嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《りりかるーぷ》18

《りりかるーぷ》



 ◇◆◇◆◇

 ――すべてが崩れ落ちて行く音が、聞こえた気がした。

 『仮面の男』からのメールを受け取った、その夜。テスタロッサが襲撃に遭った。
「…………すまない、テスタロッサ」
 翌日。リンディ艦長以下クロノやエイミィ、テスタロッサと使い魔アルフが住まうそこで、俺は少女に頭を下げた。
「……全部、俺のミスだ」
 顔を、上げる。そして少女の手に巻かれた包帯と頬に張られたガーゼを目にし、改めて苦い思いになる。
 ……くそ。俺が不用意に奴らに接触――……いや、接触は仕方ない。アレは予期せぬ事故みたいなもので――……だけど、事情を話さなければ。いや、それ以前に俺が『転生者』だと知らせなければ。いや、だけど――
「…………すまない。本当に」
 俺はまた、深く、頭を下げる。……くそ。悔やんでも悔やみ切れない。これは明らかに俺のミス。避けられた事象であり、俺が招いた「マサキ」――テスタロッサの呼びかけに顔を上げた。
 そして――ペチン、と。テスタロッサに頬を打たれた。
「……え?」
 痛くは無い。
 だけど、衝撃的というか――……俺は呆然とテスタロッサを見た。
「マサキの悪い癖だよ、それ」
 少女は優しく、柔らかく笑い、言った。
「マサキは、確かに『転生者』で……わたし達より多くのことを知ってるのかも知れないけど――」
 でも……それだけ、だよ。
「『それ、だけ』……?」
「うん。言い方は悪いけど……でも、『知ってる』マサキが全部悪くて、『知らない』わたし達には責任が無い――みたいなのは、ちょっとおかしいよ」
 テスタロッサは、微笑をたたえて告げる。
 貴方だけが悪いのでは無い、と。貴方だけが気負うことは無い、と。
 そして、
「そういう、『上』から見下ろすのは止めよう?」
 テスタロッサは、先ほど打った俺の頬に手を当てて、
「マサキはわたし達より、少し、『物知り』なだけ、なんだから……」
 …………ああ、もう。コイツらは、本当に……。
「……そう、か?」
「そうだよ」
 果たして、俺たちは微笑みあう。
 ただ等しく、同じ目線で「良い雰囲気だねぇ」――エイミィ達の存在を思い出した。
「私たち、邪魔かなぁ?」
「にゃはは……」
 ……おお、すっかり忘れてたわ。俺は傍らのエイミィとなのはに真剣な顔を向け、
「うむ。俺たちはこれから熱烈な口付けを交わすので邪魔だ」
 なぁ、テスタロッサ? そう言って少女に振り向けば、「くっ、くくく、口付けぇ!?」と案の定湯気が出そうなほど顔を紅潮させてるテスタロッサが。……くは。やっぱりコイツは面白いなぁ。
「まったく。アンタは本当に……」
 そう少女の足下で呆れてる子犬――アルフに「ん? キミは反対か?」と振る。
「ん~。別に~? あたしはフェイトが誰とつがいになっても反対はしないよ~?」
「あ、ああ、アルフ……!?」
 お。アルフもわかってるな。
「さて、ではお許しも出たことで――」
 言いつつ、俺はテスタロッサの肩に手を当て、その顎を持ちこちらに向けて――
「ぃ、ぅあ、えッ!? ええ!?」
 少女は真っ赤な顔をして視線を右往左往。そして俺が真剣な顔を作り、ゆっくりと顔を近付けると「……!」てギュッと瞳を閉じ、テスタロッサは固まった。
「はは。やっぱり、可愛いな、キミは」
 俺はそうテスタロッサに呟き、
 そして、

 アラームの音が、空気を切り裂くように鳴り響いた。

「……ったく。空気読めっての」
 俺はたまらず苦笑し、ハッと我に返ったらしいテスタロッサの「っっっ!?」――頬に、口付けた。
「っ! っっ!?」
 果たして湯上がった顔で言葉無く口を開閉するテスタロッサに、俺は告げる。
「……さて、帰って来たらキミの唇と言わず、全部をいただいてやるから覚悟しとけよ――フェイト」

