嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《りりかるーぷ》1-1

《りりかるーぷ》1-1


次話




 放課後。昼の青から夕陽の橙へと色彩が変化しつつある、私立聖祥大付属小学校の廊下で。

 ……うるさいなぁ。

 そういう顔をしたのがいけなかったのか、クラス委員長たる少女は眦をいっそう吊り上げて言った。

「あ、あんたねぇ……! ほんと、いい度胸してんじゃないのよ!!」

 声が、肩が震えていた。

 どうやら怒っているらしい。そんなことを他人事のように思い、俺は前髪のカーテン越しに彼女――アリサ・バニングスをちらり。

 ……うん、怒ってるね。

 彼女の、小学五年生にしては鋭い眼差しにすぐさま視線を逸らし、ため息。俺は左の脇に挟んでいた松葉杖を無意味に弄りつつ、先の嘆息を見咎めてだろう、今まさに怒鳴ろうとしていた少女を制するために口を開いた。

「……放っといて、くれない?」

 ボソボソと。小声というのもあるが、生来の意気地の無さの現れである聞き取り辛い声で言う俺。現実逃避気味に、背に当てた廊下のガラスを振り仰ぎ、春の陽光では無くそこに映る自身を眺める。

 今年で十一になる、平均値を少しだけ上回る身長とヒョロイ体躯。一昨年に負った怪我を隠すため以上に、視線恐怖症である自分を守るために伸ばした無駄に長い前髪。そしてそれに半ば埋もれた、可もなく不可もなくの幼い容貌のこれが――『今』の、俺。

「……あのね。放っとけないから、今、あたしはここに居るの。先生に頼まれてんの。仕方ないの――って言うか人が話してんだからコッチ向きなさいよッ!!」

 少女はそう叫ぶや、俺の肩を掴み、無理やりに向き合わせた。

 っ!

