嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《りりかるーぷ》2

《りりかるーぷ》





 ◇◆◇◆◇

 期限は二学期のテストまで。
 それまで委員長は俺の言うことを可能な限り聞いてくれるらしい。
 ……うん。でも何も要求出来ないのは俺がヘタれだからさ。…………ちくせう。
「や、約束は守るわ。……それに、あんたにテストを受けさせといてあたしだけ約束を反故になんて出来ないし」
 そう腕を組みそっぽを向く委員長は――水着姿。
 ……いや、これは何も俺がそれを強要したのではなく、場所が海で今日が臨海学校の日だからってだけだ。うん。だからスク水は俺の性癖の具現ではないし、ロリコンでもない俺がまだまだ幼児体型の委員長に欲情などするはずが無い。
「? っていうかその姿勢キツくない?」
 何で前かがみ? そう問う委員長から顔ごと明後日へ。…………ちくせう。白いプニプニお肌が眩しいぜ。
 俺はとりあえず荷物が纏められたレジャーシートの上、膝を抱えるようにして諸々を隠しつつ「気にするな」とボソボソ返す。
 そして、
「あれ~? 二人とも、海に入らないの?」
「なのは、ダメだよ。せっかく二人っきりなんだから」
 現れた、やっぱり美少女二人に俺はため息だ。ああ、もう。ロリぷにボディが艶めかしいぜ!
「ちょっ!? フェ、フェイト! あ、あああ、あんたはまた、誤解を――」
「あ、そっか。うん。ごめんね、雅樹くん」
 ちょっ、おまー!? いきなり顔を近付けるな高町!
 俺は前髪の奥で目を剥き、後退ろうとして「それから、名前で呼ぼうね」と言って体を離した高町にパチクリ。……はい? とりあえず首を傾げて固まった。
「ダメだよ雅樹くん。アリサちゃんのこと、いつまでも『委員長、委員長』って呼んだら」
「なっ!? ちょ、ちょっとなのは――」
「あ、それ、アリサもだよ」
 ……暑いなぁ、うん。夏の日差しってのは本当に暑いなぁ。
 うん。現実逃避してますが、何か?
「マサキのこと、アリサ、いっつも『あんた』とか『コイツ』って言ってるよね? ……ダメだよ。付き合うとかそれ以前に、友だちなんだから名前で呼ばなきゃ」
 うん、うん。しっかしアレですねぇ。この子たちは良い子だねぇ。
 俺は三人の話に耳を傾けることなく内心で思った。こんな、海パン一丁だと何時かの怪我やら手術やらの痕が目立って不気味だろう俺なんかを気にすることなく接することが出来るなんてねぇ。
「うっ……! で、でも、あたしがいきなりコイツのこと名前で呼んだら……な、なんか意識してるみたいじゃん!? ぜんぜん、これっぽっちも好きじゃないのに誤解されそうじゃないッ!?」
 う~ん……やっぱり俺も慣れないとなんだよなぁ。て言うか、せっかく委員長と奇跡的にでも付き合えてるんだし、やっぱこの辺で少しフラグの強化をしといた方が……。
「誤解って……」
「……ねえ?」
「ちょ、ちょっとソコ! なに目と目で通じあって――ってコラ! 生暖かい目ーして無言で去るな!」
 ? あれ? でもフラグの強化――っていうか好感度の上昇ってどうすりゃあ良いんだろう?
「「……ぁ」」
 目が合った。
 なのですぐさま視線を逸らそうとしたら先に委員長の方から顔を背けてくれたので俺は目線をそのままに、とりあえず無駄に豊富なギャルゲー知識の中から有効そうで鉄板であろうソレを口にした。
「世界一綺麗だよ、アリサ」
「――――ッ!?」
 委員長、海へダッシュ。って、あれ!? 選択肢間違えた!?
 くぁ~……! これだからリアルで彼女居ない歴イコール人生の男は!! というかギャルゲーしか寄る辺の無いヒッキーは!!
「こ、これが虚構と現実の差か……!」
 俺はそして一人、しばらくの間、レジャーシートの上で立てた膝の間に顔をうずめて居たのだった。

