嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《なのはさん。》第一稿2

 ◇◆◇◆◇

 夢見はいつも、おせじにも良いとは言えない。
 五月一日、午前六時。いつものように携帯電話のアラームに起こされ、わたし、高町なのはは今日もぼんやりとしながら体を起こす。
 ……なんか、へんな夢見た。そうつぶやき、まぶたをこすりこすり、伸びをする。
 へんな夢。いつも夢の内容はおぼえてないけど……でも、いつもとはちがって枕が涙でぬれてないし、倦怠感も無い。
 だから、わたしは朝の陽光を窓から透かし見て、にっこり。もしかしたら『いい夢だったのかも』と楽観視してダブルベッドから身を起こした。
 そして、ガチャリ、と。まるでわたしが起きるのを待っていたかのようなタイミングで部屋の扉が開き、「あ」と、わたしとよく似た容姿の少女――妹のゆりちゃんが現れた。
「あ。おはよう、ゆりちゃん♪」
 わたしはゆりちゃんの、まるで鏡写しのようにそっくりな顔に笑みを向け、挨拶。それにゆりちゃんは少しの驚き顔から一転、花咲くようにふんわりと笑い「おはよう」と返した。
「めずらしいね、なのはちゃんが朝からごきげんなんて」
 そう言った彼女――高町ゆりは、わたしの双子の妹です。
 外見は、わたしたちが一卵性双生児ということもあって、そっくり。背丈や格好は言うにおよばず。顔なんて髪型が同じせいか、常日頃左目を閉じてるゆりちゃんと同じようになのはも左目を瞑ると、家族でも見分けがつかないほどです。
「にゃ~。それだと、なのははいつも不機嫌さんみたいだよ?」
 そう苦笑し、近付いてきたゆりちゃんの頬を、彼女の肩にかけられてたタオルで拭う。ゆりちゃん、今日もお父さんやお兄ちゃんたちと朝の稽古をしてきたのかな?
 彼女の、薄手のシャツにスウェットという姿を眺めて思う。うーん……なんでゆりちゃん、そんなに早く起きれるんだろ?
「あはは、ありがとう」
 そう笑って返す双子の妹はこんなにもそっくりでありながら、その実、中身はぜんぜん違う。っていうか、これと言って取り柄の無いなのはと違い、ゆりちゃんは誰もが認める文武両道の天才少女。文系が苦手で大の運動音痴のなのはと同じ血が流れているのかと疑わしくなることしきりです。
 でも――なのははゆりちゃんがうらやましいなんて言えない。
 ……言えっこない。
「あ、これから私、シャワー浴びるんだけど……なのはちゃんも一緒に、どう?」
 そう首を傾げる彼女には左腕が――無い。
 肩から先を、文字通り切り落としたゆりちゃんのそこでは、シャツの裾が虚しく揺れていた。
「あれ? でも、ゆりちゃん。今日、病院……」
「うん。だから、その前に入ろうかなって」

 ――わたしたちは奇形児として産まれた。

「そっか。うん、いいよ。いっしょに入ろ♪」

 ――お母さんの胎内で、まだ完全に人の形をする前に……なのはの右腕とゆりちゃんの左腕がくっついてしまったらしい。
 そして、そのせいか、わたしたちは肩と腕でくっついた状態で産まれて……。その時にはゆりちゃんの左腕は無くなってて……。
 だから、こうして分けられ、ちゃんと『二人』となった今、ゆりちゃんの左腕は無かった。
「あ、じゃあ着替えはなのはが持って行くね」
 わたしはそう言ってゆりちゃんがあらかじめ用意していたのだろう、バスタオルや下着などが入ったバスケットを手に微笑む。
「あ、うん。ありがと、お姉ちゃん♪」
「うん♪」
 ――わたしたちは双子。
 いつも一心同体。
 二人で一人。
 だから今日も仲良く、同じ顔で微笑みを交わしあった――。

