嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《りりかるーぷ》14

《りりかるーぷ》




 ◇◆◇◆◇

 客観的に見て、今の俺の精神状態は――かなり、ヤバい。
 躁と鬱の差が激しいと言うか、喧嘩っ早いと言うか……さっきっから情緒不安定にも程があると思う。
 だけど、まあ……仕方ない。と言うより、狂わない方がおかしいんだ――そう、他人ごとのように思い、言い聞かせながら疾駆すること数分。片っ端からガラクタともを薙ぎ払い、壁に穴を開けるようにして飛び回っていたのが幸いしたのか、俺はすぐにプレシア・テスタロッサのもとに辿り着けた。
「……よう。会いたかったぜ~、糞ババア」
 もともと彼女の居場所は、ジュエルシードの共鳴反応からして大体はわかっていた。
 だから、プレシアのもとに降り、彼女の周りに浮かぶ宝石を見ても何を感じるでも無く、そしてその背後に置かれた生体ポットにしても、どうでも良かった。
「……驚いたわ。まさかこの状況でジュエルシードを運んで来てくれる子が居るなんてね」
 そう言って笑い――しかし瞳は血走ったような、妄執を宿す危ない光をもって俺に向けなられ、
 そして――彼女は躊躇い無く俺に向けて魔法を放った。
 それに対し、「……ハッ!」俺は鼻で笑い、

 ――イグドラシルの発するAMFは、難なく彼女のそれを打ち消した。

「なっ……!?」
 果たして驚愕に目を剥くプレシアに、
「ハッ! 死に損ないの魔導師風情が、俺に魔法を届かせられると思うな!!」
 ――腰に下げた、全長二メートルに迫るナイフ。それが、遠目から見たイグドラシルのシルエットだろうが――はっきり言って、その金色の刃は飾りだ。
「く……!」
 顔を歪めるプレシアに俺はイグドラシルの刃――それを二つに割り、中心から伸びた砲頭を向け、
「……死ね」
 躊躇い無く、トリガーを引く。
「――――!」
 迸る、青白い魔力。それは一瞬でプレシアを飲み込み――爆発。
 それこそ空間を震わせるかのような大爆発を引き起こした。
「…………はは」
 ――アースラで保管していたらしいジュエルシードを全て組み込んだからこそ言える。コイツは一種の『魔導砲』だと。
 それも内する宝石の魔力を弾丸として放つコレは、並の魔導師の砲撃を軽く凌駕する威力を持っている上に、イグドラシル事態が飛行ユニットでもあるため、コイツを持っているだけで空戦も可能という優れものだ。
「くはははははは!!」
 だから――笑う。
 だからこそ、この一撃で殺せたと確信し、笑い狂う。
「ははッ、ざまーみろ死に損ない! 所詮は死ぬ運命だったキミが、なのはを殺してんじゃねーよ! くはははははは!!」
 ――そして、

