嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《りりかるーぷ》2-1

《りりかるーぷ》2-1



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 時刻は、やはり午前零時ちょうどだろう。

 暗い病室の暗い天井を見上げ、思う。ああ、やっぱり……俺は、また、この日――この時に、転生したんだな。

 覚えている。消灯時間などとうにすぎた、この静まり返った闇を。薬品臭を。ベッドの感触を。

 ――川平雅樹は、十日ほどまえに事故で入院した。

 それに伴って、それまでの――九歳の誕生日までの記憶を失った。母を、失った。

 だけど、『今』の俺は知っている。これからのことを、知っている。

 俺は、まず目覚めたことを担当医に驚かれ、次いで俺のことを父親に連絡するという話になる。

 しかし、外資系の、それなりに大きな会社を営む父には連絡がつかない。代わりに秘書の人を介して病院側にすべて任せるというような旨が伝えられる。

 そして半年ほどのリハビリを経て、『最初』ならば専用の――知能が足りない、いわゆる障害者の子どもが通う学校へ。で、『前回』は、その『最初』の記憶と知識を活かして私立聖祥大付属小学校へとそれぞれ学業への道を選択した。……それは、いい。

 それは――そんなことは、どうでもいい。

 俺は……覚えてる。

 彼女との出逢いを。彼女の声を。仕草を。

 俺は、覚えてる。

 彼女との日々を。彼女への想いを。すべてを。

 俺は、だから――



「…………ふ、ざ、っけんじゃ、ねぇぇぇえええッ!!」



 叫ぶ。

 慟哭する。

「ふざ、けんな……!!」

 暗い病室で。静かな闇のなかで。

「ふざけんなッ!!」

 体を、無理やり起こし――……目眩がした。気だるい。それだけで『今』の俺は肩で息をする。

 当然だ。『今』の俺は意識不明の重態から目覚めたばかり。体力などあるはずがない。

 だけど――だからどうした!!

 俺は激情の赴くままに呼吸器を外し、手首に刺さっていた点滴の針を抜く。心電図に繋がれていた電極のたぐいを、むしる。

「ふ、ざ……はぁ、……ける……はぁ、なッ…………!!」

 目の前が明滅する。体が鉛のように重い。

 それでも――止まれない。

 激情を、抑えられない。

「……あり、さ」

 世界が歪む。音が、遠ざかる。

「あり、さぁ……!」

 それでも、呼ばずにはいられない。黙ってなどいられない!

 拳を握り、ベッドを這い。無様に顔を歪め、涙と想いを吐き出さずにはいられない。

「ぅ、ぅぁぁァァァァァアアアアアッ!!」



 ――それが俺の、三度目の産声だった。







魔法少女リリカルなのはSS



《りりかるーぷ》



 二章 すずか編







 ◇◆◇◆◇



 気付けば、俺はまた、あの日に――俺の九歳の誕生日に転生していた。

 ……うん。これはアレだね? アリサの、究極の焦らしプレイだね♪ …………ちくせう。

 そして、

「…………は?」

 『前』と同じようにリハビリを終え――だけど、『前』よりも少しだけ早く聖祥に転入して、すぐの、今日。俺は早速、幼き日のアリサに話しかけていた。

「い、いや。だから……。こ、今度のテストで……」

 ――俺は、覚えている。

 アリサとの出逢い方や彼女と過ごした日々のすべてを。

 だから……本当なら、『前』と同じように出逢い、触れ合い、愛しあえれば良かったのかも知れない。そうすれば、少なくとも『前』と同じように俺は彼女と過ごせたのかも知れない。

「あ、あの……えっと」

 だけど――だからこそ。

 俺は、だからこそ、変えたかった。

「今度の、テストで……勝負、しない、か?」

 しどろもどろ。視線も右往左往。冷や汗をかきかき、彼女の机の前で縮こまりながら何とか言葉を紡ぐ。

 賭をしないか? ……なんて言えない『今』の俺はヘタれさ、ちくせう。

「……なんで?」

 うぐ……。彼女の、仕方ないとは言え、覚めきった、他人を見る目に胸を掻き毟られる思いになりながら、それでも「な、仲良くなりたいから」と苦労して言った。

 それに、

「えっと……ちょっといいかな?」

 言葉を返したのは彼女の取り巻きの一人、高町なのは。

 そのまっすぐな視線を前にたまらず目線を外し、思う。……いや、相変わらずのお節介というか、なんと言うか。やっぱり変わんないなぁ、この子。

「な、なに……?」

 …………って、当たり前か。俺以外は『前』と同じなんだよな、うん。

「えと、川平雅樹くん、だよね? 『雅樹くん』て呼んでもいい?」

 言って、ニッコリ。怪訝顔でこっち睨んでるアリサや、どうして良いのかわかんないみたいな顔してる月村とは違い、高町はどこまでもフレンドリーだった。

「い、いいけど……?」

 そんな彼女にボソボソと返し、そしてチラチラとアリサを窺う。って、うわ……。な、なんか滅茶苦茶睨んでる気が……?

「じゃあ雅樹くん。雅樹くんは頭良いの?」

 ……高町って空気読めないのかな? それとも空気を読んだからこそ、にこやかなのかな?

