嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《なのはさん。》第一稿4

 ◇◆◇◆◇

 次元航行船アースラにある日本の茶室を思わせる一室。そこで先ほどまで私、なのはちゃん、ユーノくんにクロノくん、そしてリンディ艦長の五人で話していたが、今は二人だけ。
 なのはちゃんとユーノくんは家に。クロノくんはそれを送るために席をはずし、私はリンディさんにお話があると言って残っていた。
「……さて、あなたのお話というのをうかがいます」
 優雅ささえうかがえる動作でお茶を入れながら、リンディさん。それに「……はい」と頷き、とりあえず目礼をしてからお茶を一口。……あまい。…………ありえないよ、やっぱり。
「では、単刀直入にうかがいます。もしなのはちゃ――お姉ちゃんがあなた方にちからを貸すといったら、どうしますか?」
 まっすぐに。リンディさんを半ば睨み、問う。
「ユーノくんが言ってました。お姉ちゃんは魔法の才能があるって」
 ……正確には私も同じだけの才能と魔力を持っているんだけど、それは知らないふり。実力でいえば正しく大人と子供ほどもあるんだけど、それは内緒。
「……お姉ちゃんのことだから、こう言いだすはずです」
 一度はじめたことを途中で投げ出したくない、と。
 フェイトちゃんのことを放っておけない、と。
 だから、最後まで事件に関わる。管理局に協力する、と言うにきまってる。
「だから――」
「あなたは、反対なの?」
 やわらかく遮り、微笑むリンディさん。「お姉ちゃんが私たちに協力したいっていうの、嫌?」と問い、首を傾げてみせる。
「……私は、管理局というものを信用できません」
 視線をそらし、拳を握って返す。
 ……『ゆり』は今日はじめて管理局を知った。管理局の執務官を名乗る少年は、大好きなお姉ちゃんが友だちになりたがってた女の子を躊躇無く攻撃しようとした。
 多少なり鍛えていても、今はまだ九歳の女の子。理屈ではなく感情が管理局を否定している――そう思わせるような言動をとり、リンディさんを睨んで言った。
「……お姉ちゃんはゆりが守るの。だから……あなた方はどっか行ってください」
 さあ、どう出ます?
 感情で動く女の子に、あなたはどう対処しますか?
「……ゆりさん」
 私に複雑そうな表情を向けるリンディさん。それを見るに彼女の胸中まではうかがえないまでも、思考の誘導は出来たと確信する。
 ……これでリンディさんは私の説得か、あるいはなのはちゃんを諦めるかをするはずだ。
 現状、最悪なのはアースラが独自のやり方で事件に介入した挙げ句、失敗して私たちの世界が消滅すること。次に、なのはちゃんの手にレイジングハートが残されなくなること。
 もしアースラが素早く事件を解決させ、ユーノくんとともに去った挙げ句、レイジングハートまでが無いとなると後で闇の書事件が発生したとき私たちには対抗する術がまったく無いことになってしまう。……そしてその場合、はやてちゃんの暗殺は急務にして必須になってしまうので出来れば避けたい。
 だから、リンディさんにはなのはちゃんが協力を申し出るのは必至で、それをゆりは不安だということをこの場で教えなければならない。……最善なのは私の同行を提案してもらうことだけど、はてさて。
「――では、逆にきみは、なにをもって僕らを信用する?」
 そう問いを返したのは戻ってきたクロノくん。私を静かに見下ろし、まるで試すように「ずいぶんと姉や自分の力に自信があるみたいだが、べつにきみたち程度の力なんて必要ないよ」と言って嘲笑して見せた。
 ……なるほど、『ゆりがお姉ちゃんを守る』っていう部分を否定しに来たか。
 ゆりは自分の力に自信があり、管理局がなのはちゃんを守れるかわからないから不安だ、とそう解釈したのかな?
 …………なんであれ、その図はわかりやすいので乗ることにする。
「『程度』……?」
 私は声を低くし、クロノくんを睨む。……せっかくなので、お姉ちゃんを馬鹿にするとゆりが怒るぞ、とアピールさせてもらうよ。
「ああ、そうだ。はっきり言ってきみたちのような子供が協力したいと言っても『足手まといだ』としか言えない」
 クロノくんは挑発を続ける。おそらくは私を力ずくで納得させようという打算と、なのはちゃんのような子供を危険に巻き込みたくないという優しさから来た配慮なのだろうが……ダメだね、まだまだ甘いよお義兄ちゃん。
「……お姉ちゃんはすごく強いもん」
 とりあえずクロノくんを上目遣いで睨み、女の子が頑張って凄んでる図というのを演出してみる。リンディさんは……何も言わないところを見ると、クロノくんに任せるつもりなのかな?
 まあタダで私の実力を計れるうえにみすみすAAAクラスの魔導師を逃すとも思えないから、リンディさんはアフターフォローに徹するつもりなんだろうけど。
「どうだか。少なくとも、僕より弱いきみに守ってもらうような子なんだ。たかが知れてる」
 ……うーん。挑発だってわかってるんだけど、やっぱりなのはちゃんをバカにされるのは我慢できないみたい。…………まだまだだな、私も。
「『僕より弱い』……? さっき私に手も足も出なかったあなたが、私より強いって言うの?」
 言いつつ、先ほどの戦闘を反芻。あれはあの場にエース級魔導師が複数居た上に近くにはジュエルシードがあったから、だ。クロノくんはだからムダな戦闘を避けようとしてただけだし、私の力に屈したわけじゃない。
 わかってる。今の、レイジングハートはおろかストレージデバイスの一つも持たない私がクロノくんに勝てるわけがないって。魔力はともかく魔法の構築と運用において彼に勝るには今の私には足りないものが多すぎるってことぐらい、しっかり把握できてる。
 わかってる。
 ……だけど、
「きみは、まさか自分が僕より強いつもりかい?」
「当たり前なの!」
 私はクロノくんに食ってかかる。
「……なら、こうしよう。もしきみが僕に勝てたら――」
 負けるとわかっていても譲れないものが、今の私にはあったから――。

