嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《なのはさん。》第二稿α

 けっきょく、私がさいごに願ったのはリセット――やり直し、だった。







《魔法少女リリカルなのは~doppelganger~》






 目をあけた。
 星が見える。今は夜らしい。複数の月が見えた。どうやら地球ではないらしい。……とうぜんか。地球は、あの闇の書事件で消滅したんだから。
 それにしても……痛い。仰向けにただ寝転がり、考える。頬を過ぎるのは血か。どうやら重態らしい。なにせからだが、動かない。
 左の視界が無い。まあこれは、もう慣れていること。
 呼吸は、浅くだがしている。……もっとも、いつまで保つかはわからないが。
 ここは、どこだろう? 私のさいごの記憶は、宇宙にあがった戦艦の中であり、それが数多の魔導砲で光に消ゆる光景。……つまり、生きていることなど有り得ないのだ。
 しかし、痛みがある。見上げればどこかの世界の夜空があり、嗅覚などは、先ほどから形容しがたい、硫黄と鉄と何か生物が焦げるような、一言でいうならイヤな匂いを捉えていた。
 天国ではない。地獄というには生なましい。
 つまり私は――ナノハ・タカマチ・ハラオウンは、生きているのだろう。そう改めて結論づけ、『さて本当にここはどろだろう?』と変わらずからだを横たえながら考えていると、

「――驚いたね。まさか生きたサンプルを目にするとは思わなかったよ」

 声が、ふって来た。
 男の声……ああ、彼か。私は視線だけをそちらに向け、白衣すがたの男を見つ
けて『やっぱり』と思った。
「おや、ごきげんよう」
 そう、ニヤニヤとしながら言う彼は、名を『ジェイル・スカリエッティ』といった。
 濃紺の髪に金色の瞳。私の知る限り彼ほどマッドドクターと呼ぶにふさわしい人は他に無く、中身と外見からして『ドクター』という呼び名がどこまでも似合う男だった。
「…………」
「ふ。どうやら言葉も発せないぐらい弱っているらしいね」
 無言無表情で見つめる私にドクター。白衣のポケットに手を入れてからだを折り、顔を近づけて言った。
「ところで一つ、君にききたいのだが良いかね?」
 良いも悪いも無い。私は今、話せる状態に無いのだから。そんなわけでまばたきを一度してそれを返事とした。
「……ん? そう言えば今の君は話せなかったのだね。これは失敬。……まぁ私としては君の状態などどうでもいいので勝手に質問させてもらうよ。君は――生きたいかね?」
 ……生きたいか、か。
 できるなら、生きたい。生きて――……しかし取り立ててやりたいことも無い。
 ……まあ彼の場合、やはり私の返事などお構いなしだろう。そう思い、私はまたドクターの問いにまばたきだけを返した。
「ふ。そうかね」
 対し、どこか嬉しそうに、邪悪に、あるいは無邪気に笑ってドクターは言った。
「よろこびたまえ。私が君を救ってあげよう! 君を仕上げてあげよう!」
 果たして、彼は笑う。
 私という実験材料を、新しいオモチャを手にした無垢なる子どものように見つめて。

