嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《りりかるーぷ》16

《りりかるーぷ》




 ◇◆◇◆◇

 裏庭の、寂れた、一本の木の下が俺のランチタイムの指定席。
 そこは、はっきり言って寒い。
 十二月なのだから当然なんだろうけど、なにせ完全に影に隠れているのだ。日の当たる屋上の、なのはやテスタロッサ達とは違う。あっちはそれなりに暖かかったが…………うん。
 たぶん、あの空間には、もう――
「また、こんな所でお昼?」
 声に苦笑し、「お節介だなぁ」と言ってテスタロッサに振り向く。
「……迷惑、かな?」
 そう言って隣に腰を下ろすテスタロッサ。その僅かに不安に揺れる瞳に「いや。どちかと言えば、有り難いな」と返し、彼女の手製の弁当を示して笑う。
「……おいしい?」
「ああ。――っと、それより……良いのか? キミ、なのは達とお昼食うの、夢だったんだろ?」
 視線を上へ。今ごろはお昼ご飯を賑やかに食べていることだろう少女たちの居る屋上へと向け、問う。
「……うん。だけど、マサキだけを一人にするのも……嫌、だから」
 …………本当に。どうして今回は、こんなにもテスタロッサに懐かれているんだろうな?
「……あのさ、テスタロッサ」
 ため息を、一つ。視線を手元の、本当に綺麗に作られた弁当へと落として口を開いた。
「前に、話したよな? 川平雅樹は転生者で、十年というサイクルで転生を繰り返す存在だって」
 冷たい、外気。
 それよりも冷たい声で紡ぐ、言の葉。
「キミたちと屋上で食べていた頃も……あった」
 瞳を閉じる。
 瞼の裏に『前』の記憶映像を投影して、「だけど」と言葉を次ぐ。
「もう、一緒には……居られない」
 瞳を、開ける。
 そして隣の『どうして?』という顔をするテスタロッサに、微笑む。
「だって…………寂しい、だろ?」
「え……?」
 ……はは。わからないかな、やっぱり。俺は不思議そうな顔をするテスタロッサに苦笑し、
「あのさ、テスタロッサ。キミは川平雅樹と屋上で食事をとった記憶は、あるかな?」
 問いつつ、答えは既に俺の中にあった。
「それは――」
「『今』のキミには、無い」
 だけど、
「『前』のキミには、ある」
 それだけさ。そう笑い、視線をまた屋上へ。
「俺にはキミと屋上で食事を食べた『過去』の記憶がある。……だけど、キミには――キミたちには、無い」
 ……わからないかな?
「俺はアリサと恋人だった記憶が、ある」
 伝わらない、かな?
「すずかと夫婦になった記憶も」
 ……想像、出来ないかな?
「なのはを死なせてしまった記憶や――」
 俺はテスタロッサの目を見て、

「――テスタロッサと殺しあった記憶も、ある」

 苦笑する。目を丸くし「……!?」って息を飲んでるテスタロッサに、苦い笑みを浮かべるしかない。
「キミたちは知らないだろうし、知らないのが普通なんだろうけどね」
 ……だけどさ。
「テスタロッサ。そんなワケで、『覚えてる』川平雅樹にとって、『知らない』キミたちと食事を共にするっていうのは……けっこう、寂しいんだ」
 そう言って、また、瞳を閉じる。
 ……ああ、そう言えば。脳裏に浮かぶ、『前』の記憶映像。……『これ』、話した後に、言われたな。

 ――大丈夫や。雅樹くんを寂しくなんてさせん。

 それは、はやての――

 ――大丈夫。私は、たぶん、雅樹くんが求めれば、いつだって……好き、になるから。隣に、居るから。

 ……ああ、そうだな。

 ――だから……寂しかったら、私を求めてな。私に話しかけてやってな。

 ……うん。だからこそ、俺は――

 ――私は、貴方のことを愛するよ。……これから先、何度でも。何度、貴方が私に出逢っても、きっと……私は、川平雅樹のものになることを誓い――許します。

 ……何度でも。
 何度転生しようとも。
 俺は決して――求めない。
 キミを。みんなを。『前』のキミたちを。
 求めない。
 だから――
「わ、わたし、は――」
「何も、要らない」
 遮り、瞳を開けて隣を見る。
「気にするな、テスタロッサ。俺はキミに、『前』のキミを求めていない」
 ……だから、
 だから、せめて――
「……頼む。今は、ただ、隣に居てくれ」
 それだけで幸せだから、と。こちらに憐憫の視線を向けるテスタロッサに、微笑んで、告げた。

