。ぶかぶかの私のティーシャツを着て、ベッドの上でトレイを膝に黙々と箸を進める少女を見ながら、思う。……どうして、だろう?
 頭に、からだに。いたるところに貼られたガーゼ。巻かれた包帯。
 左目を隠す、眼帯。光を失っているかのような右の瞳。感情の欠落した、まるで人形のように表情に乏しい顔。……それらに彩られた幼いなのはの姿に、私は胸をいためる。
 ……今から、六年前。九歳のころ、私たちは出会った。
 ジュエルシード事件。……プレシア・テスタロッサ事件。
 そのときの私は、むしろ目の前にいる少女のようにいつも無表情だった。……表情と感情を、殺していた。
 そしてなのはは、そんな私をいつもまっすぐな瞳で見つめていた。
 まっすぐに。
 いつも全力全開で。
 その力強い瞳に――想いに、私たちはいつも救われてきた。
 だから、
「……ねえ。君は、なのは…………なんだよ、ね?」
 問うて、しまう。
「どうして……?」
 その生気の感じられない瞳を前に……問わずには、いられない。
「どうして、君は…………そんな顔、してるの?」
 果たして、その問いに――
「…………」
 少女は、緩慢な動作で箸をおき、
 ゆっくりと、そのガラスのような瞳をこちらに向け、
「……かなしいことが、あったから」
 ポツリと、零した。
 ポツリと。
 それこそ、その無機質とも思える声音がすべてを語るように。
「…………」
 少女の透明な、あるいは濁りきって曇っているような瞳が私に無言の圧力をかける。
 ……どうして? そう疑問に思う。
 なにがあったの? そう問いかけたい。
 だけど、目の前の、傷だらけの少女をまえに私はそれ以上を問えない。……聞けない。
 私はなのはのことを知っている。あの白くてまっすぐな女の子の強さを、知っている。輝きを、知っている。
 だから、目の前の少女のことが気になって。
 だからこそ、目の前の子との違いに胸がいたい。
「…………」
 少女はただ無言で。無表情で。
 事前の事情聴取にしたってほとんど何も話してくれなかったけど……みんな、なんとなく察していた。
 少女が生まれたのは違法な研究所で。少女は実験体で。その身には決して少なくない手術痕があって。かろうじて無事だった研究記録からも、その生い立ちの悲惨さは容易に想像できて。
 そして何より……こんなにも皆の知るなのはから乖離してしまっていることこそが、そのすべてを物語っていた。
「……フェイトちゃん」
 ぁ。知らずうつむいていたらしい私にかかる少女の呼びかけ。それにゆっくりと顔を上げると、
「……ありがとう」
 少女は、笑った。
 ガラスの瞳で。ただ笑顔の仮面をかぶったみたいな無機質さで。
 少女は、笑顔をつくって私に言った。
 ありがとう、と。
 ……それが具体的に何を指してかはわからない。わからないけど……わからないからこそ、泣きたくなった。
「なのは……!」
 少女を、たまらず抱きしめた。……泣きたく、なった。胸が、喉がいたかった。
 少女は何も言わない。反応すら、しない。
 されるがまま。その姿勢が、たまらなくいたい。苦しい。
 私は……知ってる。ほかでもない。自分も昔はそうだったから。私も母さんに何をされても、何もしなかったから。何も泣き言を言わなかったから。
 だから、
「……私が、君に笑顔をあげる」
 こんどは、私が。私がなのはにもらった笑顔を、君に。君に、本当の笑顔をあ
げるから。ぜったい、あげるから!
 だから!
「……もう、そんな顔、しないで」
 …………つくらないで。そう呟き、私は少女を抱きしめ続けた。

 ◇◆◇◆◇

 ――ねえ、神さま。
 もし私の声が聞こえるなら……お願いです。私の望みを叶えてください。
 私にもう一度、チャンスをください。
 私にやり直させてください。
 お願いします。
 お願いします。
 お願いします。
 私に今度こそみんなを守らせてください。みんなを、今度こそ守りぬかせてく
ださい。
 お願いします、神さま。お願いします。
 私の願いを叶えてください。
 私の願いを、どうか。
 どうか……!



 ――それが私、ナノハ・タカマチ・ハラオウンが最後の最後に望んだことだっ
た。
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