嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《なのはさん。》えぴろーぐ

《なのはさん。》

いち。
に。
さん。
し。
えぴろーぐ。




 ◇◆◇◆◇



 ――ただ、彼女に笑ってほしかった。



 暗くて、暗くて。真っ暗闇の世界で、少女は赤き衣をまとって凍えていた。

 ……『なのは』、だよな? まず、そう疑問に思った。

 たしかに少女は『なのは』に似ていた。栗色の髪も、整った容貌も、知っていたものと同じで――……だけど、その瞳が違ってた。

 だから、チカラを使ってみた。

 借りものの、チカラ。全知全能の――神さまの、チカラ。それで少女を『視て』…………愕然とした。

 少女はたしかに、高町なのはで。

 少女は、だけど、高町なのはではなかった。

「…………願いは、ある?」

 少女に――ナノハに、問う。

「って、いきなり言われても困るよね」

 闇のなかで。

 暗き世界のなかで。

「ああ、俺の姿が見えないってのは……アレだ。俺は『視点』だから――っていうか、神さまだからっていうか、」

 言いながら――『言葉』を少女に送りながら、なにが神さまだ、と自己嫌悪する。

「だから、さ。君の願いを叶えられる――君の願いを聞き届けられる存在で、」

 ……遅い。

 遅すぎるんだよ、バカが。

 願いは、ある? そう問いながら、自分を罵倒する。

 ……遅すぎる。

 来るのが、遅すぎた。

「…………ねえ。ねえ、なのは?」

 冷たくなっていく、少女。

 心を凍らせてしまった、なのは。

「…………願いは、ない?」

 ――俺は、『高町なのは』のことが好きだった。

 『リリカルなのは』を見て、少女が頑張っている姿を見て、感動した。大好きになった。

 だから、死んで、死神だか堕天使だかに最後に願ったのが『なのはの笑顔が見たい』だった。

 なのはの笑顔を見る。そのために、ここに来た。……なんのためにかはわからなかったけど、神さまのチカラなんてものまで貸してもらって。

「…………見たくは、ない?」

 打ち捨てられたような廃屋で。ガラクタや塵が散乱している床上で。

 刻一刻と命の滴をこぼす少女に、俺は……問う。

「君が成し得なかったこと。君が友だちになりたかった女の子が――……フェイトが、君の友だちになれた世界を。君が助けられなかった、八神はやてが君の友だちとしてずっと過ごせる世界を」

 闇映す、闇宿す瞳に。

 暗き世界で、光忘れた心に。

「その世界では、地球だって――君の家族や親友だって無事でさ。ハラオウン家だって消されて無くて……」

 俺は、話す。

 俺が知っている、『なのは』の世界を。ナノハがずっと望んでいただろう、夢のような世界を。

「君はさ。その世界を……見たくない? その世界で、またみんなに会いたくない?」

 ――俺のチカラは、『願いを叶える』ことに特化していた。

 だから、少女の願いを…………誘導、した。

 だけど――



 ……………………少女はもう、願う心すら殺されていた。



「…………ねえ。もう、なんでもいいからさ。なんかない? なんか……願いは、ない?」

 すでに冷たく、鼓動を刻むことすら忘れてしまった少女の心に――魂に、問う。

 願いはないか? ――そう問いながら、少女が何かを願ってくれることを、俺は『願って』いた。

 そして、

「…………ごめん」

 謝罪の――自己満足のための言葉を一つ。少女が生前願い続けていた願いを、叶える。

 ……ナノハに、なのはを見せてあげたい。

 ナノハに、『リリカルなのは』の世界を見せてあげたい。

 そんな俺自身の勝手な願いのついでのように。少女の願いもついでに叶えるために。俺は彼女の魂を連れて――『転移』した。

 今度こそ、彼女には幸せになって欲しい――そんな幻想を、やはり勝手に抱いて。今度は『なのはに会いたい』というキーワードにプラスして『「魔法少女リリカルなのは」の世界の』をくっつけて。

 だから、転移した先には『リリカルなのは』の『なのは』が待っているはずで、

 ……だけど、転移した先で待っていたのは、

「…………なんでだよ」

 思わず、こぼす。

 なんでだよ。なんで、また、こんな『なのは』のところに来てんだよ。なんでまた、死にかけた『なのは』のとこなんだよ!

