嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《りりかるーぷ》10

《りりかるーぷ》




 ◇◆◇◆◇

「今日はゴム無しな」
 雅樹くんの家に行き、玄関を開けて出迎えるや彼は言った。って、え~!?
「いっ、いいいっ、いきなり何!?」
 顔を真っ赤にし、目を丸くして叫ぶ私に「ん?」て雅樹くんは首を傾げ、
「あれ? 今日って、まさか『安全日』?」
 そう問い、「えっ、い、いや、むしろ危険日――って、わわ!?」さっさと私の手を引いて部屋へと招き入れるや、唯一残された家具であるベッドに押し倒した。って、ほんまにいきなり!?
 私はベッドに肘を着いて上半身を起こし、それこそ今まさに覆い被さろとしとった雅樹くんの肩に手を当てて口を開いた。
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待って……! ま、まだ、私――」
「い~・や♪」
 ん……!? 唇を塞がれ、目を白黒させる。って、え? ええ!?
 固まる。雅樹くんに頭を抑えられる。
 そのまま口内に侵入する舌にゾクリと身を震わせ、今度こそ完全にベッドに押し倒された。
「ん……、ぁちゅ……ンっ!」
 体から力が抜けた。彼の舌に口内を蹂躙されるままになる。
「ま、雅樹、くん……?」
 そのまま……どれぐらいそうしてたのだろう?
 私は気付けば肩で息をし、熱中症にでもなったみたいにぼやけ始めた視界で雅樹くんを見上げとった。
「……悪い。もう、最後だから」
 彼はそう言って儚く笑い、また私に口付けた。
「ん……」
 ――私たちは、今年で十九になる。
「はやて……ごめん。今日だけは……」
 ――そして、明日が、彼の誕生日。
「ごめん……。ごめんな……」
 ――だから、今日が最後の日。
「ごめ――……ン!?」
 私は、彼の謝罪を唇で、塞ぐ。
 そして、
「謝らんといてよ、雅樹くん」
 笑う。笑って、泣きそうな顔しとった彼を胸に抱く。
「大丈夫や。雅樹くんは、大丈夫。一人にはならん。ならんよ」
 彼の頭を撫でる。瞳を、閉じる。
「生まれ変わって……みんなが雅樹くんのこと知らんくても、大丈夫。私は、たぶん、雅樹くんが求めれば何度だって好きになるから」
 好きになる。隣に居る。
 何度でも。貴方が求める度に、私はきっと好きになる。
「だから……寂しかったら、私を求めてな。私に話しかけてやってな」
 私は川平雅樹が好き。……愛しとる。
 そしてそれは……きっと、みんなもや。きっと、彼が求めれば、私たちは雅樹くんを好きになる。こんなにも優しい彼を、私たちは絶対に好きになるんや。
 だから、
「私は、貴方のことを愛するよ。……これから先、何度でも。何度、貴方が私に出逢っても、きっと……」
 私は、そして宣誓する。
「私は、川平雅樹のものになることを誓い――許します」
 何度でも。
「…………バカ」
 雅樹くんは、顔を上げずに言った。
「……バカ。『何度でも』じゃねーよ……。バカ。もう『次』が最後だよ」
 私の背中に腕を回し、顔を埋めて言う。
「キミのおかげで、魔法を知った。かなり解った。だから……『次』が最後だ」
 だから……八神はやてを好きになるのは最後だ。そう零し、彼は顔を上げた。
「ったく。キミは、本当に……。自覚あるのか?」
 その瞳が赤く、濡れ光っているのには気付かぬふりをし、「な、なにが?」と返す。
「……やっぱり無自覚か。さっきの……まるで結婚式での宣誓みたいだったぞ?」
「え? そ、そうなんか?」
 私はその台詞に今さらながらに赤面し、瞳を泳がせた。う、うう……。そない言われても、結婚式……した事無いから、わからんのやけど。
 って、そや! 結婚式――雅樹くん、すずかちゃんとはしたんやった!
「……うう。な、なんで私とは結婚してくれんかったん?」
 涙目で睨む。うう……。わ、私も雅樹くんと結婚式、したかったなぁ……。ウェディングドレス……着たかったなぁ。
「あかん、嫉妬してまう。すずかちゃんだけズルいで……」
 ほんまに。そう鼻をすするようにいじけながら言うと「って、言われてもな」て彼は苦笑した。
「実を言えば、俺もキミとちゃんと結婚したかったんだが……キミの守護騎士連中に、ついぞ許しを貰えなくてね。『主と結ばれたければ我々全員を倒せ』って……無理だろ、普通に」
 …………あれやね。後でシグナムたちと『お話』せなあかんな。なのはちゃん流で。
「――まあ、でも、だ」
「ひゃン……!?」
 雅樹くんは笑って、言った。
「ふっふっふ。結婚出来なくても……はやてには俺の子供を産んで貰うから、良いのさ。そのために今日は一日中はやてと『ムフフ~♪』だ! ざまーみろ!」
 …………そか。一日中、か。
 私、体……保つかなぁ?