 ◇◆◇◆◇

 二学期のテストも委員長は俺の賭を飲み、そして結果は――なんとビックリ、俺の勝ち! なんでもあの完璧超人である委員長がイージーミスを犯し、一つだけ間違えて満点を逃したんだとか!
 と、そんなワケでまたしばらくは俺と付き合ってくれるらしい委員長と、そして月村、高町の四人は今、テストがあった週の休みに喫茶店で集まって反省会という名のダベりパーティーをしていた。……て言うか、小学生が喫茶店でダベるとか。どんだけブルジョワなのかね、この子たち。
 ちなみに仲良しグループの八神、テスタロッサは居ない。なんでも家の事情がどうとかで学校を休んでいたが……そう言えば高町もたまに居なくなるよな? でも委員長や月村は気にしてないみたいだし……うーん?
 ……ま、自他ともに認めるヘタれの俺が、そんな訳ありっぽい話を訊くなんてしませんがね。
 今だって隣の委員長を意識しまくりでソファーで固まってるぐらいだし。
「なっ!? て、テスト勉強したこと無いってあんた――……くっ! あたしはこんな世の中を舐めきった餓鬼に負けたの!?」
 ちなみに委員長は全く意識してねー。…………ちくせう。
「にゃはは。まー、まー、アリサちゃん。っていうか言葉使いが乱暴だよ?」
「うっさい! それよりなのははさっきあたしが出した例題出来たの!?」
 騒がしいなぁ。
 でも不快じゃないのは、そんな騒がしい空間に俺という存在を許してくれているらしい気配が感じられるから。……『前』は結局、俺ってば教室の『空気的存在』だったからなぁ。
「うにゃぁあ!? や、八つ当たりは良くないよアリサちゃん!?」
「そ、そうだよ。なのはちゃん、文系苦手なんだし、もっと優しく――」
「ちなみにすずかは出来てるの?」
 いやはや姦しい。
 俺は賑やか過ぎる三人から顔を背け――おっと。座席の脇に立てかけて置いた松葉杖を慌てて退かし、ケーキを運んで来てくれた眼鏡に三つ編みのお姉さんに軽く会釈。
「お? ああ、ありがとうねえ。でも今度からは急に退かすより注意した方が安全だよ?」
 ……ご、ごもっともで。
 俺はそしてウェイトレスのお姉さんにまた一つ会釈を返し「あ。ありがとうお姉ちゃん」――って高町のお姉さん?
 ……ああ、なるほど。身内がバイトしてるからこの喫茶店――『翠屋』なわけね、納得。
 っていうか綺麗な人だなぁ。最近じゃ大人のビデオはおろかR禁ゲー全般が出来なくって、こういうちょっと大人な美人さんを見ると――
「ちょっと」
 頭を掴まれた。
 無理やり委員長に向き直させられた。
「なっ、なんだよ……?」
 視線は逸らす。だから委員長がどんな顔をしているのかは知らないが、感じられる雰囲気から不機嫌そうなのは察せられた。
「……あんたねぇ。仮にもこのあたしより勉強出来る天才の癖に、何であたしだけがバカの面倒見てるわけ?」
 うわ、それ誤解。俺のは前世の知識があるだけで天才じゃ「「バカ……」」――って委員長? な、なんか、向かいの二人が明らかに煤けてるような気配になってるんだけど?
「違うよ……」
 とりあえず俺は否定。
「悪い、委員長……。カッコ、つけた……」
 ……うん。このまま『天才』なんて誤解されっぱなしじゃ後で大変そうだし、素直に言おう。
「嘘だよ……。勉強、したんだ……。それなりに。俺、本当はそっちの二人より、バカだったから……」
 活舌の悪い、聞き取り難いだろう声で。
 視線を逸らし、半ば彼女から体を離して。
 それでも、告げる。こんな俺の言葉に耳を貸してくれることを信じて、告げる。
「だから、委員長の方が……凄いと、思う。尊敬、してる……」
 だから――と、そこまで言って言葉を失う。
 ……あれ? 何かこっちに視線が――あれ?
「…………『だから』?」
 あれ? あれ?
 いつの間にか、俺に集まっていた視線。それに頭を混乱させ、冷や汗をダラダラと流して視線を右往左往。うわ、えっと……お、俺は!
 あれ? でも、これを言っても良いのかな?
 ……せ、セーブを! なんだか知らないけど、『ココ』、今、『分岐点』ぽいから! せ、せせせ、セーブさせて~!
「だ、だから……――」
 良いんだよね!? なんだかいきなり重要なシーンちっくだけど、この選択肢で良いんだよね!?
 俺はそして焦燥感に胸を焦がし、喉を干上がらせながらもソレを口にした。
「だから、アリサと……賭無しで付き合いたいって、思ってる」
 ……うん。だってそろそろ負けそうだし。
 俺はそして、冷や汗を流しながら彼女の返事を待つ。……う~わ~。間が~。ヘ、ヘタれには、この間が耐えられない~!!
「あたしは――」
 って言うか、返事すら無理! 絶対!!
「好きだから……!!」
 だから、遮る。
 だから、と遮る。
「だから、その返事を……次のテストで、貰う。次を、最後にしよう、アリサ……」
 立ち上がる。
 みんなの顔は見れない。だから振り返ることなく松葉杖でヨロヨロと歩き出す。
「…………ぁ」
 ――果たして、その日から俺は委員長を避け続けた。
 テストの日まで。高町たちの言葉に耳を貸すこともなく。クラスメートが一様に俺と委員長が別れたと思うようになる頃まで、ずっと。
 そして――

