嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

PageTop

《りりかるーぷ》24

《りりかるーぷ》





 ◇◆◇◆◇

 理由はわからない。
 わからないが、なんとなく……俺はいつもとは違う帰り道を選択した。
「――でね。今度、保育園のお遊戯で」
「『しんでれら』やるのー♪」
 ミラー越しに、最愛の妻と娘を眺め、口元を綻ばせる。
「へえ。そいつは、楽しみだな」
 すずかと結ばれて、二人目の子どもができて。
 そんなどうということはない、幸せな日常が……いつまでもいつまでも、続きましたとさ。

 ◇◆◇◆◇

 ――ただ、幸せになることを願った。
 一途に。
 何度も。
 だから――叶った。
 奇跡は、強い想いを好いていたから。

 ◇◆◇◆◇

 ゴーン、ゴーンという鐘の音に早くも感無量の思いだった。
「嗚呼……」
 鏡の前。これでもかと緩みきった俺の顔は本当に情けなく。それでいて着ている白服は、これでもかと俺を祝福しているようで。
 つまりは結婚式当日だった。
「嗚呼……本当に、結婚出来るんだなぁ」
 瞼を閉じて思い返す、最愛の人。小学生の頃から付き合っていたアリサと、俺は今日、ようやく式を迎えることになっていた。
「嗚呼……」
 嬉しい。
 嬉しすぎて、ダメだ。ダメすぎる。
 だけど……嗚呼。俺は幸せのあまり表情を緩ませ続けていた。
 そして、
「……あはは。まだ、泣くのは早いだろうに」
 鏡に映った俺は、やはりどこまでも幸せそうに笑って涙していた。
 ……まるで、自分ではない誰かのように。その涙はなかなか止まってくれなかった。

 ◇◆◇◆◇

 ――始まりはいつだろう?
 母が『助けて欲しい』と願った時か。
 父が『せめて安らかなる眠りを』と安楽死させた時か。
 それとも十年という間、見ていたかも知れない夢の中でか。
 ……答えはたぶん誰も知らないし、意味もないのだろう。

