嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

二章 【目次】

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『雷槍』の一章に目次を設置!

 とりあえず目次に各話へのリンクを、そして各話間のリンクは張り終えましたが、もしそのリンク先等が間違っていましたらコメント下さい。

 『雷槍』の二章や他作品は後日また。形式的には一章の目次やリンクの仕方等と同じものを設置する予定ですが、なにかご意見ご指摘がありましたらお気軽にコメント下さい。

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一章  【目次】

ゼロの使い魔〜雷槍の騎士〜


                 一章


 この作品は『魔法少女リリカルなのはStrikerS』という作品のキャラクターを『ゼロの使い魔』という作品に登場させるという形のクロス小説です。途中、『魔法少女リリカルなのは』及び『ゼロの使い魔』という作品をご存知ない方には非常に解り難い表現が含まれていますのでそれを承知の上でご覧下さい。

 また、作中に著者による独自解釈、設定、世界観、オリジナルキャラクター等が描かれていますが、こちらも事前にご了承の上でご覧になって下さい。



                 → 【予告】

第一話/第二話/第三話/第四話/第五話/第六話/第七話/第八話/第九話/第十話/第十一話/第十二話/第十三話/第十四話/第十五話/第十六話/第十七話/第十八話/第十九話/第二十話/第二十一話/第二十二話/第二十三話

後書き対談?/おまけ/おまけ2

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カテゴリ大幅修正開始!

 もっとーは『読みやすく』です! これからどんどん改良していく所存ですので何かご意見ご指摘等ございましたらお気軽にコメントしてって下さい。

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ゼロの使い魔〜雷槍の騎士〜

 この作品は『魔法少女リリカルなのはStrikerS』という作品のキャラクターを『ゼロの使い魔』という作品に登場させるという形のクロス小説です。途中、『魔法少女リリカルなのは』及び『ゼロの使い魔』という作品をご存知ない方には非常に解り難い表現が含まれていますのでそれを承知の上でご覧下さい。

 また、作中に著者による独自解釈、設定、世界観、オリジナルキャラクター等が描かれていますが、こちらも事前にご了承の上でご覧になって下さい。

ゼロの使い魔〜雷槍の騎士〜

          →一章 第一話

          →二章 第一話

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魔法少女リリカルなのは SS

魔法少女リリカルなのは×ゼロの使い魔
ゼロの使い魔〜雷槍の騎士〜

【長編】
【『ゼロの使い魔』再構成】
【オリキャラ有】
【サイト→エリオ(『魔法少女リリカルなのはStrikers』七年後)】

※ この作品は主人公最強ハーレムものです。原作を大事にされる方、及び簡単にヒロインが落されることに不快を感じる方はご覧にならないことをお勧めします。

 →【予告】
 →第一話




魔法少女リリカルなのは×Fate/stay night×魔法先生ネギま!×etc...
THE SECOND LIFE

【長編】
【『魔法先生ネギま!』再構成】
【オリキャラ有】
【ネギ→♀、各登場キャラクターの設定がほぼ独自設定】

※ この作品はTS要素を含みます。また全キャラクターの設定に著者による独自設定を追加していますので、原作を大事にされる方は特にご覧にならないことをお勧めします。

 →序章




魔法少女リリカルなのはStrikers SS
魔法少女リリカルなのはStrikers〜postscript〜

【長編】
【『魔法少女リリカルなのはStrikers』その後】
【オリキャラ有】

 →第一話(前)





魔法少女リリカルなのは SS ep1
ケイト〜knight of nightmare〜

【長編】
【オリ主】

※ この作品は『魔法少女リリカルなのは』の世界観やキャラを使って好き放題書いた、オリジナル色の強い作品です。そして『とらハ』シリーズを著者が知らなかった時の、『Strikers』放映以前の作品です。

