嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《魔法少女リリカルなのはA’s~Fenrir~》外伝5

《魔法少女リリカルなのはA’s~Fenrir~》外伝5






 ――救える、そう思ってたんや。
 ポチから貰った力――『先見』で、わたしは……ゼスト隊のみんなを救えるて思ってた。
 例えそれが、本来なら全滅する筈の『運命』で、対する敵がどれだけ強大なのかを知ってても……それでもわたしは、あの日までそう信じてた。
 ……わたしは、そのために努力してた。
 グレアム叔父さんやリーゼ達に師事を仰いで、リィンフォース達の力を借りて、わたしは強くなった――……その、筈、やった。
 ……足りへん、かったんかな? わたしの努力や……覚悟が。それこそポチみたいに、死に物狂いで――……そやね。『後悔、先にたたず』……今さらや。
 今さら。
 ……でもな、
 それでも、わたしは――わたしには、もっと何か出来たんやないかって、もっとわたしが頑張れば、全員は無理でも、せめてあと一人ぐらい……そう思ってまうんよ。
 ……うん。そやね。これも後悔や。
 うん。わかっとる。『予見』で知ってようと、必ずしも救えるわけやないって、わかってはいるんよ。
 ……でもな、カリム。
 それでも、わたしは――







 外伝 はやてとカリム






 昼過ぎ。そろそろ太陽の位置が空の中心となりつつある頃、私は一人、事務的な仕事をこなしながら考えていた。
 ……あれは、たしか先日の、はやてのお見舞いに行った時の会話、だったかしら?
 ふと手を休め、窓から蒼天を仰ぐ。……はやて、大丈夫かしら? 思わず眉根を寄せる。
 未来を知る力――『先見』を持つはやては……やっぱり、自責の念に捕らわれてしまったみたいだった。
 そうなることは……なんとなく、わかっていた。同じように未来を予見出来る私は知っている。
 暗い未来を回避出来なかった、その無念と後悔を。……そしてその無意味さと虚しさを、私は知っていて、だからこそはやてにも忠告はした。
 ……だけど、
「…………はやては、優し過ぎるのよね」
 呟き、ため息。はやては決して弱くは無いけど……でも、ときどき自虐的になりがちなのよね。
 ゆっくりと席を立ち、窓に指を這わせる。
 ……はやての生い立ちは、聞いてる。
 だから、自分を犠牲に――……いえ。むしろ自分を軽視するきらいがあるのは知ってる。
 本当に……あの『主従』は、優し過ぎる。
「……はやてと、ポチ」
 胸に手を当て、祈る。……二人とも、頑張って。
 もし『先見』の呪いに捕らわれてしまえば、その先に待つのは、きっと――

「おや、珍しい。姉さんは見に行かないのかい?」

 声に振り向くと、扉の前に立っていたヴェロッサ・アコース――ロッサは、笑みを浮かべて返した。
「今ちょうど中庭で、はやてとシャッハが模擬戦してるけど――」
 …………………は?
「……その様子じゃ、やっぱり知らされて無かったみたいだね」
 半ば呆然と見返す私にロッサは肩を竦める。って、それよりも!
 はやて。あなた、少し前まで重態じゃなかったかしら……!?

