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嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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外伝 りりかるーぷ×ふぇんりる

※ この作品はこちらに掲載されていますSS、『りりかるーぷ』と『魔法少女リリカルなのは~Fenrir~』のクロスオーバーです。
 なので作中、それらを知らない方には意味のわからない事柄や両作品のネタバレ等が書かれているかと思いますが、予めご了承下さい。




《外伝 りりかるーぷ×ふぇんりる》







 もう何度目ともしれない、十歳のクリスマスの日。俺ははやての計らいにより八神家に向かっていた。
 ……けっきょくは寂しいのだろう。幾百年という月日を『繰り返し』のなかで過ごし、そしてまた彼女たちに関わろうとするのは、たぶんそういうことだ。
 はじめまして。……そ言いあって、また無駄な時間を過ごし、繰り返す。ループからの脱却をなにより望んでいながら、その閉じられた輪のなかですら人恋しくてしかたない。……まったく、仕方のないやつだよ、俺は。
「しかし……クリスマス、か」
 事前に渡されていた鍵で玄関を開け、「お邪魔しま~す」と言って八神家へとあがりながら思った。俺としちゃ、やっぱクリスマスって口実をもとに少しでも彼女たちと関われるってのが嬉しいねぇ。
 今回は、彼女たちが四年生にあがるまで海鳴には居なかった。それでも、もともと付き合いの長さで仲良しになるってタイプじゃない彼女たちのこと。今回も無事、俺は仲良しグループに入ることができた。
 ……ま、そのきっかけがアリサとのテスト対決だったってのはご愛嬌。つか、好きだなぁ、この手。中身、百歳超えてるミッドでも最高位の学者なんに、こういうとこ頭が悪い。
 俺はため息を一つ。誰もいないリビングへとさっさと向かい、そこのテーブルの上に置かれていた紙を手にとる。
 宛先は川平雅樹。つまり、俺だ。
 で、差し出し人は八神はやて。内容は――
「……あ゛ぁ?」
 俺は顔をしかめ、書き置きを投げ出した。……あのチビ狸。呼び出しといて、いきなりなにを頼んでやがる。そう胸中で毒づきながら二階へ。
 勝手知ったるなんとやら。もう何度目なのか、覚えているが数えるのが面倒なほどに来た八神家のシグナムの部屋。その扉をノックもせず乱暴に開け、中に入る。
 時刻は朝の八時前。晴れわたる青空のせいか良い感じに爽やかな光と温かみで満たされたそこに、そいつは居た。
「…………」
 白銀の、髪。それと同色の、犬だか狼だかの獣耳。顔立ちは幼く、外見年齢だけなら五、六歳ぐらいに見える。
 一言で評するならば、美幼女。それもとびきり愛らしい、だ。変な性癖もってる奴なら見ただけでご飯三倍はイケるってやつ。
 そいつは一人、ベッドで丸くなって寝ていた。そしてはやての書き置きには『今日一日、ポチの世話おねがいな』とあった。
「……そう言えば、はじめて会うんだったか?」
 俺は人知れずつぶやき、目の前で眠る愛くるしい八神家のマスコットへと近づいた。






外伝 りりかるーぷ×ふぇんりる




 とりあえず起こそう。
 そう思い、俺はポチの眠るベッドへと近づき、「ほら、朝だぞー」と言ってかぶってる布団をはがす。
 ……って、うわ。
 果たして、ベッドで丸くなってるポチを目にして固まる俺。目の前ですやすやと眠るポチの格好は、サイズの大きいトレーナーにパンツ――それも尻尾を出すためだろう、半分お尻の覗いてる水色と白のストライプ柄の――だけだった。
 ……つか、これは反則じゃね? 俺に布団をはがされ、寒いのだろう、眉根をよせてモゾモゾしているワン子を見て、思う。なんて言うか、どーしてはやてやなのは達がこいつを愛でてんのかわかったような気がする。
「あ゛あ……うん。これは…………すっげ、萌えるわ」
 俺はつぶやき、そっと布団をかけ直した。
「……♪」
 モゾモゾ、モゾモゾ。そうして布団のなかにもぐり、わずかに口元を綻ばせるポチ。それを見て、俺のあたまに幾つかの選択肢がうまれる。
 a、……やっちゃう?
 b、ヤっちゃう?
 c、ヤっちゃおう♪
「うむ」
 わざと厳かに頷き、俺もベッドへと潜り込んだ。
 今はまだ朝で、季節は冬。そんなときの布団というのは何とも言えない魔力をもっており、ポチの小さい子特有の温かみとあいまってか天国のようだった。
 なにより、目の前では安らかな音色を立てるとびきりかわいい子がいて、誰と間違えてるのか傍らへと潜り込むや抱きついて頬摺りしてくる始末。……これは、あれだね。ふつう、我慢できないよね、うん。
「おまえが可愛過ぎるのがいけないんだぞ?」
 小さな声でそう冗談めかして言い、俺は抱き枕よろしくひっついてきたポチへと顔を近づけ――