 →第一話

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告知

 近い内にカテゴリー、及び記事の掲載の仕方を少し修正します。

 主に修正点は各SSの記事に『次話・前話』などのリンクを張る点と、カテゴリーに『目次』の項を作り、各作品の一話へリンクを張る二点を予定しています。

 それでは♪




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《ケイト〜knight of nightmare〜》8

《ケイト〜knight of nightmare〜》






『敬人!?』
 私の叫びと同時、
 視界が――切り変わった。
『ッ!? これは――!?』
 数瞬前までカラスの背からなのは達を見ていたハズの敬人の視線が、今や――
「ケイトさん……!?」
「けいとちゃんっ!?」
 なのは達の前――カラスを迎え討つような、暴走体に対して真正面の位置に。
『これは――高速転移!?』
 でも、どうして敬人が……?
 頭を捻る。
 もともと敬人は魔法が使えないはずで、
 そして今、彼はアリシアの姿をしていて、
 では、アリシアの魔法かと聞かれれば、おそらく答えなノーであり、
 つまり――
『ッ! まさかジュエル・コアが……!?』
 驚愕する。そして同時に納得。
 今、敬人はジュエル・コアを二つ使っていて、
 そしてジュエル・コアとは、つまりは願いを叶える魔石だ。
『ッ! 敬人っ! 前っ!!』
 高速で突進してくるカラス。
 それに対して敬人は、
「…………」
 あろうことか、その両手を眼前に翳して、
 腰を落として、真っ向から迎える構え。
『――ッ!! 敬人逃げて! 早く!!』
 血の気が引く。そして私の悲鳴混じりの叫びと同時、

 ――ガガガギィィイイイー――――ン!!

 敬人と暴走体が激突!
 それを見て、弾かれたようになのはのお母さんが娘を抱いて横に跳び、
 間髪入れずにその横を敬人ケとカラスが突き抜けて行く。
 マズイ! 『ソニック・フォーム』はバリアジャケットとしては防御力に乏しい……! このままじゃ――!!
『敬人!!』
「…………」
 叫ぶ!
 しかし彼は何故か私の声に反応せず、
 そのまま、殺気すら込もった視線を暴走体に向けて無言。
 そして、

 ――メキ……!

 カラスの突進に、遂に耐えられなくなったのか。ケイトの右手の鉄甲が砕けて消え、更にその手首の骨を粉砕!
『――――!!』
 血潮吹きが舞い、
 弾かれるように両手が開き、
 カラスの鋭い嘴がケイトの薄いバリアジャケットに届き、
 そして――
『敬人ー――っ!!』

 ――ズゥゥウウウー―ン……!

 塀に、暴走体は突っ込み――停止。
 その嘴に貫かれた敬人は、上半身をはだけた格好で――壁に縫いつけられた。

 ◇◆◇◆◇

「……ゴホッ!」
 咳き込み、吐いたのは大量の血。胸を貫くのは怪鳥の嘴。感覚の無い右腕。
 ……ああ、赤だ。血の赤だ。
 震える左手を持ち上げる。鉄甲を染める俺の血が、映る。
 ぼやける視界に、カラスの背後で青ざめた顔をしている親子を見付け、
 俺は知らず、安堵の溜め息を吐いていた。
 ……また、俺は人を助けられた。
 良かった……。
 これで死んでも……、悔いは無い、かな…………。

 ――意識が闇に堕ちた。

 ◇◆◇◆◇

『敬人っ!!』
 叫ぶ。
『敬人! しっかりして!! 敬人!!』
 いくら呼んでも反応が無い。
 恐らく既に意識が無いのだろう。視界は瞼が落ちたのか、暗い。
 まずい、このままじゃ……!
 焦る。このままでは失血死かショック死か――いずれにせよ命に関わる。
 だから、私は――
『……ごめんね、敬人』
 一言謝り、彼の意識と

 ――入れ替わった。

「――――っ!!」
 意識の表層が彼と転じた事により、体内で発する激痛を感じるのは私となる。
 ……痛い、けど、敬人がケガしたのは私のせいだから。
 ともすえば、即座に気を失いかねない激痛に歯を食いしばるようにして耐える!
 これぐらい、我慢しなきゃ……!
 涙に濡れた瞼を開ける。
 意識を集中し、同調しているジュエル・コアを僅かに起動。その力のすべてを敬人のケガの修復に回――

 ――……ズルッ。

 私の行動を察したのだろう。暴走体は私の体を貫いていた嘴を引き抜いた。
「――――っ!!」
 その、あまりの激痛に今度こそ気絶するかと思った。
「カ、ハッ……!!」
 目の奥で明滅する火花。飛び散る鮮血。まずい……意識が…………。
「――……はぁ、はぁ」
 視界は霞掛り、
 五感はその機能を失いかけているが、
 そんなのには構わない。
 ……ここで、敬人を……殺すワケには、行かない。
 すべては私の責任。
 私が彼を巻き込んで、
 私の撒いた災厄が元凶で、
 だから――
「はぁ……、はぁ……」
 ――今はもう、
 目の前で嘴を高く構える暴走体等、
 気にもかけず、
 そして、