 ◇◆◇◆◇

 白い、海鳴総合病院の一室。薬品匂のほのかに香るそこで、私、高町ゆりは一人、ベッドにこしけて考えていた。
 今年で、九歳。だから……いよいよ、か。あけた右目だけで窓から外をながめ、思う。いよいよ今日、なのはちゃんが魔法と出会う。
 閉じた左目で過去を、あるいは未来を、ふりかえる。今日の……たしか学校の帰り、だったかな? なのはちゃんは傷ついた一匹のフェレットによばれ、出会い、魔法にふれて――覚醒する。
 ……本当は、ぜんぶ私が背負ってあげたかったのに。窓に反射する、幼い少女のなりをした自身を見つめ、嘆息。……よりにもよってこんなときに手術なんてなぁ。
 私は、なのはちゃんには一切の苦労や悲しみを与えず、できるなら普通の女の子として幸せな生涯を送ってほしかった。
 だから、ジュエルシード集めも、そのあとの闇の書事件も私が――って思ってたのに……はぁ。
 だけど、まあ、考えようによっては今日が手術の日なのは正解かも知れない。私はまだ膨らみはじめてすらいない胸に手を当て、思う。
 ここには……私たちには人並み以上の魔力が、ある。
 魔導師の源――リンカーコア。そして、私たちの高い魔力資質を狙い、いずれは襲撃にくる闇の書の守護騎士――ヴォルケンリッター。
 私は知っている。ヴォルケンリッターが命を賭して救おうとしていた少女のことを。そしてだからこそ、思う。闇の書事件の渦中で入院なんてことになったら……私、殺されてたかも、と。
 それで……今日は、きっとなのはちゃんは大丈夫。相手は私の記憶通りならなのはちゃんに全く触れられないはず。そしてなのはちゃんが魔法少女になるのなら、一日も早く優秀な魔法使いになってもらわないと逆に困る。
 もう一人の魔法少女の出現の前に、一日も早く。そのために、できるだけ多くの経験を。……私たちは基本的に実戦による叩き上げの方が強くなれるから。
 そしてそのために、今日出会うフェレットには――異世界から来た魔法使いの少年、ユーノ・スクライアくんには前世の私と同じようになのはちゃんの魔法の先生になってもらおう。……っていうか、私が魔法を教えてもいいんだけど、それじゃあそもそもなのはちゃんが頑張る理由が無くなっちゃうからダメ。ゆりはだから、知らないふりに勤めないと、なの。
 ――と、そこまで考えながら、それでも、と思ってしまう。……心配だなぁ。
 いっそ手術から逃げようか? ……でもまたそれでお母さんとかに心配かけたくないしなぁ。…………はぁ。
「まあ、最悪……あなたを殺せば万事解決なんだけどね」
 ふと笑い、ふりかえる。
 そこに、今まさに病室へと車椅子に乗って現れた少女――八神はやてちゃんは、私の言葉と笑みに目をまるくし、そしてすぐに「いきなりなんやの?」と苦笑。勝手知ったるふうに私のベッドの傍らへと来るや、あらためて口をひらいた。
「まったく、もう。あいさつ代わりにしては物騒すぎるで?」
 ――私の左腕は、その生まれのせいか肩から下が存在しない。
 ゆえに、私はたまにこうして入院し、成長した骨が切り離した部分から飛び出ないよう定期的に手術をしなければならず、
 そうして入退院を繰り返すうちに私たちは出会い、いつの間にかこうして友だちとなっていた。
「あはは、ごめんごめん」
 私は笑ってごまかし、「もう」って言いつつ別段気にしたふうも無いはやてちゃんをそれとなく観察した。
 ……まだ、覚醒してないのかな?
 直線距離にして二メートルも無い至近にいて、彼女からはとくに強い魔力を感じない。
 ……まあ、感じたからといって何かするつもりは無いけどね。…………今のところは。
 彼女を殺すのは本当に最終手段。そう自身に言い聞かせ、私は思考を切り替えるようにとりあえず世間話をふる。
「せんせい~、この女の子、腐ってます~」
 手を拡声器のように口にあて、私。それに、「なんだ、なんだ?」って反応する、同じ病室に居る患者さんたち。
