嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《りりかるーぷ》19

《りりかるーぷ》




 ◇◆◇◆◇

 人を作る技術。
 人を壊す覚悟。
 ……いつからだろう? いつから俺は、こんな風に『普通』からかけ離れてしまったのだろう。
 たくさんの培養槽。そこに浮かぶ、たくさんの人。……川平雅樹が作った、人。
 それらを眺め、思う。いつからだろう? 俺がこれらを見ても……何も感じなくなったのは。
 すべては自分のために。繰り返される転生を終わらせる……そのために行う実験。そのために行う非道。
 いつからだろう? そんな自分を忌避することなく受け入れられるようになったのは。……いつからだろう? そんな風に変わってしまったのは。
 本当に……いつから、だろう。こうしてキミ達と対峙する立場を選ぶようになったのは。
「……久しぶりだね」
 口元に微笑を浮かべ、今まさに研究所に乗り込んで来た黒衣金髪の執務官を、見た。
「…………マサキ」
 彼女は――フェイト・テスタロッサ執務官は、俺を沈痛な面持ちで呼び、そしてその手のデバイスを静かに構えた。
「私は貴方を……捕まえに、来ました」
 ……うん。俺は彼女の言葉に内心で頷きを返す。うん、そうだろうね。
 このシチュエーションは……初めてじゃない。彼女が違法な研究をしている俺を捕まえに現れるのを見るのは二度目だった。
 だから、
「出来れば、もう……キミと対峙したくは、無かったんだけどね」
 俺は微笑し、白衣のポケットから出した手にイグドラシルを顕現化させる。……うん。本当に、こんなシチュエーションは……二度と、したくなかったよ。
「……マサキ。貴方は――」
「あれから、もう……八年、か……」
 遮り、告げる。
「繰り返したくない。死んでまた、キミ達と『初めまして』を交わしたくない」
 ……ああ、そうだよ。
 だからこそ、なんだよ。
「……そのために、貴方は私の母さんを」
 問いに、微笑で返す。
 ああ、そうだ。プレシアはそのために――『アルハザード』に行くために、助けた。そのためだけに、あの日、彼女の元へ――
「……先に、謝っておくよ」
 ため息を一つ。俺は彼女に頭を下げ、
「ごめん、フェイト」
 そして、冗談で構えていたイグドラシルを下げて、

「俺――……生き返った、みたいだ」

 笑顔を浮かべて、言った。
「…………え?」
 果たして呆然とこちらを見やる、あの日俺が死んでから八年もの月日を経て成長した彼女に、俺は――
「本当に、久しぶり。……しばらく見ない内に綺麗になったな、フェイト」
 笑って、言った。

 ◇◆◇◆◇

 黒板に書かれた名前。教壇に立つ担任。その隣へと向かい、俺はもう何度目ともなる自己紹介を行った。
「川平雅樹です。どうぞ、よろしく」
 言って笑顔を向けるは、それこそもう見慣れたクラスメートたち。
 ――そう、俺はまた転生した。
 そして今回もまたなのはを介してアースラへと行き、イグドラシルを発注。ついでに『前』に世話んなったマッドドクターと接触し、身体の障害を無理やり直して、俺はまた、こうして三年の転入生となった。
 ……ああ、そう言えば。ふと席に座り、窓に映る自身を眺めて思う。今回は俺のコピーは作らなかったけど……『前』のアイツはしっかりテスタロッサの旦那になったのかな?
 それ以前に……テスタロッサは喜んだかな?
 もともとアイツは――俺の人格と記憶を転写して生み出した、戦闘機人でもある俺のクローンは急造ので……寿命だって一年も無かった。
 だからその『核』に『闇の書』の修正プログラムを――改竄された『夜天の魔導書』を直すプログラムを組み入れ、そして某かの理由で壊された場合のためにイグドラシルにアイツの記憶のバックアップをとらせていた。
 すべては『夜天の書』を――ひいては、はやてを救うために。そのための布石がアイツであり、そして後で回収したイグドラシルとアイツの遺体から抜き出した記憶メモリをもってもう一度アイツを生み出したのはテスタロッサのためだった。……て言うか、メモリを見てビックリしたな。まさかテスタロッサと……。
 果たして前回はそうして生み出したアイツを研究所の一つに置いて行き、そして俺は人知れず――テスタロッサやなのは達と関わることなく辺境世界で研究し続けて生涯を閉じた。
 だから――
「いざ、尋常に勝負!」
 果たして体育の授業。なのは、テスタロッサ、はやての居ないこのクラスで、俺は今日も笑みを浮かべてサッカーをしていた。
「って言っても俺、キーパーだけどね」
 ゴールの前。男子相手に元気いっぱい駆け回ってるアリサや本当に同い年かと疑いたくなる身体能力を発揮するすずかを眺め、肩を竦める。う~ん……やっぱり、感慨深いねぇ。
 俺はこれを最後に――繰り返される転生を、止める。
 そのために、俺は「ちょっ!? い、行ったわよ雅樹!」――アリサの言葉に視点を前に。今まさにシュート体勢となっていた男子へと戻し、
 そして、「よっと♪」蹴り出されたボールを横っ飛びでキャッチ。……ふふん。強化された筋力、舐めて貰っては困るな! そう内心で勝ち誇ってる俺に何故だか一様に唖然としてるクラスメートたち。ん? なんでだ?
 俺はとりあえず笑みを浮かべ、軽くボールを下に置き――
「……せっかくだ」
 俺は一人、駆け出す。
「本邦初公開! ザ☆チートキャラによる『俺様TUEEE!』開始!」
 イヤッホー!! そう奇声を発し、一人、また一人と抜いて行く俺。ふはははは! どうだスゲーだろ!? そうして遂には敵さんのキーパーと対面し――って誰だよ、翠屋JFCの名キーパーにキーパーさせた奴! これじゃ普通の子は――ってすずかはシュート決めてたな、そう言えば。
「っと、そういう事なら遠慮は要らないよな?」
 ニヤリと笑う。そうさ、あんなか弱いすずかだって決めてたんだし、俺だって良いよな? つか、ぶっちゃけコイツ、可愛い彼女は居るわ女子に人気だわで羨ましかったんだ。
「そんなワケでシュート!」
 果たしてこちらも子供とは思えない威力でシュートする俺。それを呆然と立ち尽くし見ていたキーパーの少年は、突っ込んだ。
「ど、どんなワケだぁあ!?」
 お、意外とノリの良い奴。