 耳を、舐めてみた。

「っ……」
 ぺろん。……ぴくっ。ぺろん。ぴく、ぴくっ。……はむ。ぴくーっ!? 思った通り、どうやら耳は敏感らしい。
 俺はいちいち震えて反応するワン子にニンマリ笑い、その小さなからだを抱き寄せる。うわ、マジで温か柔らかいな。そうしばしそのぬくもりを堪能し、それからポチの背中へと回していた手をおもむろに下へ。耳と同様いちいちピクピクしてる尻尾を撫でてみた。
 ぴくっ。ぴくぴくぴくっ。お、これはまた、すっげー良い手触り……。
「……っ。っっ……」
 て、おや? 気付けば、ポチの顔が僅かに紅潮したなんとも切なそうなものになっていた。あ、もしかして…………性感帯、とか?
「…………にやり」
 果たして俺は、転生者としての持てるスキルのすべてを用いて――

 ◇◆◇◆◇

 びりびりしてゾクゾクしてフワフワしてた。……何を言っているのかわからないだろうけど、俺もよくわからかった。
 ただ、それは痒いような、くすぐったいような、気持ちいいような、痛いような……やっぱりよくわからない感覚で、目覚めてすぐのせいなのか、俺の頭はかすみがかったみたいに現状を正しく把握できないでいた。
 そして――
「…………」
 しくしく。しくしくしくしく……(泣)
 場所は変わってお風呂場。俺は膝を抱え、真っ裸でさめざめと泣いていた。
「あ゛~……ほら、いい加減泣きやめって」
 そうシャワー片手に言うのは、今日初めてあった少年――川平雅樹。
 まだ朝も早い時間にわざわざ俺のために浴室を温め、こうしていつまでもウジウジ泣いてる俺をなぐさめようとしている彼は――……何を隠そう、目覚めてすぐの俺がわざわざシャワーなんぞ浴びなきゃならなくなった元凶。……いや、もう、マジ最悪です、この子(涙)
「気にすんなって。おまえぐらいちっちゃい頃なら誰だってするって――おねしょ」
 ……う、うるしゃいうるしゃいうるしゃい!
 つか、有り得ないって。起きたら見知らぬ少年に耳を舐めまわされ、尻尾を撫でまわされって、どんな状況だよ!? なんか、おかげで我慢できなかったよ? ぶるぶるって、それで気づいたら漏らしちゃってて……うわぁん!!(滝涙)
「あ゛~……俺が悪かったって。ほら、謝るから。だから、泣きやめって。な?」
 泣~き~や~め~る~か~……(泣)
 俺は雅樹の当ててくれる温水のもと、声がでたらさぞかし大音響だったろうマジ泣きモードで首を左右に振った。だ、だって俺……こんなでも、中身大人だぞ!? それがおねしょって……。しかもそれを年下の男の子に見られて……後始末まで……orz
「……参ったな」
 果たして、それからしばらくあまりの恥辱に泣き続けていると、雅樹。俺を浴室からあげ、えぐえぐ泣くだけの俺の頭をバスタオルでふきながら言った。
「あ゛ー……こんな時にアレだが、一応、さっきの自己紹介の続きを」
 雅樹はそこでいったん俺のまえに回り、膝を折って目線を合わせ、
「俺の名前は川平雅樹。さっきも言ったが、お前のご主人様のクラスメートだ」
 ぐしぐし、ぐしぐし。雅樹は俺の髪やからだをふきながら、言う。
「で、なんでココに居るのかって言うと、それははやてに呼ばれたから、なんだが……」
 と、そこでどこか歯切れの悪い言い方になる雅樹。それを見て、なるほど、と俺はだいたいの事情を察した。おおかた、はやては居なくて、彼女に俺の世話を頼まれたってところか。
 ふと思い出すのは昨晩の会話。翌日がクリスマスイヴであるということもあり『何かするの?』と聞いたときのはやての言葉は、「ごめんな、ポチ。明日はちょっと、わたしら、家には居られんと思うんよ」だった。
 ……まあ十中八九、クリスマスパーティーの準備だろう。聞けば、シグナムたちヴォルケンリッターはおろかリィンフォースまで出かけるってんだから、確定だろう。
 で、あとで俺にサプライズでもしてくれんのかな? ――そんな風にウキウキワクワクしながら眠ったのももはや遠い日の記憶。彼女らの留守を快く了承し、代わりにクラスメートの子が俺に会いにくるってのを密かに楽しみにしてた時期も確かにありましたよ、っと……。
 でも、それでどうして、朝からいじられまくった挙げ句、お漏らしシーンをさらさなきゃならないのか……オジサン、その辺が知りたいなぁ(遠い目)
「あ゛~……まぁ、その、なんだ」
 俺が少年に手伝ってもらいつつ下着や服を着ながらジト目を向けていると、雅樹はたまらず視線を逸らして言葉を濁した。
「その、な。つい……お前が、あまりにもかわいかったからな」
 ……へえ。君は相手がかわいかったら『つい』で耳をベロベロして尻尾を撫でまわすんだぁ?
「いや、うん。なんだ……その、『お巡りさ~ん、ここに変質者がいますよ~?』みたいな目をやめてくれると、ありがたいんだが」
 …………意外と目だけで言葉って通じるんだね。
 果たして、俺が頬を膨らませ、いまだ涙目の不機嫌顔でいると、「ああ、わかったわかった」と言って雅樹は両手をあげた。
「ごめん。俺が悪かった。謝る。だから、な? いい加減許してくれよ」
 この通り。そう言って土下座する雅樹。
 それをチラリと見て、俺はため息を一つ。彼の、床に付かんばかりに下げられた頭を上げさせ、苦笑してみせた。
 ……ゆるしてあげるよ。だから顔あげて? そう笑みに思いを乗せ、少年を見る。ていうか、いつまでも十歳児に土下座なんてさせてちゃ大人の面子まる潰れじゃんか。…………もはやそんなもの欠片も残って無いような気もするけど(涙)
「あ? ゆるしてくれんのか?」
 こくり。俺は彼の問いに今度はにっこり笑って頷いてあげた。
 うん。よく考えたら、今日一日はこの子に面倒みてもらわなきゃなんだし、いつまでもギスギスなんてしてらんないよね。俺はそう思い、雅樹の着せてくれた服を指して『ありがとう』と口を動かして伝えた。
「……ポチ」
「♪」
 えへへ。それに今日ってクリスマスイヴだし。これからパーティーかもじゃん? だったら楽しく行こうよ♪
 俺は場の空気を和らげようと、手の止まってた雅樹を急かして服を着ながら、微妙に彼に甘えてみた。せっかくのイヴだし、やっぱり仲良く、楽しくいかなきゃ、ね♪
 そして、そんな俺に雅樹は――

