嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

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《THE SECOND LIFE》16

《THE SECOND LIFE》







 今日はついにアスナとエヴァちゃんの試合ん日。
 放課後になるや教室からさっさと出て行くアスナとネギちゃん。それを見送っていたウチん所にエヴァちゃんと茶々丸さんが来て、
「で、だ近衛このか」
 腕を組んでウチを見上げてエヴァちゃん。
「お前も知っての通り、今日私は神楽坂明日奈と小娘と“戦(や)”り合うが――」
「ウチも見に行って良えか?」
 遮る。うん……エヴァちゃんがなんと言うてもウチは見に行くで!
 見習い魔法使いのウチ。すんごい魔法使いのエヴァちゃんや先輩魔法使いのネギちゃんの、魔法使い通しの試合や。見て損はないはずや。
 それに……心配や。ネギちゃんが参加しとるんがアスナの負担になっとると思うねん。
 アスナは絶対無茶しよる。だからウチが、教えてもらったばかりの魔法でケガしたら治してあげたいんよ。
 そんな風に思っていたウチにため息を一つ吐いてエヴァちゃん。クールな無表情のまんまで再度口を開いた。
「――あぁ、私もそのつもりだ」
 ウチはその意外な返答にキョトンとしてエヴァちゃんを見た。あれ? ウチはてっきり駄目や言われると思っとったのに。
 エヴァちゃんはそんなウチにニヤリと笑って、
「貴様は見習い中とは言え魔法使いだ。しかも私に教えをこうた、言わば私の弟子。ならば私と小娘の戦いで何がしか得るものもあろう」
「ご安心下さいこのか様。このか様の安全は私が保証します」
 エヴァちゃんの言葉を継いで茶々丸さん。無表情のままウチを見てお辞儀。
「あっ。茶々丸さんも参加するんか? もうケガは良えん?」
「はい。ハカセに治して頂きましたので支障ありません」
「そう言うことで、だ。当然、貴様も近衛このかに同伴するのだろう?」
 横目でウチの背後を見るエヴァちゃん。目をパチクリして振り向くと、いつの間にかいたせっちゃんと目があった。
「せっちゃん――」
「先に断っておくが、」
 無表情のままにウチの前に出るせっちゃん。
「私はネギ先生や神楽坂さん、あなたや絡繰さんがどうなろうと、それが試合であれば手を出しません。しかし――お嬢様に危害が及べば話は別だ」
 肩に担ぐ野太刀を手に下げてエヴァちゃんに示すせっちゃん。
「相手が誰であれ――私は戦闘に介入する」
 せっちゃんの言いように慌てる。
「あわわわ……! せ、せっちゃん、それは――」
「構わんよ」
 エヴァちゃんに遮られる。見ると彼女はクツクツと笑ってせっちゃんを見ていた。
「なんなら三つ巴でも一向に構わん。それに――」
 振り向くエヴァちゃん。その視線の先で――
「貴様も参加するか? 月下の舞踏(ダンス)に」
「まさか」
 衛宮センセは苦笑しながら立っていた。
「まぁ行き過ぎない程度に頑張れ」
 肩をすくめて見せるとさっさと教室から出て行くセンセ。それを見送り、『フン!』と鼻で笑うエヴァちゃん。
「……行き過ぎた場合は出て来る、か」
 呟きエヴァちゃんも教室から去ろうと歩き出し、
 途中で振り向く。
「そういうワケだから今日は私の所には来るな、近衛このか」
 ニヤリと笑って、
 そして、次の瞬間――

 ――ゾクリ、と背筋に悪寒が走った。

「あ……」
 エヴァちゃんは教室から去り、
 ウチは青ざめた顔でそれを見送って――
「っ! お嬢様っ!?」
 せっちゃんの声が遠くなり、
 ウチは、

 ――意識を、失った。

 ◇◆◇◆◇

 ――その日はあたしにとって、別段特別な日じゃなかった。
 それこそ、夜、一斉に電気が消える――それぐらいしか特別と言えない、そんな日のハズだった。
 ……だけど、
「――ごめんなさい。今日はわたし……ちょっと用事あるから」
 あやか達の部屋での夕食が半ば習慣化されつつあったその日、
「あら、そうですの……」
 よりにもよって目立ちたがらないハズのケイトがそう言った時に、
「……なんだよ一体?」