 そしてはやてちゃんは「なんでやねん!?」と言いつつ、ビシ!! 私のボケにすかさず裏手でツッコミをいれた。うん、さすがはやてちゃん。ノリ良いね♪ 私は内心そう満足げに頷きつつ、表面上は頭をおさえて「いたた」と言っておく。
「にゃはは。いきなりはひどいなぁ」
「いや、いきなりはゆりちゃんの方やから!」
 うん、やっぱりノリが良い。私はニコニコとし、心底疲れたとばかりにため息をつくはやてちゃんを見やる。あはは、ちょっとからかい過ぎたかな?
「まったく……人をそんなふうにしたのはゆりちゃんやのに」
 ……はい、腐らせたの私です。っていうかお姉ちゃんの部屋の本を適当に失敬して貸した結果なんだけどね。
 …………ちなみにその後、お姉ちゃんの『お話』で死にかけたのも良い思い出。
「ひどいやんか、ゆりちゃんだってキラ×アス派の同志やのに……!」
 果たして、はやてちゃんの言葉に「私はアス×キラ派だよっ!!」と思わず反論してしまう私。って、ハ!? 私は慌てて自分の口をおさえ、いい加減騒がしくしすぎなせいかこちらを注目していた同室の人たちを見て真っ赤に。
「ふふ……ほれ、ここにもおんなじ腐った女の子がおるやんか」
 ニヤリと笑ってはやてちゃん。それに「にゃあ!? は、はめられたぁ!?」と頭をかかえる私。
 そして、
「「ぷっ……」」
 私たちは揃って吹き出し、「「あははは」」と笑い出した。
「……あ~、笑った笑った」
「そやなぁ。――あ、リンゴでも剥こか?」
 果たして目尻の涙をぬぐいつつはやてちゃん。ベッド脇に置かれた果物籠からリンゴを手に取り、言った。
「あ、おねがい」
 私は彼女に果物ナイフのありかを教え、『騒がしくしてすみません』と周りの人たちに目礼。あ……もしかして私、今日から晴れてイタい子の仲間入り?
 生暖かい瞳で微笑む患者さんたちに、私はそしてはやくも入院生活を疎ましく思い始めた。はは……入院初日でこれですか。
「……ねぇ、はやてちゃん。やっぱり…………殺していい?」
「ええワケあるか!」
 リンゴの皮を剥きつつ、器用に『ビシ!』と裏手ツッコミを返すはやてちゃん。そして「あ、そう言えば」と言って手の中のリンゴと私の顔とを見比べ、
「ゆりちゃんてリンゴを『ぐしゃ!』ってできる子?」
 片手で何かを握り潰す仕草を見せてはやてちゃん。……はやてちゃんの中のゆりについて小一時間ほど問いつめたいなぁ。
 私はため息を一つ。「そんなのできないよ~」と苦笑し、
「はやてちゃん……食べ物を粗末にしちゃいけないんだよ?」
「って、できるんかい!?」
 打てば響くとはこのことか。私がボケればはやてちゃんはすかさずツッコミを入れてくれる。
「にゃはは。まあ、冗談はさて置いて……さすがに私の握力じゃ羊梨ぐらいしか握りつぶせない、かな?」
 ……たぶん。やったことないからアレだけど……。
 …………っていうか女の子としてそれもどうかと思うけどね。
「羊梨だけに?」
「用無しだから♪」
 つまらんわ、って笑いながら突っ込むはやてちゃん。って、そっちからふっといてそれはひどいよ~。
「あはは。なんや相変わらずゆりちゃんは女の子やめとるなぁ」
 言いつつ『ほい』と切り分けたリンゴをさしだすはやてちゃん。……ふ~ん、そこまで言うんだぁ? 私はリンゴを口に含み、そして、
「……ねぇ、はやてちゃん? 私、今ならスイカも割れる気がするんだぁ♪」
 にっこり。指をパキポキ鳴らすようにして握り、はやてちゃんの頭をかいぐりかいぐり。
 すると即座に「ちょっ、調子に乗ってスミマセンしたぁ!!」て言いつつ頭を下げるはやてちゃん。顔が真っ青である。
「うん、口は災いのもと、ってね♪」
「…………それをゆりちゃんが言うんかい」
 ――私ははやてちゃんと笑いあう。
 いつかは殺しあうと、わかっていながら。

