嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

《THE SECOND LIFE》18

《THE SECOND LIFE》









「仮契約カードを使った、その着眼点は良かったが――私を過小評価し過ぎたな」
 ネギの姉貴を吹き飛ばして、
 最強にして最凶たる、夜の魔法使いは嘲笑う。
 チッ!! 俺っちとしたことが忘れてたぜ、チクショー!
「ひぐ……!!」
「ちょっと……! なんか話が違うじゃないのよエロオコジョ!!」
 攻撃の手を止め、弾かれるように飛ぶ姉貴を抱き止めて姐さん。
 それに慌てて声をかけるも、
「あれは影を使った“転移魔法(ゲート)”だ! 作戦は失敗だ姐さん! また相手を――ッ!?」
 ――間に合わない!
「させません」
 いつの間にか接近していたロボが姐さんをはじき飛ばす!
 チィ……!! こうなったら姐さんに単体でロボの方をどうにかしてもらって、こっちは――

「ラ・ステル、マス・キル、マギステル!」

「リク・ラク、ラ・ラック、ライラック!」

 姉貴は左手をエヴァンジェリンに向けて、
 エヴァンジェリンは姉貴に両の手のひらを向けて、
「“来れ雷精、風の精”!」
「“来れ氷精、闇の精”!」
 ぬぁああ!? こ、こりゃ、今の姉貴の精一杯いっちゃん強い魔法じゃねーか!? しかもエヴァンジェリンも同種の魔法! 打ち合う気かよ!!
「“雷を纏いて吹きすさべ、南洋の嵐”――」
「“闇を従え吹雪け、常夜の氷雪”――」
 パチパチと紫電纏いし暴風が、
 パキパキと大気を凍てつかせる闇が、
「――『“雷の暴風”』!!」
「――『“闇の吹雪”』!!」
 ドン!! 激突する二つの高位魔法!
 それを眺めながら、今更に焦る。
 マズイマズイマズイマズイマズイマズイ!! 姉貴はさっきの“暴走(オーバードライブ)”で疲弊してる。だからこのまま魔力合戦となれば分が悪すぎる!
 俺っちの焦りが反映してか徐々に姉貴の魔法が押され始める。
 ヤバい! こうなりゃ俺っちが――

 そして、

 舞台に上がる、

 喚ばれざる客――



「――おや、これはなかなか面白いですな」



「――っ!?」
 声と同時、現れる四つの影。
 しかもその一つは、あろうことか魔法を発動中のエヴァンジェリンの背後へ。
「なっ――!?」
「漁夫の利、ですな。申し訳ありませんが――死んで下さい」
 はぁああっ!?
 言葉と同時。魔法発動中で動けないエヴァンジェリンを右手で刺し貫く影。
 そして――ドン!!
 均衡が破られた姉貴の魔法がエヴァンジェリンを――飲み込んだ。
「……………………え?」
 それは突然の、
 それは突拍子の無い、決着。
 そしてそれと同時に、
 幕が――変わる。
 強引に、敵役を変更して。
「……………………ぁ」
 呆然と見回す姉貴。
 そんな少女を囲う形で立つ三つの人影。
 そしてエヴァンジェリンを攻撃した四つ目の影。
 それは皆――異形であった。
 一人は蝙蝠の翼と鷲の頭のデカブツ。
 一人は鳥の翼と鬼の顔を持つ黒い男。
 一人はヘビの頭持つ妖艶なる美女。
 そしてのっぺりとした黒い影によって出来た紳士。
「あ、あぁぁああ……」
 一目で、わかった。
「あ……ぁ……ああ……」
 コイツらは――
「ぅあああああああああああああ!!」
 姉貴の悲鳴に一様に笑うコイツらは――



 ――悪魔、だ。



「――お迎えに上がりました、ネギ・スプリングフィールド」
 紳士然とした影はそう言って大仰に姉貴にお辞儀した。
「ぁぅ……あ……」
 それを見て――いや、見ることすら出来ずに、姉貴は尻餅をついてずりずりと後退する。
 恐らく恐怖で腰が抜けたのだろう。青ざめた顔は心の底から恐怖に歪められ、パクパクと開閉する口は言葉を成さない。
 ……最悪だ。
 相手が強そうだの怖そうだのというのは問題じゃねー。相手が悪魔なんが最悪だ。
「おやおや。かの有名なサウザンドマスターの娘さんがどうされました?」
 クスクス。クスクス、と。小さな笑い声が響く。
 それだけで姉貴は体を丸め、頭を抱えて……うずくまってしまう。
 ヤバい。額に冷や汗を浮かべて連中を睨む。姉貴に悪魔はダメだ。小せー時のトラウマのせいでまともに相手出来ねー!
 だから――……こうなりゃアレしかねーな。
「姉貴!」
 姉貴に駆け寄って呼びかける。
 しかし、
「や、やだ……! みんな……みんな、石に……!」
 ……マズイ。こりゃ俺っちの声も――

