嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《りりかるーぷ》23

《りりかるーぷ》




 ◇◆◇◆◇

 俺の願いは、この無限地獄からの解放。おなじ時をめぐる輪廻の輪より外れ、終結を迎えることだ。
 そのために、俺は数十年という時を使った。
 そのために、数百人という人間を生み――壊した。
 ただ、自分のために。
 ただ、自分の望みを完遂するために。
 そのために、俺はプレシア・テスタロッサに接触した。そのためだけに、俺はスカリエッティという名の悪魔に師事した。
 すべては、ただ、繰り返さないために。二度と、『俺』として生まれぬために。
 ……死ぬ、ために。
 短い人生。だけど長い――長すぎる記憶の連鎖。それを断ち切り、解放されるために。
 そのためだけに――

「ははは! なんだ、その程度かよ!」

 白い世界。
 ようやくたどり着いたそこで。ようやくたどり着いた、アルハザードの入り口で。
 俺は、俺と、対峙していた。
「ほらほらほら! どうしたよ、おい!」
 凶笑を浮かべる、俺。
 その世界の主であった、俺。
「ぐぅ……!」
 ――あらゆる願いが叶う世界。
 あらゆる想いがたどり着く最果て。
 それが――アルハザード。
「雅樹くん! 雅樹くん!!」
 白き世界の、白き檻の中。
 俺が連れて来てしまった、その時の俺の連れ合い――なのはは、すぐさまもう一人の俺に捕まってしまっていた。
 そして俺は、彼女の目の前で――殺された。

「――……力が、無かったんだ」

 暗く、暗い。暗黒をたたえた瞳を向けて、俺は語る。
「アルハザード。……その世界は、すべての願いが叶うが――しかし、より強い想いが優先されるようだった」
 例えば、二人の想いがその世界に流れて来た場合。アルハザードはより強い願いを叶えるらしかった。
「……おそらくは、キミと一緒さ」
 初めてアルハザードにたどり着いた時の俺は――その『前』の俺に、殺された。
 『前』の、俺に。
 たどり着いた、俺に。
「……本当にここが、アルハザードだという保証は無い。ただ、便宜上、俺はここをそう呼んでいる」
 繰り返す者――川平雅樹。
 いったい何人がそうだったのかは知らない。いったい何人がここを目指し、たどり着いたのかは知らない。
 ここに――願いが行き着く、最果てに。
「九歳より生まれ、十九歳で終わる人生」
 ……どうして、俺の最初が九歳の誕生日なのか。
 どうして、最後の最後が十九歳の誕生日なのか。
 その答えが、ここにあった。
「……見ての通り、『俺』は複数存在する」
 俺を殺した、俺。
 殺し返した、俺。
 そんな俺と対面し、こうして俺の話を聞いている俺。
「……あるいは、この世界がそれを望んだかのように」
 強い想いを願ったのか。強い願いを望んだのか。
「……川平雅樹は、ここを目指す」
 自身の解放を願い、アルハザードへ。その繰り返す時間の中で、想いを凝縮させて。
「川平雅樹は――忘れない」
 すべてを。
 俺の数少ない特技の一つ――『完全記憶能力』は、あるいはそのために。
「……並行世界か。もしくは、ここにたどり着くと記憶がリセットされるのかは知らない」
 九歳の誕生日。初めて目覚めた俺は、何も覚えていなかった。
「その謎を解くために――俺は、待っていた」
 ……俺を、待っていた。そう言って俺は、九歳の俺を真っ直ぐに見た。
 真の意味で、すべてを終わらせる、そのために――

 ◇◆◇◆◇

 ここに来て、何故いきなり俺の意識が無くなったのか。どうして、気がついたらベッドで眠っていたのか。……その謎が、黒ずくめの俺の言葉で氷解した。
「悪いが、少し、キミの人生を覗かせてもらった」
 …………。もしかして、夢で見たなのはとのイチャラヴライフはコイツの記憶か?
 俺はすっかり綺麗になったテーブルの上に頬杖をつき、仔狐久遠と追いかけっこを始めたアリシアを横目に「別にいいさ」と返す。
「と言うより、やっぱり『どうやって』ってのが気にならないでもないが……気にしたところで意味は無いんだろ?」
 黒いジャケットを着た黒い俺の台詞では、ここは『願いは叶う場所』らしい。
 ならば、『何をどうやって』という過程は考えるだけ無駄なのかも知れない。
「アルハザードは、まあそういう場所さ」
 食後の一服とでも言うのか、やっぱり優雅な所作でティーカップを傾けながら黒スケ。……と言うかコイツ、飯食ってねーし。
「……さて、閑話休題。さっそく始めるか」
「ああ」
 果たして、俺たちは向かいあい、
「俺は、解放されるのか?」
「それを望むなら、叶えよう」
 一問一答。
「お前も、やっぱり最初は九歳からか?」
「ああ。……さらに言えば、終わりは十九歳の誕生日。キミと同じだ」
 ティーカップを手に、もう一人の俺は答え、
「目覚めたきっかけを、お前はどう思う?」
 俺が、問う。
「……初めは、なのはとフェイトのせいだと思っていた」
 それは歪な、自問自答。それはまだ、単なる確認作業。
「キミも知っての通り、その日――俺が目覚めた日は、二人がジュエルシードをめぐって争い、不完全ながらも発動させちまった日だった」
 ゆえに、それがきっかけ。
「俺たちが昏睡状態となったのも、ジュエルシードのせいだ」
 ゆえにこそ、ジュエルシードが原因。……そう思っていたが、
「おそらくは、違う」
 もう一人の俺は、首を左右に振った。
「……俺は試しに、『俺』が生まれるきっかけを――川平雅樹が昏睡状態となる事件を無くしてみた」
 不可能無き世界。望めば叶う世界で、もう一人の俺はいろいろと試したらしい。
「だが、結果は――今、目の前に居る」
 そう言って俺を真っ直ぐに見る黒い俺。……ああ、つまり、俺の原点を消したのに、俺がこうしてここに居るから『昏睡する原因は他にある』、と。
「……並行世界か。あるいは既にキミという存在が生まれたあとだったからなのかは知らない」
 原点――なのはが教えてくれた、ジュエルシードの暴走体による事件。突然現れた大樹を避けようとして俺の母親が起こした事故。それによって刻まれた、深刻な傷。
「だが、どちらにせよ……一つ、おかしな点があった」
 真っ直ぐ俺を見つめ、俺の結果の一つである黒ずくめの男は告げる。
「俺は――なぜ、目覚めた?」
 いや、正確には――