「――そこまでだ」

 ――それは、怒気を孕んだ男の声。

「――――?」

 それは、“彼(か)”の巨鳥すら怪訝にその動きを止めるような、場を支配する強烈な――殺気。

「……母さんとなのはが帰って来ないもんだから出て来て見れば――何だ、お前は?」

 見つめるのは奇怪なカラス。そして、今まさに喪われようとしている幼い命。
 それはさっきまで彼――高町 恭也さんやその妹と一緒にお風呂まで入った少女。
「……母さん。なのはと一緒に家の中へ」
 静かに、告げる。
 それになのはのお母さん――桃子さんは逡巡するように視線を敬人と恭也さんへと向け、
「でも、」
「早く!」
 遮る怒声。
 それで今度こそ親子はそそくさと室内へと待避した。
「お、お兄ちゃん……」
 最後になのはが心配そうに彼を見たが、恭也さんは視線を巨鳥から動かさず、頷いたきり。
 そして、
「……その娘から離れろ」
 一歩。
 その踏み出した一歩に、巨鳥は脅えたように後退さった。
「…………」
 ――それは彼我の力関係を考えるに有り得ない行動。
「――っ!!」
 また一歩。恭也さんが進み、巨鳥は大きく後退した。
 そして、
「……もう、大丈夫だから」
 そう言って、恭也さんは少女に――私に向かって微笑んだ。
「…………」
 私はそれを朧気に見つめ、
 視線だけで『ソレ』を示した。
「……判った。これは借りる」
 私の視線の意味に気付いたのか、恭也さんは足下に転がっていた『ソレ』――一時的に切り離して作った、ジュエル・コアの『剣』を拾った。
「…………さて、」
 刃渡り五十センチを切るまでに圧縮された、
 私のデバイス――バルディッシュのザンバーフォームを模した『剣』を手に持ち、
 軽く構え、視線を巨鳥に移し、

 ――瞬間、空気が凍った。

 先ほどまでは漠然と辺りを漂っていた殺気が、その一点――恭也さんの持つ『剣』に集中する。
「――――ッ!!」
 それに声無き悲鳴を上げる巨鳥。

 ――彼我の力関係はここに来て明確となった。

「……父さんに誓ったんだ」

 恭也さんの声は、さながらこの聖域に置ける審判者のそれ。

「『家族を泣かせる全てのものから……』――」

 死刑台に立たされた哀れな囚人に、神の“詞(ことば)”を司る司祭は郎郎と告げる。

「――『俺が家族を護る』、と」

 刹那。
 常人には追えない速度で踏み込んだ彼を、捉えることのできた者が、
 果たして、この場に居ただろうか?

「この、『御神流』で……」
「――――っ!?」

 走った剣閃は、むしろ残像。
 極限まで研磨せし、人の神技がここに顕現す――。

「……終わりだ」

 ――哀れ、その前に立ち塞がりしは愚の骨頂。
 なれど、“彼(か)”の事実に戦慄せしは、ただ、それを観する者のみで。
 全ては、あの世の果てにて後悔し、
 全ては、“彼(か)”の神童を敵に回すが愚かなり。

 果たして、巨鳥は自分が斬られた事に遂に気付かずに、消滅した。





前話

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キョン子絵3!!

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「…………なに?」

ニーソは私用ですw

それにしても、『ダルデレ』はまだ人気なのでしょうか? 最近は執筆やら何やらで忙しく、めっきり2525に行けていないので不安ですが、嗣希創箱の中では未だに大好きなキャラなので今回はキョン子絵で!
 