 目の前で、たくさんの死骸と一緒に転がる少女。『視れば』、わかる。この子は『なのは』のクローンで。人格と心はすでに崩壊していて。このままでは……死んでしまう、ということが。

 世界を『視れば』、わかる。ここはたしかに『リリカルなのは』の世界で。俺が望んだ通り、目の前で死にかけている少女だって『なのは』だった。

「だけど…………あんまりだろ」

 思わず、こぼす。

 ……俺はまた、なのはの死を見せられるのか? ただ、黙って。

 ただ、見ているだけなのか?

「……願いを、叶えられるのに」

 神さまのチカラを持っているのに。

 彼女たちの不幸を『視て』、知っているのに。

 ……大好きな、『なのは』なのに。

 俺はまた、見ているだけなのか?

 俺は、また――



「そんな運命なんて、クソくらえだ!」



 そう吐き捨て、俺はまた、俺の願うがままにチカラを使った。

 自分勝手、上等。

 ご都合主義、上等!

 目の前で、大好きな女の子が死にかけてるんだぞ? それを救えるチカラが、今の俺にはあるんだぞ?

 だから――今度こそ、死なせない!!

「……絶対。絶対に、死なせない! 絶対に、笑わせてやる!!」

 そうさ。

 俺は感謝されたいんじゃない。願いを聞くのだって、本当は二の次で。本当に本当は、ただ『なのは』の笑顔が見たかっただけなんだよ。『なのは』に、こんな顔して死んで欲しくないんだよ!

 だから!

 だから!!

「……『原作』だって知ったことか!」

 自分勝手?

 ご都合主義?

 ……だからどうした。

 文句があるなら代われ。俺の目の前で彼女を――彼女『たち』を救ってくれ。なのはたちを笑わせてくれ!

 それが出来ないなら――そんなシナリオを用意出来ないなら、『原作』だって否定してやる。自分勝手だろうが何だろうが、俺が変えてやる!

 そうさ。俺は、なのはを救えるなら――神さまにだってなってやる!

「俺は、ハッピーエンド至上主義なんだよ!」

 そう世界に叫び、俺は少女たちの運命に――介入した。









 魔法少女リリカルなのはSS





 《なのはさん。》




 えぴろーぐ。






 ――友だちになりたい。

 それがなのはの、最強の魔法。






 ◇◆◇◆◇



 ――ナノハはもう、魔法は使えない。



 起動六課の医務室。そこのベッドにからだを横たえ、ぼんやりと天井をみる。

 あれから――高町なのはと模擬戦をしてから数日。わたしは熱をだし、寝こんでいた。

 彼女との一戦が特別激しかったから――という理由だけではない。

 わたしのからだは、もともと弱かったから。もともと、無理やりな投薬と実験のせいで壊れかけていたから。……もう、治せないぐらい、壊されていたから。

 だから、はじめから、あの模擬戦が最初で最後だろうことは知っていたし、あとでシャマル先生に言われるまでもなく魔法戦はもうできないと覚悟していた。

 …………そう。覚悟は、していた。

 していた……つもり、だった。

「…………」

 ぼんやり。

 ぼんやり、と。微熱に湯だったような頭と視界で天井をながめ、思う。

 わたしにとって『魔法』はなんだったのかを、考える。

 きっかけは、ジュエルシード事件。ユーノくんに呼ばれ、レイジングハートと出逢い。わたしは魔法のちからを手にした。

 ……今でも、思いだせる。必要とされた。わたしには、困ってるひとを助けられるちからがあった。それが…………うれしかった。

 だけど、わたしは……失敗した。すべてを、失った。

 それでも、魔法のちからに縋った。……それしか、もう縋れるものがなかったから。

 そして、そのちからで……ひとを、殺した。

 命令されるがまま。言われるがままに、殺した。

 わたしは、ひとを、殺した。

 殺した。

 殺して。壊して。……殺されて。

 だから、

 ……だけど、

 わたしにとって、魔法は……特別。

 魔法は、わたしが唯一ひとに必要とされる理由で。なんの取り柄もなかったわたしが『ナノハ』として生きられたちから、だから。

 そして……今のわたしには、ほかに何もないから。

 たとえそれが、誰一人たいせつなひとを助けられなかったちからでも。フェイトちゃんを救えず、はやてちゃんに屈したちからでも。ひとを殺し、物を壊すためだけに使わされてたちからでも。それでも……この世界で『ナノハ』の生きた証は、魔法だけだったから。

