嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《りりかるーぷ》11

《りりかるーぷ》





 ◇◆◇◆◇

 転生した翌日。俺は高町を介して次元航行艦の執務官――クロノ・ハラオウンと出逢い、そしてアースラへと招かれた。
 ……有り難い。本当に、嬉しい誤算だ。
 ……………………ただ――
「ま、雅樹くん? えと……隣、良い?」
 アースラの食堂で高町。何やらビクビクとしつつ、俺に問うた。
「ん? ……ああ、勝手にどうぞ?」
 ――俺はユーノの魔法と艦の医療スタッフのおかげで、早くも一人で食事が行えるようになっていた。
 そればかりか、これまでは常だったリハビリも、本当に少ない期間で終えられ、杖を使えば普通に歩けるようになったのは有り難い。本当に。だから、高町に感謝しているし、別に彼女相手に負の感情を抱いてなどいないのだが――
「「…………」」
 高町は、無言。
 俺も、無言。
 ――彼女は、俺の怪我と母親が死んだ事件の原因は自分にあると言い、そして俺にそのことで負い目を感じているらしい。
 それは――……別に、どうだって良い。はっきり言って、事故より前の記憶が無い俺にとって、事故のことなんてどーでも。
 こうしてアースラに乗るようになって数日。彼女はどうにも俺に対して萎縮しているようだが、
「ジュエルシード集めは順調らしいな?」
 とりあえず世間話を振る。それだけで「う、うん……」と頷いたっきり小さくなる高町を見て――……もはや溜め息だ。
「流石、未来のエース・オブ・エース。稀代の魔法少女は違うね、高町」
 おどけ、含みを持たせて誉める。そして「……そ、そうかな?」と、反応に困ったように、ただただ儚く笑って返す高町へ、
「本当に――なんで、そんなにも凄い奴が、俺の母さんを殺すんだろうな?」
 言った。
「…………っ!!」
 それに息を飲み、途端に泣きそうな顔になる高町の顎を掴んで無理やりこちらを向ける。
 口元には笑みを。目には憎悪を。あたかも肉親を殺された遺族が加害者に向けるような体で、俺は彼女を責め立てる。
「別に恨んで無いよ。だって高町のせいじゃ無いんだろ? 全部、ジュエルシードが悪い――そうだろ?」
「…………」
 高町は、無言。まるで本当に、囚人がただただ刑罰を受けるかのように、彼女は俺の言葉にその身を投げ打つ。
 そして……そんな高町だからこそ、
「なあ、そうだよな? 高町のせいじゃないんだよな? だって、もしキミのせいなら――」

 俺はキミを――赦さない。

「……ッ!?」
 高町が目を剥く。その瞳に浮かぶ涙に心を痛めながら――それでも、俺は敢えて彼女を傷付け続ける。
「……よくさ、キミ、俺に話しかけられるね。……凄いよ、本当に。よく、俺の前に立てるよ」
 高町の頬を涙が伝う。瞳に、謝罪の言葉が浮かぶ。俺に対する思いが、その表情から痛いほど伝わる。
「……どうして、俺の母さんを死なせたんだ?」
 ああ、それでも俺は――キミを、傷付ける。
「……どうして俺は、こんなにも苦しんでんだ?」
 高町から手を離し、顔を歪めて見せる。……ああ、本当に。なんて最低なんだろうな、俺……。
「キミのせいだ」
 零すように。だけど少女の心に刃を突き立てるように呟き、