 ◇◆◇◆◇

 小学生ってのは単純で、足が早かったりスポーツが出来る男子ってのは、ただそれだけで人気になれる。
 そんなワケで、俺は今、生まれて初めてモテてた。
「――ハッ! もしやこれが噂に聞くモテ期!?」
 などとバカな事を叫べば、「……あんた、本当に頭良いの?」と呆れ顔で宿題の答え合わせをしている仲良しグループの一人、アリサが言った。……うん。やっぱり良いね、こういうシチュ。
 授業前。いつものように俺の机に集まるようにしてノートを広げてる子らを眺めて回し、「あ、ココ引っかかってる♪」と彼女にしては珍しいミスを指摘してニヤニヤする。うん。真っ赤な顔してるアリサは可愛いなぁ♪
 果たしてそれで『うーうー』唸りだしたアリサに「ちなみに俺、医師の免許を取れるだけの学力はあります」とトドメ。ドクター川平舐めんなよ、と。
「な――っ!?」
「勿論冗談ですが」
 絶句するアリサにウィンクし、駆け出す。そして「っっっ、このっ!」とやっぱり顔を真っ赤にして追い掛けて来るアリサに「やーい、引っかかった引っかかった~♪」と笑いかけ、あっかんべー。うん。アリサ、ブチギレ♪
「いっけー、アリサ~!」
「よっしゃ、加勢するぜぃ!」
「こ、のっ! ちょこまかと……!」
 そして始まる追い掛けっこ。って、コラ! なんでいつの間にか全員で俺を捕まえようとして「ごめんね、雅樹くん……!」――って、すずかまで!?
「……く! こうなれば仕方ない!」
 他の有象無象はともかくすずかは敵に回せない。だから「てい!」――とりあえずすずかのスカートを捲って、彼女が怯んだ隙に「キャッ!?」――すずかに手首を掴まれた。
「…………はい? って、ギャァアアアア!?」
 一本背負い、一本! って言うか教室の床って……。めっちゃ固い、ん、です、が……。ゴホっ……。
「っ! あ。ごっ、ごめんなさいっ、雅樹くん!」
「……うん、すずかさんや? 普通の、受け身を取れない子供にはしないでくれなさい」
 死にますよ? そう言い、駆け寄って来た少女に燃え尽きた漢の顔を向けて笑い「あ、黒」――おや、本音が。
「……………………え?」
「って、何堂々と覗いてんのよ!!」
 アリサキ~ック! 床に大の字で寝てた俺、ボールのようにゴロゴロ~。
「って、いきなり何するか!?」
 俺、思わずガバッと起き上がって抗議。それに「……ちっ。相変わらずしぶといわね」と指と舌を鳴らす少女。……うん。アリサ、今日も絶好調だね。
 駄菓子菓子! もとい、だがしかし!
「ちなみにアリサは水玉!」
 ビシっと指差し、勝ち誇ったように告げる俺。それに男子たちは『おお!』と色めき立ち、拍手喝采。……ふふ。なに、私も伊達に蹴られたワケでは「……ねえ、雅樹? それ、遺言、かしら?」――アリサが本気で怒ってる気配を感じ、笑みを引きつらせる。
「あ、あああ、アリサさ~ん?」
「ふふ、なぁに? この、もはや都市伝説級に希少な台所の『G』並みに疎ましい雅樹くん?」
 ……待て。俺はゴキか? ゴキブリ扱いか、アリサ!?
「ちなみにコックローチは普通に生息するぞ! 勝手に都市伝説にすんな、っていうか希少なんはキミん家ぐらいだ!!」
 家には出るぞ!? そう叫びつつジリジリと後退――って、ちょ!? 気付けば男子たちは俺から離れ、そしてすずかや他の女子たちは俺を包囲しつつあった。
 うわ、孤立無援!? 一様に『お前のことは忘れない』的な笑みを浮かべる男子たちは助けてくれそうに無いし、女子たちは何故かみんな敵っぽいし!
「さぁ、雅樹。何か言い残したことがあれば聞くわよ?」
 じつに良い笑顔でアリサ。って言うか最後通告ですか。
 それに俺は「では、一つだけ」と言って両手を上げ、ニヤリ。
「俺は……死なない。例えこの身が滅びようとも……すぐにまた第二第三の川平雅樹が「どこの魔王よ!?」――最後まで言わじげぱぁああ!?」
 ――そうして俺は、今日も今日とて、最後の学園生活をエンジョイするのだった。




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