 ◇◆◇◆◇

 どうしてはやてや他の連中全員がコイツの味方なのか。……それがわかった気がした。
「♪」
 場所はリビング。はやてが用意し、俺が温めた朝食を食べ終えたあと。俺はポチと二人、並ぶようにソファーに座って対戦ゲームをしていた。
 って、強ッ!? 指先が不自由だということと俺が完全記憶能力と学者として馴らした頭脳とを持っているからという理由で選んだパズルゲームだが……如何せん。相手にならない。
 ゲームは、四色あるピースの内、同色のものを縦か横にくっつけて消すタイプの落ちゲー。もちろん連鎖消しによる相手へのペナルティもあるし、しっかり素早く操作しないと勝てないタイプのものを選んだ。……うん。俺、負けず嫌いだからさ。
 で、その結果だが……はっきり言おう。勝てる気がしねー。
 画面上や戦績は五分五分だ。あるいは、他の奴からは『お、良い勝負w』ってな風に映るかもだが……それは間違いだ。つか、そう他人や対戦相手に思わせるだけの実力差がポチと俺にはあった。
 ……つか、あり得ねーって。どうやったら相手の積み方から消し方、果ては攻撃のタイミングや威力……どころか、次に来るピースまで予測演算してプレイできる? どこの廃スペックのスパコンだよ、このチビは。
 俺は、試しに格闘ゲームに変えてみた。……いや、大概負けず嫌いだなぁ俺も。
 しかし結果は、やはり良い勝負。って、お前ホントに指先不自由なのか!? つか俺、これでも身体能力向上のあれやこれをしてんだけど……。
「……つうか、なんのつもりだよ」
 あまりにも実力差がある――それを隠し、偽れるだけの技量の差を目の当たりにして、俺はつい、大人げなくも隣のポチを睨んでしまった。
「? ……??」
 対し、困惑と怯えに表情を変えるチビ。先ほど俺が着せたダボダボのセーターと短パン、青白ストライプのニーソックスにスリッパという格好で体をビクつかせ、尻尾と耳を垂らして俺をみた。
「……お前さ。なんで手加減してんの?」
 対し、低い声と無表情で、問う。
 チラリと、今は止まってる画面に映るは『YOU WIN』という俺の勝利を告げる――相手にわざわざ良い勝負を演じさせ、勝たせてもらったことを告げる、文字。
「なに? 手加減でもしなきゃつまらないって?」
「……っ!」
 俺の言葉と怒気にいっそう怯え、慌てて首を左右に振るポチ。それを「ああ、そうだな」と無視し、わざと『ガン!』て感じに音を立てるようにしてコントローラーをテーブルに置き、改めてチビへと向き直って、
「確かにな。確かに、てめーと俺とじゃそんだけの実力差があった」
 それは認めるさ。
「……でもな。手加減されて、勝たせてもらっても……ちっとも嬉しかねーんだよ!」
 言って、ギロリ。顔を青ざめさせてるチビを睨み、その手からこぼれ落ちたコントローラーを無理やりに持たせる。
「っ! ……っっ」
 何か口をパクパクやって弁解だか言い訳だかしてるポチ。
 それをまたギロリと睨み、俺は乱暴に自分のコントローラーを握って「次、手加減しやがったら……」と、低く、威圧感丸出しで告げ、ゲームを再開。
「……………………」
 果たして、最初こそ俺に怯え、本来の実力を出せなかったポチだが、次第に『本気でやらなきゃまた俺に怒られる』って思ったのだろう、俺の知る限りで最高のプレイングをみせて圧勝。
 それから、まるで親に叱られる幼児のように体を縮こまらせ、少しでも俺から離れようとしてか微妙に体を斜めにし、ビクビクと上目使いを寄越してきた。
 なので、俺は――ジロリ。無言、無表情でポチを一瞥。
 それだけで震えあがり、歯をガチガチ鳴らして涙目になってるチビに、言った。
「……強いな、やっぱ」
 言って、にやり。
 場の雰囲気を一転させるように笑い、困惑しているポチへ向け、改めて口を開いた。
「強ー、強ー! さっすが八神家最強の守護獣だ! ははは!」
 テンション高く。目をしばたき、体を固くしているポチの頭を乱暴に撫で回して言う。
「なるほどな! こりゃ、闇の書の闇も太刀打ちできんわな! すげー、すげー! ホント、すげーよお前!」
 ――どうして、皆がポチを信頼するのか。
「っ? ……!?」
 ――どうして、こんな無力なるバグデータが闇の書を救えたのか。
「ははは! いや、参った参った!」
 ――そんなのは、簡単だった。
 それはチカラでも、
 それは幸運でも無い。
 知識や経験ですら無い。
 そして、奇跡ですら、無い。
「……胸をはれ、八神ポチ」
 俺は優しく笑い、いまだに目を白黒させてる小さき賢者に告げる。
「お前は、強い。そしてそれ以上に…………優しい」
 ――ポチが、救ったのではない。
 ポチが、皆を動かしたのだ。その優しさと献身で。
 だから、救えた。皆が諦めていた、最凶最悪の呪われし魔導書を、たった一度の邂逅で。
「?」
 ……このチビは知らないのだろう。
 己がした偉業を。その難易度を。
 俺がそれを何度というループと何十年という月日を用いて行ったのかを。
 そしてだからこそ、貴ぶべきだ。
 ただ優しく、誰よりも弱く、
 それでいて諦めず、皆に助けを求めたこの守護獣を、
 だからこそ、皆は愛してやまないのだろう。
「ったく、可愛いやつだなぁ、お前は!」
 俺は笑い、
「? ッ??」
 ポチの頭を撫でながら、思った。