 ◇◆◇◆◇

 私には左手がありません。左目が見えません。
 魔力は人並み以上にありますが、諸事情によりほとんど使えません。デバイスもありません。
 体力はなのはちゃんよりはありますが、すずかちゃんより無いです。お父さんに剣術を習っていてもせいぜいで剣を人並みに振るえるようになった程度。御神の技はおろか、剣以外はまだ実戦につかえるレベルにはなく、そもそも『まだ早い』という理由から私はまだ本格的には教わってません。
 魔法の知識はナノハとして戦い抜いた日々を覚えているのでかなりのものだと言えますが、前述のとおり魔力を使えない制約下では大半が意味をなしません。……私の魔法は基本的に魔力にものをいわせた砲撃や広域纖滅に特化させたものなので。
 それでも少ない魔力を効率的に運用する技術もあるので並の魔導師よりは強い自信はありますが……如何せん。それを教えてくれたのがクロノくんでは、通用しないどころかそもそも使えません。…………なにせ私の魔法知識は『なのはちゃんの練習を見て覚えた』という程度でなければならないからです。
 果たして私は、当然の帰結として――クロノくんには勝てませんでした。
 ……まあ、予定通りなんで良いです。そもそも身体的な差はもとより大して魔力を使えず、また魔力ダメージも受けられないなんて制限下で勝てるわけが無いんです。
 クロノくんとの事前の約束――『僕が勝ったら管理局を信用しろ』というのをしぶしぶ飲んだふりをしつつリンディさんのフォローとおべっかをいじけ面で聞き流す演技をし、私はアースラを後にしました。
 ……これでとりあえずは私がある程度以上『使える』ことが知れたはずです。翌日にはなのはちゃんとユーノくんがアースラに行きましたが、『今日のことは絶対ヒミツにして』とリンディさんたちには言っておいたのである程度は大丈夫でしょう。……まあ話しても問題はないですが。
 そして私は『次は負けない!』とクロノくんに悔しそうな顔して言っといたので割と自然にアースラから降りれたので上々。……管理局は嫌いだけどリンディさんたちならまだ信用できます。だからなのはちゃんも安心して任せられるので私はしばらく別行動をすることにしました。
 私の役目はバックアップにある。なのはちゃんとは喧嘩わかれの形になってしまったアリサちゃんたちのフォローはもちろん、フェイトちゃんのことがそうです。
 ……ナノハは、結局、フェイトちゃんには勝てませんでした。
 最後の最後。最初で最後の全力全開での戦闘で私はフェイトちゃんに勝てず、彼女がすべてのジュエルシードを持ち帰るのを見送ることすら気絶していて出来ませんでした。……その結果、時の庭園といっしょにフェイトちゃんは消失。彼女とは二度とあえなくなってしまいました。
 その後悔を糧に、私は強くなろうと頑張って――と、それは別の話ですね。
 閑話休題。つまり私の目的は、最後のフェイトちゃんとの決戦後、アースラの武装局員といっしょに時の庭園に乗り込むことにあります。
 一応、クロノくんにもなのはちゃんに魔法を教えて強くして欲しいとは頼みましたが……所詮は付け焼き刃。実戦経験豊富なフェイトちゃんには、やっぱり勝てないでしょう。
 だからこそ、私はそのアフターフォローに回る。時の庭園に乗り込み、あわよくばプレシア・テスタロッサを殺してジュエルシードの暴走を阻止。……フェイトちゃんには恨まれるでしょうし、結果的になのはちゃんに嫌われてしまうかも知れませんが、それでも目の前で彼女を失う方が嫌なので我慢します。
 そのために、アースラの人たちに力を示した。
 そのために、あの日、あの場でフェイトちゃんに私の存在を知らせた。
 すべては、そう。なのはちゃんが勝てなかった後のために。
 だから――