 ◇◆◇◆◇

 ……わからない。

 ――そんなワケで、『覚えてる』川平雅樹にとって、『知らない』キミたちと食事を共にするっていうのは……けっこう、寂しいんだ。

 頭の中で繰り返し紡がれる、声。

 ――何も、要らない。

 彼の――川平雅樹の、声。

 ――……気にするな、テスタロッサ。俺はキミに、『前』のキミを求めていない。

 マサキの、本当に寂しそうな声。顔。笑み。

 ――……頼む。今は、ただ、隣に居てくれ。

 ……わからない。

 ――それだけで幸せだから。

 わからないよ。
 わたしは、何をしたら――

「雅樹くんは、なんで今、学校に居るんだろうね?」
 夕方。どうしても自分一人じゃ答えが得られないと思ったわたしは、なのはの家にお邪魔して……相談した。
「雅樹くんは、わたしたちと居ると寂しい。それは『前』のなのは達を知ってて……『今』との違いが、たぶん、雅樹くんを独りだって思わせちゃうからなんだろうけど……」
 だったら、なんで一緒に居るんだろう?
 どうして、わたし達の側に居るのかな?
 そんな風に首を傾げて問うなのはに、「え……?」と、わたしは今さらながらにその事に思い至り、目を丸くした。
 ……ぁ。果たして、気付く。そうだ。言われて見れば、おかしい。
 マサキが体を不自由にしていたのは聞いた。だから管理局を頼り、なのはという伝を使ったのも知ってる。
 だけど……どうして母さんを助けたんだろう?
 どうしてその後もわたし達と――わたしと、一緒に居てくれるんだろう?
 ……おかしい。
 だって彼は言ったのだ。『テスタロッサと殺しあった記憶も、ある』って。
 だから――
「たぶん、マサキは……『闇の書』事件を、知ってるんだ」
 声が、震えた。
 それは、クロノやリンディさんも考えているだろう事で。だからこそわたしは、それをさり気なく彼から聞き出そうってしてたんだけど――
「そうだね。雅樹くんは……知ってるんだろうね」
 思い出す。なのはが襲撃にあったその日、彼は――何も、しなかった。
 そしてそれは……おかしい。
 マサキは、強い。たぶん、わたしよりずっと。本人は『デバイスが高性能だから』と笑っていたけど……違う。
 治療のためにアースラから離れて一月ばかり。その間に専用のデバイスを組んだ、って言ってたけど、それだけで説明出来るような強さじゃない。
 だから――……だけど、彼はこの事件に、殆ど干渉していない。
 それこそ、まるで――
「自分が何もしなくても大丈夫だから……」
 呟き、ハッと目を剥く。そうか。だから――
「うん。たぶん、雅樹くんは、わたし達を信じてるんだ」
 言って、なのはは笑った。うん、そうだ。わたしもそれに頷き、思う。マサキは、だから何もしないで見守ってるんだ。
「守って、るんだ」
 いざって言う時に助けられるように。
 そんな時が来ないと知りながら、そんな時が来ないように何もしないで。
 すべては、そう。わたし達のために――
「……だけど、それは――」
 マサキにとって苦痛なのでは?
 マサキにとってそれは、とても辛いことなんじゃ?
 今と過去の違いに、一人、胸を痛めている彼にとって……それは、とても――
「ううん。たぶん、違うよ」
 それはまるでわたしの思いを理解しているように。なのはは軽く頭を振り、そして微笑んで、言った。
「雅樹くんは、何かをして、悲しい未来になることが嫌で……。だけど、何もしないで、悲しい未来になるのも、ダメ……」
 それは――……そうだろう。
 この半年で、彼が優しいのはわかってた。なんだかんだでずっと寂しいわたしの側に居てくれて……ずっと、わたしに笑わせてくれてたから、知ってる。
 マサキは、優しい。
 だからマサキは、寂しくてもわたし達の側に――
「だけど、雅樹くんは――わたし達の側に居ることを、選んだ」
 …………え?
「それは、寂しいから」
 なのはと結論は同じ。
「それは、それでも大切だから」
 だけど、違う。
 決定的に。
「きっと、今度こそ、って思ってるんだ」
 違う。なのははわたしなんかより全然、彼を理解しているようだった。
「たぶん、悲しいことが、あったんだ」
 瞳を閉じるなのは。その瞼の裏に何が見えるのか……わたしには、当然、わからない。
 わからない。だけど、きっと、なのはにもわからない。
 きっと。それを知り、泣いているのは――
「フェイトちゃんは、どうしたい?」
 果たして、なのはは、問う。
「雅樹くんと、ずっとこのままで良いって思う? それとも、例えもっと傷付けてしまうんだとしても……雅樹くんと近付こうってする?」
 それは、
 その問題は、
「……わたしの答えは、なのはの答えと同じ、かな」
 笑う。
 そして、瞳を閉じて、紡ぐ。
「わたし達のすべては……まだ、始まってもいない」
 なのはの答えが、わたしなのだとしたら――
「だから、本当の自分を始めるために……。今までの自分を……終わらせよう」
 わたしの答えは、
「わたしは、マサキと……」

