嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《りりかるーぷ》12

《りりかるーぷ》




 ◇◆◇◆◇

 俺は今――焦っていた。
「大剣は男の夢! バズーカやマシンガンはロマン! そうだろ、クロノ!?」
「……いや。だからと言って使用許可は出せないからな。と言うか、理由になってない」
 アースラのブリッジ。そこの正面にあるメインモニターだろう、大画面に映ったフェイトとアルフのジュエルシード回収を横目に、今日も今日とてクロノの説得を試みる俺。
「く……! 俺の自慢の一物の良さが理解出来ないとは……! これだからチェリーボーイは!」
「なっ……!? そ、それは君もだろうが九歳児!」
 ――俺が『前』の知識をもとに設計し、造るよう手配したデバイス――イグドラシル八式改。それの使用許可を得る、そのために彼を口説こうとするも上手く行かない。……くそ。やっぱり男は攻略出来ないか。
 …………まぁ、出来たら出来たで嫌だが。
「ははん! 残念でした、俺の中身は既に四十路超え! しかも、キミと同じぐらいの年には子持ちだった事すらあるぜ、コンチクショー」
 …………うん。いろいろと余裕無いんだ、今の俺。
 モニターを一瞥すれば、海上で金髪ツインテールの幼女が無茶してるんがわかる。……マズいな。コレってやっぱり、俺が干渉したせいか? 事件の細部までは聞いて無いからイマイチ規定事項なのかイレギュラーなんかわからん。
「だ・か・ら、なんだ! そんなのは関係無いだろう!」
 ……わかんねー。
 コレが俺のせいなのか。このままだとフェイトがどうなるのか、わかんねー。
 だから――
「ハッ! そうやって短気だから、エイミィとの初めてん時に失敗するんだよ! 我慢が足らないぜ~、早漏ボーイ♪」
 目を剥くクロノ。静まり返るブリッジ。そんな中で「あ、あの! フェイトちゃんが――」って、今まさに駆け込んで来たなのはは、そしてその場に漂う微妙な空気に目を丸くした。
「…………艦長。少し、彼と演習場に行って来ます」
 ゆらり、と。クロノは遂に堪忍袋の尾が切れたとばかりに立ち上がり、ドライアイスみたいに冷然とした怒りの形相を浮かべて言った。
「せっかくだ。僕を君が、その、自慢の一物とやらで足腰立てなく出来たら――君に本番での機会をあげよう」
 …………オッケー。どうにかこうにか挑発に成功したらしいな。
 俺はそう内心でほくそ笑み、外見上は挑発的な笑みを浮かべて口を開いた。
「良いのか~? キミは未経験だろ~? 俺のは固いぜ~、デカいぜ~。それこそどんな奴を相手にしたって一撃昇天だぜ~?」
「ふん! どうせただの水鉄砲だろ? それも実践経験の無い、シュミレーションでしか使った事のないそれで僕の相手が勤まるとでも?」
 ニヤリと、笑う。
 ニヤリと、笑い会う。
「……言うね。だったらその口に一発見舞って、破瓜の血と涎を吐かせてヒィヒィ言わせてやるから覚悟しな!」
「ハッ! 僕を満足させるには君はまだまだ経験不足だということを教えてやるよ!」
 そうして、俺たちは互いに火花を散らすように睨み会い、「あ。そうだ、なのは!」それを思い出して彼女を呼んだ。
「ふえ!? な、ななな、なになに!?」
 ……ん? なに、またこの子は怯えてるんだ?
 ――と、それはともかく!
「ふふふ……ここまで言われたら俺も全力でイキたいからね。だから――」
 ジュエルシード、貸して。
「……………………え?」
 ぽかんとするなのは。……ん? 俺はその様子に怪訝顔になり、
「あれ? ユーノから聞いてない? 俺のイグドラシルって、動力の一部にジュエルシードを使うんだけど……」
 言いつつチラリとユーノを伺えば、彼も何故か俺の台詞を聞いて目を丸くしていた。……あれ? てっきり昨日、弄ってる時にでも気付いてたと思っ「ちょっ、ちょっと待て!」――クロノの慌てたような声に、俺は首をそちらに巡らせた。
「あ? なんだよ、いきな――」
「いきなりはどっちだ! ――何だ、そのジュエルシードを使うっていうのは!?」
 聞いて無いぞ!? そう怒鳴るクロノに俺は顔をしかめ――って、それどころじゃねー!
 俺はチラリとモニターを一瞥し、いい加減ヤバい感じに疲弊し始めたフェイトを見て、焦る。ま、マズい……。このままだと本当に、フェイトが――
「っ!? 君は――!」
 気付けば、なのはは転送ポートに居て、
 気付けば、ユーノは彼女を転送しようとしていて、
「……オッケー、なのは。こっちは任せな」
 俺はニヤリと笑い、今まさにクロノを押さえようとしていたユーノと堅物執務官との間に立って、
「なのは。キミはキミの想いを、彼女にぶつけて来い!」
 全力全開でな! そう彼女に笑みを向け、
「! うん!」
 なのはは頷き、そして――

