嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《なのはさん。》1

いち。
に。
さん。
し。
えぴろーぐ。




 気づけば、ヒカリのなかにいた。

 ヒカリ。白い、ヒカリ。

 まるで、世界の果てのような。

 まるで、世界の中心のような。

 ただ、明るい、白の空間。なにもない、ヒカリの平原。

 ここは、どこだろう? そんなふうに疑問視するには、さいごの記憶が鮮烈にすぎた。

 わたしは――死んだ。

 だから、かな? からだの感覚が無く、ただ想いだけがたゆたうここがどこか、わたしにはなんとなくわかっていた。

 ここは……………………地獄?



『――いや、せめて「天国」と思ってほしかったです、ハイ』



 こえが、した。

 すこし高い、男の子のこえだった。

『……普通さ、こういう光の世界を見たらさ。「ウホw天国www」って思うんでない?』

 こえが、する。こえだけが、きこえる。

 白いヒカリのなかに、すがた無く。こえだけが、響いていた。……………………閻魔さま?

『スルーッスか!? オぅマィがッ!! むしろ「オッス、アィムGOD」? ――そうです、私が神さまです』

 テンションの高い、このこえの正体は、どうやら死神らしかった。

『し、死神て…………まぁ間違ってはいない、のか?』

 ちなみにもちろん、わたしは言葉をこえにだしていない。きこえるこえも、わたしの耳にとどけられたものではなかった。

 それなのに、とどく。響く。きこえる。

 それはここが、まるで精神だけの世界だとでも言うように。まるでここが、想いの言の葉がただよう湖であるかのように。

『…………もしも~し』

 呼ばれれば、わかる。想いは、伝わる。

 それが、ここ。

 だから、やっぱりここは…………地獄?

『あの~。話進まないんで、そろそろワタクシのお話を聞いていただけませんか~?』

 ? どうぞ?

『えと……こほん。えー、改めまして、こんにちは。この度、あなたさまのもとに降臨しました、神さまです』

 あ、これはどうもご丁寧に。

 それから、ご苦労さまです死神さま。

『……ハイ、まずそこが勘違い。ワタシ、死神違いマース。願い叶える、神さまデース』

 ?

『あー……えー、っと。たとえば「ある日、トラックにひかれて死んだ」、でも気づいたら目の前に神さまが居て、「間違えて殺しちゃった、てへ☆ だから代わりに願いを叶えてあげる~♪」って話を――……知らないよなぁ』

 ???

『あ゛ー……つまりですねぇ。俺は、あなたの最後の願いを叶えるためにきたのですよ、ハイ』

 …………。

 ……………………え?

『っていうか――』





 ――すでに叶えた後だったりするのですよ。





「…………ぇ?」

 こえが、きこえた。

 ――わたしのこえが、きこえた。








 魔法少女リリカルなのはSS




 《なのはさん。》





 ◇◆◇◆◇



「……ぁ」

 目を、あけた。

 五感を、認識した。

 世界を、認知した。

「…………」

 視線を流し、現在地を確認。

 白い壁と、白いカーテン。白い、ベッド。白い、シーツ。白い、部屋。

 口元に当てられた、呼吸器。耳朶をうつ、電子音で奏でられる心音。ほのかに香る、薬品臭。左腕に刺さった、点滴の感触。

 横たえられた、ベッドの固さ。身をつつむ、シーツの感触。

 からだのダルさは薬品か、はたまた疲労が原因か。それとも、今のわたしが重傷をおっているためか。

 各所に巻かれた包帯や貼られた湿布。ご丁寧にも首を固定する専用の医療具まで使っていることから、自身の状態はおのずと知れよう。

 そして、それらを認識した上で、あらためて疑問視。

 『ここは、どこ?』――ではなく、『どうして自分が生きている?』と。

 ここが医療施設で、自分は重傷をおっている。生きている。それが、ありえない。

 わたしは、だってあのとき、死ん――



『ハイ、そこが勘違いデース』



 こえが、きこえた。

 耳ではなく、心に。また、男の子のこえが、響いた。

『いや、正確には勘違いじゃないのかな? 死んだのは本当だし』

 ……え?