 俺は、何か普通に俺なんかに接してくれる高町に「い、一応……高卒レベルの学力は、ある」と、割と何も考えずに答えて――

「「え?」」

「は?」

 ……うわ、まずった。

 果たして俺の言葉に目を丸くする三人。それを見て視線を下へと向けて思う。ま、まずいなぁ。俺ってば、なにを正直に――って、これじゃあ、アリサ……俺と勝負なんてしてくれないじゃん。せ、せっかくの強みが――って言うか、まじめに高卒レベルって……勝てっこないじゃん。普通に考えて……バカだなぁ、俺。とほほ……。

「ご、ごめん……」

 とりあえず謝る。……あ~あ、失敗したなぁ。今回も『前』と同じようにすればよかった……。あ~あ、焦ったのが失敗だった「面白いじゃない」――って、はい?

 俺は半ば呆然と顔を上げ、何故か勝ち気な笑みを浮かべていたアリサに目を白黒させた。

「ふふん! いいわよ、その勝負――受けてやろうじゃないの!」

 ……あれ? な、なんで?



 ◇◆◇◆◇



 三年の春休み。……どういうワケかあの日、アリサが俺の申し出を受け、テストで勝負してくれてから二ヶ月と少しがたった。

 そしてこれまた、やっぱりどういうワケだか仲良くなれた三人と、それに加えて知り合ったテスタロッサと八神の、計五人と今、休みの日に何時かのように喫茶店で期末試験の反省会――という名のダベりパーティーをしていた。……なんで?

 ちなみに件のテストは、俺とアリサは満点でドローだった。……て言うか、よくよく考えればこの結果はやる前から知ってたじゃん? 『前』と同じじゃん? ……つくづくお預けプレイに気が焦ってたんだなぁって痛感したよ、うん。

 そして、

「前々から思ってたんだけどさ。あんたの前髪ってウザいのよね」

 ……いきなり何を言うのかね、この子は。

 俺は突然のアリサの暴言に顔を背けてため息だ。ちなみに席は、並ぶ二つの四人がけのテーブルに、端の俺から順に隣が高町、隣のテーブルにテスタロッサ。その向かいにアリサで、その隣に月村。八神は隣の席の、テスタロッサの向かいに座ってる。

 だから「ちょっと動かないでね」と言ってアリサが手を伸ばせば、真向かいに座る俺には簡単に手が届くワケで……適当に前髪を掻き上げられれば、彼女と目が合ってしまうワケだ。うん。『前』のアリサに色々と鍛えて貰ったから、少しは他人と目を合わせられるようになったし、女の子に触られることにも多少だが慣れはしたけど……うん。それでもやっぱり、思いっきり体を遠ざけちゃうのは俺が神なるヘタれだからさ。…………ちくせう。

「わっ、ちょっと! 動くなって言ってんでしょ!?」

 ……そして彼女に命令されればそれを実行してしまうのも『前』と一緒なのさ。

 果たしてアリサの手で前髪を上げられ、それを隣の月村から借りたヘアバンドで止められる俺。……ああ、俺のカーテンが。っていうか、みんなして見ないでくれ。い、居心地が悪い……。

「あ、アリサちゃん……」

 ん? ――って、ああ。

 隣で、俺の額の怪我を見て顔色を変える月村を横目に、今更ながらに前髪を伸ばしていた表向きの理由を思い出した。そうそう、コレを隠すために伸ばしたいって担任には言ってたんだよな。うん。

 そして、

「うーん……なんだぁ、やっぱりあんたって、そんなにカッコイいわけじゃないのね」

 言うに事欠いてそれか、アリサ! …………ちくせう。

「あはは。さすがに、ドラマとかみたいに『隠してたけど、じつは美系!?』とは行かへんなぁ」

 そして追い討ちか、八神。

「ふ、二人ともひどいよ~」

「そ、そうだよ。マサキ、そんなに言うほどカッコ悪くないと思うよ?」

 高町、テスタロッサ……出来れば、スルーって形でその優しさを発揮してほしかった。て言うかコッチ見んな。

「き、キミらがレベル高いだけだろ……」

 とりあえず負け惜しみを口にしつつアリサの手をどけ「待った」――……まだ羞恥プレイを続けさせる気か、アリサ。

 俺はそして彼女の手で前髪とヘアバンドを整えられる間、一人、いつまでもこちらを心配するように見ていた月村に向け、改めて口を開いた。

「悪い、月村……。俺みたいなのに……。あ、後で洗って返す――で、良いか?」

「え? ぁ……。う、ううん。それは――」

「できた♪」

 ん? 果たして自信満々の笑みを浮かべて言ったアリサと、それに合わせて彼女が取り出した手鏡とを見て月村から注意を逸らす俺。って、おお……。そこに映った、上手いこと額の傷を隠しつつ前髪を整えている俺を見て思わず感嘆の息を吐いた。

「……上手いな」

「『カッコイいな』、じゃないのが残念よね」

 ……アリサ。まだそのネタを引っ張るのか。

「…………」

 ――果たして俺は、その翌日、月村にヘアバンドを一つ貰い、そしてこれからはそれを着けて学園生活を送るようアリサに強要された。

 …………俺の前髪、そんなにウザかったのかなぁ?





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