嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《りりかるーぷ》21

《りりかるーぷ》




 ◇◆◇◆◇

 俺の願いは、この無限地獄からの解放。おなじ時をめぐる輪廻の輪より外れ、終結を迎えることだ。
 そのために、俺は数十年という時を使った。
 そのために、数百人という人間を生み――壊した。
 ただ、自分のために。
 ただ、自分の望みを完遂するために。
 そのために、俺はプレシア・テスタロッサに接触した。そのためだけに、俺はスカリエッティという名の悪魔に師事した。
 すべては、ただ、繰り返さないために。二度と、『俺』として生まれぬために。
 ……死ぬ、ために。
 短い人生。だけど長い――長すぎる記憶の連鎖。それを断ち切り、解放されるために。
 そのためだけに――
「…………………………………………ふぅ」
 嘆息。俺は『やれやれ』とばかりに首を左右に振り、あらためて前を向いた。
 ……ったく。何やってんのかねぇ。そんな内心の自嘲を隠さず、俺は口元を歪め、

 目の前に仁王立つプレシア・テスタロッサを見た。

「……わざわざジュエルシードを届けに現れてくれる子がいるなんてね」
 暗い、『時の庭園』の玉座で。
 暗い、狂気宿す瞳をむけて。
「感謝するわ」
 プレシア・テスタロッサは頬を引き裂くように笑い、
「そして――さようなら」
 言葉と同時。一切の躊躇も容赦も無い雷撃が、彼女のかざした杖より迸った。
「…………はぁ」
 対する返事はため息とともに。俺は脇に抱えたイグドラシルのAMF濃度をマックスまで引き上げてそれを打ち消し、目を剥くプレシアに心底疲れたとばかりの表情を向けて言った。
「……なに、してんだろーな、俺は」
 問いのような。呆れているような。俺は自問のようでいて、違う、自分でもよくわからないことを口にしながら歩み始める。
「あ~あ。……本当は、今ごろ、とっとと回収したジュエルシード使ってアルハザード行くつもりだったのにな」
 ――この日のために、アルハザードへの道は調べていた。
 この時のために、俺は少女たちを騙してジュエルシードを回収した。
「理由は……まぁ、見当ついてるんだけどなぁ」
 ――すべては、俺が、『俺』を終わらせるために。
 そのためだけに足掻き、研究し、探求し、そのためだけに今生においては生きていた――ハズだった。
「ああ、くそ……!」
 俺はガリガリと苛立ち紛れに頭をかきむしり、
「っても、仕方ねーよなぁ……」
 苦笑。
 そして、
「仕方ねー。仕方ねーよ。仕方ねーじゃんかよ」

 ――母さんを……お願い、します。

「…………仕方ねーよ、本当」
 俺はまた一つため息を吐いて、
 いくら魔法を放とうと、その悉くが効かない俺に焦燥しているらしいプレシアを睨み、
「諦めろ、プレシア・テスタロッサ。あんたの負けだ」
 手の中のデバイスを、真っ直ぐ向けて、
「何を――!?」
 驚愕と憤怒に顔を歪めてるプレシアに、
「よく覚えておけ」
 言葉と同時。イグドラシルの『加速』の魔法を起動。瞬きの内に、棒立ちとなっていた彼女の背後を取り、
「俺の名は川平雅樹」
 とっさに展開させたのだろう障壁を、AMFでかき消して――
「俺はあんたと、あんたの娘たちを救ってやる――最強オリ主様だぁああああああ!!」
 叫び、ためらいなくトリガーを引く。
 結局、それだけで、障壁をはれなかったプレシアを無力化できたのだった――。