 ◇◆◇◆◇

 高純度の魔力結晶にして不安定ながら『人の願いを叶える』とされるロストロギア――ジュエルシード。
 それは私、ジェイル・スカリエッティが作品群にエネルギー源として埋め込む魔力結晶――レリックとは似て非なる宝石状のロストロギアであり、レリックなど比べるべくも無い強大な魔力を秘めながら、その不安定さから人造魔導師や戦闘機人のエネルギー源として転用できないとされていた代物であった。
 ジュエルシードは人の願いを叶える。つまりは、人の思考を読み取り、勝手に魔力を暴走させてしまうのだ。たった一つで次元震すら引き起こせるらしい、そんな物騒にすぎるものを人の身に埋め込もうなどとは、はなはだ理解に苦しむ。……まあ興味はあるのだがね。
 さて、話を戻そう。つまり、結論から言ってジュエルシードを人のからだに埋め込み、それを魔導師連中のような魔力の代わりとするのは限りなく不可能なことなのである。
 ある意味、当然と言えば当然の帰結だろう。しかしながら、人の欲というのはなかなかにその結論を鵜呑みには出来ないようで、どうやら秘密裏に件の宝石を幾つか回収し、どこかで研究していた輩がいたらしい。
 そしてその結果が、先日の中規模次元震事件だ。かの研究所は私の予想通りにジュエルシードの力を見くびった代償に消滅。愚かな研究者はすべからく消え失せた。
 ……まったく馬鹿げた話だ。そう笑いながら、しかし私はすぐさま彼らの研究に敬意を評し、感謝すらしたくなった。
 なぜなら、研究所をまるまる吹き飛ばし、並行するいくつかの世界ではその余波が観測されていたほどの次元震の中心に『彼女』が居たからだ。
 身体年齢は四つか五つか。おそらくはいずれかの高い魔力資質を有する魔導師のコピーだろう彼女は、その左目にジュエルシードを埋め込まれていた。
 驚くべきことに、彼らの実験は成功していたのである。
 少女は外傷こそひどいものの生きていた。次元震の中心にあり、不安定であるはずのジュエルシードをからだの一部としながら、だ。これに歓喜せず、なにに歓喜しようか!
 私はそれからいつになく上機嫌となり、回収した少女を、自分でも最速と思えるような短時間で仕上げて見せた。
 少女はもともと、どこからか流れた私の理論を使って生み出されたのだろう。ところどころ無駄に映る機構が伺える、戦闘機人のプロトタイプのようだった。
 左目は、残念ながらジュエルシードに手を加えることは躊躇われたので、見た目だけは蒼い瞳と映るよう特殊な『蓋』をする程度の改造である。そして、爆発でだろう、発見時には消失していた少女の左腕もまだ新しいものを取り付けられていないが、それでも十二分に傑作と呼べる仕上がりに中身だけはチューンナップできた。……それこそクアットロが嫉妬するほどに。
 さらに、プロトタイプの特権とも言える、いわゆる肉体の老化に伴った機械部品の成長というシステムも完璧だ。……これにはチンクが嫉妬していたようだが、はて?
 さて、そんなわけで彼女は新しく私の作品群の一つとして生まれ変わったわけだが……驚いたことに、彼女には既にある程度の知識と人格が存在していた。
 おそらくは『F』の記憶転写技術を用いたのだろう。ゆえに私たちは彼女を、その元となった人格のままにこう呼んでいた。
 ナノハ、と。
 そして、
「…………」
 ナノハは今日も、じつに嫌そうな顔をして自身のボディースーツを示し、無言で私に何かを訴えていた。
 ……ふむ。毎回のことだが、何か機能に不満でもあるのだろうか?