 ――願わくば、もう少し早く……そして何度も、キミに出逢いたかった、と。

 ◇◆◇◆◇

 川平雅樹は、強い。
 俺がわざと手を抜いていたことを怒り、それからは本気でやることを強制してから、知った。彼は基本的に『止まらない』のだと。
 例えば、ゴールが百メートル先だったとして。俺はそこにたどり着くのにあらゆる最短を思考し思索し、すべての解が出揃ってから歩き始める。
 しかし彼は、違う。
 まず、試す。
 それを踏まえて、また試す。
 最短を探し、歩き始めるまで時間のかかる俺とは違い、彼は歩き始めてから考えているようだった。
「ちっ! こなクソ!」
 隣で、俺と同じようにゲームに熱中する彼は、だから――強い。
 すぐさま俺の技を、術を盗む。
 それを試す。また盗む。試す。
 記憶力が半端じゃない。そしてそれを活かす最短の術を知らず――知らないから試し、覚え、また試して、最終的には最短を行く者より先を行く。
 それはまるでウサギのカメの競争のように。どうしたって失速してしまうウサギを、鈍重にして堅実なる一歩があたかも最速だと語るように。
 俺が走り始める前に地図を睨み、コースを練りに練って発進するのに対し、彼は躊躇わずに発進し、失敗を繰り返しながらも最終的にはゴールに居る、というような。
「くらえ! この一撃を!!」
「ッ!」
 ゆえに、強い。
 ゆえに、いつかは俺じゃあ勝てない高みに居るだろう。
 ゆえに――愉しい!
「♪」
 俺は、笑う。終始ニコニコし、一心不乱に尻尾を振って技を繰り出す。
 川平雅樹は、強い。
 それは打てば打つほど堅く、強くなる刀のように。相手の技量によってどこまでも自分を高められるような――それが彼の強さだった。
「うぉ!? そ、そんな技が……!!」
「♪」
 だから、愉しい!
 だからこそ、俺は本気の本気で戦える!
「いや、おまっ!? それはハメ技だろ!?」
「♪」
 ……お願いだから、途中で止めないで欲しい。
 お願いだから、俺を一人にしないで欲しい。
 お願いだから。
 ずっと、ずっと、この楽しいときを一緒にいて。
 ずっと、ずっと、俺は誰かとこうして遊びたかったんだから。
 お願いだから。
「っ♪ ………♪」
 ゲームは楽しむもの。
 ゲームは、誰かと笑いあうもの。
 だから、俺は本気で楽しんでた。
 本気の本気で楽しもうとして――……いつしか、逆に本気を出せなくなっていた。
 それでも、相手に併せれば遊んでくれたから。ちゃんと相手を楽しませられたら、こんな俺でも相手にしてくれたから。
 ……こんな俺でも、父さんが相手してくれたから。
 だから、俺の本気ってのは、如何に相手を楽しませられるかで。
 だけど、だからこそ。こうして勝つためだけに全力でやって、圧勝して、それでもまた一緒に遊んでくれる彼が。だんだんと強くなってくれる彼が! どんどん俺を昇華させてくれる彼が!
 だから、俺は――!!
「……っ♪」
 いつからか、泣いていた。
 泣きながら笑って。笑いながら、涙を流し続けて。
「ッシャァァァア!! 俺の勝ちじゃぁぁぁああ!!」
 俺はそうして、隣で勝ち鬨をあげる少年を眺めた。
 泣いて。
 笑って。
 もう彼には勝てないとわかっていて、それでも俺はコントローラーを離さなかった。
 ……いつまでも、離さなかった。

