嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《りりかるーぷ》4

《りりかるーぷ》



 ◇◆◇◆◇

 ――果たして、アリサと付き合い始めてから約八年。
 その日俺は、大学でちょっと教授の手伝いで遅くなってしまい、気付けば夜。夏も終わりもう秋なんだなぁと思わせる、少し肌寒さを感じるような、そんな時に――
『今からウチに来て』
 アリサが言った。
『あ、あんたの誕生日、明日でしょ? えと……ぷ、プレゼントあげるから、今日中に来なさいっ!』
 プツッ……。
 ツー……ツー……。
 とりあえず、耳に当てていた携帯で時間を確認――ってオーイ!? もう後一時間も無いじゃんかー!
「…………ちくせう。貧乏学生にタクシーは痛いってのに」
 ため息を一つ。俺はガリガリと頭をかくや歩くだけなら申し分ないぐらい回復した両足を不格好ながらも加速させ、一番近いタクシー乗り場へと急ぐやバニングス邸を目指し、車を急がせた。
 そして、
「遅いわよバカっ!」
 アリサの部屋に転がり込むやコレだ。…………ちくせう。
 俺は額の汗を拭いつつ笑ってしまう膝を降り、ドカリと床に腰を下ろした。この……相変わらずの、傍若無人ガールめが……。あ゛~……疲れた~……。
「ちょ、ちょっと……! なに、そんな所で寝てんのよ……!?」
 そういう彼女はベッドの上でシーツにくるまってます。…………ちくせう。
「はぁ……、はぁ……。わ、悪い……。ぜ、全力、で……はぁ、駆けて、はぁ、来たから……」
 悪く無いのに謝るのはデフォです。……うん。本当に……ちくせう。
 俺は荒い息を整えつつ「だ、大丈夫?」……うん。なんて言うか、こういう彼女のちょっとした優しさだけで『まぁ良っか』って思えて来る辺り、俺も末期だよな。
「……ふう。……で、何か、用?」
 携帯で時刻を確認しつつ問う。うん。あと五分も無いね。……あ゛~、疲れた。
「よ、用って……。だから、雅樹に……ぷ、プレゼントを……!」
 あ~……そんなこと言ってたね。っていうか、ソレ、明日じゃダメなのか?
 俺はそしてヨロヨロと立ち上がり、何故か頬を紅潮させながらベッドから出て来ない彼女のもとへ。
「で? ソレ、どこ……?」
 アリサとの付き合いでかなり改善された声音ながら、まだまだ短気な人には怒鳴られることの多い、若干くぐもった声で問うと、
「だ、だから……………………『あたし』」
 アリサは、真っ赤な顔してシーツを肩まで下ろし――ってぇぇえええ!?
 俺、パチクリ。そして彼女の、僅かに桃色がかった肩や首筋の肌色に釘付けに。ちょ、ちょちょ、ちょっと待っとぇえ!?
「ま、まさか、下……」
 ゴクリと、生唾を飲むのも仕方ない。
 だ、だって俺たち、まだそういうのはしたこと無いし!? 前世も込みで生粋、完璧なチェリーボーイである俺は、だから、リアル美少女との肉体関係なんて「……は、裸よ」――ごめん、無理。今すぐ頂いちゃダメですか? ハァハァ。
「あ、でもまだ……。雅樹の誕生日プレゼント、だから……」
 ……可愛いジャマイカ。
 俺の彼女は世界一ィィィイじゃないか!?
「え、えと……。でも、俺、初めてで……」
 恥ずかしそうに俯くアリサに、こちらも照れと緊張から顔を真っ赤にして言う。……く! こ、こんなことならコンビニでコンドー「あ、あたしだって……!」――うん。もうね、反則だよね。
 うん。俺は、またゴクリと喉を鳴らし「あ、アリサ……」と熱病にうなされたような声で彼女を呼び、その大きなベッドに片膝を乗せて近付いた。
「あ、あ、あと二分あるから……。だから――」
「じゅ、十二時に、魔法が解けたりしないのか?」
 手を伸ばす。それだけでビクッと身を竦ませる彼女に僅かに躊躇い、それでも欲求には抗えずに彼女の剥き出しの肩に触れた。……ああ、生きてて良かった。
「……アリサ。でも、良い、のか? まだ、俺、おじさんに――」
「ぱ、パパは説得したわ! って、てて、て言うか、こんな時に何言ってんのよ!」
 キッ、と。涙目で睨まれ、たまらず視線を逸らす。
 そして、
「ごめん……。でも、俺……やっぱり、キミを大切にしたいから」
 また、苦労して視線を彼女に合わせ、
「……ごめん。や、優しくはしたいけど……。せ、責任だって取るけど……。でも……」
 良いのか? こんな俺で?
 果たして、その問いにアリサは――
「ば、バカ……! あ、あたしはあんたじゃなきゃ――雅樹が好きなの!」
 だから自信持ちなさい。
 そう彼女が言うや、部屋に置かれた大きな時計の鐘が鳴り、
 アリサは瞳を閉じて体を隠していたシーツをはだけさせ、
 そして俺は――