 ◇◆◇◆◇

 砂漠の世界。
 そこは未開にして無人の世界であり、そしてこれからは――決闘の舞台となる。
「……何者だ?」
 俺が転送されて来るやデカいの相手に苦戦中だったシグナム。それをイグドラシルの砲撃で助ければ、怪訝な顔をし、彼女は俺を睨んで問うた。
 ……ああ、そう言えば。彼女の態度に今さらながら気付く。俺、今までコイツらの前に現れたこと、無かったわ。
「俺は、川平雅樹」
 肩を竦め、ニヤリと笑って告げる。
「別に管理局に属してるワケでも、味方をしてるワケでも無いし、キミらに敵対する理由も無かったんだけどね」
 だけど……事情が、変わった。
「……先に聞いとくよ、剣の騎士。キミらは『仮面の男』のこと……何か知ってるか?」
 黒鉄の銃身に金色の刃。イメージ的にはバズーカに両刃の長剣を付属したようなデザインの『イグドラシル十式改』を手に、武装局員の防護服を身に付け――そして右腕に、行きがけにフェイトから借りた黒いリボンを巻いて、俺は対峙する。
「それはこちらの問いだ」
「……そうか、残念」
 ふと、瞳を閉じて考える。シグナムが嘘を吐くとも思えないから……たぶん『仮面の男』は共通の敵なのだろう。
 ……だけど、
「俺は、連中の狙いの一つは『闇の書』の完成にあると思うんだ」
「それは……そう、かも知れん」
 苦笑する。ああ、本当に――……俺、何してんだろ?
「……俺はね、シグナム。別に魔導師じゃあ無いし、キミらのこと、嫌いじゃあ無かった。だから、『闇の書』の完成を手伝っても良かったんだけど――」
 でも、駄目だ。
 俺は、だって――
「『仮面の男』は――赦せない」
 ……ああ、赦せない。絶対に。『仮面の男』ははやてを拉致し、シグナム達はそれで事を急いて――フェイトを、襲撃した。
 だから――
「連中の狙いが『闇の書』の完成にあるのなら――悪いが、邪魔をさせて貰う」
 それではやてが死ぬことになろうとも、俺は――
「俺の女に手を出した事を……後悔、させてやる」
 果たして、その言葉にシグナムは――
「つまり、貴様は――」
 静かに、構え、
「――ああ。キミらの、敵だ」
 そして、
「イグドラシル――」
「レヴァンティン――」
 俺たちは、対立する。
「「カートリッジ、ロード!」」
 互いに譲れぬ物が有り、
 互いに大切な者が在るから、
「行くぞ!!」
 俺は腰溜めに構えたイグドラシルを彼女に向け、
「遅い!!」
 シグナムは即座に肉迫。俺が目を剥く間に鞘からレヴァンティンを抜き「っ、『障壁』!!」――俺はどうにか予めチャージしていた魔力を用いて発生させたシールドで防ぎ、
「くそ!」
 悪態を吐き、カートリッジをまた一つロード。そしてその魔力を素早くイグドラシルの推進力に転化させ、シグナムの二撃目を翳したイグドラシルで防ぎつつ後部の排出口から魔力を噴出。そのまま擦れ違うようにして彼女の横を抜ける。
「「――――」」
 視線の交錯は一瞬。攻防もまた瞬きの内。しかしそれで十分に理解出来た。
 これは…………勝てない、な。
 頬を過ぎ行く冷や汗に、もはや笑うしかない。いや、困ったなぁ……。
 川平雅樹は『前』に守護騎士四人と戦ったことがある。それも『今』の彼女達からしたら未来であり――つまりは眼前のシグナムより強い彼女と、それも四対一という状況で戦ったのだ。
 だから彼女達の実力は知っているつもりだったし、こうして戦う前からシグナムには勝てるだろうと信じて疑ってなど居なかった。例えジュエルシードが無くても――そう、思っていたけど……まさか、アレで手加減されてたとは。
「……参ったねぇ」
 ため息すら出ない。本当に、あの過保護騎士どもめ。じつは交際オッケーだったんかい! すっげー手加減してやがったんかい! そんな風に今さらな突っ込みを内心でしつつ、やっぱりため息。……はは。これは少し予定を早める必要があるかな。
「ん? どうした?」
 急に構えを解いた俺にシグナム。怪訝な顔をして「もう終いか?」と問いつつ、レヴァンティンを僅かに下げる。
 はは。それでも完全に警戒を解かないのは流石だけど――まあ、正解だね。
 だって、
「『終い』? ……まさか」
 俺はまだ、戦うつもりだから。
「さて、シグナム。戦闘再開の前に一つ問うよ」
 どこまでも軽く、自然体で構えて俺。おそらくはコレをモニタリングしてるだろうエイミィ達の事を配慮しつつ口を開いた。
「キミは『戦闘機人』というものを知っているかな?」
 そして、俺は――

 リミッターを、解除した。

 瞬間、俺から吹き出る魔導師達とはまた違った類の魔力。そして足下に浮かぶ円陣。
 それを見て「――ッ!?」と絶句するシグナムに、俺は不敵な笑みを浮かべ、
「……知らないようだから教えてやるよ」
 キミの体に、直接、ね。そう言って俺は、彼女に特攻をかける。