 ――気付くべきだった。

 あたしの質問に「お仕事」と、

 あたしにしか聞こえないよう小声で答えたケイトに、

「……そうか」

 もう少し、食い下がっておけば良かった。

「大丈夫だとは思うが……気ー付けろよ?」

 そう後悔することになるとは、

「……うんっ!」

 当然、その時のあたしは、思ってもみなかった――。

 ◇◆◇◆◇

 ――街が闇に包まれ、
 明かりと言えるものが空にある月と星しかなくなる頃、
 私とネギは学園都市の外れにある陸橋の上にいた。
「……確か十時って言ってわね」
 橋の手すりにもたれ、腕時計を見ながら私。
「は、はいっ」
 私の横に立ち、杖を両手で持ってキョロキョロしながらネギ。返事の声が裏返ってる上に表情が固い。あ〜あ……すんごい緊張してるわねぇ、ホント。
「開始まであと五分を切りやしたが、姐さんたちは何か作戦とかあるんスか?」
「あ〜……作戦ね〜。え〜と……?」
 ネギの肩の上に乗るエロオコジョの問いに、明後日を向いて回答。
 ……そっか作戦か。強くなることしか考えてなくてどう戦うかなんて考えてなかったな〜。
 『ネギは?』とチラリと横を見て、ため息。ガチガチに緊張に固まり、なんだか目を回してるように見える。……訊くだけ無駄か。
「なに緊張してん、の、よっ!」
 バシッと一発。
「いっ!?」
「あんた、長瀬さんと古菲に鍛えてもらったんでしょ?」
 涙目で見上げる少女に苦笑を向けて、
「しっかりしなさいよね。あんたは私の“相棒(パートナー)”なのよ?」
「あ……」
 腕を組んでそっぽを向く。……なに嬉しそうに笑ってんのよ。は、恥ずかしいわね。
「はいっ!」
「くくく……そんなあからさまに照れなくても、姐さん」
 う、うるさいわねエロオコジョ! べ、別に照れてなんかないわよ!
「ま、まぁ……あんたが使えないんなら私一人でやるから別に良いけど」
 そうよ。私だって今日まで頑張ったのよ。バイトとかあってあんまり時間なかったけど、それでも朝には桜咲さんに神鳴流習って、暇さえあればヘルパーに不意打ちしてって頑張ったのよ!
 そうよ……別に一人だって――

「――それはまた、大きく出たな神楽坂明日奈」

 ――っ!
 声に私たちは揃って夜空を見上げた。
「あ、あああ……!?」
「な、なんで……!?」
 そこにエヴァンジェリンと茶々丸さんがいた。
 二人を見上げて――戦慄く。
 ゾッとした。纏う空気が違う。前にやった時とは比べられないぐらい、怖い。
 知らず、一歩後退していた。
「先に忠告しといてやろう、小娘たち」
 『ふわり』と、橋へと降りてエヴァンジェリン。ニヤニヤと私たち二人を嘲笑い、
「前回の時の私は学園に張られた結界のせいで魔力を封じられていた」
 パキパキと、彼女の周りの空気が凍っていく。
「だが、今はその結界が無力となり私を縛るものは無い。……まぁ学園から出られぬ忌々しい呪いは残っているのだがな」
 肌が泡立つ。これは――こいつは、ヤバい!
 それなりに鍛えたから解る。エヴァンジェリンとやっては駄目だ。格が違う。勝てない。絶対に、ただではすまない――!!
「それもこの勝負でなくなるだろう。小娘の血を頂いて、な」
「ひっ!!」

 ――頭がスーッと冷えた。

「……要するに前と同じだと思うなってことでしょ?」
 怯え、涙目になりつつあるネギの前に、出る。
「おあいにく様。それはコッチも一緒なのよね」
「ほう?」
 スカートのポケットから仮契約カードを取り出す。その動きに合わせてか、茶々丸さんがエヴァンジェリンの前へ一歩踏み出した。
「もう、開始時間よね?」
 私は『ニヤリ』と笑い、
「フッ。そうだな」
 エヴァンジェリンの返事と同時に――駆け出す!
 最初は無手で。相手を油断させるために、ただ仕掛ける!
「――“契約執行90秒間(シス・メア・パルス・ペル・ノーナギンタ・セクンダース)”!! “ネギの従者(ミニステル・ネギィ)”『神楽坂明日』!!」
 ネギの支援でグンと動きが早くなる! それに合わせて茶々丸さんの動きも、より俊敏に、鋭くなる。
 だけど――
「ハッ!」
 先手は私! 茶々丸さんに“回し蹴り(ハイキック)”!
 ガッ! それを片手で受け――吹き飛ぶ茶々丸さん。ふん! どうやら私を甘く見過ぎてたみたいねっ!
「油断しました。とても素人とは思えません」
 無表情に呟く彼女に追撃! 吹き飛ぶ茶々丸さんに向け、正拳!
「これは少し本気を出す必要があります」
 っ!? 空中で姿勢を変える茶々丸さん。着地と同時、私の正拳を弾く!
 ……そっか、茶々丸さんてロボットなんだっけ!
 追撃のフックも同様に弾かれ、茶々丸さんが一歩私に踏み込む。
 裳低! それを半身になって避け、その円運動をそのままに――回し蹴り!
「たぁ!!」
 ガッ! 今度は片手で受けても吹き飛ばない茶々丸さん。私の足を、受けた手で掴み、引き、軸足を刈るように、しゃがんで――ローキック。
「――合成!」
 『パン!』と両手を合わせてかん卦法! 刈られる前に軸足で地面を蹴って、サマーソルトキック!
「――――ッ!?」
 うそ! 避けられた!?
 私の足を離し、しゃがんだ上体を無理矢理逸らして私の一撃を避ける茶々丸さん。そのまま両足のバーニアを吹かして一旦距離を離し、宙返りして着地。と、殆ど同時に私へと疾駆する!
 やっぱり速い! そして強い!!
 だから――手加減なんて出来ないッ!!