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《THE SECOND LIFE》18

《THE SECOND LIFE》









「仮契約カードを使った、その着眼点は良かったが――私を過小評価し過ぎたな」
 ネギの姉貴を吹き飛ばして、
 最強にして最凶たる、夜の魔法使いは嘲笑う。
 チッ!! 俺っちとしたことが忘れてたぜ、チクショー!
「ひぐ……!!」
「ちょっと……! なんか話が違うじゃないのよエロオコジョ!!」
 攻撃の手を止め、弾かれるように飛ぶ姉貴を抱き止めて姐さん。
 それに慌てて声をかけるも、
「あれは影を使った“転移魔法(ゲート)”だ! 作戦は失敗だ姐さん! また相手を――ッ!?」
 ――間に合わない!
「させません」
 いつの間にか接近していたロボが姐さんをはじき飛ばす!
 チィ……!! こうなったら姐さんに単体でロボの方をどうにかしてもらって、こっちは――

「ラ・ステル、マス・キル、マギステル!」

「リク・ラク、ラ・ラック、ライラック!」

 姉貴は左手をエヴァンジェリンに向けて、
 エヴァンジェリンは姉貴に両の手のひらを向けて、
「“来れ雷精、風の精”!」
「“来れ氷精、闇の精”!」
 ぬぁああ!? こ、こりゃ、今の姉貴の精一杯いっちゃん強い魔法じゃねーか!? しかもエヴァンジェリンも同種の魔法! 打ち合う気かよ!!
「“雷を纏いて吹きすさべ、南洋の嵐”――」
「“闇を従え吹雪け、常夜の氷雪”――」
 パチパチと紫電纏いし暴風が、
 パキパキと大気を凍てつかせる闇が、
「――『“雷の暴風”』!!」
「――『“闇の吹雪”』!!」
 ドン!! 激突する二つの高位魔法!
 それを眺めながら、今更に焦る。
 マズイマズイマズイマズイマズイマズイ!! 姉貴はさっきの“暴走(オーバードライブ)”で疲弊してる。だからこのまま魔力合戦となれば分が悪すぎる!
 俺っちの焦りが反映してか徐々に姉貴の魔法が押され始める。
 ヤバい! こうなりゃ俺っちが――

 そして、

 舞台に上がる、

 喚ばれざる客――



「――おや、これはなかなか面白いですな」



「――っ!?」
 声と同時、現れる四つの影。
 しかもその一つは、あろうことか魔法を発動中のエヴァンジェリンの背後へ。
「なっ――!?」
「漁夫の利、ですな。申し訳ありませんが――死んで下さい」
 はぁああっ!?
 言葉と同時。魔法発動中で動けないエヴァンジェリンを右手で刺し貫く影。
 そして――ドン!!
 均衡が破られた姉貴の魔法がエヴァンジェリンを――飲み込んだ。
「……………………え?」
 それは突然の、
 それは突拍子の無い、決着。
 そしてそれと同時に、
 幕が――変わる。
 強引に、敵役を変更して。
「……………………ぁ」
 呆然と見回す姉貴。
 そんな少女を囲う形で立つ三つの人影。
 そしてエヴァンジェリンを攻撃した四つ目の影。
 それは皆――異形であった。
 一人は蝙蝠の翼と鷲の頭のデカブツ。
 一人は鳥の翼と鬼の顔を持つ黒い男。
 一人はヘビの頭持つ妖艶なる美女。
 そしてのっぺりとした黒い影によって出来た紳士。
「あ、あぁぁああ……」
 一目で、わかった。
「あ……ぁ……ああ……」
 コイツらは――
「ぅあああああああああああああ!!」
 姉貴の悲鳴に一様に笑うコイツらは――



 ――悪魔、だ。



「――お迎えに上がりました、ネギ・スプリングフィールド」
 紳士然とした影はそう言って大仰に姉貴にお辞儀した。
「ぁぅ……あ……」
 それを見て――いや、見ることすら出来ずに、姉貴は尻餅をついてずりずりと後退する。
 恐らく恐怖で腰が抜けたのだろう。青ざめた顔は心の底から恐怖に歪められ、パクパクと開閉する口は言葉を成さない。
 ……最悪だ。
 相手が強そうだの怖そうだのというのは問題じゃねー。相手が悪魔なんが最悪だ。
「おやおや。かの有名なサウザンドマスターの娘さんがどうされました?」
 クスクス。クスクス、と。小さな笑い声が響く。
 それだけで姉貴は体を丸め、頭を抱えて……うずくまってしまう。
 ヤバい。額に冷や汗を浮かべて連中を睨む。姉貴に悪魔はダメだ。小せー時のトラウマのせいでまともに相手出来ねー!
 だから――……こうなりゃアレしかねーな。
「姉貴!」
 姉貴に駆け寄って呼びかける。
 しかし、
「や、やだ……! みんな……みんな、石に……!」
 ……マズイ。こりゃ俺っちの声も――

 そして、



「――邪魔だ」



 冷たい、絶対零度の声。

 影はそれに振り向く。
 そこに――

「『“エクスキューショナー・ソード(エンシス・エンセクエンス)”』」

 真祖の吸血鬼にして最強最悪の魔法使い――エヴァンジェリンが、いた。
 しかもその手に強力無比なる冷気の刃を纏い、
 躊躇無く、影に振るう!

