嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《魔法少女リリカルなのはStrikerS ~Fenrir~》外伝6

《魔法少女リリカルなのはStrikerS ~Fenrir~》






 ――かくも頭を悩まさねばならない事象が他にあるだろうか?
「「…………」」
 我が前にあるは二つの紙。そこには双方が心を込めて描いたとされる、我の画。
 元より芸術といったものには疎く、美術になど興味の無い身。ましてや絵画など造詣が深い筈も無く……つまりは真否眼など無きに等しいということなのだが――
「どっち?」
「……?」
 自身の描いた絵を掲げ、我に見せる二人の子供――ヴィヴィオとポチとを見て、我はまた、視線を絵へと戻して熟考する。
「む、むう……」
 現在、我はシャマルに勧められた少年形態でいるのだが……如何せん。こう言っては何だが、双方の掲げるそこに我が本当に描かれているのか激しく疑問だ。……と言うより、これは色以外に我らしい箇所など無いように映るのだが?
 眉根を寄せ、どこかに逃げ道は無いか――そんな誇り高き守護獣にあるまじき思いを抱いてしまうのもやむなし。いっそ時が止まって欲しい……そんな事まで考えるほどに追い詰められ、嫌な汗が止まらない。
 ……困った。これはどう答えたら良いのか。
 そう頭を悩ませ、真綿で首を絞められる思いで立ち尽くすこと数秒。果たして助け舟は意外にも早くに現れてくれた。
「あら? 二人とも良く書けてるわね~」
 そう笑顔をたたえ現れたのはアイナ・トライトン。彼女の制服とも言えるエプロンを纏い、片手に掃除機を下げて現れるや我に片目を瞑って見せ、
「う~ん……でも、せっかくザフィーラさんを書いてあげたのに『どっちが上手い?』って訊くのはおかしいよね?」
 そう二人を諭すよう、ヴィヴィオとポチの間に膝を追ってしゃがみ、双方の肩に手を当てて視線を合わせる彼女。……ああ、背に後光が見えるようだ。
「「…………」」
 果たして、顔を見合わせる幼き二人は、そしてどちらからともなく笑いあい、
「はい♪」
「……♪」
 ヴィヴィオとポチはその手の絵を差し出した。
「……大事にする」
 我はそれを受け取り、笑みを向ける三人に頭を下げた――。









外伝6 家族 ‐う゛ぉるけんりったぁ‐





 ◇◆◇◆◇

「? ポチの『ママ』って、だれ?」
 少し前から、ここ、六課で預かることになった少女――ヴィヴィオ。彼女の正体は――……と、それはこの際置いといて、問題はその発言。
「ぼ、く……の、『ママ』……?」
 テーブルで向かい合って座り、二人して紙とクレヨンを手に手に首を傾げあう。
 俺の、ママ……? 初めに思い浮かんだのははやての笑顔だけど……彼女を母と仰ぐのは失礼だろう。まだ成人にすらなってない上に、前世を併せれば十歳以上も年下だしね。
 だから……ママは、やっぱり前世の――……いや。アレは、この際関係ない。思い出すな。と言うか、この場合、ヴィヴィオの質問に返す最もベターな解は――
「ア、ィン……?」
 言って、首を傾げる。
 リィンフォース・アイン。……うん、間違いじゃあ無い。…………筈。
「そっか♪」
 ヴィヴィオはそんな俺に笑いかけ、
「ん♪」
 俺も笑って誤魔化す。
 そして、
「じゃあ、次は『家族』ね!」
 俺は、少女の出したお題を前に――
「……………………え?」

 ◇◆◇◆◇

 ヴィヴィオは普段、なのはちゃんとフェイトちゃんの部屋でアイナさんとザフィーラ、そしてポチと遊んでいて、いつもメディカルルームに籠もってる私は、今まであまり会う機会が無かったんだけど――

