嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《りりかるーぷ》13

《りりかるーぷ》




 ◇◆◇◆◇

 なのはが――……死んだ。

 アースラの中。殺風景な部屋。転送されて来た、少女の亡骸。

 ――雅樹くんはアリサちゃんのこと……どう、思ってるの?

 ……なんでだ?

 ――川平雅樹くん、だよね? 『雅樹くん』て呼んでも良い?

 ……なんで、死んでんだ?

 ――どうして打つの!? はやてちゃんは……だってずっと、雅樹くんのこと、大切に思ってたのに!!

 ……だって、キミと友だちになったのは――

 ――解放する。これを最後に――だけど、きっと、生きてたことを嬉しく思えるように、わたしは雅樹くんを助ける。

 ……だって、アリサと付き合い出したのは――
 ――……あのね、雅樹くん。

 …………俺の、せいか?

 ――やっぱり、フェイトちゃんと、ちゃんと向き合いたいから……。だから、ね……先に、答えます。

 …………俺が、キミを――

 ――わたし、高町なのはは、

 …………俺が――



 ――…………雅樹くんが、好き、だよ。



 ――躊躇い無く殴りつけた。
「……おい」
 地面に倒れるユーノ。その胸倉を掴み上げ、「き、君……!!」そして俄かに騒がしくなるアースラのスタッフだろう周りなど無視して、
「……なに、やってんだよ、クソガキ」
 声をかけ、そして死んだ魚みたいな目をしてこちらを見返す彼を――俺は再び、躊躇い無く殴り飛ばした。
 ……うん。なんか俺、手ー早いなぁ。
 果たして俺は、頬を押さえ、目を白黒させてこちらを見上げるユーノを睨み、
「おい。何やってんだって……聞いてんだよ!」
 拳を、振り抜く。……うん。やっぱり、手が早いな。そんな風に内心、半ば現状を俯瞰するように眺めながら、彼の胸ぐらをまたしても掴み寄せる。
「…………ぼ、僕は――」
「なのはを守るんじゃ、なかったのかよ!!」
 遮り、怒鳴って、拳を、振るう。
「おい! なんでなのはを守れなかった!?」
 拳を、振るう。
「なんでキミが無事で――彼女が死んでんだよ!!」
 ユーノを、殴る。怒鳴る。
 場違いな罵倒と知りながら、それでも何の反論も抵抗も無い彼に頭が沸騰する。
「ふざけんな! キミは彼女に――なのはを『こっち側』に引き込んだのはキミだろう!? だから……責任取れよ、バカ野郎!!」
 最後に、それこそ拳が砕けんばかりの勢いで殴り飛ばしてユーノから手を離す。
 そして、それでも無抵抗な彼に「……くそが!」と吐き捨て、いつまでも床に転がってそうだったその髪を掴んで無理やり顔を上げさせ――
「俺に、力を貸せ」
 生気の無い瞳を睨み、静かに告げる。
「今から『庭園』に行って、なのはの敵を討つ」
 ――敵を、討つ。
 殺す。
 敵を――テスタロッサ親子を、殺してやる。
 だから――
「力を、貸せ」
 果たして、その言葉に少年は――

 ◇◆◇◆◇

「――……邪魔だ、駄犬」
 躊躇せず砲撃。「なっ!?」と息を呑むオレンジ髪の彼女――アルフを難なく排除し、俺はテスタロッサへと歩み寄った。
「…………」
 ――『庭園』内。
 抜け殻みたいに腑抜けてやがったユーノを使い、保管されてたジュエルシードと――そしてイグドラシルを回収し、転送させた。
「……おい」
 ――だから、帰り道は無い。
 侵入と同時に襲いかかって来た全てのガラクタをイグドラシルの砲撃で薙ぎ払い――そして、たどり着いた。
「…………おい」
 金髪黒衣の魔法少女――フェイト・テスタロッサ。
 高町なのはが最後の最後まで友だちになろうとした彼女は、今、それこそ良く出来た人形のように無表情に――自動的に、ガラクタどもと戯れていたようだが、
「…………」
 今や、動くものの無くなったここで、少女はただ立ち尽くしていた。
 ……まるで、もう――すべきことは無いとでも言うように。テスタロッサはただ、人形のように佇んでいた。
 だから――その前髪を掴み、無理やりこちらを向かせた。
「……おい」
 言葉は……届かない。彼女はずっと、どこか虚空を見つめ「なのは」と少女の名前を呟き続けていた。
「…………くそ」
 俺はテスタロッサから手を離し、そして彼女のバリアジャケットとテスタロッサの体を半ば染める、夥しい量の血を、見た。
 これは、なのはの……――そう思い至り、今度こそ気がふれそうになる。
「……なの、は」
 テスタロッサの瞳に……光は、無い
「……はは」
 だからこそ、笑う。思う。
 ……なあ、なのは。良かったな。
 ほら、わかるだろ? キミ、ちゃんとテスタロッサと友だちになれたみたいじゃん。ちゃんと、彼女に想い……届いたみたいじゃんか。
 …………だから、
「……なあ、なのは。もう…………良い、よな?」
 瞳を、閉じる。
 答えは当然返って来ないが……それでも十秒ほどで俺は行動に移していた。
「……おい。いつまで悲劇のヒロインぶってやがる」
 再びテスタロッサの前髪を掴み、今度は顔を寄せ、彼女の雲った瞳を睨み据えて言った。
「ふざけんなよ、バカ。こいつはキミの責任だろ? キミがなのはを殺したんだろ?」
 そして、テスタロッサの瞳に――光が、戻る。
「……ぁ」
 それは悲しみの、
 それは絶望の、
 だけどそれは、確かな意志の光宿す瞳になって、
「わ、わたし、は……――」
 テスタロッサはようやく、現実を見始める。
 だから、
「キミが殺したんだよ」
 その心に、消えない傷を付ける。
「……わたし、は――」
 瞳を逸らすテスタロッサに「痛っ……!」、前髪を引っ張るようにして無理やり目線を合わせ、告げる。
「なのははキミと、友だちになりたかった」
「…………っ!」
 笑う。少女の傷付く様を、嘲笑う。
「ああ……それなのにキミは、彼女を殺した。キミと先に無駄な争いをしなければ……なのはは死なずに済んだ」
 責める。テスタロッサは目を剥き、そして顔を俯けようとして――俺に髪を掴まれていて出来ない。
「キミは友だちを殺したんだ」
 瞳を、逸らさせない。
 俺から。現実から。
 そして――世界から。
「なあ、フェイト・テスタロッサ? なのにキミは――そんな所で何をしてる?」
 俺は、問う。
「なのははキミと友だちになりたかった。だけどキミは――キミとキミの母親は、なのはを……殺した」
 手を、離す。
「俺はなのはのことが……好きだった」
 テスタロッサの答えを、待たない。期待していない。
「だから…………殺して、やる」
 右手に抱えたイグドラシルを、
 目の前で立ち尽くす少女に――
「……俺は、キミとキミの母親を――」
 赦さない! そう言って、俺はイグドラシルの刃を――振り抜いた。
「――――ッ!?」
 血しぶきが舞い、
 テスタロッサの瞳は見開かれ、
 そして――