「は、離しなさい出来損ない!」

 その声に、目を剥いた。
「…………テスタロッサ」
 振り向き、見れば――そこにはプレシアを抱えたテスタロッサの姿が。
「「…………」」
 距離にして約十数メートル。
 俺たちは無言、無表情で睨み合い――そしてまた、俺は一切躊躇い無くイグドラシルのトリガーを引いた。
「……ちっ」
 舌打ちを一つ。今度は完全にテスタロッサ達が避けるのを見れた俺は、
「あ、あ、アリシアが……! アリシア……! 私の、アリシア……!!」
 そう、テスタロッサの手から離れ、先の砲撃で瓦解した床へと這って行くプレシアから視線を外し、
「……貴方は、アルフの敵」
 その身を赤く汚した、凍えるような冷たい瞳を向ける少女を睨み、
「……キミは、なのはの敵」
 笑い、
 そして、
「「――――!」」
 俺たちは――殺し合う。
「壊れろ! 消し飛べ! ははははははは!!」
 イグドラシルの砲撃。それを稲妻の如き速度で滑空し、避け、肉迫するテスタロッサ。
「――――!」
 振るわれる金色のデスサイズ。
 俺の着ているのは普段着である薄着のシャツにジーンズという、それこそ紙切れのような装甲だが――関係ない。
「っ!?」
 ――元は『ガジェットドローン』とかいう兵器もどきをコピーし、月村姉に教わった独自技術をふんだんに盛り込んで組み上げたコイツには、そもそも魔法攻撃は通じない。
「魔力が、かき消される……!?」
 驚愕に目を剥くのも当然。テスタロッサの一撃は俺に触れることなく刃はかき消され、空を切り――俺の砲撃に再び距離を開けた。
「……『アンチ・マギリング・フィールド』」
 通称『AMF』――それこそがイグドラシルの最大の特徴であり、これを発し、纏わせるコイツにはあらゆる魔力攻撃が無力となる。
「……なあ、テスタロッサ。どうして俺たちは、殺し合ってるんだろうな?」
 俺は、問う。
「本当は、今日、俺はキミを紹介してもらう筈だった」
 場違いに。
 砲撃を繰り返し、テスタロッサを殺そうとしながら。
「なのははキミと友だちになりたかった。だからキミを――なのはの友だちを、紹介して貰う筈だった」
 迫る魔法をかき消し、
 振られるデバイスに朱線を刻まれながら、
「俺は――転生者だ」
 零す。
「俺は……知ってる。キミたちの未来を。俺は、キミたちが友だちになるのを……知っていた」
 ……知って、いた。
 俺は、だからこそ消えるつもりだった。
「俺の知る未来で、キミはなのはの親友だった。同じ学校に通い、塾に行き、同じように管理局で働いて……笑いあってた」
 だから、その未来のために、俺は――
「だから、俺は…………キミの母親を、赦さない」
 砲頭を、プレシアへと向ける。
「――ッ!」
 テスタロッサがデバイスを振るうが――無視する。
「…………こんな筈じゃ、なかった」
 体を貫かれ、血を吐き出しながら、トリガーを――



「――世界はいつだって、こんな筈じゃない事、ばっかりだよ!!」



 いきなり現れたクロノにイグドラシルを叩かれ、
 砲頭は明後日へと向けて火を噴き、
 そして――床が、今度こそ砕けて、抜けた。
「ッ! 母さん……!!」
 果たして、テスタロッサは虚数空間へと投げ出されたプレシアを追って行き――
「なっ!? お、おいテスタロッサ!?」
 クロノは目を剥き、
 しかし彼女が虚数空間に飲まれるのを見て諦め、
 そして――
「……おい、ショタ執務官」
 ああ、どうしてだろうな?
 どうして、俺は……――
「これ、を……イグドラシルを、使え……」
 ――イグドラシルはその機構上、動力に魔法を使用していない。
 だから――
「テス、タロッサ、たち、を……――」
 ――……そこで、意識が、途切れた。