 ◇◆◇◆◇

 結局、ポチに誘われるがまま、八神家にあったゲームを一通りやるはめになった。
 ……つか、いきなり隣で泣いてたんにはビックリした。でも、ゲームやめようとしたらもっと泣くし、コントローラー離さないし…………ホントに好きなんだなぁ。
 時刻はそろそろ夕暮れ。遊び疲れたのだろう、ソファーの上、俺の膝に頭を乗せて寝息をたてているチビを見る。
 いや、しかし……こいつ、ホントゲーム上手いな。
 改めて、思う。俺はこれでも遺失物研究、生態工学系の権威で、それなりに頭が良いつもりだったんだが……ポチは別格だった。…………まあ、結局、全部俺が勝てるまでやったんだけどな。うん、もう負けねー。
 と、それはともかく――そろそろクリスマスパーティーの飾り付けや準備なんかが一段落したころだろう。
 俺は首に下げてたロザリオ――の形の待機状態の端末をチラリ、時間を確認。それからはやてに宛て、おもむろに通信を繋げる。
『はい、もしもし?』
 確か会場は、すずかの家だったか。ややあって通信に出たはやては、一人、広い廊下に出ているようだった。
「よ! ……と、悪いんだけど小声で頼むな」
 言って、視線で膝元で丸くなってるワン子を示す。
『え? ……あ。なんや、ポチ、寝ちゃったんかぁ』
 それにはやても小声で、そしてポチを見てだろう、俺の視線を追って優しく微笑んで言った。
『……ごめんなぁ。ポチの世話。どうやった?』
 その、少女が浮かべるには慈愛に満ちた微笑を眺めながら「ああ、けっこう楽しかっぜ」と、俺もつられて優しい気持ちになって返した。
「……ま、ずっとゲームしてただけなんだが」
『えー! あかんよ、ゲームは一日一時間て約束なんやから~』
 ……こいつは、ポチの母ちゃんか。
 つか、ホント、ガキのくせに所帯じみてるっていうか、小学生のくせに老けて『……なんや、失礼なこと考えてへん?』――俺は視線を逸らした。
「あ゛ー……。まあ、細けーこたぁ気にすんなって」
『えー……』
 ――と、そうだ。話が脱線しちまった。
 俺は視線をはやてへと戻し、
「なぁ、はやて? いきなりで悪いんだけど――」
 間に、ため息を一つ挟んで、
 わずかに自嘲の笑みを刻んで、
 そして、ゆっくり、告げる。
「俺…………もう、お前たちに関わるの、辞めるわ」
 果たして俺の言葉に『え?』と目を丸くしてるはやてに、告げる。
「つか、すぐにでもこっから出て行きたいんで……悪いんだけど帰ってこれねー?」
 視線を、下へ。安らかな寝息をたてるポチに瞳を細め、そのサラサラときめ細かな銀の髪を撫でる。
『そ、そんな急に……! ――あ。ま、まさか、ポ、ポチがなんかしたん……?』
 そんな俺を見て何を勘違いしたのか。はやては俺とポチとを交互に見やり、恐る恐る問うた。
「……いや、むしろキミのせいだな」
 それに、苦笑。そしてその言葉にまたも目を丸くしたはやてに、
『ぇ、あ。わ、わたし……!? そ、それは、ごめんなさ――』
「ちげーよ」
 遮り、苦笑を濃くして、
「……いい子だよな、こいつ」
 ソファーで丸くなってるポチの頭を優しく撫でながら、告げる。
「ずっと、ゲームしてたんだけどな。それでわかったんだよ」

 ――ああ、こいつと一緒に居たら駄目になるって。

『……え?』