 暗い、病室の天井を見上げるようにして目覚めた。



「……………………え?」
 俺は――転生、した。

 ◇◆◇◆◇

 気付けば俺は、また、あの日――『俺』が生まれ変わった、俺の九歳の誕生日に転生していた。
 ……うん。これはアレだね? アリサの、究極の焦らしプレイだね♪ …………ちくせう。
 そして、
「……は?」
 聖祥に転入してすぐの、三学期のある日。俺は早速、幼き日のアリサに話しかけた。
「い、いや。だから……。こ、今度のテストで……」
 しどろもどろ。視線も右往左往。冷や汗をかきかき、彼女の机の前で縮こまりながら何とか言葉を紡ぐ。
「今度の、テストで……勝負、しない、か?」
 賭をしないのか? ……なんて言えない俺はヘタれさ、ちくせう。
「……なんで?」
 うぐ……。彼女の、仕方ないとは言え、覚めきった、他人を見る目に胸を掻き毟られる思いになりながら、それでも「な、仲良くなりたいから」と苦労しながら言った。
 それに、
「えっと……ちょっと良いかな?」
 言葉を返したのは彼女の取り巻きの一人、高町なのは。……いや、相変わらずのお節介というか、やっぱり変わんないなぁ、この子。
「な、なに……?」
「うん。川平雅樹くん、だよね? 『雅樹くん』て呼んでも良い?」
 言って、ニッコリ。怪訝顔でこっち睨んでるアリサや、どうして良いのかわかんないみたいな顔してる月村とは違い、高町はどこまでもフレンドリーだった。
「い、良いけど……?」
 そんな彼女にボソボソと返し、そしてチラチラとアリサを窺う。って、うわ……。な、なんか滅茶苦茶睨んでる気が……?
「じゃあ雅樹くん。雅樹くんは頭良いの?」
 ……高町って空気読めないのかな? それとも空気を読んだからこそ、にこやかなのか?
 俺は何か普通に俺なんかに接してくれる高町に「い、一応……高卒レベルの学力は、ある」と、割と何も考えずに答えて――
「「え?」」
「は?」
 ……うわ、まずった。俺ってば普通に――って、これじゃあ、アリサ……俺と勝負なんてしてくれないじゃん。
 果たして俺の言葉に目を丸くする三人。それを見て視線を下へと向けて思う。せ、せっかくの強みが――って言うか、まじめに高卒レベルって……勝てっこないじゃん。普通に考えて……バカだなぁ、俺。とほほ……。
「ご、ごめん……」
 とりあえず謝る。……あ~あ、失敗したなぁ。今回も『前』と同じに……あ~あ。焦ったのが失敗だった「面白いじゃない」――……はい?
 俺は半ば呆然と顔を上げ、何故か勝ち気な笑みを浮かべていたアリサを見て、目を白黒させた。
「ふふん! 良いわよ? その勝負――受けてやろうじゃないの!」
 ……あれ? な、なんで?