「――“来れ(アデアット)”!」

 こっからは全力で行くわよ茶々丸さん!
「!」
「ハァアアア!!」
 手に持つハリセンで迎撃! それを横に飛んで避ける茶々丸さん。
「てい!」
 振り回したハリセンの動きに乗せて――“中段蹴り(ミドルキック)”!
 ガッ! それを止め、踏み込む茶々丸さん。肘を突き出し、
「フッ――」
 バシン! ハリセンで迎撃! そして弾き合うようにお互い距離を離す。
 ……これは、なかなか難しいわね。
 額の汗を拭って私は、『困ったなぁ』と笑う――。


 ◇◆◇◆◇

「――『“魔法の射手・連弾・光の29矢(サギタ・マギカ・セリエス・ルーキス)”』!!」
「――『“魔法の射手・連弾・闇の29矢(サギタ・マギカ・セリエス・オブスクーリー)”』!!」
 総勢五十八もの光と闇の矢が互いを打ち消し合い、ぶつかり合う。
 ククク! そうだ、そうこなくては面白みが無い!
 瞬動! 橋を駆け、小娘の後ろへ。
「っ! ハッ!!」
 ! ほう! 棒術とは面白いな!!
 振り回される小娘の杖を魔法の障壁で弾き、距離を――
「たぁあああ!!」
 パキン! 小娘の突き出した杖が障壁を貫き、迫る!
 ――なるほど! 杖に魔力を通し、槍としたか!!
「だが!」
 くるん、と。合気術でもってその一撃を捌き、その勢いを利用して投げ飛ばす!
「っ! ラ・ステル、マス・キル、マギステル!」
 地を転がり、距離を取って呪文を詠唱する小娘。フッ! 甘いわ!!
「“風の(セプテンギアム)”――って、ぅわぁああ!?」
 魔力の糸で小娘を縛り、引く!
 バランスを崩す小娘に向けて裳低! 対し、杖を振って迎撃しようとする小娘。だが私の『糸』にそれを邪魔され、
「で、“風楯(デフレクシオ)”!!」
 ドン! 小娘の障壁ごと吹き飛ばす!
 フッ。吹き飛ばされた小娘を、無理矢理『糸』で引っ張る。
「なっ――!?」
 再び肉迫。そして追撃!
「がっ……!」
 三度飛ばされる小娘を『糸』で振り回し――叩きつける!
「っ!」
「どうした! そこまでか、小娘!」
 手を上げ、大気を凍らせ――
「『“氷神の戦鎚(マレウス・アクイローニス)”』!」
 長大な氷球を小娘に向けて飛ばす!
「ヒッ――!?」
 目を剥く小娘。さぁどうする? 動きを封じられ、呪文は間に合わず、そして障壁程度では打ち消せんぞ?
 小娘をニヤニヤと見る。
『さぁどうする?』と、期待して見る。
 しかし――
「……………………シロウ」
 小娘はギュッと目を瞑り、
 呟き、諦め――