 ズガァアアアアア――――……!!

 三匹の悪魔は飛び去り、
 そして影は――橋もろともに吹き飛ばされた。
 それを絶句して見る俺っち。な、なんつー破壊力――これが奴の本気か!?
 戦慄とともに見る。奴がどれだけこちらに対し手加減してたのかを、畏怖の感情とともに知る。
 やがて、粉塵は晴れ、腹部を貫かれた筈なのに無傷のエヴァンジェリンはこちらに――体を丸めるネギの姉貴へと視線を向け、
「おい、小娘! いつまでそこで丸く――」
 怒鳴る。
 それを――

「いやぁ、驚きました、ビックリしまたねぇ」

 ――陽気な声が遮り、
 エヴァンジェリンは顔をしかめて後ろを振り返って、
「……なるほど。貴様、闇に紛れ、自在に転移出来る悪魔らしいな」
 呟く――て、なぁにぃいいっ!?
 目を剥く。
 そして、たまらず零す。
「……うそ、だろ?」
 エヴァンジェリンの振り向いたそこに、先ほど吹き飛ばされたハズの影がいた。
 そしてその影は大仰にお辞儀し、エヴァンジェリンへと改めて向き合う。
「これはこれは驚きました。まさか吸血鬼でしたか。いやービックリですねぇ」
 陽気に陽気に。狂ったように明るく、影が言う。
 対して、エヴァンジェリンは冷笑でもって返す。
「そうか貴様ら。学園の結界が消えたから――」
 その言葉に、
「そうだ」
 低い声が答え、
 同時、鬼の顔と鳥の翼の悪魔が彼女へと拳を振るった。
「フン――」
 それを鼻で笑い、手のひらを鬼に向けるエヴァンジェリン。よっぽど己の障壁に自信があるのか微塵も慌てず、
 しかし――バリン、と。それこそガラスのように簡単に、澄んだ音を立ててエヴァンジェリンの障壁は割れ、
「なっ――!?」
「我に障壁など無意味と知れ」
 何らかの呪印が刻まれた、血色の紋様が浮かぶ拳で、鬼はエヴァンジェリンに殴りかかり、

「――させません」

 言葉と同時、エヴァンジェリンの従者のロボが鬼の拳を弾くようにして現れ、
 そして、

「――なんなのよ、あんた達は!?」

 ネギの姉貴をかばうように仁王立つ姐さん。鬼気迫る、怒りに燃える双眸を悪魔達に向けて大剣を構える。
 ……こいつは、なんとかなるかも知んねーな。
「……そうだな、神楽坂明日奈。ここは一つ、我々の舞踏会を邪魔する阿呆どもをどちらがより早く倒せるか勝負しないか?」
 クツクツと、殺意漲るエヴァンジェリン。そしてその横に無言で佇む従者。
 ……幸い利害は一致する。だからこその、エヴァンジェリンによる事実上の共闘宣言に対し、
「……そうね。良いわ、やったろーじゃん」
 姐さんはネギの姉貴をチラと見て、力強く頷いて返した。
 よし! これなら――!! 