「シャマル先生。ヴィヴィオにもミミとしっぽ、ください」

 言って、ペコリ。
「…………はい?」
 瞳を丸くする。……え~と? 目をしばたき、とりあえず傍らに立つ保護者――少年形態のザフィーラを見た。一体、なに……?
「……我らと同じようになりたいそうだ」
 それに肩を軽く竦め、そして同じようにヴィヴィオの傍らに立ってたポチと顔を見合わせて、苦笑。
 ……ああ、なるほど。果たしてポチたちの獣の耳と尻尾に羨望の眼差しを向ける少女を見て、ようやく先ほどの台詞の意味を察する私。つまり、変身魔法で獣系幼女になりたいってこと?
 つまりそれは……………………良いのよね? ちょっとぐらい趣味に走っても。
「うふ♪」
 思わず笑顔になる。うふふ♪ そうよね、ポチもザフィーラも、スコールやたまに遊びに来るアルフも、みんな、ヴィヴィオと大して変わらない見た目の子達は獣耳だもんね。ちょっと羨ましいって思ってもおかしくないわよね。
 だから――私はガシッと少女の肩を掴み、瞳を輝かせて問うた。
「……ねえ? ヴィヴィオは犬、狼、猫、狐、兎だったらどれが良い?」
「ふえ……?」
 目を丸くするヴィヴィオ。それを半ば無視し、目の前の愛らしい少女には何が似合うかを妄想する。
 ……ああ、やっぱりスタンダードに猫? でも犬耳に首輪も……。それでポチたちと写真を……。ああ、でも寂しがり屋なウサちゃんっていうのも良いわね! いいえ、この際――全部試してみましょうか!?
「うふ♪ うふふふ……♪」
 顔が綻ぶ。どうしようもなくにやけてしまう。
 ああ、良いわ~♪ よく見たらヴィヴィオって美少女の中でもかなりクォリティー高いのよね! オッドアイで泣き虫っていう属性も……良いわ! これは夏が楽しみ――
「ぅ……ぅぁああ~!」
 泣かれた。
「って、え? ええ!?」
 な、なんで!?
「こわい~……! あああー……!」
 ええ~!? 果たして私の手から逃れ、ポチに泣きつくヴィヴィオ。そしてそんな少女を抱き止め、苦笑するポチと、その傍らで渋い顔をしてるザフィーラ。……え? ええ? わ、私……怖い?
「しゃ、ま……る。……ぁつ、く……なり、す、ぎ」
「あれは……子供に向ける目では無かったな」
 ……私も泣いちゃダメ?
「あ。なの、は……?」
 そして、ポチの言葉と視線を追ってギョッとする。
「なのはママぁ……!」
「ん~? どうしたのヴィヴィオ?」
 現れたなのはちゃんに泣きつくヴィヴィオと、そしてそう笑顔で少女に問いつつチラリと私を見るなのはちゃん。あ、あははは…………はい、回れ右。
 そして――ダッシュ!
「ご、ごめんなさーい!!」
 果たして私は、笑顔なのに怒ってるらしいなのはちゃんから脱兎の如く逃げ出したのだった。

 ◇◆◇◆◇

 ……『家族』。
 『家族』の、絵。
 俺の……家族。
 俺、の……――
「…………」
 ――俺の紙は、白いままであった。

 ◇◆◇◆◇

 その夜、寝所に戻ると――部屋の前に、枕を抱いたポチが、居た。
「……ん?」
 それは、扉の横。ポチは廊下の壁に背を預け、腰掛け、抱いた枕に半ば顔を埋めて舟をこいでいた。
「……ふむ」
 無意味に頷いて、思う。常の白衣やメガネは無く、寝間着だろうワイシャツ一枚というラフな格好で自身の長い銀の髪にくるまるようにして眠るポチは……やはり、どこまでも愛らしい。
 果たして近付き、膝を折って私はその顔を覗く。……む? そしてポチの頬を濡らす滴をそっと拭い、悩ましげに寄せられた眉にこちらも眉根を寄せた。
「……ぁ」
「ん? ……ああ、済まない」
 起こしてしまったか? そう微笑を向けて問い、そしてポチの体をそっと抱き上げる。
「しぐ、なむ……」
 ああ……暖かい、な。私は私の胸で微笑むポチに改めて笑みを向けて返し、部屋へと入った。
「珍しいな……」
 ベッドへとポチを寝かせ、呟く。こちらではポチと部屋が別になっていたから、こうして一緒に眠ることは無くなっていたが――……その事を密かに残念に思っていた辺り、私にはほとほと親ばかの気があるらしい。そう内心で苦笑気味に思いつつ、
「どうかしたか?」
 出来るだけ優しく、柔らかく、問う。
「……ん」
 それにポチは顔を布団の中に潜らせ、そして目だけを出すようにしてこちらを伺う。
 果たして、よほど言い難いことなのか。それから数分、ポチは私に視線を送っては逸らしを繰り返した後で、口を開いた。
「なに、して……ほ、しぃ?」
 ポチは、それこそどこまでも真剣な表情で、
「ぼく、は……なに、したら、いぃ?」
 どこまでも不安に揺れる瞳を向けて、
「ぼく、は……どう、したら……ここ、に、ぃて……いぃ?」
 ポチは、問う。
 ここに居て良いか、と。どうすれば自分が『ここ』に居ることを許して貰えるか、と。
 しかし――
「……何故、それを訊く?」
 問い返さずには居られない。
 ここに居て良いか――その問いに意味は無い。そのような愚問、答えるまでも無い。
 私は――私たちは、ポチが『何かをしてくれるから居て良い』などと思った事は無い。役に立たないと切って捨てる筈など無い。
 だから――……しかし、ポチはそこに疑問を抱いていた。
「……ゅめ、みた」
 その瞳は揺れ、
 その耳は不安に垂れ、
「ゆめ。ゅめ、で……いわ、れた……」
 そして、私は何故ポチが枕を持って現れたのかを知った。
「ぉまえ、が、しねば……ょかった、のに……って」
 ポチはそう言って瞳を閉じた。
「みん、な、に……」
 その頬を、透明な滴が伝って落ちた。

 ◇◆◇◆◇

 お前さえ居なければ!