「俺は、なぜ――記憶できる?」

 ――俺が昏睡することになった、脳への傷。
 それを知り、自身のことを調べれば調べるほどにわからなくなる疑問。
 俺は何故、記憶野に致命的な怪我を負っていながら、完全記憶能力なんてものをもって目覚めたのか。
「昏睡することになった理由も、目覚めた原因も……無理やりにだが、ジュエルシードのせいだと言えなくも無かった」
 だけど、それは違う。
 今も額に刻まれた傷跡は、どう考えても俺が俺の記憶を持ち続けていられるわけのないものだった。
「転生のメカニズムも、ジュエルシードの――不可思議な何かのせいにすれば、話は簡単だった」
 だが、違う。そう断言して見せる黒スケに、
「……つか、お前のその『あらゆる願いが叶う』っていうアルハザードミラクルでわからなかったのか?」
 トントン、と。テーブルを指で叩き、問うた。
「……いや」
 対し、首を左右に振って黒いの。手のなかのカップに視線を落とし、言った。
「アルハザードで願いを叶えるには、ある程度だが代価がいる」
 その代価が――記憶。
 何かを願い、叶えるには、それ相応の代価を――何らかの記憶を払う必要がある。
「……何を忘れるのかは完全にランダムらしいが、な」
 って、待て。
「お前……そんな物騒な力使って、なに料理なんて無駄なものを」
 呆れる。
 目を丸くする。
「……いや、それ以前に」
 チラリと。今も久遠と戯れているアリシアを見て、愕然とした。
「お前……そのチカラでアリシアを――」
「躊躇う理由なんて、無かった」
 そう言って、もう一人の俺は――苦笑。
「川平雅樹。……キミが、キミで、良かったよ」
 果たして、その台詞を最後に――



 世界が、白く、白く、塗りつぶされた。

 ◇◆◇◆◇

 目を、開けた。
 青い空。そこを流れ行く白い雲。うっすらと見える複数の月。
 ここは……ミッドチルダ、か?
 俺は判然としない意識のままに記憶を探る。……なんだ? なんなんだ、この違和感は?
 忘れることの無い俺。すべてを覚え、十年という時を繰り返してきた俺。
 そして――解放され、二十歳になる、俺。
「……ん? 起きたんか?」
 体を横たえた俺に、はやて。青い空を覆うように覗き込み、変わらぬ微笑を口元に浮かべて言った。
 ……どうやら、膝枕をされているらしい。俺は彼女の温もりを後頭部に感じ、そして体を起こ「ぃツっ!?」そうとして、体中に走った激痛に顔をしかめた。
「あ、あはは……。まだ、起き上がらへん方がいいよ」
 ……思い出した。
 そうだ。俺は、たしか今日も彼女に「む? 起きたか」――声に振り向き、仏頂面のシグナムを睨んだ。
「……てめぇ。さっきはよくも――」
「油断した貴様が悪い」
 ピシャリと遮られた。
 そして、「……まあ、気持ちはわからなくも無いがな」と言って苦笑。
 それに思わず『だったら斬るな!』と胸中で怒鳴りつけながら、ため息。……くそ。今日も勝てなかったか。
「あはは。でも、私が声かけんかったら勝ててたかも知れんし――」
「いや、まだまだだ」
 はやての慰めの言葉を軽く遮り、いまだに痛み残る体を無理やり起こした。
「ツツツ……。っと、シグナム。今日はこれで終いにして良いか?」
 問いつつ、傍らに落ちたままだったイグドラシル八式を回収。黒いブレスレットの待機状態に戻し、体の汚れを払う。
「ああ、そうだな」
 見れば、シグナムもそのつもりだったのだろう。いつの間にかレヴァンティンは待機状態であったし、格好も局のそれであった。
 そして、
「とは言え、だ。川平。このままだと間に合わんと思うぞ?」
 ニヤリと笑って言った。
 ……コイツ、俺が気にしていることを。
 つか、それをお前が言うのか?
「ハッ! ちゃ~んと間に合わせてやるから安心しろ」
 とりあえず虚勢を張ってみる。……うん。直前まで良いようにやられていただけに情けないな。
「つか、後はシグナム。お前だけなんだからな、覚悟しやがれ!」
 ビシッと指差し、宣戦布告。
 そうさ。あとはシグナムだけだ。
 他のヴォルケンリッターには認めさせた。
 他の家族には、認められたんだ。
 だから――
「次こそは勝つ! 勝って、お前にも来てもらうぞ!」
 俺とはやての結婚式に!!
 そう高らかに告げる俺の背で、はやては少し大きくなり始めたお腹に手をやって笑っていた。
 ……いつものように。
 いつまでも。

 ◇◆◇◆◇

 ――夢だと気付かなければ、それは現実で。
 あるいは違いなんて、それだけのことなのかも知れない。





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