「…………そう、言われたいのかよ、高町」

 一転して、笑う。
 それに「ぇ……?」と固まる高町に、俺はこれまでとは違い、朗らかとも言える笑みを浮かべて告げる。
「ごめんな、高町。……本当に、ごめん。悪かった」
 頭を、下げる。
 そしてそんな俺に、やはり呆気にとらわれてるらしい高町に顔を伏せたまま、
「俺はキミを――恨んで無い」
 ――高町には、すべてを話している。
 転生のこと。俺のこれまでのこと。
 そして、これからのこと。
「前にも言ったが……俺には病室で目覚めるまでの記憶が無い」
 顔を、上げる。
 目を丸くしてる高町に笑みを向ける。
「高町。俺は、前にも言った通り……たぶん、ジュエルシードのせいで転生を繰り返してる」
 だけどそれは――キミのせいじゃない。
「仮に、高町に非があるとすれば……それは確かに、母さんが死んだ事件にあるんだろうけど――そんなのは、どうだって良い」
 呆然としてる高町を見つめ、その頬を濡らす涙を袖で拭いながら告げる。
「もう一度言う。どうだって良い。どうだって良いんだ、高町」
 涙を止めた高町の手を握り、それに肩をビクつかせる彼女に柔らかく笑って、
「キミは凄い優秀な魔導師になる」
 だから……力を、貸してくれ。
「俺は…………もう、繰り返したくないんだ」
 だから……お願いだ、高町。
「もう……嫌、なんだ。もう、繰り返したくない……。解放されたいんだ……」
 だから――

「…………だめだよ、雅樹くん」

 その言葉に、愕然とした。
 ……え? そんな……! 俺は高町を見つめ――

「雅樹くんは、死にたい、の……?」

 彼女の言葉に、固まった。
「雅樹くん。雅樹くんは解放されたら……どうしたいの?」
 …………え?
「それ、は……――」
 瞳を、逸らす。
 これまで転生の原因を……解放される方法だけを探して来たのに、解放されたらどうするか、なんて……正直、考えたことも無かった。
「俺、は……――」
「どうでも良く、ないよ」
 高町は、言う。視線を泳がせる俺を、真っ直ぐに見つめて。
「雅樹くん。やっぱり、どうでも良くない。だって、覚えてなくても雅樹くんのお母さんだもん。最後まで雅樹くんを助けようってしてくれた、雅樹くんのお母さんだもん」
 だから――どうでも良くない。そう言って、高町は瞳を閉じ、空いてる左手を自身の胸に当てて言葉を次ぐ。
「わたしは――背負うよ。雅樹くんが忘れてしまった痛みを。わたしは、それで、雅樹くんを――救うよ」
 高町は、そして笑う。
 柔らかく。暖かい、微笑を浮かべて、告げる。
「解放する。これを最後に――だけど、きっと、生きてたことを嬉しく思えるように、わたしは雅樹くんを助ける」
 …………本当に。
 ああ、本当に……この子たちは――
「……ああ、よろしく――なのは」
 俺は苦笑し、彼女に右手を差し出して――
「! うん♪」
 それになのはは、嬉しそうに笑って、その手を握ってくれた。