 ――勝てないと、わかっていながら。

 ◇◆◇◆◇

 思えば、俺が彼女に興味を持ったのは、その境遇に同情したからなのかも知れない。
 亡くなったプレシアの娘、アリシア。彼女を模倣した代替品として生み出された少女、フェイト。
 彼女の事情は『前』に聞かされた。それまで知らなかった、彼女の笑顔の裏の真実を、知った。
 ……或いは、『直前』のことに起因しているのか。果たして俺は、フェイトに興味を抱き、積極的に関わることにした。
「よお、久しぶり!」
 ――思えば、おかしなこと。俺が関わり過ぎる事で訪れてしまった悲劇を知りながら、何故フェイトに話しかけたのか。
「ん~、突っ込み無しか~? ――って、なんだなんだ、辛気くさいぞ~?」
 ――アースラで一人沈んで居ることが多かった少女。
 そんな彼女に俺は何故、関わろうとしたのか。どうして、彼女を元気付けようとしたのか。
 そして、何故――

 俺はフェイトのために、命を懸けようなんて思ったのだろう。

「…………マサ、キ」
 砂漠の世界。先ほどまで争ってたシグナムは去り、果たして代わりに現れたフェイトは泣きそうな顔で俺を呼んだ。
「……ったく。そんな顔するなっての」
 俺は苦笑し、少女を見上げる。
 体は……もう、起こせない。背にした砂を赤黒く染めながら、俺は地に体を横たえながらフェイトと対する。って、おや?
「お! フェイト、この角度っからだとバッチリ見えるぞ!」
 言って、ニヤニヤと笑いつつ傍らの少女のスカートを下から覗き見る。……ふふ。これで少しは空気が和らぐ「……良いよ」ことは、無かった。
 目を丸くする俺にフェイトは遂に耐えられなくなったとばかりに涙を零し、「見て、良いよ……」と嗚咽混じりに言うや膝から崩れ落ちるようにして地面にへたり込んだ。
「良いよ。見て良い、から……起きて、よ。マ、サキ……死なないで、よ」
 ――俺は、シグナムに敗れた。
 そして胸からリンカーコアではなく魔力の塊を――今の俺の動力源を無理やり引き抜かれ、死に瀕していた。
 だから――
「見て、良い……。触っ、ても……何、しても、良い……。良いから……! だから……死なないで……!」
 少女を泣かせても……懇願されても、それを叶えられない。
 もう投げ出された四肢は動かず、生き続けることは叶わない。
 だから……、
「わたし、は……マサキが――」
 ――……だからこそ!
「キミは、間違えるな」
 フェイトに笑いかけて、告げる。
「フェイト。川平雅樹は、好きな子が殺されて……間違えた。その復讐をしようと……キミと、殺し合った」
 涙を零す少女に、遺す。
 言葉を。……想い、を。
「キミは間違えるな。キミとシグナムは……はやてや、守護騎士達は、キミにとって掛け替えの無い友人になる、から」
 或いは、そのために生きて来たかのように。
 或いは、その事を教えるために生まれて来たかのように。
「……っ! で、でも……! でもあの人達はマサキを――」
「これは俺の望みだ」
 少女の言葉を遮り、告げる。
「俺の『核』はもともと、連中に蒐集されるために用意されてたんだよ」
 こと、ここに至って、教える。
「……ぇ?」
 呆然とこちらを見る少女に苦笑し、真実を、告げる。
「……大丈夫だよ、フェイト。川平雅樹は――本当の俺は、生きてる」
 俺は川平雅樹の――クローン、だから。
 俺は彼が生み出した、ただの……戦闘機人、だから。
「……騙してて、ごめんな」
 俺は……『川平雅樹』、じゃない。
 俺はただ彼の人格と記憶を転写されて生み出された、ただの人形。こうして来る日まで少女達を守り、来るべき時に『闇の書』に命を捧げる――そのためだけに生み出された道具。
 ……だけど、
 だけどな、
「フェイト。だけど……そんな偽物の俺だけど――……俺は、キミの事が、好きだったよ」
 だから――……ああ、本当に口惜しいが、仕方ない。
 本当に。後は本物の川平雅樹に「……違うよ」――フェイトの言葉に、閉じかけていた瞳を開けた。
 そして、
「マサキ。わたしにとっては、あなたが……本物、だよ。わたしが――フェイト・テスタロッサが好きになった男の子は、あなただよ」
 フェイトはそう言って微笑み、
 俺は「……そうか」と言って微笑を浮かべて返し、
「…………お休みなさい、マサキ」
 俺の意識は静かに薄れ――消えた。





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