『あー、そだそだ。あのさ、ちょっと視線を右に向けてくれる?』

 混乱し、呆然としながら。こえにしたがって、見た。

 そしてそこに――ベッドの、わたしの寝かされた枕の傍らに立てかけられていたぬいぐるみを、みつけた。

 それは、デフォルメされた二等身で。ガバッと口をあけていて。ピンクのからだに黄色の顔で。それは、カバを模したぬいぐるみだった。…………たぶん。

『……なぜに見舞い品売り場にカバ(笑)のぬいぐるみがあったのか。どーして淫獣がそのぬいぐるみを迷いなくチョイスしてくれやがったのかについては……まぁあとで本人にでも聞いてもらうとして――』

 こえが、きこえた。

 ぬいぐるみを認識した瞬間から、どういうわけか、そこを起点に。まるでカバの口からこえが響くように、きこえた。

『とりあえず、改めて、改めて自己紹介するお。はじめまして、あなたさまの願いをきき届けました、神さまです』

 カバは――神さまは、そう『改めて』を強調し、空気をふるわせずに言った。

「…………?」

 わからない。なにを言っているのだろう?

 わたしは、どこか微睡むような曖昧な意識のなかで疑問視する。

 言っている意味もだが、この神さまの存在がよくわからない。こえも、こころに直接ひびいてるみたいなのに、ぬいぐるみがしゃべっているみたいだし。……というか、『死神』じゃないの?

『いや、べつに「死」を司ってるわけじゃないし、ノートにとりついて人を殺したりもしないから、「死神」じゃあないかな』

 ……わからない。

 だったらどうして死んだわたしのもとに現れたのだろう。どうして、わたしを生き返らせたのだろう。

 それよりなにより――どうして、今さら?

『いやはや、手厳しいね。……うん。俺も、すこし出遅れたかな~、って思いもしたよ?』

 ……でも、さ。そう区切り、カバはその身の半分はあろうかという開け放しの口で、言った。

『俺……やっぱり、ハッピーエンド至上主義だから。やっぱり、女の子には笑っていてほしいからさ。だから――叶えた』

 …………。

 ……やっぱり、わからない。

 この不可思議な現象のからくりが。このこえの正体が。

 なにより、やっぱり、どうしてわたしが生き返っているのか。

 わからない。

 わからないけど、なんとなく――ありがとう。そう、お礼が言いたくなった。

『……じーん。ちょと感動。うわ、やっぱいいなぁ、女の子に感謝されるのって』

 と、感慨深げなこえで神さま。

『嗚呼……でもやっぱり「神さま」呼ばれるんは柄じゃないな、うん』

 ?

 自分で神さまを名乗っておいて、柄じゃない?

『……いやぁ。これで「あなたが神だw」ってんならアレですが、やっぱりおにゃにょ子に「神さま」って呼ばせるんは、さすがにどうかと――って、あ。そだ。じゃあ「ネモウ」って呼んでくれない?』

 ねもう?

『うん、ネ申www』

 ?

『――って、おっと。話がまた逸れちゃったな。えーと……それで、俺が君の願いを叶えたってとこまでは説明したよね?』

 うん。

 にわかには信じられないけど、生き証人になってしまったからには信じざるをえなり。

 というより、これでクスリのせいで変な電波を受信しているとかが真相だったら笑えない。……けど、そんな電波を受信できる時点で生きてる証拠。それだけでありえざる奇跡の賜物であるのだから、神さまというのも……ありえる、の、かな?

