嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《りりかるーぷ》20

《りりかるーぷ》





 ◇◆◇◆◇

 子供の時。
 それは何よりも自由で――……夢を見れる時で。そして見た夢は叶うって信じて居られて――……信じることが出来て。
 空を見れば、空が飛べた。
 願えば……叶う。
 奇跡はいつだって手のひらに……。
 そんな、誰もが魔法を使える、子供の時に――

 俺は、女装してみた。

「……もう思い残すことは無いなぁ」
 バニングス家のアリサの部屋。俺は一人、白いフリルのいっぱい付いたドレスを纏い、ソファーに腰掛けて腕を組みながらしみじみと呟いた。うん、満足満足っと♪
 それに対し、アリサやすずか、そして昨日だかにアースラから帰って来たなのはの三人は呆れ顔を隠そうともせず、
「そ、そうなんだ……」
「……変態よ。変態が居るわ」
「あ、あははは……」
 ……うん、やっぱりな反応をありがとう。
 俺はそんな三人に爽やかな微笑を浮かべ、おもむろにアリサから借りた洋服の裾を顔へと近付けて――
「ああ……アリサたんのかほりが……」
 恍惚として、言った。うん。やっぱり子供の時にしか出来ないからね、女装って。駄目もとで頼んで正解っと♪
「って、何してんのよ!?」
 そして案の定真っ赤な顔して怒るアリサにウィンクを返し、可愛らしく『てへ♪』と舌を出して返す。
「って、うわっ、キモ!?」
 自分でやってて軽く引いた。うーん……やっぱり女顔の主人公を客観的に見た時にしか萌え「「…………」」――って、なにポケーっと眺めてるんだ、三人娘?
 ――ハッ! ま、まさか俺って「い、意外に似合うわね……」――やっぱり女顔だったのかぁぁぁあああ!! 俺は頭を抱え、微妙に生暖かい目をして見るアリサから全力で顔を隠した。い、今だかつて女装した事無くて気付かなかったが――
「じつは可愛い系だったのか、俺!?」
 ショーック!! 俺は両手を地に着け、落ち込む。くっ! こんな事ならもっと早く――って、早めに気付いた所で何の役にも立たんし! っていうか知りたくも無かったし!
「え、えっと……ま、雅樹くん? な、なんでいきなり女装なの?」
 ちなみにそう声をかけてくれたなのはや、他の二人は制服である。……まあ学校終わってすぐ、アリサん家に集まったんだから当然なんだけどね。
 そして制服からわざわざアリサの、しかもフリフリの完全無敵に愛らしいドレスになってる俺は「え?」と、なのはの疑問に首を傾げた。
「『なんで』って……そりゃ、男の子はみんな何かに変身したいって思うものだからね」
 ほら、変身ヒーローって何時の時代でも男子に人気じゃん?
「ああ、なるほど――って、それとこれとは話が別でしょうが!」
 うん、見事なノリ突っ込みだねアリサ♪
 と、それはともかく――