 視線の交差は一瞬。それでも、条件反射で彼女目から視線を外し、「……うるさいなぁ」とこれまた反射的に零してしまった。

「……っ!」

 そしてそれを聞いた彼女が、激昂する一歩手前みたいな顔になったのを見て、俺は遅ればせながら後悔した。うわ、マジで火に油……。

「あんた……、ほんと……。いい度胸してんじゃない……」

 ……ああ。この手の輩は自分の思い通りに事が運ばないと癇癪を起こすんだなぁ。

 今にも噴火しそうな程グラグラと揺れ始めた彼女を見て、仕方なくこちらが折れることに。

「……じゃあさ。賭け、する?」

 視線は明後日のまま。だけど他人の目にだけは無駄に鋭くなった感覚越しに少女を観察すれば、俺の言葉を一応は聞く姿勢になったらしいことが窺えた。

「委員長……。明日は、やるよ……テスト」

 だから、告げる。

 相手に、餌を与えて――釣る。

「……え?」

 彼女の呆けたような気配を感じ、俺はなけなしの演技力を駆使して嘲笑を口元に貼り付け、言っった。

「代わりに……キミ、そのテストで、俺に点数で勝てなかったら――俺の言うこと、何でも聞けよ……」

 ――さあ、初めよう。第二の人生を。

 俺は絶句する彼女の顔を一瞬だけ見ると、口元をニヤリと歪めた。

 ――さあ、初めよう。リアルでギャルゲーを。

「な……なに、それ? そ、そんなの――」

「選択肢を上げるよ」

 少女の顔を見ることなく、指を二本立てて言った。

「A。このまま俺を放置する。B。俺にテストを受けさせる代価に、一生奴隷」

 ――さあ、まずはキミからだ、アリサ・バニングス。

「ああ、一生は可哀相だね。……うん。次の次――二学期のテストまでで良いよ、委員長……」

 俺は少女を、煽る。

 『前』の俺には到底出来なかった方法で。『今』の俺だからこそ出来る方法で。

 俺はそして、問う。

「どうする、委員長? 俺に――川平雅樹にテストを受けさせて奴隷になりたい?」

 果たして、その答えは――








 魔法少女リリカルなのはSS




 《りりかるーぷ》





 一章 アリサ編






 ◇◆◇◆◇



 種を明かせば、『俺は転生者なんだぜ?』っていう電波的な真実こそが俺の強みであり、それ意外に売りなんて無かった。

 しかしそれでも委員長に――秀才で知られるアリサに賭けを申し出るのには十分で、少なくとも中卒程度の学力を持って生まれ変わった俺が負けるなんて思わなかった。

「川平雅樹――オール満点」

 まあ、だからこそのこの結果。

 そして、

「アリサ・バニングス――同じく、満点」

 ……………………納得行かねー。

 俺は廊下の掲示板にあった成績優秀者の張り紙を眺め、前髪に隠された瞳を細めた。……いや、まあ確かに、小学校のテストなんて満点当たり前だし? 簡単だし? 私立で多少難しくなってるっても、俺の学力でどうにかなる程度だし? 相手は委員長だし、この結果は予想外じゃないにしてもさ――



 せっかくのアリサルートがいきなり頓挫ってどうよ!?



 俺はそううなだれながら、廊下を歩き去る。……あ~あ、失敗したなぁ。勝てると思って委員長に喧嘩売ったのに……あ゛~、ど~う~し~よ~?

「……う~」

 気づけば、すでに教室。俺は机の脇に松葉杖を立てかけ、突っ伏して頭を抱えていた。

 ま、まずいよなぁ……。委員長、クラスの人気者だもんなぁ……。

 後悔する。あ~俺はそんな彼女を敵に回し、あまつさえ『負けたら奴隷な♪』なんて……。もうクラスに居られなくね? ……ちくせう。せっかく逆タマも狙ってたのに。現実は、やっぱりギャルゲーみたいに上手くは――



「ちょっと。なにしてんの?」



 果たして声をかけて来たのは委員長で「ぅきュぁあぱアあ!?」……たまらず奇声を発して椅子から転げ落ちた俺を、一体誰が責められよう?

「……あんた。相変わらず、変な奴ね」

 委員長に責められた。…………ちくせう。

「な、なんか……よう、か?」

 俺はビクビクしながら倒した椅子を直して立ち上がり、なんか腕組してこっち見てる委員長をチラチラ伺う。

 ……うわぁ、どうする? も、もしかしなくても俺はまた引きこもりに逆戻り? ……せっかく転生して、今度こそバラ色勝ち組人生を謳歌しようと「で? 何が望み?」――って、は?

 俺は目をしばたき、委員長の顔を――見れないので、彼女の組まれた腕よりちょっと上辺りに焦点を当て、口を開いた。

「な、何が……?」

「…………はぁ」

 委員長、ため息。…………ちくせう。

「……あのね。あんたが言い始めた事でしょ?」

 果たして、呆れまじりの声で委員長。って、何の話?

「…………な、なにを?」

 俺は首を傾げ――って、あれ? なんで委員長は肩を震わせてんの?

 って、ハッ!! ま、まさかコレは、委員長の『最後の望みは何だい? 冥途の土産に聞いてやるよ☆』って優しさか!? つまり俺は――

「あ、ん、た、は……! あたしに! 何して欲しいのかって聞いてんのよ……!!」

 そう小声で、だけど俺にだけは伝わる声量で、怒気を露わに叫ぶ委員長。

「じゃ、じゃあ、付き合って下さいっ!」

 それに脊髄反射で答える俺。しかも、つい、教室中に響き渡る声で。

「って、あ……」

 言って、しまった。

 静まり返る教室。集中する視線の中、俺は青くなってるだろう顔を伏せ、冷や汗をダラダラ。う~わ~……これで俺の居場所が無くなるの確定? むしろトドメ?
 ……ふっ。やはり俺様にはヒッキーでネラーがお似合いなんですね。…………ええ、ええ、わかっていましたと「良いわよ」――も、ょ?