 ◇◆◇◆◇

 悲しいかな。俺の活躍は――無い。未だに。たぶん、最後まで。
 おそらく現状は華僑に入っているのだろう。ジュエルシードは全てなのはとテスタロッサの二人の手に集まり、どういうわけかアルフがテスタロッサ勢を離反。色々な事情をゲロった挙げ句、二人の少女による最後の決闘でジュエルシード全ての行方が決まる――そういう話になった。
 だから、俺にはこれと言ってすることは無く、
 だから、俺という存在はアースラにとってお荷物以外の何者でも無く、
 だから、俺はこの事件が終わったら、アースラを降りる。
 そして――ミッドに、行く。
 これから手に入るだろう、全てのジュエルシードを研究するために。ひいては、俺が転生を繰り返す原因を究明するために。俺はとりあえず、ミッドチルダに移住して遺失物の管理と研究をするための資格を取ろうと思っている――そう、なのはに話すと、彼女は何やら複雑そうな顔で笑い、「頑張って」と言ってくれた。
 ……まったく。本当に、この子は……。俺は今さらながらに彼女の強さと優しさ――そしてその反面、一人で何もかもを背負ってしまうような危うさを感じ、苦笑を濃くした。
「――で? そっちは、明日、か……?」
 アースラのブリッジの端で佇み、携帯を片手に俺。……うん。本当に今さらだけど、コレ、どういう理屈で通じてるんだろう?
『……うん。明日、フェイトちゃんと――』
 戦う。そういったニュアンスの言葉を紡ごうとした彼女を、
「じゃあ、明日、紹介して貰えるんだな?」
 遮り、わざと明るい声で言った。
『え……?』
「ん? だから、テスタロッサを、俺に。明日、なのはは俺に『友だち』を紹介してくれんだよな?」
 ――俺は、なのはが負けるなんて微塵も思っていない。
『ぁ……』
「ん? ……おいおい、まさか紹介してくれないのか?」
 ――明日の勝敗に関する知識は無いが、なのはがテスタロッサと友だちになるっていうのは知っている。
「ひでー……。俺、けっこうテスタロッサのこと、タイプだったのに……」
『あ、あはは……。うん。フェイトちゃん、可愛いもんね……』
 ――だから、信じてる。だからこそ、確信してる。
 なのはは負けない。なのはは、彼女と友だちになれる。
「まあ、でも――俺の本命はなのはだけどな」
『っ! え、ええ~ッ!?』
 ……せっかく造ったイグドラシルを没収されたままだけど、まあ、それでも良いかなって最近じゃ思ってる。
 俺はこの事件に干渉するべきじゃない。それ意外の事件だって、そう。何度となく見ている、彼女たちが幸せそうに笑っていた日常を壊したくないから――……俺は、消えるべきなんだ。
『え、ぁ。ちょ、待っ……にゃ~!?』
「あははは! なに慌ててんだよ」
 俺は、だから――これを最後に、彼女たちの前から消える。
 何度となく転生を繰り返す原因を究明するために。彼女たちが幸せに笑いあってる未来を不動とするために。
「……この、鈍感娘が。つか、本当に気付いて無かったのかよ」
『え……?』
 最後に。
 最後に、なのはにそれを伝えて、
「俺はな、なのは。基本的に可愛いければ誰でも良いんだが――」
『え、ぁ。か、可愛い、かな……?』
 俺は、明日、なのはたちの決戦を見届けて――
「なのは。俺はキミの事が気に入った。キミの優しさと強さに惚れた。……だからキミを、俺の、最後の女にする」
『――――っ!?』
 俺は、消える。
「キミのことが……好きだ」
 視線を、いつの間にか聞き耳を立ててたブリッジのクルーへと向け――笑う。
『…………。わ、わたし――』
「全部が済んだら、返事をくれ」
 ……もっとも、俺はキミを逃すつもりは無いけどね。そう最後に冗談めかして告げ、俺は携帯電話の通話と電源を切った。
「…………」
 すべては明日、決着する。
 俺はそんな確信を抱き、そしてブリッジを静かに後にした。