 ◇◆◇◆◇

 後顧の憂いを無くす。言ってみれば、ただそのための行動だった。
「さて、こんなものかな」
 俺の眼前に浮かぶ幾つかのディスプレイ。その各画面に映し出される、『庭園』内に出現させた数多の機兵。それはプレシア・テスタロッサが敵の迎撃だか時間稼ぎだかのために用意していた、機械仕掛けの守護者で。俺はそいつらのコントロールを奪い、命令を書き換え、同じく時間稼ぎとして召喚したものだった。
『なっ!? き、君は一体何を――!?』
『ま、雅樹くん!?』
 果たして『庭園』へと乗り込んできたクロノ、ユーノ、なのはは突然現れ、敵対行動を起こし始めたガーディアンに目を剥き、俺へと通信を寄越すが――
「悪いけど、邪魔はさせないぜ」
 俺は悪役のごとき笑みを浮かべ、肩をすくめて言った。
「俺は、これから、アルハザードの門を開く」
 チラリと、傍らに倒れ伏すプレシアを一瞥。そして「ああ、コイツはやるよ」と言って転送。混乱し、プレシアの作った機兵にようやく迎撃の姿勢をとろうとしていた三人の中心へと送った。
『なっ!?』
「ちゃんと守れよ? じゃないと死ぬぜ」
 クロノの驚愕にニヤリと笑って告げ、俺は彼らとの通信を切った。
 …………。
 ……ふぅ。
 ため息を一つ。俺は暗い一室を淡く照らすポッドの――その中で膝を抱えるようにして眠る幼女を振り仰ぎ、苦笑した。
「ったく。アルハザードに妙な手土産を――いや。妙な同伴者を伴っちまったもんだぜ」
 言って、生体ポッドのコンソールを操作。イグドラシルの演算補助と持ち前のハッキング能力を駆使してカプセルを開いた。
「よっ、と」
 中から落ちてきた幼女――アリシア・テスタロッサの遺体を抱きとめ、すぐさま用意していた特別な術式を起動。イグドラシル内に収納していた全てのジュエルシードを共鳴反応させ、その力に方向性を与えて――
「開け、不可能無き最後の奇跡――アルハザードの門よ、今!!」
 解放。
 瞬間、イグドラシルの砲頭に取り付けられた魔力刃が眩く光り――爆発。視界と聴覚を白く塗りつぶし、イグドラシルに組み込まれてた指向性に沿った反応をもって次元に穴を穿ち、俺と俺の手のなかで眠る幼女とを飲み込んだ。
 そして、
「――――」
 いったい、どれだけの時間が過ぎたのか。一瞬のようでいて、永遠。時間の感覚が吹き飛んだような、何とも不可思議に過ぎる感覚にいつの間にか閉じていたらしい瞼を開けると、
「…………………………………………え?」
 白。
 限りなき、白。
 俺は、気づけば白亜の大地に体を横たえ、同じく純白の何も無い空を見上げていた。
 …………ここは? とりあえず体を起こし――そこで、胸に全裸の幼女の遺体を抱いていたことを思い出して顔をしかめた。……ちっ。やっぱ、ちゃんと連れて来れたか。
 前世での研究と実験。それに念入りに行ったシミュレートから、一人ぐらい余計な荷物を抱えてもたどり着けるとは思っていたが……正直、面倒くせー。
 一応、ついでにアリシアを蘇生させてやろうとは思った。その方法はアルハザードにあるハズで、そこに連れて行けさえすればどうとでもなるし、ダメだったら諦めよう――その程度の考えで持ってきた遺体だが、それゆえに煩わしいとも思う。……つか、レリック埋め込んで良いんなら、アルハザードなんて来なくても半年ぐらい生き返らせてやれるんだかなぁ。
 俺はため息を吐きながら冷たいアリシアの死体を担ぎあげ、今さらながら培養液に濡れてしまった衣服や手を見て顔をしかめた。……ちっ。文字通りお荷物か。俺は肩に担ぐ死体から滴る、独特の匂いとぬめり気を帯びた液体に辟易する思いで歩き出し、果てなき白地の世界をただただ見回した。
「……ここ、マジでアルハザードか?」
 答えるものは当然なく、いくらキョロキョロと所在無く視線をさまよわせようと白以外の色を見いだせなかった。……つか、ここは、むしろ天国って言われた方がよっぽど『らしく』ないか?
「……くそ。まさか、失敗……か?」
 有り得なくは無い。
 所詮はシミュレーションであり、実験。いくら研究し、確信を持とうが実践は初めてであり、俺には当然『行けた』という経験が無い。
 だから――……だけどまぁ、失敗だったとしてもいいさ。失敗の理由。足りなかった要素を見つけて次に活かす……それだけさ。
 俺はすっかり板につき始めた諦め癖に苦笑し、『さて今回はどこで死のうか?』と半ばリセットボタンへと指を伸ばし――

 瞬間。白い世界に一点。黒が生まれた。

「…………あ゛?」
 それは、鎧。黒いマントを纏う、黒き西洋甲冑。
 身長は、だいたい百八十を少し過ぎたぐらいだろうが、兜についた、これまた漆黒の羽根飾りのせいかそれより少しだけ大きく見えた。
「……………………は?」
 俺は呆然と眺める。
 ……おいおい、なんだよそれ。頬を過ぎる液体は、未知の存在に対する純然なる恐怖の証。おかしいだろ。そう何度となく胸中では疑問を投げ、俺はじりじりと後退する。
 ……おかしい。
 おかしいだろ。
 白い世界。白だけの世界。そこに現れた、染み。唯一の黒。
 それは俺の眼前に現れた。それは目を逸らす間もなく、まばたきする間すらなく、現れた。
 突然に。唐突に。
 まるでパラパラ漫画の途中でいきなり書き加えられたかのように。黒き鎧は何の前触れなく現れ、俺を真っ直ぐに見ていた。
 そして、
「…………『川平雅樹』、だな?」
 喋った。
 それも――
「っっっ!?」
 息を呑み、固まる俺の前で、
「……キミの到来に、とりあえず敬意を」
 黒き鎧のソイツは、
 俺のよく知る声で言って、
 ゆっくりと、兜を脱ぎ――
「おそらく、キミは初めましてだろう?」
 ソイツは――
「……初めまして、川平雅樹」
 黒髪、黒目の、
 俺のよく知っている、
 とてつもなく見覚えのある、
 それでいて一度たりとも見たことの無い顔で、
「ようこそ、アルハザードへ」
 その男は――二十代半ばを思わせる容貌の、もう一人の『川平雅樹』は、そう言って慇懃無礼に一礼を寄越したのだった。

 ◇◆◇◆◇

 ――ゴール。
 そんな声が、聞こえた気がした。





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コメント


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次回こそ解決編…になるのでしょうか?
すごく楽しみです。

| URL | 2009年10月05日(Mon)23:40 [EDIT]


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