 ◇◆◇◆◇

 ――虚数空間に落ちたわたしと母さんは、執務官の少年に助けられた。
 ……いや。執務官の手にあった『それ』は彼の――……だけど、だからこそ、わからない。
 次元航行艦アースラへと収容され、寝たきりの母さんの横で椅子に腰掛けながら、考えてた。
 彼は、わたしたちを殺したかったんじゃ、なかったのかな……?
 あの子……なのはの親御さんに訃報を知らせに行く時も、考えてた。
 彼は、この人たちと同じなのかな?
 なのはの親御さんは、わたしを――責めなかった。
 彼らがなのはを想っていたのは間違い無いだろう。彼女の母親や姉は涙し、兄や父も静かに悼んでいた。
 だけど……わたしは、責められなかった。
 悲しいのは本当だろう。わたしを憎く思っても仕方ない。
 それでも、彼らは娘を、妹を信じていた。なのはがわたしのために頑張っていたことを知り、それを認め――わたしに、笑みまで向けてくれた。
 だから…………わからない。
 結局、母さんとは何も話せず……母さんは病気で死んだ。
 だけど、それまでずっと、母さんと居られたことに……わたしは、感謝している。
 わたしの裁判が終わるまでの間。アースラ内で徐々にクルーたちと打ち解けるようになり、話すようになって……彼のことを訊く度に、思う。
 転生者――死しても生前の記憶を持って九歳の頃に戻る、彼。
 名前は、川平雅樹。
 彼がなのはの事が好きだったのは、みんな、知っていた。二人の仲が良かったのも、知っていた。
 そしてなのはが彼の母親の敵であった事も、聞いた。
 ……正確には、ジュエルシードの暴走事故だったらしいけど、なのははそう思って無かった。
 そして――……やっぱり、わからない。
 アースラの人たちはジュエルシード事件の功績と……『不祥事』で、しばらくはただの見回りの任務についていた。
 だから…………それを知ったのは、遅かった。
 第九十七管理外世界――なのはの世界が、消滅した。
 原因は『闇の書』というロストロギアの暴走。
 それに対して色々とゴタゴタしたらしいけど……巡回任務に終始させられてたアースラの、それも半ば軟禁中のわたしが知ることは無かった。
 だから……――
「――『闇の書』の主はね。『八神はやて』っていう、キミと同い年の女の子なんだ」
 わたしの裁判が終わって、
 それまで会うことの無かった彼を訪ね、
 ミッドチルダ辺境にある彼の住まいで、
 なのはの――彼の世界の顛末を知らせに行ったわたしに、
「はやては普通の……ただ、優しい、普通の女の子でさ」
 彼は、語る。
「はやてはね。『闇の書』の主といっても、別にその力を欲するような子じゃなくって……『他人様に迷惑かけたらアカン』って、守護騎士たちにも魔力の蒐集を禁止してたぐらいだ」
 彼は――転生者、川平雅樹は、語る。
「はやてにとって守護騎士たちはプログラムじゃない、確かに『家族』だった。騎士たちだって、そう。主従の契り以上に優しいはやてを愛し、彼女が『闇の書』に蝕まれ死んでしまう未来を憂い――彼女に黙って蒐集することを選んだ」
 わたしの知らない――もしかしたら、誰も知らない、『闇の書』の主と騎士たちの話を。
「その蒐集でなのはは襲われ……キミも襲われた。キミたちは騎士たちと何度も争って……最後には『闇の書』をみんなで破壊して、ハッピーエンド。はやてたちはキミたちにとって掛け替えのない人たちになった」
 ……筈、だった。そう笑い、零す彼の……なんと痛ましいことか。
「…………わたしが、なのはを――」
「違う」
 今やロストロギア関連の、一、研究者である彼は、断じる。
「すべての責は――俺に、ある」
 …………わからない。
「……ありがとう、テスタロッサ。わざわざ俺なんかに、知らせに来てくれて」
 そう笑い、右手を差し出す彼が……わからない。
「あ、貴方は、わたしに……。わたしがなのはを、って……!」
 ……わからない。
「ごめん。それも、俺のせいだ」
 苦笑する彼から、視線を逸らす。
「俺がなのはと不用意に接触したのが悪い。求めたのが……悪い。だから……ごめんな、テスタロッサ。キミを……傷付けた。ごめん」
 そう言って頭を下げる彼を……見て、られない。
「あ、謝ったって……。だって、貴方はそれでアルフを……!」
 声が、震えた。
 喉が、焼けた。
「ごめん。本当に」
 ……涙が、溢れた。
「あ、謝られたって……! 貴方が謝ったってアルフは……!」
 怒鳴る。
「わたしは……! 貴方のせいで一人で……!」
 泣きながら、攻め立てる。
「一人、で……。貴方の、せいで……」
 そして――気付く。
「ごめん」
 そう頭を下げる彼は――
「本当に、ごめん」
 気付く。
 今さら。
 本当に一人になったのは彼の方だ、と。
「……貴方は――」
 彼は、なのはを失った。
 家族も、過去の友人知人も……帰る世界ごと、消えた。
 転生者である彼は――……或いは、誰よりも、一人だった。
 そして、
「……貴方と、わたしは――」
 問わずには、居られなかった。
「か、川平雅樹と、フェイト・テスタロッサは…………友だち、だった、ことは……あります、か?」
 その問いに、彼は――
「うん。たぶん、毎回、ね……」
 そう言って、儚く、笑った――。




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