 だから、それを失うのは…………すこしだけ、悲しい。

 もうわたしが『ナノハ』だったことを示すものは――無い。

「…………」

 ……ねえ、ねもう。

 呼ぶ。こころのなかで。神さまを、呼ぶ。

 ……ねもう。

 呼ぶ。あの日から、返事をくれない神さまを。いつも騒がしく、どこまでも明るかった彼を。

 ……ねえ、ねもう?

 ひとみを閉じて、問う。

 ねもうは、どうして、わたしの願いをきいてくれたの?

 どうして、わたしと、ずっといっしょにいてくれたの?

 ……どうして、返事をくれないの?

 あの日――高町なのはとぶつかりあった日。わたしがあなたに願わなかったから? だから、もういなくなっちゃったの?



 ――いや、せめて「天国」と思ってほしかったです、ハイ。



 思う。

 考える。



 ――たとえば「ある日、トラックにひかれて死んだ」、でも気づいたら目の前に神さまが居て、「間違えて殺しちゃった、てへ☆ だから代わりに願いを叶えてあげる~♪」って話を――……知らないよなぁ。



 あるいは本当に、電波かなにかだったのかな?

 辛くて。寂しくて。虚無感が大半をしめていたこころが聞かせた、幻聴だったのかな?



 ――ハッ! こ、ここは、「おにいちゃん」と呼んでもらうべきだったか……!?



 あるいは、『わたし』も含めて……このからだの主がみている夢か。

 …………夢。

 ……うん。夢でも、いいかな。

 夢でも、こんな世界がみられたのは……よかった。……たのし、かった。

 夢でも、もう会えないと思っていたひとに、会えた。みんな、わたしに話しかけて、笑いかけてくれた。

 そしてねもうも、わたしがひとりのときは、いつも話しかけてくれた。

 わたしがひとり、ただぼんやりしていると決まって騒ぎだして……。ひとりなのに賑やかで、誰もいないのにこころが動かされて……。

 それが夢でも。

 それが幻聴でも。

 それでも、わたしはたしかに…………寂しさを感じなかった。

 だから、

 ……だけど、

「…………ぅ」

 どうして、だろう?

 どうして。

 どうして、わたしは今――……こんなにも、寂しいんだろう。

「……ぅ、ぅぅ」

 わからない。

 ……どうして?

 どうして、わたしは寂しいんだろう?

 どうして、わたしは…………泣いてるんだろう?