「ああ、うん。だって良い思い出になるから」
 俺は三人娘に微笑を向けて、
「ありがとう」
 深く、深く。万感の思いを持って頭を下げ、言った。
「ありがとう」
 顔を上げて、アリサに、ありがとう。
 アリサ。キミのおかげで俺は変われた。キミのおかげで俺は、強くなった。
「ありがとう」
 顔をすずかに向けて、ありがとう。
 すずか。キミのおかげで俺は、人を愛することを学べた気がする。女の子を本気で大切に想えるようになれた気がする。
「ありがとう」
 そしてなのはに、ありがとう。
 なのは。キミにはいつも色々と助けらてた。キミの強さにはいつも救われてた。
「ありがとう」
 ここには居ないはやてに。テスタロッサに。こんな俺に沢山の事を教えてくれた――俺なんかに関わってくれた全ての人に、ありがとう。
「……それから、ごめんな」
 俺はそして頭を下げた。
 ごめん、アリサ。キミの勇気に応えてあげられなくて。
 ごめん、すずか。キミを守ってあげられなくて。
 ごめん、なのは。キミを死なせてしまって。
 ごめん、みんな。
 ……ごめん。
 キミ達と遊ぶのも、会うのも――……今日が、最後だから。
「い、いきなり……どう、したの?」
 困惑顔でなのは。……うん、わからないか、やっぱり。そう内心で思いつつ、彼女が今日、アリサの家に担ぎ込まれて来たアルフからいろいろと話を聞いていたのを知っている俺は、ただ笑うしかない。
 ……悪いな。明日がテスタロッサとの決戦日で、この事件の終焉を迎える日だって知ってるから……今日が最後なんだ。
 言葉無く、思い、笑う。そう……今日が、最後。
 だって明日は――
「ふう。……意外と早かったわね」
 果たしてそう言ったアリサはため息を吐き、
「あんた、自分で気付いてた?」
 彼女は腕を組み、儚くも映る微笑を浮かべて、言った。
「あんたってね、いつも泣いてるみたいな目ーしてんのよ。……なんて言うか、いつも大人目線て言うか――」
「いつも遠くから見てて……いつも『眩しい』って、言ってるみたいだった」
 アリサの言葉を、こちらも微笑を浮かべてすずかが継ぐ。
「雅樹くんはいつも笑ってたけど……いつも、泣いてた」
 …………。
「まるで捨てられた子犬みたいに、ね。目が『寂しい』って……まるで別れを惜しむみたいに、さ」
 …………ああ、もう。
 俺は苦笑し、何度目ともつかない思いを抱く。
 まったく……この子達には勝わないなぁ。
「……雅樹くん」
 果たして俺を呼び、俺の手を両手で包み込むようにして握って来たなのはに、
「……好き、だったよ」
 笑って、告げる。
「俺はアリサの事が……好き、だった。すずかもなのはも、好きだった……。好きだった、よ……」
 笑って。
 ……笑って。
「だから…………」
 ……ああ。
 寂しい、な。
 悲しい、な。
 だけど――……ああ。
 どうして俺は――