 ◇◆◇◆◇

 目を、開ける。
 暗い、見慣れた病室の天井を、見上げる。
「――……ありがとう、はやて」
 呟く。口元に笑みを刻んで。頬に一筋の涙を流して。
「これが……最後だ」
 俺は、そして苦労しながら『それ』を押す。
 稀代の魔法少女を――高町なのはを呼ぶために。
 『それ』を――俺はナースコールを、押した。

 ◇◆◇◆◇

 そのメールは、深夜に来た。
『魔法少女へ。
 俺は川平雅樹。こちらでは初めましてだな、高町。
 さて、今キミはジュエルシードを集めているな?
 今キミはユーノ・スクライアと一緒に居るな?
 今キミはフェイト・テスタロッサと争っているな?
 俺はキミを知ってる。
 キミの未来を知ってる。
 その上で問おう、高町。
 A。俺に会い、話す。
 B。このメールを無視する。
 キミはどちらを選択する?』
 ……自慢では無いが、なのはは夜が弱いので、正直つらい。今も文面を読みながら夢見心地。船をこいで無いのが不思議なぐらいだ。
 でも――

『追伸――キミはフェイト・テスタロッサを助けたくは無いか?』

 その一文を目にして、眠気なんか一気に吹き飛んだ。
『俺は今、海鳴病院の病室に居る。場所は――』
 飛び起きる。電気を付けようとして――今が深夜なのを思い出して、やめる。
 ――キミはフェイト・テスタロッサを助けたくは無いか?
 答えは、決まってる。むしろ答えを得た気分だ、ってなのはは思った。
「……ん? あれ? どうしたの、なのは?」
 わたしが着替えていると、傍らのバスケットの中で丸くなってたユーノくんが顔を起こして問うた。
「え、えっと……ユーノくん、これ!」
 すぐには言葉が出ず、なのははとりあえず携帯電話に表示されたままのそれを見せた。
「『川平、雅樹』?」
 ユーノくんが怪訝な声を上げる。……うん。やっぱり、知らない名前だ。なのはは制服の袖に手を通しながら、改めて思った。……って、なんで制服?
 …………わたし、やっぱり寝ぼけてるみたい。
「なのは……この人――」
「わかんない」
 窓を、開ける。
 空を、見上げて言う。
「わかんないけど……わたしは、会う」
 会って、話す。
「お話、する。それで、教えてもらう」
 ユーノくんに笑顔を向け、また視線を空へ。
 ほんの少し前までフェイトちゃんと会ってた、夜空へ。
 ――キミはフェイト・テスタロッサを助けたくは無いか?
「川平雅樹、くん。わたしは……選ぶよ」
 言って、窓から外へ。
 玄関まで行ってたら家族を起こしてしまうから、そのまま夜空へと――……あれ?
「ちょっ!? な、なのは、レイジングハートは、まだ――」
 なのは――落下。
「にゃ、にゃぁぁああああああ!?」
 ああ…………やっぱりわたし、寝ぼけてたんだなぁ。