『ま、「電波」ってのは言いえて妙だね。――っと、それより、いちおう今の君の状態とこの世界のことについて説明するよ』

 ――果たして、ねもうは語りだす。

 と、同時に、ガチャリ。まるで物語の最初のページをめくるかのごとく、病室の扉が開かれた。

「…………ぇ?」

 そして、現れたのは――



 ◇◆◇◆◇



 まさか目を覚ましているとは思わなかった。

 扉をあけ、寝ているとばかり思っていた少女の目がこちらに向けられているのに気づいて、驚いた。

「あ――」

 それは隣を行く彼女も同じだったのだろう。見れば、すぐさま駆け出そうとしていて、

「フェイト」

「……ユーノ?」

 だから、呼び止め、その肩に手をあてて微笑。戸惑いをあらわに僕と少女とを交互に見やる彼女を後ろに、僕は一歩まえへ。

「はじめまして……に、なるのかな?」

 ベッドに寝かされた、傷だらけの少女に笑いかけて、問うた。

「僕のこと、わかる?」



 ――彼女と僕は、今日、初めて出逢った。



 そして少女はずっと眠っていて、僕とこうして面と向かって話したことなんてない。本来なら、僕を知っているわけがない。

 見ず知らずの、他人。

 だけど、ベッドで横になった少女は、目だけで頷いて返した。

「あ、あの……! わ、私は……!?」

 そう自身を指差して問う彼女――時空管理局執務官、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンにしても同じ。保護されてからこっち、ずっと意識不明だった少女がフェイトと面識があるはずはない。

 しかし、少女はやはり目だけで肯く。

 彼女が助けられたときのことを覚えているから――ではなく、初対面であるはずの僕らのことを知っているから。

 僕が少女に魔法を与え、フェイトと友だちになったときの記憶をもっているから。

 だから少女は――高町なのはの姿と記憶をもって生み出された少女は、僕らを知っている。

「…………」

 こちらを見つめる、少女の姿を、僕は知っている。

 栗色の髪も、整った容貌も。外見年齢、十歳前後の女の子の姿は、僕らが高町なのはと出逢ったときと瓜二つ。

 プロジェクト『F.A.T.E』――記憶転写型クローン技術。それをもって生み出された、なのはのコピー。それが、彼女だから。

「あ、あのね――」

「フェイト」

 たまらず話しかけようとするフェイトを、とめる。

「……今日は、帰るよ。今度また、話そう」

 そう少女に告げ、なにか言いたそうな目でこちらを見るフェイトを伴い、退室。そしてすぐに、廊下に置かれたソファーに腰を下ろす。

 ……だめだ。限界。僕は肩を落とし、たまらずため息を一つ。頭を抱える。

「僕の……せいだ」

 少女が生まれたのは――そのきっかけは、僕。僕がなのはに魔法を与えたからだ。

 いや、おそらくは数年前の、なのはが重傷をおって入院した際に、か。そのときにでも彼女のDNAやその他『高町なのは』を構成するデータを盗み出したのだろう。と、僕やフェイトたち関係者は思っているし、その線で調査を進めている。

 だけど……どうしても、思ってしまう。

 十年前。ジュエルシード事件になのはを巻き込んだのは僕で、だから僕のせいだ、と。僕が彼女に魔法のちからを与え、だからなのはは大ケガをおった。だから、少女が生まれ……だから、僕のせいだ、と。

「ユーノ……」

 そう呼んで、僕の肩に手を置くフェイト。

 その顔を見上げ、ちからなく笑い、

「……ごめん」

「うん」

 ――僕やフェイトは、知っている。

 高町なのはの輝きを。その瞳に宿る光を、知っている。

 出逢ったときから変わらない、なのはの強さを知っている。知っているから…………落ちこむ。

 出逢ったときのなのはと同じ姿の少女。その瞳を見て、たまらなくなる。

 なまじ同じ姿だから。無意味と知っていて、別人だとわかっていながら……だけど、比べてしまう。

 少女の瞳に、光は無かった。

 輝きも、強さも、感じなかった。

 高町なのはを知っているから、わかる――のではなく。知っていなくても、わかる。

 少女が傷だらけの理由。衰弱している理由。

 生まれた経緯。保護された経緯。

 それらに端的に答える、最低、最悪な、二文字。

 それが――『実験』。

「……あの子は、どうなるの?」

 胸が、痛い。だけど、その痛みを無視して、フェイトに問うた。

「うん。話したら、母さんとなのはのお母さんが、それぞれ保護責任者と後見人になってくれた」

 だから、大丈夫。そう陰りある顔で言い、力無く笑うフェイト。

「それでね。はやてが、あの子が良ければ六課に――春にはやてがつくる部隊に、って」

 え?