 泣けないんだろう?

「…………ありがとう」
 俺はやっぱり、笑って、言った。
 笑って。
 好きだった少女達に、笑って。
「……ありがとう」
 やっぱり、それしか言えなかった。

 ◇◆◇◆◇

 現代では不可能とされる奇跡眠りし夢の都――アルハザード。
 それは大魔導師プレシア・テスタロッサが目指し、遂には辿り着け無かった世界。
 だけど……その行き方は聞いた。
 プレシアから行く方法を聞き出し、そしてその準備のためだけに前回は人生の全てを懸けた。
 だから――
「イグドラシル十三式改――起動」
 海鳴市海上。二人の魔法少女の激突が今まさに終焉を迎える頃。
「なっ!?」
「ッ!?」
 なのはとフェイトの戦いを同じように見守っていたユーノとアルフの隣で、
 俺が突然デバイスを起動したことに息を飲む二人など無視して、
 俺はデザイン的には変わらぬ黒金に光る長大な砲剣を手に空を駆け、
 そして今まさにテスタロッサへと降り注ぐ筈だった雷に、
「AMF起動! 二人とも俺に掴まれ!」
「「――――ッ!?」」
 叫び、AMFで少女二人を包んで雷撃を防ぎつつ、そのせいで飛行魔法の使えなくなった彼女らをどうにか抱えて滞空。って、ぅおぁ!? やばっ、さり気なくテスタロッサの胸「え!? ま、雅樹くん!?」――よし、ここはシリアスで誤魔化そう!
「驚くのはわかるが、ちゃんと掴まれ! さすがに片手じゃキツいんだ!」
 テスタロッサも! そう言って切羽詰まった顔で睨めば素直な少女達は「ぇ、あ」「う、うん!」と頷き、とりあえず俺に抱き付いた。……ぁ、ちょっと至福――って、それどころではなく!
「チッ、プレシアか。……おそらくはテスタロッサが負けてジュエルシードを奪われまいとしての攻撃だろうな」
 顔をしかめ、さも今の今まで知らなかったかのように言う俺。……ま、本当はこの事態は二回目なんで知ってたんだけどね。
 そしてそんな俺の言葉に「……ぁ」と、この雷の魔法に見覚えがあるのだろうテスタロッサは小さく声を上げ、途端に意気消沈する。
 ……母親に攻撃されたテスタロッサの思いも……まあ、わからなくもない。
 だけど……悪いけど、今回は無視だ。
「……二人とも、今から俺にジュエルシードを全て貸せ」
 シリアスに。どこまでも沈痛な表情を浮かべて、俺。そして当然、「え?」とびっくり眼になってる二人に、「今からプレシアを説得しに行く」と、やはり真剣な表情で告げる。
「せ、説得って――」
「プレシアの狙いはジュエルシードだ」
 疑問というより猜疑心を前面に出す表情で言葉を紡ごうとするテスタロッサを遮り、その不安に揺れる瞳を真っ直ぐに見つめて、継ぐ。
「テスタロッサ。キミの母親はね、それを使って『アルハザード』っていう夢の都を目指してるんだ」
 告げる。
 真実を。
 だけど、細部をぼかして。
「アル、ハザード……?」
 疑問符を顔に浮かべる二人に、俺は教える。
「どんな願いでも叶う」
 ……かも知れない。
「秘術が眠る」
 ……可能性のある。
「喪われた都。それがアルハザードで、そしてそこに行くために必要なのがジュエルシードさ」
 そう言って、視線を空へ。おそらくはこの会話を盗聴しているだろう連中を透かし見るようにして、俺は「だから、俺にジュエルシードを貸せ」と願う。
「それで、俺が今からプレシアを――」
「貸せません」
 テスタロッサに遮られた。
 ……チッ。俺は内心で舌打ちを一つ。ようやく雷撃も止み、俺がAMFを解除した事により飛行魔法を使えるようになったらしいテスタロッサは一歩離れ、
「わたしは……あなたが何者か、知りません」
 言って、俺を睨み、
「あなたを……信用、出来ない」
 そして、
「フェイトちゃん!」
 俺の隣に滞空し、呼びかけるなのはに「……だけど」と言葉を投げ、
「わたしは――……わたしの手には、もう……ジュエルシードが無い、から」
 テスタロッサはバルディッシュの内よりジュエルシードを出し、そしてそれをなのはに寄越しながら言った。
「だから……」
 少女は、傷付いた体で、
 大切に想っていた母親に攻撃されながら、
「母さんを……お願い、します」
 ――テスタロッサは、それでも頭を下げた。
「わたしは、どんな事も、します。わたしが、罪を……償います」
 だから、と。
 お願いだから、と。
 テスタロッサはこんな見ず知らずの怪しい男に頭を下げ、震える肩と声で言った。
「母さんを……」
 俺は、だから――
「任せろ」
 そう、頷いた。……頷けた。
「……雅樹くん」
 そしてジュエルシード全てを差し出し、俺に不安気な眼差しを向けるなのはに、
「後は任せろ、なのは」
 そう笑って、言えた。
「……うん♪」
 なのはの笑顔に――…………今さらだが、つくづく、こんな無垢なる少女達を欺いている自分に嫌気がさした。




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コメント


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なんという一夜城

一日のうちに大作ができてる⁉
ループ速度が割と速いタイプの話なのに、なんという練り込み度。
感服致しました。
きっと今後も出てくるであろう隠し球に、棒立ちで打たれる覚悟はバッチリであります。ハイ

Mb | URL | 2009年10月02日(Fri)00:02 [EDIT]


面白かったです。
そして完結して欲しいと思いました。
主人公と何より今までのヒロインが報われて欲しいですね。
この主人公の虚脱感と後半?における熱さは燃えました。

| URL | 2009年10月02日(Fri)13:27 [EDIT]


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