 ◇◆◇◆◇

 どうやら私の『やり直したい』という願いが叶えられたらしい。
 時は新暦0071年。前世の私がゆりかごといっしょに宇宙の藻屑となった新暦0075年から数えて四年前。
 ……そう、『前世』だ。
 私は、やはり死んだのだろう。そしてその知識を、この戦闘機人もどきの子が受信でもしたのか。もともと人格や知識をインストールされていなかったからか、『私』という人格はやすやすとこの身のすべてとなっていた。
 これもありがたいと言えるのか微妙だが……どうやらこのからだ、この世界の高町なのはのクローンらしい。おかげで鏡に映る五歳児は、いつかのナノハそのものであり、ドクターの提供してくれたボディースーツが嫌で自ら纏いだした白いバリアジャケット姿の今など、逆にそれが似合いすぎてよくナンバーズの子たちにはからかわれる。
 私はため息を一つ、今日も今日とて懐かしのセイクリッドフォームを模して作ったバリアジャケットを纏い、ドクターのアジトらしい地下施設の廊下を歩いていく。……というか、揃いも揃って服飾のセンスがおかしいんじゃなかろうか。しょうじき、私もその辺はけっこう適当だけど……あのボディースーツは有り得ないと思う。…………いや、まさか、だからこそウーノは着てないのか?
 なるほど、長女はやっぱりわかっていらっしゃる。というか、ドゥーエにしてもいつもは潜入先の服だろうしクアットロはマント、チンクはコートを着ていた。……つまりみんな、さり気なくイヤだったのね。
 きっとセンスが壊滅的なのはドクターだけだ――そう思っておく。
「おや、おはようナノハ」
 果たして件の服飾センスゼロ男とばったり出くわした。
「…………」
 私は軽くお辞儀。そして無表情のまま彼の横を「まぁまぁ、待ちたまえ」過ぎようとして、腕を掴まれた。……ちっ。
 何のようですか? そう、上目使いで睨むという行為で問い、常のニヤニヤ面のドクターに対する。
「くく。相変わらず君は無口だね」
 ……まあ話すこともありませんし、話したいとも思ってませんので。
「それに表情も乏しい」
 ……そうですね。ですが、それがどうかしましたか?
 私はドクターを見上げ、ただ突っ立っている。
「…………」
 ただ、立っている。
 ただただ、立っている。
 …………。
 ……そろそろ手、離してくれないかな。というか、何のようなんですかドクター?
 私はたまらず眉根を寄せた怪訝顔をつくり、わずかに首を傾げて見せた。私としてはあなたと同じ空気を吸うのもイヤなんですが?
「ふむ。いや、なに……どうして君は、例の『高町なのは』という少女をもとに作られ、その記憶と人格を転写されながら、そうも大人しいのかと疑問に思ってね」
 私が『高町なのは』のクローン――プロジェクト『F』によって生み出された存在だというのは既に周知の事実であり、私の人格と記憶は彼女からの転写だということになっていた。
「あるいは君と同じころは大人しかったのか――そうも思ったが、それは関係ないね。なぜなら君の人格と記憶は、その大人しかったころの高町なのはのものではないのだろう?」
 ドクターはそう問い、じつに楽しそうな表情を体を折ってまで近づけてきた。……気色わるい。
 私は仕方なく口をひらくことに。
「……私は、ナノハ」
 それだけで説明は済むだろうと判断し、また口を閉ざす。というより、私が答えなくてもあなたなら『記憶転写技術が未熟だったから』とか『埋め込まれたジュエルシードの影響』など、すでに幾つかの推論は自分のなかにあるでしょうに。
「くくっ。ああ、そうだったね」
 なにを納得し、なにが愉快なのか。ドクターはそう笑い、私の頭を軽く撫でると去って行った。……ふう。私は彼を見送るとまた無表情で歩き出す。…………よかった、シャワーを浴びるまえで。
 とりあえず頭は念入りに洗おう。そう思いながら、私は先ほどの彼からの問い
に対する本当の答えを改めて考えた。
 結論から言えば、前世のナノハのせいだろう。
 もともとこちらの『なのは』の記憶など無いし、今回のこれが私の願いをジュエルシードが叶えた結果なら答えなどそれしかない。
 これもひとえに、前世の私もジュエルシードを左目に埋め込んでいたから起こったのだろう。ようは次元と時を超えた記憶転写だ――そう考えた方が魂の逆行だの輪廻転生などよりよっぽど現実味がある。……五十歩百歩と言われればそれまでだが。
 そして私がナノハであるからこそ、私は表情を消し、きょくりょく言葉を発しないようにしているのだ。……いや、正確には表情を『殺され』、言葉を『失った』とでも言うのか。
 廊下をひとり歩き、ある意味で見慣れた通路上の、壁一面にあった生体ポッドに映った自身の無表情を眺めやり、思った。……この世界に来て一番に驚いたのは、高町なのはが高町なのはのままだったこと。私のようにナノハ・タカマチ・ハラオウンではないというのが、ある意味自身の現状より驚きだった。
 ここは平行世界の一つなのだろう――そう思い、私は思考を切り替えるように立ち止まり、瞳を閉じた。……私は私。そう最後に言い聞かせ、歩き出す。
「ん? ああ、ナノハか」
 脱衣場には先客が――チンクが、居た。
「…………」
 私は軽く会釈をし、さっさとバリアジャケットを解除。もともと下に何も着ていなかったということもあり、隣のチンクと同じタイミングで裸となれた。……あ。やっぱりチンクって、かわいそうなぐらい幼児体型なんだね。
「……いま、何か失礼なことを考えなかったか?」
 するどい。私はとりあえず首を傾げて返し、同情の眼差しを向けていたことを誤魔化す。……ま、世の中には小さな女の子に欲情する変質者もいるようだし、チンクだって「……ナノハ?」って、さり気に心を読むレアスキルだかISだか持ってない?
「…………?」
 私は振り向き、シャンプーハットを持った隻眼の幼女を見た。……ああ、そう言えばチンクって「やはり何やら哀れむような視線を感じるな」――いや、なにも思うまい。というよりナイフを出すなと言いたい。
 ……はぁ。仕方ない。
 私は内心でため息を一つ、
「……洗いっこ、しよう?」
 果たして、右手しかない今の状態を思っての提案は、しっかり、シャンプーハット幼女に届いたのだった。
「…………お前、さり気なく私のことを見下してないか?」
 ……チンクのISは『マインドスキャン』です。…………嘘ですが。
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