嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《りりかるーぷ》17

《りりかるーぷ》




 ◇◆◇◆◇

「少し黙ってろよ、テスタロッサ」
 そう言ってマサキは悠然と歩き始め、
「どうも、初めまして、湖の騎士」
 彼女に――『闇の書』の守護騎士に話しかけ、
 そして、
「それから、初めまして、夜天の主――八神はやて」
 …………え?
「あ、あなたは――!?」
 わたしは呆然と、見ていた。
「下手に動くな、シャマル。この状況がどれだけヤバいか……わからない参謀じゃないだろ?」

 わからない。突然に過ぎる事態に、わたしは置いてきぼりをくらっていた。
「先に忠告しとくと、仲間への連絡もやめろ。……少なくとも、シグナム達が来るより俺たちが行動を起こす方が早い」
「く……!」
 これは、なに? どういう状況?
 わたしは目を丸くし、そしてやはり呆然と二人を――その間でわたしと同じように目を白黒している女の子を、見た。
「え、えっと……?」
「ん? ああ、そう言えばまだ自己紹介をしてなかったね」
 状況は、マサキを中心に動く。
「俺は川平雅樹。少し前までキミと同じ病院に入院してたんだけど……石田先生って、わかる?」
「あ。はい」
 或いは、これもまた予定調和であったのか。マサキは柔和な笑みを浮かべ、車椅子の女の子に話しかける。
「うん。キミのことは先生から聞いてて――っと、そうだ、はやて。俺たちと友達になってよ」
「「え……!?」」
 果たして驚き、目を丸くする一同。その全てに等分の笑みを向け、マサキは一人、話しかけ続ける。
「そっちも夕飯の買い出しだよね? せっかくだから一緒に食わない?」
「え、えっと……」
 女の子――はやては困ったように笑い、背後の女性――シャマルを、見た。
「…………」
 シャマルは固い表情でマサキを、そしてわたしを睨み、無言。その内心は、わからなくもないけど――マサキは、違った。
「なんなら、鍋にでもする?」
 彼はどこまでも軽く、告げる。
「そうすれば、はやてとヴォルケンリッター全員でつつけるし、ちょうど良い」
 だから、
「ちょ、ちょっと待って!」
 わたしは、ようやくそこで我に返り、彼を止めた。
「ま、マサキ? こ、この子が『闇の書』の主って本当!? それに友達って! お鍋って!?」
 混乱していた。だから、慌ててまくし立てたわたしの言葉も思考もぐちゃぐちゃで、
 だから――
「まあ、落ち着けテスタロッサ」
 ポンと。マサキが頭に手を置き苦笑するのを見ても、わたしは「『闇の書』はな。壊れてるんだ」――固まった。
「「え……?」」
 奇しくも驚愕の声は彼女たちと同じように。
「知らないのか? ロストロギア『闇の書』――正式名称『夜天の魔導書』ってのには、そもそも転生機能や主への浸食機能なんて無かったんだが」
 対し、マサキは語る。
「はやて。君は遠からず、『夜天の書』に食い殺される」
 それこそまるで、全知全能のように。
「シャマル。君たちが行ってる『蒐集』は――無駄だ。このまま完成させても、『闇の書』としてイカレた魔導書は、主の覚醒と同時に彼女を取り込んで暴走する」
 繰り返し。繰り返し、繰り返して、全てを知るようになった神は、告げる。
「そ、それは――」
「あ、あの――」
「なんで――」
 驚愕は、またしても等しく。それこそ、マサキという神の視点からは等しく下位の様相を呈して、あがる。
 それに、
「さて。じゃあとりあえず、向かいのレストランまで付き合え」
 マサキは、やはり上から告げる。
「キミたちのために話してやる」