 ――友だちに、なりたいから。

 ◇◆◇◆◇

 おかしい。どうしてこうなった?
「だから、わたしと勝負しよ?」
 学校帰り。どういうワケか俺と真剣勝負がしたいと言って聞かないテスタロッサにうんざりする面持ちになりつつ日課の買い出しを――って、コラ。インスタントだからって理由で人の夕食を勝手に棚に戻すな。
「……あのなぁ。『友だちになりたいから』って理由でガチバトルって……キミ、少年誌の読み過ぎ」
 ため息を一つ。俺は呆れ顔でテスタロッサを見やり、さり気なく弁当をカゴに――って、おい。弁当もダメかい。
「? よくわからないけど、勝負しよ?」
「小首を傾げて可愛いく言ってもダメ。面倒」
 ……ちくせう。誰だよ、テスタロッサにバトルもののマンガだかアニメだか見せたやつは――って、あ。俺だ。
 そう言えば、俺の部屋にテスタロッサが来た時に読ませたなぁ。龍玉集める猿人のバトル漫画。
「……あのね。普通、拳と拳で分かり合うっていうのは男同士の友情なの」
 キミ、女の子でしょ? そう言って説得しようとし――ああ、そう言えばこの子たちもそんなノリで友達になってたっけ、と今さらながらに思い至る。
 そして、
「えっと……。じゃ、じゃあ、マサキが勝負して勝ったら、マサキの言うこと何でも聞くから!」
 その言葉に――凍り付く。
「…………バカ」
 ――……キミ、そのテストで、俺に点数で勝てなかったら――俺の言うこと、何でも聞けよ……。
「……マサキ?」
 表情から、色が消える。
 心から、温みが無くなる。
「……テスタロッサ」
 声は冷たく、
 瞳に人間味は無く、
「キミは――」
 俺は、そして――

 苦笑、した。

「……え?」
 キョトンとするテスタロッサに、「バ~カ」と笑い、肩を竦めて告げる。
「あのな。男相手にそーいう事言うには、五年は早い」
 そもそも。そう言いつつ俺は――ペタリ。無防備に立っていたテスタロッサの、まだまだ平坦な胸へと手を当てて、ニヤリ。
「ここに、もう少し男の夢を詰め込んでから「きゃっ!?」――ぐひゃ!?」
 テスタロッサはグーで殴った。……いや、ここはパーでしょ。そう床に転がりつつ思い、『そう言えばアリサもグーだったな』と変な納得をして体を起こす。
 そして、
「ま、マサキのヘンタイ! チカン! エッチ! ロリコン! セクハラ! ペドヤロー!」
 ……おいおい。誰だよ、テスタロッサに罵詈雑言なんて教えた奴。
「まあ、十中八九エイミィかアリサだろうけど――とりあえず、ロリコンとペドヤローは否定な」
 言って、ため息。それからジト目を向け、一定の距離を保つテスタロッサを見やり、
「……わかったろ? 『何でも言うこと聞く』ってのは、『黙ってこういう事されてろ』って言われることもあってだな」
「――でも、マサキはそんなお願いしない」
 …………はい? 思わず目をしばたき、若干頬を染めてこちらを上目使いで睨むテスタロッサを見た。この子、なに言ってるんだ?
「だ、だから! マサキは、本当にわたしが嫌がることはしない、から……」
 ……うん。まあ、それはそうだけど――
「でも、俺はエッチだぞ?」
 言いつつ、テスタロッサのスカートを「……!」――チッ。距離があり過ぎて避けられた。
「だ、だけど……! しょ、勝負を――」
「あー、ハイハイ。うん。どっちにしてもやらないから良いや」
 強情なテスタロッサから体を反転。俺はさっさと夕飯の買い出しに戻る。
「――って、おい」
 川平雅樹は逃げ出した。しかし回り込まれてしまった。
「しょ、勝負……」
 うぐ……! 涙目で懇願するテスタロッサに怯む。こ、こいつ……いつの間にそんな技を……。
 俺は視線を逸らし――制服の裾をちょこんと持ち、引っ張り、顔を覗き込んで来るテスタロッサに再び怯む。く……! か、可愛いジャマイカ。もとい、可愛いじゃないか!
 果たして俺は、仕方無く顔をテスタロッサに向け――
「って、あ!」
 声を上げてから『しまった!』と思った。
「? ……ッ!?」
 視線の先。そこには、こちらと同じようにビックリ眼になってる女――シャマルと、そして『闇の書』の主はやてが、居た。
「…………あちゃー」
 俺は顔を覆い、そして――




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