 ◇◆◇◆◇

 今回が何度目の転生なのか。……そんなのには意味が無い。
 うん。意味があるとしたら、そのすべてにおいて俺を成長させてくれた、彼女たちとの日々だけだ。
 アリサ。
 すずか。
 はやて。
 俺は……終わらせるよ。
 この転生に、終止符を打つよ。
「――って感じに気合入れてたんに、なんでキミはいきなりどんよりなんだ?」
 半目で見つめるは、先ほど俺の病室に現れた高町。その肩に居るフェレットは、おそらくユーノ・スクライアか?
 ……なんであれ、石田先生に頼んだメールはしっかりと彼女に届いたらしい。……まあ、送ったその日に現れるとは思って無かったけどね。
「て言うか……なんでキミ、制服?」
「う……。で、出来れば触れないで欲しいかも……」
 ? ……まあ、良いか。
 俺は何故か縦線を背負って気落ちしてる高町から視線を窓へ。そこから伺える夜空を見上げるようにして、口を開いた。
「先に、確認しておく。今日の夜――いや、昨日か? ――に、この近所でジュエルシードが発動しなかったか?」
 ――俺の転生にはロストロギアが関わってる。
 『前』の人生において、はやて経由で知り得た魔法と異世界の知識をもとに得た答えが、それ。……と言うか、知り得た知識を総動員しても解が得られなかったからこそ、『ロストロギアのせいだ』って仮説に至ったのだが、まあ間違いじゃないだろう。たぶん。
「え? ……あ、えっと」
 俺の問いに高町は肩のユーノと視線を交わし合い、そして彼女ではなくフェレットの方が口を開いた。
「近所、ではありませんが、これまでに無い規模での発現は……はい」
 ……なるほど、ね。
「それは……次元震規模か?」
「…………はい」
 果たしてユーノの答えに、俺は――笑った。はは! ようやく繋がった! ようやく、なんで俺がこの日に転生するのか――そのとっかかりを得た!
「あ、あの……――」
「最後に、確認だ高町」
 何かを問おうとする彼女を制し、俺は先に問う。
「今から一月ほど前にも、この街でジュエルシードが発動しなかったか? なんか、でっかい木、みたいなのが……」
 ――今から一月前。それは俺がこうして入院することになった日。母がどういうわけか民家の外壁に車を突っ込ませた、事件の日。
 目撃者……と言うか、噂話のレベルでだが、その日は『まるで化け物のような大樹が街に現れ、消えた』という目撃情報があったらしい。
 ……はやてと知り合い、魔法やPT事件のことを聞かされる前なら一笑に付したそれも、今ならジュエルシードのせいだとわかる。
「…………」
 高町は無言で頷く。
 ……なんで彼女が落ち込み出したのかは知らんが――つまりは、そう。俺が入院する切欠と、俺が目覚める切欠は、すべてジュエルシードのせいだってことだ。
「…………な、なんで、そんなこと、訊くの?」
 ん? 俺はおずおずとした体で問う高町に、「なんでって――俺はそれが原因で入院してるからな」と軽く返した。
「どうにも目撃情報が曖昧でさ。今まで原因を特定出来なかったんだが……うん。どうやら、俺の予想通り、俺の母親はその大樹を避けようとして死んだみたいだな」
 うんうん。感慨深い。ようやく色々と繋がったよ、うん。
 果たして、そう『良かった良かった』的に頷いてる俺に高町は、
「え……? 死ん、だ……?」
 真っ青な顔して絶句。その上、ヨロヨロと後退りしたかと思えば尻餅をつくようにして腰を下ろし、愕然とした面持ちを俯けて隠した。……って、な、なんだ? 何事だ?
「…………なのは」
 そんな高町を気遣うように、優しく彼女を呼ぶユーノ。……? なんだ? どういう事だ?
「お、おい、高ま――」
「川平くんの、怪我……。それ、どうしたの?」
 酷く冷たい声音で高町。それは俺が今まで耳にしたことの無い声で――俺は、だから、戸惑いつつも正直に話した。
「俺のは、まあ、その、件の大樹を避けようとしたらしい母親の車に乗ってたから、だな。……聞いた話じゃ、母親が庇ってくれたおかげでどうにか一命は取り留めた――って、高町?」
 果たして、高町は肩を震わせ始めた。しかも何故か「……ごめんなさい」と呟き、両手を床に着いて泣き始めた。……って、本当にどうしたんだ?
 困惑する。なんで高町が謝――って、あ!
 気付く。そして「もしかして、高町が原因なのか?」と目を白黒させながら問うと、彼女はビクリと肩を震わせ――
「ち、違う! なのははちゃんとそれを――」
 ユーノが口を開き、
「――なのはのせい、だよ」
 それを高町が、制した。
 そしてまた「……ごめんなさい」と謝り、すすり泣きし始める彼女を、

「はは! なるほど。よーやく、繋がったってわけだ!」

 俺は軽く笑って返すのだった。
「……………………え?」





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