「ハァアアアーーーッ!!」

 ――バシン、と。一瞬で打ち消される私の魔法。
「……ほう?」
 小娘の前に仁王立ち、ニメートルに迫る大剣を持って私を睨む――神楽坂明日奈。
 ……なるほど。神楽坂明日奈は魔法を打ち消す力を持つのか。
 小娘を縛る『糸』を消し、私は神楽坂明日奈の背で泣きべそをかく小娘を睨む。
「……いささか失望したよ」
 呆れ混じりに嘲笑。
「所詮はガキか。怖くなったら助けを呼び、泣くのか? まったく、よくそんなので『“立派な魔法使い(マギステル・マギ)”』になるだの言えるな」
 やれやれ、と手を振り。一歩、近付く。
「ほら、どうした? 助けを呼ぶのだろう? だったら早くしろクソガキ。貴様みたいなグズはとっとと――」
「――黙れ!」
 言葉と同時、私に迫る神楽坂明日奈。それに視線を向けず――投げ飛ばす。
「ほら、呼べよ泣き虫」
「黙れってんでしょーがぁあああ!!」
 受け身を取り、追撃を仕掛ける神楽坂。それを茶々丸が受け、迎撃。
 その一切を無視して小娘に近付く。
「甘ったれのグズが。どうした? なにもせぬのか?」
「…………」
 うつむく小娘に近付き、胸倉を掴み上げる。
「ネギ!」
「…………」
 神楽坂の声にも無反応の小娘。虚ろな瞳を私に向け、ブツブツと何かを呟き続ける。
「……なる」
「なんだと?」
 怪訝に小娘を覗き見る。と同時、
「ボクは『立派な魔法使い』に――なるん、だぁああああ!!」
 ヒュン! 近距離からの杖による突きを小娘を突き飛ばして避ける。
 ……く!? なんだコイツ……精神がおかしいのか?
 一旦、距離を離して様子を見る。小娘は虚ろな瞳の中に狂気を混ぜて私を睨み、ゆらりと立ち上がって、
「……甘えない。甘えられない……! 甘えちゃいけないっ!」
 瞬動! 即座に肉迫する小娘。その手の杖が魔力を纏ってか輝く!
 バッ! 鋭く早い刺突を避け、迎撃を――
「ボクが! ボクだけが無事で! だからっ!」 っ! クッ……!? 刺突が早過ぎて迎撃が――
「ボクは! ボクはっ!!」
 小娘が杖を振るう度に『ポタポタ』と血が滴る。だと言うのに小娘の表情に変わりは無く、纏う魔力は依然爆発的なまでに多く――気付いた。
 これは魔力の“暴走(オーバードライブ)”!?
 バカな! だとしたら何と言う脆い精神だ! クソ!
「貴様――」
「ネギ!」
 ビクッ、と。神楽坂明日奈の呼びかけで停止する小娘。
 ? なんだ?
「あ、アスナさん……?」
 表情を困惑のそれに変え、神楽坂へと向く小娘。
 そこに駆けつける神楽坂。どうやら私と同様、茶々丸も奴を見逃したようだ。
 そして、
「……あんたは茶々丸さんの相手して」
 小娘の前に立ち、神楽坂。それに狼狽しながら小娘は、
「えっ、あっ、でも……!」
「良いから言うこと聞きなさい!」
 小娘の背を押し、茶々丸へと向ける神楽坂。それを見て私を見る茶々丸。
『マスター……?』
『ああ。小娘の相手をしてやれ』
『……了解』
 念話で言葉を交わし、私は神楽坂にニヤリと笑って見せた。
「……そう言えば、これは私とお前の勝負だったな?」
「そういうこと」
 剣を構え、私に挑発的な笑みを向ける神楽坂。ククク……やはり貴様は面白いな。
「で? 策はあるのか神楽坂明日奈?」
「ふん。あんたなんか相手に無駄な作戦なんて、要らない、わ、よっ!」
 バッ! 高速で駆け、剣を振るう神楽坂。なるほど! 一週間でここまで強くなるとは驚きだ!
 純粋な体術でそれを避け、魔力の糸を――と、コイツには効かないんだったな!
「ハァアアア!!」
 ザッ! 鋭い太刀筋を避けながら、少しだけ目を剥く。
 これは――神鳴流か!?
 まだまだ未熟ながらも桜咲や詠春らの使うそれに似た太刀筋。なるほど。桜咲刹那に師事し、学んだか!
「私に魔法は効かないわよ! どうする、エヴァンジェリン!?」
「フン! 魔法など貴様相手には不要だ!」
 剣を避け、懐へ。右手に魔力を乗せて裳低!
「くっ!?」
 対し、腕をクロスして防ぐ神楽坂。……ほう? どうやらある程度は気を使った戦闘も出来るようだな。
 私の一撃に少し後退する神楽坂。そして私を睨み、『パン!』と両手を合わせ――んなっ!?
「バ……バカな!! 貴様、一体それをどこで――!?」
 目を剥く。神楽坂明日奈のやった『それ』――『“気と魔力の合一(シュンタクシス・アンティケイメノイン)”』はタカミチですら数年という月日を私の別荘でかけて習得したものだ。一介の女子中学生がおいそれと出来るワケが――
「高畑先生に教えてもらった、の、よっ!」
「くっ――!」
 なるほど! これならば茶々丸が苦戦するのも頷ける!
 私はニヤリと笑って神楽坂を睨み、
 神楽坂は私に獰猛な笑みを向けて剣を振るい、
 そしうて月下の舞踏会は尚、加速していく――






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