 ◇◆◇◆◇

 …………………………………………。
 ……………………ん?
 …………ああ、夢、か。
 立ちのぼる黒煙。くすぶる火。赤くぬれた瓦礫と人の残骸とが散らばる、いつかの戦場。
「……た、たす……けて…………!」
 目の前で命乞いする、今の私と――ゆりと同じぐらいの男の子。……おそらくは実験サンプルだったのだろう。着ている服はほかの研究員とちがい簡素な上下だし、体中の包帯やガーゼが痛々しい。
 ……もし私が正義の味方なら、彼をたすけただろう。
 だけど、私の仕事は――纖滅。施設、および人員のすべてを破壊し、殺害し、『元から無かったこと』にするのが役目。管理局暗部のリセットボタン。
 だから、私は……レイジングハートを少年に向け、涙と恐怖でぐちゃぐちゃにゆがんだ顔を――消しとばした。
 ……運が無かったね。思うのは、ただ、そればかり。
 私は辺りを見まわし、動く影が無いことを確認。レイジングハートにも生体反応の有無を確認して、私は空へと上がった。
 ……仕上げ。私は左目からの魔力供給をフルに使い、眼下の施設を――

 ――聞こえますか?

 …………え?
 それは、声。
 それは、念話。
 ――聞こえますか? 僕の声が……聞こえますか?
 私はぼんやりと、目をあけた。……ああ、もう夜。暗い病室。私はかすみがかった意識のまま、自身がベッドに寝かされてる理由を思い出す。私は……そっか、手術をうけて……。
 思考が判然としない理由。体の感覚が鈍っている理由。それが今日の手術に際して投与された麻酔の名残だと思い至り、そしてそんな私を起こした声のことを考えた。
 ……さっきの念話は、ユーノくんからの、かな。今や細部のぼやけた記憶をさぐり、たしか過去の自分もユーノくんの念話に呼ばれて魔法少女となったことを思い出す。
 そしてそれが始まり。
 私は魔法と出会い、魔法少女と出逢い、
 戦って、戦って……だけど私は、ただの一度も勝てなくて、
 それで……すべてを、喪った。
 だから――
「……見に、いこう」
 つぶやき、気だるい体を無理やり起こす。……見にいこう。思考はにごり、視界もまたぼやけて判然とせず。……なのはちゃんを、見に。ただそれだけを思い、盲目的に動く。
 ……見に、いこう。半ば夢見ごこちで私は窓を開け、

 空に、桃色の柱が伸びるのを見た。

 同時――ドクン、と。リンカーコアが歓喜するように脈動。
 そして、「ぁ、ぐっ……!」左目に走る、激痛。それはすぐに脳内をかきむしるような、まるで頭蓋骨の中をミキサーでかき混ぜるかのような痛みへと変わり、私はたまらず左目を押さえてベッドに突っ伏す。
 ……これ、は――共鳴?
 痛みは刺すようなそれから、まるで脈打つような鈍痛へ。この痛みの間隔……これって、リンカーコアの脈動と、同じ? 吹き出る冷や汗を乱暴にぬぐい、ベッドの上で仰向けに。……発端は、間違いなくなのはちゃんの覚醒、か。深く、長く、ため息。……うすうす、そんな気はしてたけど、まさか本当に――かぁ。
 私はすっかり乱れてしまった心拍と呼吸を整え、体力を無くした四肢を投げ出し苦笑。…………あはは。まだ痛みはひどいのに、そんなの無視して考えてるよ私……。
 瞳を閉じ、思う。……痛みに慣れ過ぎてる自分は、まるで――
「……人間じゃない、みたい……だな…………」