 ◇◆◇◆◇

 川平雅樹くん。
 彼のこと、そして彼のお母さんのことを知った時はショックで……わたしは、何をどうやって償ったら良いのかをずっと考えて……沈んでた。
 そんなわたしにユーノくんは仕切りに「なのはのせいじゃない」って言ってくれてたけど……でも、やっぱりわたしは納得出来なかった。やっぱり、なのはのせいだって、思ってた。
 だから――
 ……だけど。
 今はもう、わたしは沈んでいない。今はもう、わたしはわたしのするべきことを見失ってない。
 わたしは雅樹くんの力になる。罪滅ぼしのために……じゃなくて、ただ友達として。ただ、彼が助けを必要としていて、たまたま自分にはそれを助けてあげられるかも知れない力があったから。
 だから、なのはは雅樹くんのために、この手の魔法を使うって決めた。
 …………だけど、
「はぁ……はぁ……。ま、雅樹くん……。も、もう……、はぁ……、なのは、疲れたよ~……」
 火照る体。額に浮かぶ汗。
 わたしはアースラ内の、雅樹くんにあてがわれた部屋のベッドの上に仰向けに倒れ、荒い息を吐きながら言った。
「えー? そんな~。まだ十発ぐらいだよ?」
 それに唇を尖らせ、ぐったりするなのはを揺する雅樹くんに「も、もう……無理。や、休ませて~……」と懇願し、顔を腕で隠す。
「……はぁ、……はぁ」
 ぐったり。なのははベッドの上でしばらくの間そうして寝転がり、息を整えることに勤める。
 ……ま、まさか、こんなこと、要求されるなんて、思わなかった。そう内心で嘆息し、わたしはチラリとベッドの上に散乱する『それ』を見た。
「……ふぅ。はぁ……、ふぅ……」
 雅樹くんとなのはの間に散らばるそれは、猟銃とかに使いそうな銃弾。その数、約百発。
 そしてその中身は――魔力。
 雅樹くん曰わく、『ベルカのカーリッジシステムと同じ、魔力を圧縮した弾丸』なんだそうだけど……これ、全部をなのはに充填しろっていうのは酷だよ。
「大丈夫、なのははやれば出来る子。頑張れ」
 ……雅樹くん。そう言って微笑んでくれるのは嬉しいんだけどさ……。でも、それで頑張って十個も充填したんだし、今日はもう休んじゃダメかなぁ?
「っていうか、雅樹はなのはに無理させ過ぎだよ」
 そう口を挟んだのは、今まで机に座して雅樹くんのデバイスを弄ってたユーノくん。わたしに労りの視線と、彼へ少しだけの憤りとを向けて言った。
「え? そうか?」
 それにキョトンとした表情になる雅樹くん。そして「無理させてた?」と問うのに、なのはは苦笑するしかない。……うん。やっぱり、魔力の無い雅樹くんにはその辺がわかんないのかな?
「……悪い、なのは。俺、少し浮かれてわ」
 果たして、雅樹くんはそう言って苦笑し、軽く頭を下げた。
 ……いや、うん。浮かれてたのは知ってたし……それに、頼られるのは悪い気がしないから良いんだけどね――と、やっぱり苦笑するしかないなのはは、そして机に置かれた彼専用のデバイスを改めて見た。
「それにしても……凄いね、やっぱり」
 感嘆する。
 黒銀色の鈍い光沢放つそれは、全長約二メートルの、シルエットとしてはナイフとミサイルを足して二で割ったみたいな感じかな?
 その先端の、金色に輝く長大な両刃。その中間を割り、突き出る砲頭。おそらくは脇に挟んで固定するバズーカとかマシンガンを彷彿とさせる機構に、それに連なるガンベルト。……そこに連なる弾丸は、十中八九、今まさに魔力を込めてるコレなんだろうなぁ。
「っていうか、よくもまぁ、って感じだよ」
 そう呆れ混じりにユーノくんが言うのも当たり前。雅樹くん曰わく、コレは、なのはやフェイトちゃんを超える魔導師との戦闘――それも一対四という状況を想定して生み出したものなんだとか。……雅樹くん、非魔導師なのに…………本当に、相変わらずやることなすことデタラメだよ~。
「ふふん、すげーだろ? ちなみに名前は『イグドラシル八式改』! ……何故に『八式』で、しかも『改』なのかは…………姑に八回挑戦して一度も勝てなかったからだよ、ちくせう」
 ……え、えっと?
「でも、やっぱさ……俺も逆行転生キャラとして少しはそのチートっぷりを発揮したいじゃん? 『俺様TUEEE!』したいじゃん? ――てなワケで、『前』の知識を総動員して造らせたのがコイツなのさ!」
 ……う~ん。意味わかんないかも? なのははそう首を傾げ、そしてヨロヨロと体を起こした。
「それで? 君は、こんなのを使って何する気なの?」
「…………キミ、さり気なく俺のこと嫌いだろ?」
 ったく、これだからムッツリは。そう言って嘲笑する雅樹くん。それを「なっ……!?」って目を丸くして絶句し、みるみる顔色を憤怒に歪めて睨むユーノくん。……あれ? 二人って……仲、悪かったの?
「……たしか、この艦内には模擬戦場ってのがあったよね?」
「へえ……面白い。ちょうどコイツのテストをしたかったんだ」
 …………あ、あれ?
 果たして睨み会い、凶悪な笑みを浮かべて「「ふふふふふ……」」って笑ってる二人をなのはは呆然と眺める。ふえ~!? い、いつの間にか喧嘩中なの~!?
 そして――

「君のそれ……完璧に質量兵器だよな?」

 ――雅樹くんのデバイスは、通りがかりのクロノくんに没収されました。……南~無~。




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