 ◇◆◇◆◇

 ――アカン、思た。

 橋の上の上から下を見て、ウチは心の底から震えていた。
「……ど、どないや、せっちゃん?」
 双眼鏡から目を離さず、隣におるだろうせっちゃんに問う。
「戦況は……芳しくないですね」
 それにすごく冷静にせっちゃん。
「相手は恐らく爵位ある高位の悪魔。……ネギ先生が何故か戦おうとしないため三対四と数の上でも不利なことと、何よりエヴァンジェリンが何かを守るための戦いというのに不慣れなのがいたい」
 ガタガタと震える。
 せっちゃんの言葉にやない。なんやいきなり現れた化けもんに対して、や。
 あないに強い思た茶々丸さんやアスナも勝てへん思た。かなわへん……もしかしたら殺されてまうかも知れん。
 ……嫌や、そんなん!
「三対四ではなく、むしろ一対四の方がエヴァンジェリンとしては戦えただろうが……周りを気にして魔力を抑え、他の者のサポートまでしなければならない現状では勝てる見込みは薄いでしょう」
 淡々と状況を話してくれるせっちゃん。ウチは泣きそうな顔を彼女に向けて、震える口をどうにか開いた。
「せっちゃん……。ウチらも加勢しよ? ウチはまだまだやけどせっちゃんなら――」
「私が入ったとて難しい」
 遮り、苦渋に歪んだ顔を左右に振るせっちゃん。
「……私とこのちゃんは、今連中に見逃されているに過ぎない。私が入ればこのちゃんを危険に晒してしまう。このちゃんを守りながら戦って、勝てる相手ではないし……これ以上、エヴァンジェリンに負担をかければ彼女が倒れる。そうなれば負けです」
 ……なんやの、それ。
 なんでやの? ウチもせっちゃんも、このまま何も出来んと、ただ見てるしかできないん? みんなが倒れるんを――殺されてまうんを、ただ見てるしか出来ひんのっ!?
 ――そないな事、納得せ―へんでウチは!
「せっちゃん、ウチな――」
「一つ」
 出鼻を挫かれる。せっちゃんは真剣な顔をウチに向けて、
「方法が無いとも限りません」
 ……え?
「な、なんやのそれはっ!?」
「それは――」
 せっちゃんは私をじっと見て、
 そして――

 ◇◆◇◆◇

「あ、あんたは誰だ……?」
 声を震わせて、問う。
「まさか……、本当に……――」
 喉が干上がる。
 頭が混乱する。
 この電話の相手が、
 もし本当に、
 はやて、なら……――
『――確認すべき順番が違います』
 対して、あたしの言葉を遮るようにして言う彼女。
『確かに私の正体は気になるでしょう。その気持ちは理解出来ますし、このように突然、“見ず知らずの誰か”から電話で何かを告げられても信用出来ないかと思います』
 ……え?
 “見ず知らず”?
『ですが、まず私の正体を問う前に気にすべき事柄がおありなのではありませんか?』
 混乱する。思考がぐちゃぐちゃで、考えることが出来ない。
 だからあたしは彼女の言葉に「え?」と間抜けな声で返すことしか出来なくて、
 そして、
『……私が何故、“彼”の言葉を代弁しているか。それを何故、“あなた”は先に訊ねないのですか?』
 その言葉は、さながら稲妻のように。
 ぐちゃぐちゃの頭を、心を貫き、あたしを我に返す。
「――ッ!? お、おい! ケイトはどうしたっ!?」
 ――この電話の相手ははやてじゃねー。
『……生きてます』
 ――その声が、どんなにはやてに似てても、
「無事なのかっ!?」
 ――違う。
『はい』
 ――はやてじゃ、ない
 違う。絶対に。
 それは言葉遣いが違うから――じゃない。
 この声がいくらはやてに似ていても、別人だ。だって……はやてはもう生きてない。あいつらんとこに、今はいるんだから。
 だから――
『無事ではありますし、生きてもおられます。……いずれも“現在は”ですが』

 ――コイツは敵かも知れない。

「……おめーがやったのか?」
 だから、そう問えた。
 そして、
『はい』
 彼女は頷いた。
「…………今どこに居やがる」
 その答えは予想の内で、
 その可能性を考えての問いでありながら、
 それでも――……頷いて欲しくなかった。
 この声の主が、例えはやてじゃなくても、
 それでも――……どうしても、この少女に敵であって欲しくなかった。
『……あなた方の通う校舎に来て下さい』
 相手には聞こえないよう細心の注意を払い、ため息。瞳を閉ざし、落としていた肩を無理やり上げて深呼吸を一つ。
「要求はそれだけか?」
 震える声を、手を、どうにか抑えて、
『……クローゼットにあなたの装備一式が入っているそうです。お忘れなく』
 ……上等だ。
 あたしは内心で荒れ狂う感情をひた隠し、獰猛な笑みを浮かべて告げる。
「今すぐ行くから待ってろ」
 必ずブッ潰す。その決意で心を塗り固め、相手の返事を待たずに通話を切る。
 そして、
「…………………………………………ぁ」
 じーっとこっちを見てるあやかの存在を、ようやく思い出した――。