 ◇◆◇◆◇

 三年の春休み。……どういうワケかあの日、アリサが俺の申し出を受け、テストで勝負してくれてから二ヶ月と少し。やっぱりどういうワケだか仲良くなれた三人と、それに加えて知り合ったテスタロッサと八神の、計五人と今、休みの日に何時かのように喫茶店で期末試験の反省会――という名のダベりパーティーをしていた。……なんで?
 あ。ちなみにテストは俺とアリサは満点だったんでドローだった。……て言うか、よくよく考えればこの結果はやる前から知ってたじゃん? 『前』と同じじゃん? ……つくづくお預けプレイに気が焦ってたんだなぁって痛感したよ、うん。
 そして、
「前々から思ってたんだけどさ。あんたの前髪ってウザいのよね」
 ……いきなり何を言うのかね、この子は。
 俺はいきなりのアリサの暴言に顔を背けてため息だ。ちなみに席は、並ぶ二つのボックスの内、端の俺から順に隣が高町、隣の席にテスタロッサ、そして向かいにアリサ、その隣から順に月村でやっぱり隣の席でテスタロッサの向かいに座る八神といった感じ。
 だから「ちょっと動かないでね」と言ってアリサが手を伸ばせば、向かいに座る俺には簡単に手が届くワケで……適当に前髪を掻き上げられれば、彼女と目が合ってしまうワケだ。うん。『前』にアリサに色々と鍛えて貰ったから、少しは目を合わせられるようになったし、女の子に触られることにも慣れはしたけど……うん。それでもやっぱり、思いっきり体を遠ざけちゃうのは俺が神なるヘタれだから。…………ちくせう。
「わっ、ちょっと! 動くなって言ってんでしょ!?」
 うん。そして彼女に命令されればそれを実行してしまうのも『前』と一緒なのさ。…………ちくせう。
 果たしてアリサの手で前髪を上げられ、それを隣の月村から借りたヘアバンドで止められる俺。……ああ、俺のカーテンが。っていうか、みんなして見ないでくれ。い、居心地が悪い……。
「あ、アリサちゃん……」
 ん? ああ。なんだか俺の額の怪我を見て顔色を変える月村に、俺は今更ながらに前髪を伸ばしていた表向きの理由を思い出した。そうそう、コレを隠すために伸ばしたいって担任には言ってたんだよな。うん。
 そして、
「うーん……なんだぁ、やっぱりあんたって、そんなにカッコイいワケじゃないのね」
 言うに事欠いてそれか、アリサ! …………ちくせう。
「あはは。さすがに、本みたいに『隠してたけど、じつは美男子だったんやー』とは行かへんなぁ」
 そして追い討ちか、八神。
「ふ、二人ともひどいよ~」
「そ、そうだよ。マサキ、そんなに言うほどじゃないと思うよ」
 高町、テスタロッサ……出来ればスルーするという形でその優しさを発揮してくれなさい。て言うかコッチ見んな。
「き、キミらがレベル高いだけだろ……」
 とりあえず負け惜しみを口にしつつアリサの手を退け「待った」……まだ羞恥プレイを続けさせる気か、アリサ。
 俺はそして彼女の手で前髪とヘアバンドを整えられる間、一人いつまでもこちらを心配するように見てる月村を見て口を開いた。
「悪い、月村……。俺みたいなのに……。あ、後で洗って返す――で、良いか?」
「え? ぁ……。う、ううん。それは――」
「出来た」
 ん? 果たして自信満々の笑みを浮かべて言ったアリサと、それに合わせて彼女が取り出した手鏡とを見て月村から注意を逸らす俺。って、おお……。そこに映った、上手いこと額の傷を隠しつつ前髪を整えている俺を見て思わず感嘆の息を吐いた。
「……上手いな」
「『カッコイいな』、じゃないのが残念よね」
 ……アリサ。まだそのネタを引っ張るのか。
「…………」
 ――果たして俺は、その翌日から月村にヘアバンドを一つ貰い、そしてそれを着けて学園生活を送るようアリサに強要されることになったのだった。




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