 ◇◆◇◆◇

 さて、どうしたものかな?
 レストランのボックス席に座し、背もたれに深く体を預けながら、先ほどした会話を反芻する。
 一応、シャマルには『夜天の魔導書』の欠陥を。はやてには彼女たちの蒐集と、その理由を話した。
 その上で、俺はヴォルケンリッターの行動を無駄と言い――その行いを肯定し、推奨した。
 『夜天の魔導書』は……イカレてる。このままなら遠からず主は浸食によって死ぬか……或いは暴走によって死ぬかをするだろう。
 だけど規定事項の一つとして、確かにはやて達が救われる物語があった。
 それは奇跡なのか。……それはわからないが、少なくとも『前』の記憶の中ではやてが死んでいたのは、それこそ『直前』のだけだったので、おそらくは大丈夫だろう。……イレギュラーな出来事さえ無ければ、ね。
「本当に、参ったね」
 呟き、ため息だ。本当に……そのイレギュラーな事態を、何も俺が起こさなくても良いだろうにな。はぁ……。
「参ったね、じゃないよ」
 視線を前に。心底困ったような顔をし、ドリンクバーのジュースのストローに口を付けるテスタロッサを見ながら、思う。
 ……うん。間違えては、いない。あれが最善だ。
 あの状況でシャマルの早まった行動を制しつつ、はやてにテスタロッサを紹介し、そしてテスタロッサには局への報告を止めさせる理由を話せた。
 だから、上々だ。終始通信妨害をしてたシャマルには真実を話せたし、はやてには友達を与えられた。……もっとも、蒐集の件ではショックを受けていたが――……それは、仕方ない。それは遅かれ早かれ、彼女たちが立ち向かわないといけないことだったからね。
 だから、
「テスタロッサ。さっきも言ったが……」
「うん。わかってる」
 ……いや。わかってるなら、キミは何故に不機嫌か?
「管理局に――クロノ達に話したら、はやてが死んじゃうんでしょ? だったら……言わない。知らないふり、する」
 ……? なんかテスタロッサ――拗ねてる?
「? キミ、さっきから――」
「どうするの?」
 遮られた。
「これから。はやてのために蒐集は止められない。だけど、魔導書を完成させても、ダメ」
 テスタロッサは、そして真っ直ぐ俺を見つめて、問うた。
「マサキは、これから、どうするの?」
 それに、
「別に、何も」
 軽く、返す。
「これまでと一緒さ。我、関せず」
 ……そう、一緒だ。
 俺は極力関わらず――そして最悪の事態になったら、動く。それだけだ。
 それだけ。もう二度と俺ははやての隣には「……名前」――ん? 俺はテスタロッサの呟きに、俯きかけていた顔を上げた。
「なんか言ったか?」
 ? なんか、テスタロッサの視線がジト目を通り越して涙目になってる?
「だから、名前……。はやても、『はやて』って……」
 はい? 俺はらしくなくボソボソと言うテスタロッサに首を傾げる。っていうか、やっぱりコイツ……拗ねてる?
「それに…………すごく、親しげだった」
 ……うーん、何言ってるんだろ?
「? まあ、そりゃあ……うん。『前』に、はやてが婚約者だったこともあるしな」
 頭をかきかき言うと、テスタロッサは目を丸くして――やっぱり、いじけたような表情になってストローをチュウチュウ吸い始めた。
 ? なんだ?
「……そう言えば、アリサやすずかとも、だっけ?」
「え? あ、ああ、うん」
 ? なに? なんでテスタロッサは俺に半目を向けてるんだ?
 俺はテスタロッサの態度に首を傾げ続け、
「なのは、も……?」
 そして――固まった。
「…………え?」
 目を丸くして、見た。
「だって、マサキ……なのはも『なのは』って」
 果たして、そのテスタロッサの問いに、俺は――
「……違うよ」
 微笑んで、言った。
「違う。……まあ、好きだったし、告白もした。好きって、言っても貰えた」
 だけど――違う。
 俺は自嘲の笑みを浮かべて言う。
 違うよ、と。なのはとはそれだけだった、と。
 そして、「――お待たせ致しました」と店員が料理を運んで来て、
「……………………お子様ランチ?」
 ――テスタロッサの半目が心地良かった。