「ぅぁ……、ぁぁ……」

 ……涙なんて、もう流れないと思っていた。もう、枯れ果てたと思っていたのに。

 寂しい。

 ……寂しいよ、ねもう。

「ぅあ、ぁー……!」

 誰もいない部屋で。ひとり、泣く。

 ……寂しい。

 寂しい、と。誰に届けることなく。

 わたしは、涙を流す。魔法をなくして、ねもうもいなくなって……。また、ひとりになって……。

 わたしはただ、寂しいと、泣いていた。

 だから、



「――どうしたの?」



 彼女が入室したことに、気づくのが遅れた。

「……どうして、泣いてたの?」

 彼女に――高町なのはの優しげな声音に、

 わたしは、なぜだか…………腹が、立った。

「……どう、して」

 流れる涙を、そのままに。わたしは、ベッドの横に座した彼女を、睨んで。

「どうして、あなたばっかり……。どうして……。どうして、あなたは……!」

 わたしは、感情のままに、口を動かしていた。

「わたし、ばっかり……!」

 ――死んだと思っていた、こころ。

「わたしはひとりで……! ひとり、なのに……!! わたしだって、『なのは』なのに!!」

 ――殺したと思っていた、ことば。

「わたしだって! わたしだって、がんばったのに……! わたしだって、みんなと……仲よくなりたかったのに! いっしょに、いたかったのに!!」

 よろよろとからだを起こして。目をまるくする彼女を、キッと睨んで。

「わたしだって……! わたし、だって……!!」

 あふれる、おもい。

 あふれる、言の葉。

「…………どうして?」

 こぼれる、疑問。

 こぼれる、涙。

「……どうして?」

 なのはを、みる。

 わたしとはちがう、ヒカリのなかをいくなのはを。ひとりじゃない、なのはを。

「……………………さみしい」

 ぽつりと、こぼす。

「……さみしいよ」

 縋るように、みる。

 訴えるように、つげる。

「わたしは…………ひとり、なのに。また、ぜんぶ、なくしちゃったのに……」

 わたしは、涙する。

 わたしは、わたしを……嫌悪する。

「……きらい」

 目のまえに居る彼女が――じゃない。

 きらいなのは、すぐに泣きだす自分。泣いているだけの自分。

 目のまえに居るのは、理想の『なのは』で。みじめに涙するのは、いつも『ナノハ』で――……なんて、そんなふうに勝手に差別化して。悲観して……嫉妬して。

 わたしは、そんな弱い自分がきらいだった。

「わたしは、あなたみたいに…………なり、たかった」

 呪詛をはき出すように、言う。ひがみを隠すことすらせず、つげる。

 涙を流して。シーツを握りしめて。上目使いでなのはを睨んで。

 そして、



「――……なれば、いいんじゃないかな?」



 彼女は、言った。

 こともなげに。

 簡単に。

 高町なのはは微笑んで、言った。

「っ! あなたは――!!」

 だから、たまらず反論しかけ――

「なればいいよ」

 遮られた。

「なりたい自分に、今から。……私に、じゃなく、ね」

 なのはは、身を乗り出そうとしたわたしのあたまに手をやって、

 微笑んで、

 わたしのあたまを撫でて、言った。

「なのはは、どうなりたいの?」

 彼女の問いに……即答は、できなかった。

「さみしいなら、どうする? どうしたい?」

「…………ぇ?」

 戸惑う。

 どうしたいか、なんて……そんなの、考えたことない。

 今から、とか。

 これから、とか。

 そんな未来のことなんて、考えもしなかったから。

「…………でも。わたしには、もう……魔法」

 顔を、うつむける。

 尻すぼみなこえで、返す。

「じゃあ、あきらめるの?」

 対するは、それに反比例するように明るいなのは。戸惑うわたしの思いを知ってか知らずか、どこかお母さんみたいな温かみを宿したこえで問うた。

「魔法が使えないと、なのははひとりなの? それであきらめちゃうの?」

 ……それは。

 それは、

「…………やだ」

 そっと、かぶりをふる。

 あきらめるのなんて……やだ。

 …………もう、あきらめたく、ない。

「……なのはは、どうしたい?」

 だから、再びの問いに、

「わたしは……」

 今度は、顔をあげて、



 ――さあ、ぶつけてやれ。まっすぐ、君の想いを! 君の魔法を、見せつけてやれ!!



 そんな、ねもうの最後のことばを思い出して、


「わたしは……みんなと仲よくなりたい!」



 思いを、つげる。



「おねえちゃんと。おかあさんと! みんなと、もっと仲よくなりたい。もっとおはなししたい!」



 泣くのを――やめた。



 うつむくのを――やめた。



「フェイトちゃんと、お友だちになりたい! はやてちゃんと仲よくなりたい!」



 ――もう、あきらめられない。



「みんなと。みんなといっぱい、いっぱい、おはなししたい。仲よくなりたい!」



 ――だって、わたしには『これから』があるのだから。



 この世界では、まだみんなとの『これから』を願えるのだから!



「だから――」

 そして、扉は――ひらく。

 まるで物語の最初のページをめくるかのように。医務室の扉が、ひらいた。

 果たしてそこには、わたしのことばと思いを聞いて、それでも笑顔を向けてくれるみんなが居て。

 だから、



「――……友だちに、なりたいんだ」



 わたしは、言った。

 笑顔を、咲かせて。



いち。
に。
さん。
し。
えぴろーぐ。
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| | 2010年11月11日(Thu)15:09 [EDIT]


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