 そして、



「――邪魔だ」



 冷たい、絶対零度の声。

 影はそれに振り向く。
 そこに――

「『“エクスキューショナー・ソード(エンシス・エンセクエンス)”』」

 真祖の吸血鬼にして最強最悪の魔法使い――エヴァンジェリンが、いた。
 しかもその手に強力無比なる冷気の刃を纏い、
 躊躇無く、影に振るう!

 ズガァアアアアア――――……!!

 三匹の悪魔は飛び去り、
 そして影は――橋もろともに吹き飛ばされた。
 それを絶句して見る俺っち。な、なんつー破壊力――これが奴の本気か!?
 戦慄とともに見る。奴がどれだけこちらに対し手加減してたのかを、畏怖の感情とともに知る。
 やがて、粉塵は晴れ、腹部を貫かれた筈なのに無傷のエヴァンジェリンはこちらに――体を丸めるネギの姉貴へと視線を向け、
「おい、小娘! いつまでそこで丸く――」
 怒鳴る。
 それを――

「いやぁ、驚きました、ビックリしまたねぇ」

 ――陽気な声が遮り、
 エヴァンジェリンは顔をしかめて後ろを振り返って、
「……なるほど。貴様、闇に紛れ、自在に転移出来る悪魔らしいな」
 呟く――て、なぁにぃいいっ!?
 目を剥く。
 そして、たまらず零す。
「……うそ、だろ?」
 エヴァンジェリンの振り向いたそこに、先ほど吹き飛ばされたハズの影がいた。
 そしてその影は大仰にお辞儀し、エヴァンジェリンへと改めて向き合う。
「これはこれは驚きました。まさか吸血鬼でしたか。いやービックリですねぇ」
 陽気に陽気に。狂ったように明るく、影が言う。
 対して、エヴァンジェリンは冷笑でもって返す。
「そうか貴様ら。学園の結界が消えたから――」
 その言葉に、
「そうだ」
 低い声が答え、
 同時、鬼の顔と鳥の翼の悪魔が彼女へと拳を振るった。
「フン――」
 それを鼻で笑い、手のひらを鬼に向けるエヴァンジェリン。よっぽど己の障壁に自信があるのか微塵も慌てず、
 しかし――バリン、と。それこそガラスのように簡単に、澄んだ音を立ててエヴァンジェリンの障壁は割れ、
「なっ――!?」
「我に障壁など無意味と知れ」
 何らかの呪印が刻まれた、血色の紋様が浮かぶ拳で、鬼はエヴァンジェリンに殴りかかり、

「――させません」

 言葉と同時、エヴァンジェリンの従者のロボが鬼の拳を弾くようにして現れ、
 そして、

「――なんなのよ、あんた達は!?」

 ネギの姉貴をかばうように仁王立つ姐さん。鬼気迫る、怒りに燃える双眸を悪魔達に向けて大剣を構える。
 ……こいつは、なんとかなるかも知んねーな。
「……そうだな、神楽坂明日奈。ここは一つ、我々の舞踏会を邪魔する阿呆どもをどちらがより早く倒せるか勝負しないか?」
 クツクツと、殺意漲るエヴァンジェリン。そしてその横に無言で佇む従者。
 ……幸い利害は一致する。だからこその、エヴァンジェリンによる事実上の共闘宣言に対し、
「……そうね。良いわ、やったろーじゃん」
 姐さんはネギの姉貴をチラと見て、力強く頷いて返した。
 よし! これなら――!! 