 なのはちゃんがフェイトちゃんに勝った瞬間、私は愕然としました。



「…………ぇ?」
 場所は、アースラの転送ポート。いつでもプレシア・テスタロッサ捕縛のため転移できるよう控えてる武装局員の人たちといっしょに、私はそのモニターを呆然と眺めてた。
 ……なのはちゃんが…………勝った? 周りで歓声をあげてる局員などよそに、私は頭が真っ白になってました。……そんな。
 どうしてだか…………ショック、だった。
 どうして? そう疑問に思い、思考は濁った。
 どうして、なのはちゃんは勝てたの?
 どうして、ナノハは勝てなかったの?
 フェイトちゃんに勝ったことを喜ばないといけない場面でありながら、私はなぜかひどく胸が痛んだ。私は……私だって、フェイトちゃんに勝ちたかったのに……。
 あるいは嫉妬。あるいは絶望。
 フェイトちゃんと友だちになりたかった。話したかった。仲よくしたかった。
彼女を笑わせたかった。だから頑張って――……それでもナノハは勝てなかった。
 なのに、
「…………どうして?」
 ――私は一人、歓喜する局員たちの中、表情を無くしていました。

 ◇◆◇◆◇

 思えば、私は、いつも事件の中心に居ながら、その実、解決に導いたことなんてなかった。
 ジュエルシード事件はけっきょくプレシア・テスタロッサが次元震を起こし、隣接する幾つかの世界を巻き込んで消失。その後の闇の書事件だって、そう。私は最後の最後は、いつも一人、安全なところに居た。
 だから――
「っ、つつ……」
 予定通り時の庭園へと武装局員といっしょに転送してもらった私は、そういう意味では歓喜していた。
 これで最後まで関われる。前のように目覚めたら解決してました、ご苦労様、ってわけじゃない。魔力はなのはちゃんが事前にかなりの量を消費していたので残り少ないけど、問題ない。
 相手は一人。大魔導師なんて言われてても所詮は人間。殺せる。
 私は転送され、武装局員が彼女を包囲して口上を述べてる間に影へと潜み、隙をみて彼女を殺そうと伺っていたが――庭園全体に轟くかのように走った初撃であえなく膝を屈した。
「……はは。腐っても大魔導師、か」
 虚ろに笑い、借り受けたストレージデバイスを本当の意味で杖として使い、立ち上がった。……防護服、借りててよかった。…………サイズあわないからといってやめなくて、本当によかった。
『――ゆりさん、大丈夫!?』
 リンディさんの通信に「はい、まだ行けます」と返し、送還しようとするのを止める。……大丈夫。私はそう自身に言い聞かせ、口元を過ぎる血を乱暴にぬぐった。
 ……大丈夫。と言うより、こんなところで返されたらたまらない。よろめくように立ち上がり、壁に背をあてて深呼吸を数回。……こんな、途中で、帰るわけには行かない。
 ひびの入った甲冑を脱ぎ捨て、ため息を一つ。……次は無い、かな。腰には、手にある杖と同じ支給品だろうストレージデバイスが二本あるが……まあ先の魔法をみる限り、防げないだろう。
 ……最初は、簡単にかわせると思ってた。身体強化と加速の魔法を使えば並の高速誘導弾程度なら振り切れる自信があったし、純粋な高速魔力弾でも見切れれば避けられると思っていた。それなのに…………まさか広域魔法まで使えるなんてね。
 防護服の手袋を外し、膝あても脱ぎ捨てながら思う。てっきりフェイトちゃんと同じで高速戦闘型の魔導師か、あるいはミッドの魔導師にありがちな中距離型だと思っていたのに……はぁ。広域魔法にしたって、まさかこれだけ広く、しかも高威力のものを何の詠唱も無く打てるなんて思ってもみなかった。
 彼女の手の中にあるのは単なるストレージデバイスだろうに……大魔導師の名は伊達じゃない、か。
『今、クロノがそちらに向かったわ。だからゆりさんはそこで――』
「待機なんてありえません」
 遮り、気合いを入れて立ち上がる。……さっきのが広域で、しかも殺傷設定だったのが不幸中の幸い、かな。魔力ダメージ自体、以外と少なかったし……何より、なのはちゃんがまだ戦場に出てきてないのが幸いだった。
『っ!? ゆ、ゆりさ――』
「私なら大丈夫です。……何より時間がありません。だから私が先行して、プレシア・テスタロッサをとめます」
 またも遮り、さっさと通信を切って駆け出した。
 ……よし、どうにか体の痺れはとれたみたいだね。プレシア・テスタロッサが向かった先は、覚えてる。私は彼女が最初に座していた広間を抜け、脇の道へと迷わず入った。
 そして、
「――聞いていて? あなたのことよ、フェイト」
 彼女は、狂気の表情を浮かべて、
 彼女は、生体ポッドに浮かんだ女の子の前で、
 これまで、ただ、彼女のためだけに戦い、傷付いてきたフェイトちゃんを――