 ◇◆◇◆◇

 気が付いたら、知らない天井だった。
 ……『今』ならわかるそのネタを、素で思った。
 知らない天井。
 知らない。
 わからない
 何も……わからない。
 その時の俺には、『過去』が無かったから。その時の俺には『記憶』も、『知識』も、無かったから。
 ……『今』なら、わかる。転生した、『今』なら。
 俺はその日――九歳の誕生日に生まれ変わったんだ、と。
 わかる。
 それから十年。遅れて生まれた赤ちゃんのように九歳からスタートした人生の中で、わかった。
 俺は事故で死にかけた。足を、頭を怪我した。
 母を、失った。
 記憶を、失った。
 そして――転生した。
 あの日――『俺』が生まれた、九歳の誕生日に、生まれ変わった。
 ……だから、かも知れない。
 だから、俺は意気地が無いのだと思う。
「……はぁ」
 何度目だろうため息を吐きだし、自室のベッドを転がる。
 ……今ごろ委員長たちはテストを受けてるんだろうなぁ。
 ぼんやりと枕の脇にある目覚ましを眺め、また、ため息。……あ~あ、本当に。なんてヘタれ。
 視線を、ここ最近、かじりついてた机へ。……はは。本当に、バカだなぁ。
 今日は委員長との最後の賭の日。そして俺は、この日のために勉強して来た。
 ……ずっと。それまでは殆ど勉強などせず、勝ち負けなんて二の次だったけど、ずっと。
 今回は勝つ気で。今回だけは負けないために。
 だけど――……あ~あ。俺って、本当にバカ。
 バカ。バカだなぁ……。
 どうせ勝っても、これが最後って言ったのは俺なのになぁ。勝っても負けても、これが最後なのに……最後、だったのになぁ。
「……はぁ」
 ため息を、また。
 そして――インターフォンが、鳴った。
 誰だろう? そう思う間もあらばこそ。父親が会社に行っていて、今は俺一人しか居ない筈なのに玄関は勝手に開き、あまつさえ『ドラバタ』と足音荒く誰かが入って来た。
 …………はい?
 俺、頭真っ白。え? なに? 強盗? ……うわ、前世じゃそんなこと無――ああ、そう言えば『前』の俺は今ごろ、聖祥とは違う、専用のスクールだったっけ。
 そりゃ気付かない。ってか運が無いなぁ、俺……。果たしてその足音が遂に俺の部屋へと辿り着く頃。俺はそうしてすべてを諦めていた。
 そして――

「みっ、見つけた……、わよ……!」

 委員長は、荒い息を吐きながら俺の前に現れた。






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