 そして、翌日俺は――……………………すべてを後悔、した。

 ◇◆◇◆◇

 油断、した。
 疲れて、いた。
 だから――
「ッ! な、なのはぁああああああああ!!」
 『時の庭園』と呼ばれるその中で、
 フェイトちゃんと決着をつけて、そしてユーノくんたちと乗り込んだそこで、
 わたしは――

 背中を、斬られた。

「……ぁ」
 体が傾ぐ。振り向くことも止まることも出来ず、電池の切れた人形のようにわたしは倒れた。
 ……ああ、まずい、な。地面に体を横たえ、生暖かい水たまりを作って浸りながら、ぼんやりと思った。……ああ。もう、ちから、入らないや。
 果たして、幾体ものロボットのようなそれらの一つ――二メートル超の大剣持つ、わたしを切り捨てたそれは、次の瞬間に金色の雷を受けて爆発していた。
「だ、大丈夫……!?」
 駆けつけたのは――フェイトちゃん。力無く倒れるわたしを抱き上げ、そして手のひらを汚す赤を見て泣きそうな顔になっていた。
「…………」
 声は、出ない。言葉は、もう……紡げない。
 だけど、念話なら――
『ああ、良かった……』
「え……?」
 笑う。どうにか、口元を綻ばせる。
『うん、良かった。ちゃんと、わたし、想いを伝えられてた』
 体は、もう……鉛のようだった。
 視界はもう……霞がかっていた。
 だけど……良かった。ちゃんと、わたしは……フェイトちゃんに想いを届けられた。
「…………良く、ない。良くないよ……! だって君は――」
『なのは、だよ』
 ああ、ありがとう、レイジングハート。ありがとう、フェイトちゃん。ユーノくんにアルフさんもありがとう、最後まで回復の魔法をかけてくれて……。
 それから…………ごめんね、雅樹くん。
 なのはは、もう……――
『名前で、呼んで欲しいな……』
 わたしは白濁しつつある視界に涙を流す彼女を映して、最後の想いを紡ぐ。
『わたし、なのはだよ。フェイトちゃん』
 もう……音が、遠い。ああ……でも最後に、彼女の声が聞きたいよ。
 お願い、フェイトちゃん……。最後に、なのはの名前を――
「な、のは……。なの、は……! なのは……!」
 …………ああ、やった。
 やったよ、雅樹くん。わたし、やっと……フェイトちゃん、と…………おと、も、だ……ち…………――
「な、のは……?」



 ……意識が、闇に飲まれて――消えた。





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