 ――そう言われる夢を見るのは、初めてじゃない。

 お前なんかが生まれて来たから!

 ――……そう言われ続けて育った俺にとっては、今さらだ。

 お前が死ねば良かったんだ!

 ――……だけど、

「全部……ポチのせいや」
 そう言ったのは――はやて、だった。
「お前が、居なければ……」
 そう言って見下ろすのは、シグナムだった。
「死ね」
 ヴィータが、
「死になさい」
 シャマルが、
「消えろ」
 ザフィーラが、
「お前のせいだ!」
「お前なんかが生まれて来たから!」
「お前が死ねば良かったんだ!」

 ――……俺は初めて、それを悪夢だと思った。

 ◇◆◇◆◇

 ポチの様子がおかしい。
 朝。朝食をとろうと廊下に出るや何故かシグナムと二人、ポチはあたしを待っていた。
「な、なんだよ?」
 思わず目を剥き、問う。
 するとシグナムは『自分は今日外回りをせねばならないから』と良くわからねー説明を、何故か残念そうにして挙げ句、こちらもどーいうわけかビクビクしてあたしを見てるポチを寄越した。
 そして、
「…………」
 今、あたしはフリースペースでポチと二人、無言で向かいあって座っていた。
 ……どーしたもんかな? 頬杖をつき、やっぱりあたし相手に不安そうな顔をして耳を垂らしてるポチを見やる。……つか、どーなってんだ?
 ここ最近の出来事を思い返す。……あれか? はやてが入院してたからか?
 ……いや、でも。もう退院してそれなりに経つし、な。
 あ。それよりは例の『ハティ』の事が原因か?
「……うーん」
「っ!」
 思わず唸ると、ポチがまたビクッとした。……あれ? なんか今朝のポチって――
「懐かしい、な」
 思わず、笑みとともに言葉が零れた。
「……?」
 それに不思議そうな顔をしつつ、やっぱりあたしに怯えてるらしいポチ。その態度はまるで――
「……ありがとな、ポチ」
 笑う。
「生まれて来てくれて、ありがと」
 笑って、告げる。
「……ぇ?」
 不思議そうな顔をするポチに――家族に、あたしは微笑を浮かべて、思う。ありがとう、ポチ。
 ――……何だ、お前は?
 思い出す。
 それは初めてポチと出逢い、ポチがシグナムにレヴァンティンを突き付けられていた時。あたしにとってポチは……『何』でも無かった。『何だ、こいつ?』程度の、どーでも良い存在だった。
 だけど――……今は、違う。
 思い出す。
 何事にも一生懸命だったポチを。怯えながらも『ありがとう』と声無く笑いかけてくれたポチを。
 そして、はやてのために命を懸けたポチに――
「ありがとう。……そう、いつか、ちゃんと言いたかったんだ」
 感謝する。
「ありがとう」
 ポチと出逢えたことに。
 ポチが教えてくれたことに。
「ありがとう。それから――……もうあんま、無茶すんなよ?」
 あたしは、そして微笑みながら、ポチの頬を過ぎる涙を拭う。
「……ぼく、は――」
 『家族』で、良いの……?
 ポチはそう、涙をポロポロと零しながら、問うた。
「ぼく、は……――」
「バーカ」
 遮り、笑う。
「そんなん、当たり前だ」
 そして、あたしはポチの頭をグシャグシャと撫でた。
「…………」
 ポチはそれに目を丸くし、
 ゆっくりと顔を涙に歪めて、
 耳を垂らして俯き、
 そして、
「……♪」
 ポチは、笑った。
「♪」
 あたしはそれを見て、思った。ああ、やっぱり……あたしは、この笑顔が大好きだ、と。

 ◇◆◇◆◇

 仕事に戻るヴィータを見送り、俺は一人、廊下を歩きながら思った。
 ……『家族』の、絵。
「♪」
 知らず、頬が緩んだ。よし、戻ったら早速みんなを書こ――

「おっ、ワン子発見!」

 呼びかけに振り向くや――ギョッと目を剥く。
 んなっ!? 嬉々としてこちらに走り寄って来るはやては――酔っ払ってた。ちょっ、待っ……!?(汗)
「っ!!」
 即座に反転。そして駆け出し――捕まった。
 んな~っ!? 俺は最後の抵抗とばかりにジタバタと暴れ、
「は~♪」
 お酒の匂いを嗅がされ、撃沈。ああ、はやて……ひどい(涙)
「って、ちょっ!? は、はやて! ポチはアルコールの――」

 ――果たして、今日も今日とて俺たちは笑い会う。

「わっ、わわわっ!?」

 まるで本当に、『家族』のように――。
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