「――あなたのことが大嫌いだったのよ!!」

 ――瞬間。私の理性は、激情に焼き尽くされた。
「プレシアァァァァアアアアアア!!」
 叫び、加速の魔法を使って彼女に肉迫。『フラッシュムーブ』による運動エネルギーに魔力を乗せ、一撃。
「フェイトちゃんは! フェイトちゃんはずっとあなたのために! それなのに……!!」
 しかし、私の『フラッシ・ュインパクト』は彼女の眼前に展開された障壁に阻まれ、
「うるさいハエね」
 っ!? 私は彼女が覚めた双眸を向けると同時に、フラッシュ・ムーブ。即座に横へと回避運動をとり――私の頬を過ぎた高速魔力弾を目にして血の気が失せた。
 なんてスピード……!? それに予備動作が少ないし、威力だって……。私は背後で聞こえた轟音にいっそう青ざめ、杖を構えなおす。
 これは……まずい。先ほど避けれたのだって運が良かったからだ。彼女が攻撃を示唆するような言動をとらなかったら、私は――
「……あら? あなた、あのガラクタと――」
「違う!」
 即座に否定。たぶん、私の顔からなのはちゃんと勘違いしての言葉だろうけど――それだけを否定したんじゃない。
「私は高町ゆり! それから――フェイトちゃんはガラクタじゃない!!」
 叫び、再び加速魔法で接近。やはり同じようにフラッシュ・インパクトで打つも、障壁に阻まれ――同時、ストレージデバイスに新たな魔法を指示する。
「……ふう。あなた、学習能力が――」
「無いのはあなたよ!」
 障壁に当てたストレージデバイスで固有振動を記憶。そしてそれを破壊する魔力振動を――『ブレイズ・インパクト』を放ち、障壁を破壊。目を剥くプレシアとの半歩を詰め、
「ぐっ……!」
 彼女にデバイスによる打撃を入れると同時に、
「がっ……!」
 その手から放たれた電撃魔法に吹き飛ばされた。
「うぐ……」
 互い違いに狭い通路の壁に叩きつけられ、私はあやうく意識を失うところだった。
 ……相変わらず電撃による副次的なダメージは厄介だね。かろうじて魔力を放出し、魔力ダメージ自体は軽微に抑えられたが……おそらくは同じことをプレシアもしただろうから、電撃による麻痺が残る分こっちの方が不利。
 私は明滅する視界で早くも立ち上がろうとしている彼女を映し、苦笑。まずいなぁ……ここまで圧倒的だとは思ってなかった。
「……やってくれたわね」
 プレシアは立ち上がるや私に魔法を一発。ぐぎぃ!? 私はそんな、彼女からしたらジャブにすらならないだろう一撃で呆気なく通路から吹き飛ばされ、奥の間へ。
「……ごほっ」
 咳き込み、どうにか震える右手で体を起こす。……打たれたのは右肩。おかげで握力がほとんど死んじゃった、か。
「ほら、まだ終わりじゃなくってよ」
 っ!? 声に、とっさに横へと転がるも――走った電撃に、左足を焼かれた。ぐぐ……! 私は、それでも立ち上がろうと足掻き――右足を打たれ、無様に転んだ。
「……く、は」
 走る、激しい痛み。
 しかしそれは無視できるからどうでも良い。何より、飛べば足なんて要らない。
 だから――
「あら、まだ頑張るの?」
 そう狂喜ともとれる笑みを浮かべ――彼女はためらいなく私に魔法を撃った。
「ぐ、がっ……!」
 簡単に。
 簡単に。
 何度も。
 何度も。
「――ん? またうるさいのが来たわね」
 血の海に沈みながら、私は、彼女が何かを召喚しているらしいのを眺め――呆気なく、意識をとじた。
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