 ◇◆◇◆◇

 シャッハの双剣『ヴィンデルシャフト』を手の中の『シュベルトクロイツ』で弾き、避け、僅かに後退。そしてその半歩の距離を利用し、次の魔法を脳内で組む。
「ハァァアアアア!!」
 対し、シャッハは更に動きを加速。わたしがどうにか稼いだ半瞬の時を無にするような駿足で肉迫し、両手のそれを――
「っ! リィン!!」
 考える前に指示するはユニゾンしている融合騎――リィンフォース・ツヴァイことリィン。
『はいです!』
 刹那の間に閃く二撃。
 それをリィンが張ってくれた障壁で弾きつつ、その衝撃を逃がすように飛行魔法を使用。シャッハの追撃を今度はかなりの距離を後退して避ける。
「……あはは。さ、流石に強いなぁ、シャッハ」
 辛くも仕切り直しに持ち込み、小さく肩を上下させながら引きつった笑みで言うと、シャッハはわたしに反して息も切らさず余裕の笑みでもって返した。
「いえ、貴女も。それこそ、数日前までベッド上に居たなどとは思えないですよ、はやて」
 ――今日の模擬戦の目的はリィンの最終調整やった。
 ポチの話やと、シグナム達とのはもう済んだらしいんやけど、わたしは先日の――……もう先月にもなる、わたしが一時的に配属されとった部隊での最後の事件以来、わたしは病院に寝とったせいかそれが遅れてた。
「……いつまでも寝とるわけには行かんからな」
 わたしは――……失敗、したから。
 ポチからもたらされた『原作』の知識をもってゼスト隊を救うつもりやったけど……ダメやった。
 だから、その後悔と懺悔の思いを胸に、わたしは――
「……そうですか」
 距離にしておよそ五メートル弱。果たして対峙するシャッハは――不意に構えを解いた。
「?」
 それを見て怪訝な顔になるわたしにシャッハはウィンク。呆気ないぐらい簡単に防護服まで解くやチラリと視線でそちらを示した。
「? ――て、わ!?」
 視線を追って見れば、そこにはビックリ顔から今まさに怒り顔へと変えつつこちらを見やるカリムの姿が。って、ロッサ!? わたしはそしてその傍らで軽く手を振る青年を見つけ、ことの推移を完全に理解。……そう言えば、ロッサには口止めしてへんかったな。
「……あ、あははは」
 わたしは先ほどまでとは違った理由から冷や汗を流し、遅ればせながらシャッハと同じようにデバイスと騎士甲冑を解除。肩に『ぅわぁ……』って顔しとるリィンを乗せ、とりあえずカリムのもとへ。
「か、カリム? あんな、これはあの――」
「はやて!!」
 遮り、怒鳴られて首を竦めるわたしに足音荒く近付いてカリム。怒り顔にちょっぴり涙目をプラスした表情でわたしを睨み、口を開いた。
「あ、あなたは……! 少し前まで病院で……! 重態で……だからッ!!」
 おそらく感情が高まり過ぎて言葉にならないのだろう。肩と声を震わせ、半ばカタコトのように単語だけを並べて怒鳴る彼女にわたしは苦笑し、
「大丈夫やよ。ちゃんと怪我なら完治しとるし、主治医の人の許可は取っとるから」
 言って、視線を彼女からそちら――今居る中庭の端に座り、こちらを見とった二人へ向ける。
「しゅ、主治医って……」
 それにカリムは困惑の表情になりつつわたしの視線を追い――そしてわたしらの眼差しの先でキョトンとしとるポチを見つけ、今度はそちらへと歩み出した。
「……? ??」
 果たして、何やら怒った様子で歩み寄るカリムを前に半ば怯え始めるポチ。それにわたしは、胸中で謝るのやった。

 ◇◆◇◆◇

 俺がドクターの知識と聖王教会、無限書庫の資料とをもとに先日生み出した融合騎『リィンフォースⅡ』こと八神家末っ子のリィン。その最終調整を行うために、半ば謹慎処分中のはやてに連れられて向かった教会で――俺は今、怒られてた。
「融合騎の機能を利用した怪我の肩代わりって……あなたはまた! どうしてそんな無茶を……!?」
 怒鳴る、カリム。傍目からは手の掛かる兄弟を叱るお姉ちゃんの図で微笑ましいのだろうが……ごめん。っていうかなんで俺が怒られてるん?(汗)
「……!」
 俺はそして半ば身を隠すように盾とした傍らのリィンフォース・アインに目配せ。カリムの言うそれが如何に簡単で安全なのかを説明して貰おうと――
「……申し訳ありません」
 って、頭下げたぁあああ!?(悲鳴)
 ちょっ!? それ、カリムの言葉を肯定してるみたいじゃ――って、わ!? お、お願いだから体位を入れ替えないでって言うかカリムに近付けないでコワイから……!(泣)
「ポチ……!」
 ひぃ!? ギュッと目を瞑り、肩を引きつらせる。ご、ごめんなさいごめんなさい! じつは結構ムチャしました! と、そうやって身を固め、次なる叱責を待っていると――
 ポン、と。軽く頭に手を置かれた。
 ……? 恐る恐る片目を開け、上目遣いでカリムを見れば、彼女はなんか『……しょうがないですね』と言うような苦笑を浮かべて俺を見ていた。
「あなた達は、本当に……」
 そしてため息を一つ。やっぱりなんか苦笑してるような顔して近付いて来たはやてやシャッハに向き直り、カリムは『お姉ちゃん的困り顔』になって口を開いた。
「……少しは自重してね、はやて。それからシャッハも」
 果たしてそんな彼女の言葉に『……はい』と素直に返事して僅かにうなだれる二人を眺め、思う。……う~ん、さすがはカリム。曲がりなりにもはやてのお姉ちゃん的な立場なだけはあって、ちゃんと心配して叱ってくれるのは有り難いなぁ。
「……本当に。あまり心配をかけないでね」
 俺は未だにカリムの手の乗せられたままの頭を動かすわけには行かないので胸中で頷く。うんうん、もっと言ってやって言ってやって。はやてにはもう少し自分を労れって! 本当に無茶ばっかしてって怒っ――
『って、ポチには言われたない!』
 ちょっ、ぅわっ!? ね、念話でツッコミですかはやて様!? ……やるな、流石は関西人(?)!!
「「…………」」
 とりあえず、視線を明後日に。……そ、その、俺にしか見えないような冷めた視線を止めてはいただけませんでせう?(汗)
『本当に、あなたも自重して下さいねポチ』
 って追い討ちかアイン!? 俺はそしてむくれ顔を傍らで呆れ顔になってる彼女へと向けた。……って、あれ?
 なんか、視界が……?
「さて、カリムのお説教も済んだところでお茶会にしようか? 今日はケーキを焼いて来たんだ」
 ……? 俺はお気楽査察官に手を引かれるがままに瞬きを数回。最近増え始めた視界の霞みを払い、そしてさっさと歩き出す彼に呆れ顔を向けるみんなを眺めてまた胸中で首を傾げた。