「あ、勘違いすんなよ? 俺の言う駄目んなるってのは、つまり『ポチを好きんなる』って意味だからな」
 その言葉に『?』と首を傾げるはやて。そして俺に習ってすやすや寝てるポチをみて、
『……好きんなったら、あかんの?』
 問うた。
「…………ああ、駄目だな」
 即答は、出来なかった。
 そんな自分を自嘲するように微笑し、
「だってな。俺、目的のためなら手段選ばねーやつだし」
 振り返る。
 思い出す。
 今までの、非人道的な所行を。繰り返す人生からの解放を望み、行ってきた己の業を。
 そして、
「……本当はさ。俺、このチビのこと解体して、調べるつもりだったし」
『え!?』
 驚くはやてに苦笑し、告げる。
「ついでに言えば、闇の書の――リィンフォースも奪って、調べようかって思ってたからな」
 目を丸くするはやて。それに対し、苦く、苦く笑って言葉を次ぐ。
「だってのに……あ~あ。こいつは無理だわ」
 ため息を一つ。俺はまた自嘲の笑みを刻み、ポチの頭を優しく、あるいは愛おしく思いながら撫でて、言った。
「……負けたね。ホント、完敗だ。こんなのを、って考えると、俺のなけなしの良心だって痛むっての」
 果たしてはやては、そこまで聞いてようやく俺の言わんとしていることに気付いたのか。一転してニンマリと笑い、口を開いた。
『ふふ。なんや、川平くんもウチのポチに一目惚れした~いうクチかぁ?』
 その笑い混じりの、冗談めかしての問いに、俺は苦笑し、
「ああ、完全にノックダウンだね」
 言って、またため息。
「……なんつーかな。見た目もそうなんだが、仕草っつうか、態度っていうかな。それが完全にこっちを肯定してるっていうか、無邪気すぎるっていうか……」
 ――ポチとは今日、初めて出逢った。
 これまでの『繰り返し』のなかで、本当に初めて。だからこそ、隙あらばこのイレギュラーなるチビを調べようと思っていた。
 だけど――
『あ~、それ、わかるわぁ。ポチって、なんや完全に相手を信じてるっていうか、好き好き甘えたいオーラが全開っていうか……』
 ――初めての邂逅。
 初めて触れ合い、初めてときを同じにした。
 だから、それこそ、刹那の間だ。『繰り返す』川平雅樹にとってポチと触れ合った時間は本当に僅かだった。
 だけど、
 ……それでも、
『――つまり、ポチが可愛い過ぎるんやね?』
 苦笑する。
 苦笑して、「……ああ」と返す。
「萌えた。そりゃあもう、超萌えた」
 そうこぼし、そしてまたため息だ。
 あ゛~、くそ。俺は膝元の温もりにどうしようもなく口元を緩ませながら、思う。ちくせう、本当に可愛いなぁ。
 眠るポチの、柔らかなほっぺたを軽くつつく。そしてそれで眉根を寄せてもぞもぞと動くチビを見て、和む。ははは、本当に、何やってんのかねぇ俺は。
 『繰り返す』、そのメカニズムを探ろうと思っていたはずなのに。そのためなら、如何なる犠牲も厭わない――そんな覚悟を抱いていたはずなのに。
 それなのに。
 そう、だからこそ――
「だから、俺は――縁を、切る」
 表情を引き締め、告げる。
 それにまた『え……?』と、目を丸くしているはやてに、告げる。
「だから、今後一切、キミたちに関わらねーっての」
 そして、俺は優しく――儚く笑い、
「じゃあな。幸せんなれよ、はやて」
『ちょっ……!?』
 それを最後に、通信を――