 ◇◆◇◆◇

「――どうしてフェイトちゃんだけ名前で呼んであげないの?」
 翌日。寂れた木の下に現れたのはテスタロッサではなく、なのはだった。
「……それに理由、要るのか?」
 弁当から顔を上げ、首を傾げて見せる。
「俺は基本的に女の子は姓で呼んでるから、別にテスタロッサだけじゃないぞ?」
 そう言ってまた少女から視線を外す。うーん……やっぱり微妙に引きずってるなぁ。
 果たして「そうなの?」と横で不思議そうにしてるなのはに俺は苦笑し、
「つか、むしろキミらが特別なんだよ」
 そっと、ため息。
「『前』にね、言われたんだよ。『名前で呼んで』って。だから――」
 そうしてる。そう言ってから、内心で苦く笑う。まったく。『前』に言われたことを守るとか……本当に、女々しいな。
「そう……なんだ」
「そう、なんです」
 ――川平雅樹は『前』好きになった女の子を好きにはならない。
 それはただでさえ『過去』と『現在』との違いに心を締め付けるような思いになるのに、それが大切な人となると我慢出来そうにないからだ。
 そして、その中でも、なのはは別格。
 それが『直前』というのもだけど、何より結ばれる前に殺してしまったというのが大きい。……はっきり言って、彼女だけはどう接して良いのかわからない。
 すずかも、だけど……なのはは俺が干渉し過ぎたせいで殺してしまった、大切な人だから……。
「えと……話は変わるけど、雅樹くん。今回の――『闇の書』事件のことって……訊いても、良い?」
 果たして、その問いに「……ああ、どうぞ」と返しつつ、思う。まさか最初に、なのはに聞かれるとは思わなかったな。
「えと、えと……。あの、『闇の書』って――」
「これは内緒なんだがな、なのは」
 遮り、人差し指を唇に当て片目を瞑って見せる。
「じつはな。俺……ほとんど知らないんだ」
 お? やっぱり『え?』って顔してやがるな。
 俺は苦笑し、視線を上へ――空を隠し影を作る枝葉へと向け、
「どうにも全員が全員勘違いしてるみたいだし、俺もそうなるよう仕向けはしたが……『闇の書』事件に遭遇したのは俺も初めてでね」
 肩を竦め、言う。……そう、初めてだ。
 アリサの時やすずかの時は言うに及ばず、俺はいつも『闇の書』事件が解決した後しか知らなかった。……と言うか前者二名には魔法のことすら秘密にされてたからな。
 そして、
「え!? じゃ、じゃあ――」
「ただ、結末は知ってる」
 また少女の言葉を遮り、言う。……うん。なのはの事……やっぱり意識してるな。
「ただし、エンディングは二種類。A、『なんか知らんが大団円?』。B、『海鳴消滅バッドエンド』」
 チラリと隣を窺えば、なのははその結末の落差に絶句し、目を丸くしていた。……さもありなん。
「……ま、俺としてはAのエンディングを目指してるわけだが――」
「あ、当たり前だよ!」
 お、ナイス突っ込み。
 ……でも、なぁ。
「駄菓子菓子。もとい、だがしかし。じつは俺、そのエンディングに必要な選択肢やら分岐点がわからないんだ」
 頭をかきかき、苦笑。
「とりあえず『なのはの存命』と『アースラの介入』は最低限必要なんだろうけど……わかるのはこれだけだな」
 言って嘆息。……悔やまれるのは、はやてにその辺をちゃんと聞いてなかった事か。
 ……まあ、でも、その辺は八神家全員、あまり話題にはしたくなさそうだったからな。仕方ないと思「あ」――なのはが何かに気付いたらしい。
「ん? どうした?」
「え……?」
 ……いや、『え?』じゃないし。俺は怪訝顔でなのはを窺う。なんか気付いたんじゃないのか?
「あ、うん。えっと、ね……」
 ? 瞳を泳がせ、言い難そうにしてるなのはに首を傾げる。……なんだ? 何を言う気「あのね!」――なのはは勢い良く体を近付けて言った。
「お、おう……!?」
 思わず離れる。
 そして、
「……やっぱり、だ」
 少女は顔を曇らせ、言った。
「雅樹くん。なのはのこと……避けてる、よね?」
 …………ああ、本当に――
「そ、それって、やっぱり、さっき言ってた『なのはの存命』が――」
「キミ、絶対、年齢詐称してるだろ?」
 遮り、苦笑。……ああ、もう。本当に、なんて子どもらしくない子どもなんだ。
 本当に。本当に、なんてキミは――
「マセガキ」
 言って、少女の額を小突く。
「にゃ!?」
「ったく。キミらはもう少し、子どもらしくしてろよ」
 苦笑する。……うん。見た目だけなら年相応の愛らしい女の子なのにな。
 俺は額を押さえ目を白黒させているなのはに「キミらと居ると、自分の歳を忘れるな」と笑う。
「俺、これでも精神年齢は五十近いんだがな」
「え゛……? ええーッ!?」
 ん? そんなに驚くことか?
「え、ぁ。で、でもでも! いつもフェイトちゃんのスカートめくったり――」
「あれはスキンシップだ」
 ……って、おい。なんだ、その生暖かい笑みは。
「にゃ、にゃはは……。そ、その発想が、既に十分、子どもっぽいような……」
 果たしてなのはの言葉に「……む」と顔をしかめ、俺はまた手元の弁当箱に視線を落としてから言った。
「そうは言うがな。あの子は……ああでもしないと子どもらしくならない――いや、『ならなかった』からな」
 言って、思い出す。
 それはまだ、アースラに居た頃。プレシアの事で塞ぎ込み、沈んでいた少女をどうにかしようと思った俺は――

 とりあえず、テスタロッサを弄って遊んでみた。

「……うん。やっぱりテスタロッサをからかうのは楽しいからな」
 遠い目をして、そう結論付ける。うん。たぶん俺がずっとテスタロッサを子ども扱いして来たからこそ、彼女は今、『前』より年相応の女の子みたいに笑ってるんだ。
 ……きっと。おそらく。だから俺は間違って無い。……筈。
「にゃはは」
 そしてそんな俺になのはは苦笑し、「ん?」――俺はポケットで振動し始めた携帯を取り出して画面を見た。
「…………え?」
 メール受信、一件。
 発送者、八神はやて。
 内容は――



『「闇の書」の主は仮面の男が預かった』



「…………そ、んな」
 ――俺はまた、何かを間違えた、らしい。




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