 ◇◆◇◆◇

 気が付くと、俺はアースラに居た。
 なんでも俺は『これから、アルハザードの門を開く』なんて大見得きってジュエルシードを使った挙げ句――失敗して気絶。結局、暴走させるだけさせた、すべてのジュエルシードはどういう理屈でか死んだはずのアリシア・テスタロッサを蘇生させ、消滅したらしい。
 まったく、一歩間違えば次元断層すら引き起こしかねなかった――そう堅物の執務管は憤慨していたが、最終的に管理局への技術提供などでお咎め無しという形にしてくれたので、彼には感謝することしきりである。
 やはり、ついでにプレシアの病気を治したり、破壊不能の最悪の魔導書――『闇の書』を直したりしたのが良かったのか。それともどこぞのマッドドクターの所在地をチクったり、秘密裏に脳みそ連中を処理したのが幸いしたのかは知らないが……何はともあれ、懸念していた『繰り返し』の期日を過ぎた今もこうして生きていられるのだから、正直どうでも良い。
 ……ただ、なんとなく。初めから、もう繰り返さないような気がしていたのが気にはなるが……考えても仕方がないさとばかりに、なるべく気にしないように勤めていた。
 そして、
「ほら、起きてよ雅樹」
 今年で二十一歳となる俺は、今日も今日とて幼なじみの少女――アリシアに叩き起こされ、朝を迎えた。
「ふぁ~……。なんだ、今日は休みじゃないのか?」
 欠伸をかみ殺し、局の制服着た少女を眺めやり、問う。
 それに「私はともかく、雅樹は仕事でしょ?」と、アリシアは何が嬉しいのかニコニコしながら返し、
「せっかくだから私もフェイトに会いたいし、付いて行こうと思って」
 ――俺の仕事は、主に本局のデバイスマイスターとして量産品のデバイスやワンオフの魔導兵装なんかの制作、整備などであり、
 特に三人娘やその友人知人に重宝され、よくよく呼び出されては彼女たちの愛機を調節してやっていた。
「……ったく。相変わらず、妹離れできないやつめ」
 今日俺は、確かにフェイトに呼ばれていた。
 それを、半ば俺の助手だと主張し、勝手に俺の周りをうろちょろすることが常の少女は当然知っていたし、始めから付いて行くつもりだったのだろう。……ご丁寧にも、昨日は久しぶりにプレシアのババアにクドクド『ウチの娘に手ー出したら殺すぞ?』と釘を刺されてもいた。ちくせう。
「えー? 別に好きなのは好きなんだから、我慢すること無いでしょー?」
 『ぶー』と頬を膨らませ、ふてくされたような面でアリシア。それに「あーはいはい、そーですねー」と適当に手をヒラヒラやって返し、俺は布団から出た。
「むー……なんかスッゴいテキトー」
 その通り、適当にあしらったのである。
 ……などと馬鹿正直に返したところでアリシアの機嫌が悪化するだけなのはわかっていたから、
「さぁて、じゃあ俺も我慢はやめるかな」
 ニヤリと笑って言い、俺は頭二つ分低い位置にあったアリシアの額に口付けてみた。
「~~~~ッ!?」
 それだけで、『ズザー』っと壁際まで後退するアリシア。真っ赤な顔して額をおさえ、口をパクパク。……はは、ホントいつまでも純情なやつ。
 俺はここぞとばかりに着ていた上着の前を開き、ニタリ。それこそ獲物を前にした肉食獣のごとき笑みを浮かべて少女へとにじり寄ってみた。
「おやおや。こんなところに美味しそうな茹で蛸娘が」
 言いつつ、ついでに『ヒッヒッヒ』と笑ってみた。うん。怯えてる怯えてる。
「ひぁっ!? あっ、アリシア、タコじゃないもんっ! 女の子だもん……!」
 ……いや、茹で蛸ってのはそーいう意味じゃないんだが。
 俺はアリシアの返しに内心で苦笑し、なぜか壁に背を当てるだけでそれ以上逃げようとしない少女を捕獲。そーっと、そのふっくらとした頬をなぞり、真っ赤な顔してギュッと目を閉じた彼女の耳元に囁きかけた。
「じゃあ、狼さんの俺は、そんな可愛い女の子を食べちゃおうかな?」
 と、脅して「……や」――あ゛?
「やっ、やさしく……して、ね?」
 …………。
 ……………………。
 …………………………………………。
「……いただきます」
 ガマン、ヨクナイ、デース。

 ◇◆◇◆◇

 ――スタート地点は、消した。
 あとは――

 ◇◆◇◆◇

 白い世界が、崩れて行く。
 ガラガラと、白い空にヒビが入り、崩れて行く。
 崩れて。
 ……壊れて。
 白い、白い。幻想の終着点が。願いが叶う、想いと記憶が最後にたどり着く場所が。
 アルハザードが。
「……もう、良いか?」
 そう言って、黒い甲冑を纏った青年は笑った。
 笑って――……消えた。
 それを見送り、ふと、下を向く。膝の上で眠る、一人の少年を見る。
 その子の名前は――川平雅樹。
 自身が解放されることを願い、誰よりも強くなろうとした者。誰よりも強い想いを抱いていた者。
 そして、その願いのために……自身の記憶のすべてを使い果たした、者。
 ――ループを、崩してやる。
 そう言って、彼は自身より上位にあたる次元に干渉し……書き換えた。
 ……『始まり』を、消した。自身のすべてを代償に。
 だから、
「……くぅん」
 空っぽの少年を抱きしめ、願った。
 すべての記憶を代償に。ただ、一心に。
 これを見ている『彼』に、願った。

 ――目覚めろ、と。

 ◇◆◇◆◇

 …………。
 ……………………。
 …………………………………………ぁ。
 ゆっくりと開けた瞼。ぼやける視界の向こうに映る、見慣れてしまった天井。
 にわかに騒がしくなる病室。その声を頭がはっきり言葉として認識する前に、思った。
 ……終わったんだなぁ。
 知らず頬を過ぎいく涙は……果たして十年という月日をまたいで渇ききった俺の頬を優しく濡らし、零れていった。





前話
スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。