「は?」

「……あのね。まさかあんた、自分で言ったこと忘れたの?」

 委員長はそして自分に集中する視線の中、どこか居心地悪そうにソワソワしながら言った。

「って言うか『は?』って何よ? こ、このあたしが、まさかそれぐらいの『命令』を聞かないとでも思ってたの?」

 舐めないでよね! そう叫び、ツンとそっぽ向く委員長。おかげで視線を彼女の首から上に向けられた俺は、そして少女の頬の紅潮を見て取るやまたしても目を白黒させた。

 ……は、はい? こ、こここ、コレってどういう状況?



 ◇◆◇◆◇



 前世、というのか。『今』の俺が覚えている、『前』の、九歳から十九歳までの十年の記憶のなかに、俺が付き合ったことのある異性は――……悲しいかな、ギャルゲーのヒロインたちだけだった。

 なので――

「いやぁ……ほんま、ビックリしたわ~」

「本当だよ~」

「うん。ビックリ」

 上から八神はやて、高町なのは、フェイト・テスタロッサ。

「わたしも。アリサちゃん、何も教えてくれなかったから」

 そして月村すずかに、

「べ、別に良いでしょ? ふんっ」

 委員長のアリサ・バニングスという、なんとも美少女揃いの面々と屋上で昼食を囲むなんて『これ、なんてギャルゲー?』的なシチュエーションに立ち会ったことなどあるはずも無く、それ以前に異性と話したことすら殆ど無い俺としては緊張することしきりだった。

 しかも――

「よ、良くないよ~! だって『付き合う』って……」

「うん。流石にそれを景品にするのはどうかと思うよ?」

 話題の中心が、先ほど電撃的に決まった、俺と委員長が付き合うことになったってものであるからこそ、さらに居心地が悪い。……つか、逃げたい。

「そやそや。そういうことは先に相談して欲しいんよ? っていうか、川平くんもや」

 うわ、矛先がコッチ来たー!?

 俺はレジャーシートの端ギリギリに座りながら、此方を見やる連中からさらに距離を離そうと無駄な努力をしつつ「な、なにが……?」と、やはり口の中でもごもどとくぐもったような声で訊いた。

「あかんよ! ちゃんと好きなら『好き』って言って、それから『付き合って下さい』や」

「そうだよ、川平くん。やっぱり賭とか……そういうので付き合うのは駄目だと思うよ?」

 対し、八神、月村の二人はそう言って『ズイ』っと顔を近付け――俺はその分顔を遠ざけた。……へ、へたれで何が悪い!

「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ! い、いつからソイツがあたしのこと『好き』とか――そういう話になってんのよ!?」

 果たして慌てたのが委員長だが、

「え? 違うの?」

「? あれ? アリサも好きだからOKしたんじゃないの?」

 ……如何せん。多勢に無勢だった。

 そんなことを現実逃避気味に思いつつ、視線を明後日にやって痺れ始めた足をさする。……うん。俺、なんで正座してんだろ?

「ちょっ!? 違っ……!! こ、これは先生がっ、賭でっ、次のテストまでだからでっ!」

「え? でも三年生の時からアリサちゃん、川平くんのこと気にしてたような……?」

 ……姦しい。姦しいなぁ。

 うん。そろそろ俺、弁当食べていいかな? ……イマイチ勝手がわからず、いまだに蓋を開けてすらいないんだけど。その上、他の子と違ってコンビニ弁当だけどさ。

「す、すずか!? それ違っ! あ、あたしはただ、毎回毎回あたしと同じように満点のコイツを敵視して――」

「ああ、なら川平くんはどないやの?」

 うわっとー!? またも八神からのキラーパスが来ましたー!?

「え……?」

 俺はそして、なんでか集中し始める少女たちの視線に、

「雅樹くんはアリサちゃんのこと……どう、思ってるの?」

 おそらくはルート分岐の最後だろう、高町からの問いかけ。

 それに俺は、脳内に現れたギャルゲー的選択肢の中で、アリサルートが確定的だろうものを迷わず選択した。

「結婚したい」

 ――皆、言葉を失ったのは言うまでも無かった。

 って、あれ? なんか間違えたかな?




次話
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