 果たして、目覚めたポチに抱きつかれ、俺は目を丸くした。

 ◇◆◇◆◇

 たぬき寝入りをしていたわけじゃないし、盗み聞きをしていたわけでもない。だから、雅樹とはやてがどういう会話をしていたのかはわからないし、俺の勘違いなのかも知れない。
 だけど…………聞こえた。
 聞こえた、気がした。
「お、おい? どうしたんだ?」
 目を白黒している雅樹から視線をはやてに。こっちも目を丸くして俺を見ていたけど――それより何より!
『はやて! 雅樹は……もう会えないの!?』
 俺は、問う。
『雅樹は! 雅樹、どっか行っちゃうの!? 縁を切るって、なんで!?』
 念話ではなく――念話によく似た、ただ強く、思うことによって言葉を届ける。
 それに、
『……ポチ』
 はやてはチラリと雅樹をうかがい、それからゆっくりと口を開いた。
『……あんな、ポチ。川平くんは、な…………じつは――』
「もし、俺が不治の病にかかってるとして」
 遮り、ため息混じりに雅樹。俺をまっすぐに見つめ、問うた。
「もし、それを治すために死んでくれって言ったら――どうする?」
 それに、
『いいよ』
 即答。
 俺はそれこそ何てことはないという風に笑い、雅樹に頷いて返した。
『ちょっ!? ポ、ポチ……!?』
 目を丸くするはやてに苦笑し、思う。いや、だって誰かを救えるんなら――それが雅樹なら、別に死んでも良いかなぁって。
 俺なんかの命で彼を助けられるんなら、別に死んでも――
「あ゛ー……やっぱ、お前とは縁切るわ」
 対し、苦く苦く笑って雅樹。『やれやれ』とばかりに首を左右にやり、言った。
 って、え!? な、なんで……? 彼の反応と言葉に、たまらず目を白黒させる俺。
 それを見て、またため息を吐いて雅樹ははやてに向き、口を開いた。
「……なぁ、はやて? コイツの『これ』は早めに治さないと……いずれ泣きをみるぞ?」
『あ、あはは……。や、やっぱりそう思う?』
 ? ???
 俺は首を傾げ、はやてを見た。ねぇ、何の話~?
『いや、だからやな。ポチの、その、自分「なんか」って考え方が「あかん」って話をな』
 ?
「要は、キミはキミが思ってる以上に愛されてるってことだよ」
 ???
 つ、つまり……? 俺は二人の諭すみたいな雰囲気に冷や汗を流し、首を傾げ続ける。いや、それと雅樹が縁を切ろうとするって話とに繋がりはあるんでせう?(汗)
『うーん……つまりやなぁ。川平くんはポチのことが好きなんよ』
 …………え゛?
 俺はマジマジと雅樹を見て、
「って、いきなり頭下げんな。『ごめんなさい』って謝るな。申し訳なさそうな顔すんな」
 え? いや、だって……。
『あはは! いや、ごめんな。まさかいきなりふられるとは思わんかったから。あはははは!』
「……このチビ狸。あとで泣かす。ぜってー、泣かす」
 けらけら笑うはやてと苦い顔して呪詛をはく雅樹。って、それより!
『ねえ! だから、なんで雅樹は縁を切るって言うの?』
 やっぱり俺のせい? そう眉根を寄せ、改めてはやてに問う。
 それに、はやてはなぜか優しく微笑み、
『ポチは、川平くんのこと好き?』
 問うた。
『うん!』
 対し、即答。
 あ、でも、その『好き』はもちろん友だちとか、遊び仲間的な『好き』であって。恋人とかの『好き』じゃなくて。だけどだけど、嫌いじゃ、もちろん無いし。でも、異性に対する恋慕なわけがあるわけも無くって――