「――って、ああ」

 なるほど、彼女の保護のために、か。

「そっか」

「……うん」

 そう応え、僕も力無く笑う。

 ――今はそれしか、僕たちにはできないから。



 ◇◆◇◆◇



 ときは新暦75年、春。ここはミッドミルダ、首都近郊の医療施設。

 わたしのこの身は『高町なのは』のクローン。記憶は、そのときに本物の彼女から転写されたもの――という設定、とねもうは言った。

『この場合、「転生」っていうより「憑依」になるのかな?』

 この身の記憶も、こころも、すでに――無い。

 ねもうによって『わたし』という人格が上書きされたから――ではなく、すでに壊れていたから。

『と、それから、さっき出てった二人のことを説明』

 黒い、時空管理局の執務官服を着た、金の髪と綺麗な瞳の女性。名前を、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン。

 緑の、どこか普段着ともとれるラフな格好をしたメガネの男の人。無限書庫司書長、ユーノ・スクライア。

 二人の過去と現在。わたしが知っているはずの情報を、ねもうは語る。

『それから、主要人物について』

 この身のオリジナル。白き防護服を纏い、栗色の髪を風に流して空を行く、空戦魔導師――高町なのは。

 ジュエルシード事件に際し彼女が知り合った局員。クロノ・ハラオウン。リンディ・ハラオウン。エイミィ・リミエッタ。

 闇の書事件。八神はやて。守護騎士、ヴォルケンリッター。

『で、改めて、今の君について』

 この身は、先ほどの彼女――フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを生み出したものと同じ、特殊な生態クローン生成技術を用いて作られた。

 その研究所は、すべての実験体とデータとともに廃棄。わたしが宿るこの子以外の人造生命は、それにともなって餓死、あるいは薬品の投与が途絶えたためのショック死。研究員は、雲隠れ。

 では、どうやってこの身だけが生き伸びられたのかと言えば、簡単。同朋を殺し、その身を喰らい、たまたま生きている状態だったこの子に、ねもうがわたしを宿し、生き延びさせたから。

『……まあ、この辺は知らなくてもいい情報かな?』

 これも睡眠学習と言うのか。

 そう告げるこえは、すがた無く。ここはまた、白きヒカリの世界。わたしの、夢のなか。

『……なんか、無口だね』

 …………。

 ……そう、かな?

『いや、だって……俺ばっかしゃべってたじゃん』

 …………ああ。そう、だね。

 たぶん、ずっと……他人と話さなかったから、じゃないかな?

 だからきっと、わたしの言の葉は枯れちゃったんだ。きっと、この身と同じで、こころも……。

『ま、栄養不足なら栄養を。運動が必要なら運動を、ってね。けっきょくは、慣れればいいんじゃない?』

 …………そう、かな?

『あ! 俺、今、某「魔物を狩る者」さんに「ぽんぽこたぬきさん」って言わせたU1の気持ちがわかった。えっと……どっちがどっちだったかはわすれたけど、肯定のときに「はちみつくまさん」って言ってみて?』

 ? はちみつくまさん?

『うはw さすが、同じ田村ゆかり声。ギザモエスwww』

 ???

 ときおり、ねもうの言葉がよくわからない。流行語か異国の言葉、なのかな?

『ニホン語? いいえ、二チャン語です』

 ?

『……こほん。さて、続きまして、今後について。とりあえず、これからどうするかを話しあいましょ』

 …………。

 ……はちみつくまさん。

『……………………ハッ!! つ、つい、あまりの破壊力に意識ぐぁッ! お、恐るべし、ゆかりヴォイス……!!』

 ???

『ハッ! こ、ここは、「おにいちゃん」と呼んでもらうべきだったか……!?』

 ? えと……ねもうおにいちゃん、って呼べばいいの?

『フォ――――\(`∀´)/――――ッ!! みwwwなwwwぎwwwって、きたぁぁぁあああああッ!!』

 …………。

 ……話、すすめないの?

『ハッ!! つ、つい……!』

 ……わたしは、たぶん生身だったらため息を吐いていた。

 ……………………ああ。

 わたしは今、呆れていた。……感情なんて言の葉と同じで、枯れ落ちたと思っていたのに。

 だから…………なんとなく、ねもうの言う『慣れたら』っていうのがわかってきた気がする。

 …………わたしも、治る……の、かな?

『も、もう一回だけ、「おにいちゃん」って呼んでくらさいッ! ハァハァ』

 …………………………………………はぁ。





いち。
に。
さん。
し。
えぴろーぐ。
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