 ◇◆◇◆◇

 皆を連れていったん中に。そしてカリムの私室に再び集まるや早速持って来たケーキを振る舞い、僕はシャッハの入れてくれたハーブティーを優雅に傾けた。
 ……ふむ。それにしてもスゴいね。顔と目を動かさないようにしつつ向かいに座るはやて達を伺う。
「ほい、ポチ。あ~ん」
「……♪」
 仲が良い、ともすれば姉妹にも見える二人。笑顔でケーキの端を差し出すはやてと、喜色満面で尻尾を振り振り口を開けるポチは、カリムや僕にとって今一番の懸案事項だった。
「ふふ……。あ、ほら、ポチ。ほっぺにクリーム」
 そうこちらも笑顔で言い、ポチのその小さくて柔らかい頬を拭ってやるカリムは……その能力で苦労し、そしてそれと似たチカラを持つ二人を気にしていた。
「あはは。なんやモテモテやな~ポチ~♪」
「♪」
 表面上は僕も皆と同じように笑いながら、思う。……はやて、無理しているね。
 チラリとカリムを伺えば、それは彼女も僕同様に気付いているようだったが、何も言わない。……いや、言えないのかな。
「ふふ。……あ、そうだわ! ねぇ、はやて。ポチ、しばらく私が預かったら駄目かしら?」
 ……僕は、知ってる。
 姉さんがそのチカラでどれだけ苦労して来たかを、知っている。
 だからこそ、はやて達には幸せになって欲しいと思っていることを、知っている。
「わわわ! カリムがポチをお持ち帰りしたがっとる~♪」
「……? え? 『持ち帰り』……ああ、うん。そう……なるのかしら?」
 僕はだからこそ、影に徹する。だからこそ、僕は影ながら彼らを助ける。
「……………………あかん。なんや素で……。あかん。わたし、染まっとるんやろか……?」
「……え? え!? は、はやて……!? どうしていきなり落ち込んでるの……!?」
 さっきシャッハに頼んではやての体調は確かめた。……大丈夫。少なくとも彼女は本当に完治してる。
 だから――
「……ああ、我らが主も遂に」
「最近はずっとマイスターとシャマルの二人と一緒だったですから……」
 むしろ、問題があるのは――
「♪」
 僕はそして優雅な仕草でカップを置き、一応は話に入ろうと何やら落ち込み始めたはやてに、さも今思い出したとばかりの表情で言った。
「ああ、そう言えば聞いたよはやて。なんでも最近、はやての通ってた病院では『オタク』という病気が流行ってるらしいね?」
 だからもしかしてはやても――ん? どうしたんだい、そんなにガックリと肩を落として?
 ……もしかしてはやても発症しているのかい?
 なら大変だ。今すぐにでも医師に――と、そう言えばポチが居たか。すまないが早速はやてを診てやってくれないか?
「……あのな、ロッサ」
 果たしてはやてはゆっくりと顔を上げ、今の僕らが最も心配している目で――諦観と達観の入り混じった、酷く無機質で透明な瞳になって、語り出した。
「じつはな。その、『オタク』いう病気な――」
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