『あはは、わかっとるよ』
 はやてはやっぱり優しく笑い、そして視線を雅樹へ。その、なぜか苦りきった少年の顔に意味ありげな微笑を向け、改めて口を開いた。
『川平くんは知らんかもしれんから教えとくな。じつはうちのポチな。こう見えて、けっこう頭が良いんよ』
 ……こう見えて?
『で、や。もし、わたしが川平くんの「病気」のこと話したら――』
「あーあー、わかったわかった、みなまで言うな」
 はやての言葉を遮り、雅樹。頭がガリガリやってため息を一つ――って、やっぱり雅樹って病気なの!? じゃ、じゃあまさか、さっきの不治の病がどーとかってのは……!?
「……ッ!」
 俺は目を丸くし、雅樹の顔をマジマジと見た。ほ、本当に……病気? 治らない――死んじゃうような、病気?
 …………いやだ。
 雅樹が死んじゃうのは、いやだ。『もし』と想像し、泣きそうになりながら思う。もっともっと、俺は雅樹と遊びたい。ゲームしたい! だから、死んじゃヤダ! 死んじゃヤダよ雅樹!!
「……おい、コラ、チビ狸」
 だ、大丈夫! 俺には元祖原作チートドクターの知識がある! だからきっと、雅樹も治せる! もし俺の命が必要なら、俺は喜んで――
『あー……うん。ごめんなぁ、ポチ』
 死んでも……って、なに?
『ごめんな。川平くん、病気やないから。健康やから』
 …………ふえ?
 俺は目をパチクリ。苦笑してるはやてと、なんかずっと苦い顔してる雅樹とを見た。……え? じゃ、じゃあ、雅樹はなんで縁を切る、なんて……?
「……俺はな、これでもけっこう危ない橋を渡ることが多いんだよ」
 何度目とも知れないため息を吐き、雅樹は口を開いた。
「俺は、自分で言うのもアレだが……知識欲の塊なんだ。で、そのためなら身の危険すら厭わないっていう――つまりは、まぁ俺の『病気』ってーのは、そういうことだ」
 だから泣くな。そう言って、俺の頬を撫でる雅樹は――……何故だか、優しい『お父さん』みたいな微笑を浮かべていた。
「俺はな、知りたいんだよ。そのために無茶するんだが……それにキミを巻き込みたくねー」
 …………なんで?
 俺は彼の、少年らしくない暖かな雰囲気にいっそう泣きそうになりながら首を傾げた。……ねえ、なんで? なんで巻き込みたくないの?
 こう見えて、俺はけっこう物知りだよ? 役にたつよ? 雅樹のためなら別に死ぬような目にあっても良いよ?
「……わかんねーかなぁ」
 俺の不思議そうな顔に、やっぱりどこか父性を感じる微笑のまま雅樹。俺の頬を過ぎる涙ではなく頭へと手をやり、撫でながら言った。
「じゃあ、宿題だポチ。どうして俺がキミを巻き込みたくないのか……次会うときまでに考えとけ」
 …………え?
 俺は目を丸くし、
『「次会うとき」って、川平くん……!』
 はやては喜色の笑みを浮かべ、
「……ま、せっかくのクリスマスだしな」
 少年はまたため息を吐き、言った。
「今日は、最後まで居てやるよ」
 俺は、だから、
「♪」
 喜色満面の笑顔で雅樹に抱きついたのだった。








 おまけ



「……ところで、干しっぱなしのシーツの件について(ニヤニヤ」
 Σ( ̄△ ̄;)!!
『え? なんでわざわざそないなこと……?』
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