 少女を庇い、飛び出して来たアルフは――背中を、斬られた。

「……ちっ!」
 舌打ちを一つ。俺はテスタロッサを抱き締め、床に崩折れる彼女へとイグドラシルの砲頭を向け――
「やら、せない、よ……!」
 トリガーを引く――それより一瞬早く、アルフは床を砕き、下へ。そして俺が「な――っ!?」と絶句する間もあらばこそ。只でさえ崩壊寸前であったそこは呆気なく瓦解して行き、
「……くそ!」
 俺はそう吐き捨て、仕方無くその場を後にするのだった。

 ◇◆◇◆◇

 ……ぐちゃぐちゃ、だ。
 頭が。心が……ぐちゃぐちゃ。
 ……わかんない。わかんないよ。どうしたら良いの? どうしたら……良かったの?
 どうしたら……――
「よかった……。無事、だね……フェイト」
 曇る視界。停滞する思考――それをクリアにする、声。
「……え?」
 わたしは、アルフに抱かれていた。
 周りは、瓦礫。ここは庭園内のどこか。
 そして暗いそこにあって鮮烈な――赤。
「ッ!? あ、アルフ……!?」
 思い出す。そうだ、アルフは――
「に、逃げな、フェイト……。今、すぐ……遠く、に……」
 ……ぁ。一見してわかる。
 アルフは、もう――助からないって。
「アル、フ……?」
 涙が、溢れる。……嫌だ。アルフが……死んじゃう。アルフが……。アルフが……!
 わたしは治癒魔法を唱える。苦手だけど……あまり上手く出来ないけど、関係ない。今はアルフを……。アルフを死なせたくない……!
「フェ、イ、ト……。逃げ、な」
「嫌……!」
 血が、止まらない。
 涙が、止まらない。
「フェイ、ト……?」
 アルフが、冷たくなって行く。アルフが、どんどん『あの子』みたいに……。なのはみたいに、死んじゃう……。なのはみたいに――

 キミが殺したんだよ。
「――ッ!!」

 キミは友だちを殺したんだ。

「…………わたし、は――」
 涙が、溢れる。
 光が、消えて行く。心が……死んで行く。
 ……もう、嫌だ。
 もう…………死にたい。
 もう……――
「アイツを、止めな……」
 ……ぇ? ぼんやりとアルフを見る。
「フェイト……。アイツは……プレシアを、殺す気だ……」
 アイツ。それがさっきの少年のことだっていうのは、わかる。
 ……なんとなく。
 だけど、それは……――
「……仕方、ない、よ」
 零す。諦めて、笑う。
 ……そう、仕方ない。
 だって彼は、なのはが好きだったっていうから。だって、なのはは母さんに殺されたんだから。
 だから……仕方ない。
 だからわたしも…………彼に殺されたって、仕方ない。
「……フェイト」
 わたしは、微笑む。悲しそうな目をするアルに『仕方ない』と、笑う。
 そして、
「じゃあ……フェイトは、何も、してくれない、の、か?」
 アルフの言葉に、
「アタシは、アイツに……殺される。アイツは、プレシアを……殺す」
 なのに――フェイトは何もしてくれないの?
「アイツは、好きな奴を……殺された」
 だから、アタシを殺す。
 だから、プレシアを殺す。
 だけど――
「フェ、ぃトは、何、も……――」
 ――……アルフには、もう、わたしが見えていない。
「……そう、だね」
 わたしの声も……届かない。
「……うん。わかった」 アルフの瞳を……そっと、閉ざす。
 立ち上がる。
 涙を拭って、上を見る。
「そうだね……」
 少しだけ瞳を閉ざし、
「わたしにも……権利は、あるんだ」
 バルディッシュを強く握り、
 瞳を開けて、
「わたしは、彼を――」
 殺す。そう零し、舞い上がる。
 大切な人たちの血を身に纏い、この手を更に赤く染めるために――。





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