 ――私はそして意識を手放した。

 ◇◆◇◆◇

 一年生にあがってすぐのころ。前世でナノハが親友だったアリサ・バニングスちゃんと月村すずかちゃんとは、ゆりに生まれ変わってからも無事に親友になれました。……私ではなくなのはちゃんが。…………私だけずっとクラス違うんです、トホホ。
 ……まあ何はともあれ、結果的に二人と友だちになれたからよかった、と思います。
 おかげでこれまでの『流れ』は前世の記憶と大して違わず、そして結局見に行けなかったユーノくんとの出逢いやフェレットを飼うことになったあらましなんかは一緒みたいです。……仕方のないことなんだけど、魔法関連のことでウソをつかなきゃいけないなのはちゃんの態度がどこか素っ気なくて、少しだけ寂しい
です。
 さて、閑話休題。今日は『みんなでプール』の日。……私はアリサちゃんの策略にまんまとハマり、今、ひとりでプールサイドにいます。っていうか、お姉ちゃんとノエルさんを使うとは……さすがアリサちゃん。畜生、手も足も出なかった、なの。
 ……ちなみに、どうして私がプールに来たくなかったかと言えば、もちろんこれからジュエルシード事件が発生するから――ではありません。
 一応、それも理由の一つではありますが……何より、私、水着とか肌の露出の多い服って嫌いなんです。だから、『退院はしたけど抜糸はまだだから』と言って参加は辞退するつもりだったのですが……はぁ。
 今はせめてもの抵抗にと生地の厚い濃紺色の競泳水着の上にティーシャツという格好をしています。……そしてそんな私を見たなのはちゃんの第一声が「スク水萌えだね、ゆりちゃん♪」だったのは軽くショックです。
 どうにも本人は『その水着かわいいね』と言ってるつもりらしいんだけど……私はあの車椅子少女を今すぐ血祭りにあげようかと本気で悩みました。
 私のお見舞いで何度かあってるからか、なのはちゃんとはやてちゃんは早くも仲良しさんみたいなんだけど……やっぱりはやてちゃんはなのはちゃんの情操教育上よろしくない生き物のようです。
 ……やはりここは、これ以上なのはちゃんを汚されるまえに、いっそ――
「…………はぁ」
 私はため息を一つ。とりあえず後でキッチリ『お話』しよう、と自分に言い聞かせるだけにとどめました。
 ……ああ、そう言えば、なのはちゃんははやてちゃんも今日のプールには誘ったらしいけど、このプールがあまりバリアフリーじゃないからって理由で断られたみたい。…………ちっ。
 まあ、でも……ずっとくさってても仕方ない。なにより誘ってくれたなのはちゃんが心配そうにこちらを見ているのがつらいので、わたしはレジャーシートの上にゴロンと寝転がってみんなに手をふってみた。あ、そだ。アリサちゃんも後でお仕置きなの♪
「……な、なんか笑顔がクロいわよ」
 ふふ。だれのせいで来たくもないプールに居るとおもってるのかなぁ?
 私は若干おびえ混じりの表情を見せるアリサちゃんにとびきりの笑顔を向け、思う。まったく……おかげで私までプールのジュエルシード事件に巻き込まれちゃうじゃないの。
 ああ、そう言えば。どうやらなのはちゃんのジュエルシードの回収作業は、今のところ問題なく進んでいるみたいです。
 毎日、お見舞いにきてくれてたなのはちゃんをそれとなく観察してたからわかる。少なくとも、今のところは順調。私の記憶がたしかなら、今日は私が――なのはちゃんがまた一つ強くなれる日。新しい魔法を習得し、今度は空を行く『翼』をもらえるって沸き立つ日。
 だから――……さて、どうしよう?
 果たして目の前で広がる、人外の存在がアリサちゃんたちから水着を脱がしていくのを眺めながら考える。さて、私はどこまで干渉しようかな?
 ――私は、なのはちゃんが傷付くのをみたくない。
 生まれてからずっと一緒だったから、というのもある。自分が何も守れず死んでしまったから、というのも。なのはちゃんが傷付き、それで傷付く家族や友人を見たくない、というのもある。
 だけど、その根底にあるのは――
「……あ~あ」
「っ! ゆりちゃん!?」
 案の定、私はユーノくんの広域結界に取り残され……。その上、私にかけられた、アリサちゃんとすずかちゃんを寝かせたのと同じユーノくんの魔法まで、ついレジストしちゃって……。
 そんなワケで私がいるせいかなのはちゃんが魔法を使うのを渋ってます。うーん……これはちょっとだけ干渉せざるをえない、かなぁ?
 私はため息を一つ。困惑してユーノくんと目を合わせてるなのはちゃんに、にっこり。プールサイドで眠るアリサちゃんたちのもとに歩いていきながら、
「なにしてるの、なのはちゃん」
 疑問を口にしながら、
 その実、疑問ではなく背中を押すように、
「混乱するのもわかるけど……なのはちゃんには今、できることがあるんでしょ?」
「え……?」
 目を丸くするなのはちゃんから視線をユーノくんへ。アリサちゃんとすずかちゃんの傍らに膝をつき、言った。
「説明もごまかしも、あと。優先順位を間違えないでね」
 そして、二人は頷いて、駆け出した。
 ……あ~あ。このあと、どうしようかなぁ。
 いっそこれからは私が魔法を――って、それじゃあ意味ないし、なのはちゃんが強くなってくれなきゃ困るしなぁ。
 私は天を仰ぎ、考えること数分。果たして頷きを一つ、レジャーシートの所までかえり、バッグからマジックペンを取り出して再び眠る二人のもとへ。さあ、何はともあれ、とりあえず――
「ふっふっふ……まずは額に『肉』、なの♪」

 ――……私は、現実逃避しました。
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