 ◇◆◇◆◇

 ――アカン、思た。

 橋の上の上から下を見て、ウチは心の底から震えていた。
「……ど、どないや、せっちゃん?」
 双眼鏡から目を離さず、隣におるだろうせっちゃんに問う。
「戦況は……芳しくないですね」
 それにすごく冷静にせっちゃん。
「相手は恐らく爵位ある高位の悪魔。……ネギ先生が何故か戦おうとしないため三対四と数の上でも不利なことと、何よりエヴァンジェリンが何かを守るための戦いというのに不慣れなのがいたい」
 ガタガタと震える。
 せっちゃんの言葉にやない。なんやいきなり現れた化けもんに対して、や。
 あないに強い思た茶々丸さんやアスナも勝てへん思た。かなわへん……もしかしたら殺されてまうかも知れん。
 ……嫌や、そんなん!
「三対四ではなく、むしろ一対四の方がエヴァンジェリンとしては戦えただろうが……周りを気にして魔力を抑え、他の者のサポートまでしなければならない現状では勝てる見込みは薄いでしょう」
 淡々と状況を話してくれるせっちゃん。ウチは泣きそうな顔を彼女に向けて、震える口をどうにか開いた。
「せっちゃん……。ウチらも加勢しよ? ウチはまだまだやけどせっちゃんなら――」
「私が入ったとて難しい」
 遮り、苦渋に歪んだ顔を左右に振るせっちゃん。
「……私とこのちゃんは、今連中に見逃されているに過ぎない。私が入ればこのちゃんを危険に晒してしまう。このちゃんを守りながら戦って、勝てる相手ではないし……これ以上、エヴァンジェリンに負担をかければ彼女が倒れる。そうなれば負けです」
 ……なんやの、それ。
 なんでやの? ウチもせっちゃんも、このまま何も出来んと、ただ見てるしかできないん? みんなが倒れるんを――殺されてまうんを、ただ見てるしか出来ひんのっ!?
 ――そないな事、納得せ―へんでウチは!
「せっちゃん、ウチな――」
「一つ」
 出鼻を挫かれる。せっちゃんは真剣な顔をウチに向けて、
「方法が無いとも限りません」
 ……え?
「な、なんやのそれはっ!?」
「それは――」
 せっちゃんは私をじっと見て、
 そして――

 ◇◆◇◆◇

「あ、あんたは誰だ……?」
 声を震わせて、問う。
「まさか……、本当に……――」
 喉が干上がる。
 頭が混乱する。
 この電話の相手が、
 もし本当に、
 はやて、なら……――
『――確認すべき順番が違います』
 対して、あたしの言葉を遮るようにして言う彼女。
『確かに私の正体は気になるでしょう。その気持ちは理解出来ますし、このように突然、“見ず知らずの誰か”から電話で何かを告げられても信用出来ないかと思います』
 ……え?
 “見ず知らず”?
『ですが、まず私の正体を問う前に気にすべき事柄がおありなのではありませんか?』
 混乱する。思考がぐちゃぐちゃで、考えることが出来ない。
 だからあたしは彼女の言葉に「え?」と間抜けな声で返すことしか出来なくて、
 そして、
『……私が何故、“彼”の言葉を代弁しているか。それを何故、“あなた”は先に訊ねないのですか?』
 その言葉は、さながら稲妻のように。
 ぐちゃぐちゃの頭を、心を貫き、あたしを我に返す。
「――ッ!? お、おい! ケイトはどうしたっ!?」
 ――この電話の相手ははやてじゃねー。
『……生きてます』
 ――その声が、どんなにはやてに似てても、
「無事なのかっ!?」
 ――違う。
『はい』
 ――はやてじゃ、ない
 違う。絶対に。
 それは言葉遣いが違うから――じゃない。
 この声がいくらはやてに似ていても、別人だ。だって……はやてはもう生きてない。あいつらんとこに、今はいるんだから。
 だから――
『無事ではありますし、生きてもおられます。……いずれも“現在は”ですが』

 ――コイツは敵かも知れない。

「……おめーがやったのか?」
 だから、そう問えた。
 そして、
『はい』
 彼女は頷いた。
「…………今どこに居やがる」
 その答えは予想の内で、
 その可能性を考えての問いでありながら、
 それでも――……頷いて欲しくなかった。
 この声の主が、例えはやてじゃなくても、
 それでも――……どうしても、この少女に敵であって欲しくなかった。
『……あなた方の通う校舎に来て下さい』
 相手には聞こえないよう細心の注意を払い、ため息。瞳を閉ざし、落としていた肩を無理やり上げて深呼吸を一つ。
「要求はそれだけか?」
 震える声を、手を、どうにか抑えて、
『……クローゼットにあなたの装備一式が入っているそうです。お忘れなく』
 ……上等だ。
 あたしは内心で荒れ狂う感情をひた隠し、獰猛な笑みを浮かべて告げる。
「今すぐ行くから待ってろ」
 必ずブッ潰す。その決意で心を塗り固め、相手の返事を待たずに通話を切る。
 そして、
「…………………………………………ぁ」
 じーっとこっちを見てるあやかの存在を、ようやく思い出した――。






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