次話/前話

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《ケイト〜knight of nightmare〜》7

《ケイト〜knight of nightmare〜》







 『ソイツ』――ジュエル・コアの暴走体は空から来た。
「――ィィイイン!」
 高速で迫るソイツは、大きなカラスの姿をしていた。
 前回が巨大ネズミだったせいか、俺の頭上に現れるや旋回し、コチラを狙うように睨み付けているソイツを見ても大して驚かない。
「……フェイトさん。空って飛べます?」
 今やその姿を青いリスから黒鉄色の戦斧へと成り代わったフェイトさんに向けて、問う。
『うん。今、飛行の術式を展開――完了! いつでも行けるよ、ケイト』
 ……流石は本家本元の魔法使い。
 …………ただ、ですね、
「ぅをっ!? とっとっと! う、わっ、バラ、ンス、がっ!」
 初めての飛行に俺が付いて行けてません。
『大丈夫、前を向いて』
 中空でわたわたとしていた俺にフェイトさん。
『初めは戸惑うかも知れないけど、魔法はイメージ。飛んでいる自分を強く強く思い描くの。あとはコッチで――……え?』
 馴れた。
「……成程、コツは掴めた。行くよ、フェイトさん!」
『えっあっ……う、うん!』
 ……あれ? フェイトさんが何か戸惑ってる?
「……どうかした、フェイトさん?」
『ううん。敬人にはもしかしたら魔法使いの才能があるのかも知れないな、って思っただけ』
そう?
「――っと、来た来た、巨大カラスが来た!」
 コチラに気付いた巨大カラスが高速で近付いて来る。
「全長三メートル超、翼長八メートル前後ってとこかな?」
 こりゃまた凄いのが来たなぁ。そう苦笑して呟く俺に、
『凄い……。敬人、前にも思ったけど、凄く落ち着いてるね』
 感嘆の声を漏らすフェイトさん。
 それに、思わず肩をすくめる。
「……そうでも無いけどね」
 っと、言う間に突進してくる怪鳥。俺は前回のネズミの時みたく、マタドーラよろしく、その突撃をすんでのところで避け、
 すれ違い様、持っていた戦斧を――フルスイング!
 と、同時、
『っ! 敬人!!』

 ガギィィイイイー――ン!!

 カラスの眼前に突如出現した魔法陣。それにキズ一つ付けられず、高い音を響かせて弾かれる戦斧。
「ぅをっ!?」
 驚愕は一瞬。
 状態が崩れ、衝撃に体が硬直するのも一瞬。
「――――ッ!!」
 しかしその刹那の間に、

 ――怪鳥は再び俺に向けて突っ込んで来た。

「ガ、はッ!!」
『敬人!?』
 俺はそれを避け損ね、脇腹を強かに打たれる。
 ……ツツツ。これは……折れたかも。
『……大丈夫?』
「うん、何とか……。っと、来たよ!」
 心配そうなフェイトさんに口早に言って、再び構える。
 ……さて、どうする?
 旋回し、また突っ込んで来るカラス。
 その突進力は猛スピードで疾走する軽トラック並。避けられなければ命に関わる。

 ――と、

『――……「ソニック・フォーム」』

 ――それは俺の世界を加速させる、魔法の言葉だった。
「――――っ!?」
 フェイトさんの呟きに合わせて、俺の格好が即座に変わる。
 手の中の戦斧が消え、
 服装が黒いレオタードにスパッツのような格好へと替わり、
 鉄色の手甲が現れ、
 四肢に金色の翼が生え、
 そして視界が、知覚が――猛烈に加速する。
『高速移動に特化した、防御力の薄いバリアジャケット。それがこの「ソニック・フォーム」』
 加速する世界。
 加速する体。
 高速で迫るカラスに対し、
 尚、高速で答える。
「……速い。これなら!」
 空中を縦横に駆け、
 カラスの横っ面に、鉄甲で覆われた拳を――振り下ろす!

 ――ギィィィイイイ!

 またも魔法陣に弾かれる。固い……。
「……フェイトさん?」
『……どうやら防御魔法を使えるみたい。というより、半自動的に展開されるようね』
その間にも、二度三度と拳を振るうも効果無し。
「破る手立てはある?」
『……うん。やってみる』
 高速で旋回する怪鳥に対し、さらに高速で回避及び攻撃をする俺。
 ……この速度なら絶対に追い付かれないし、当たらないな。代わりに、コチラには決定打が無いけど。
 夜空を切り裂く二つの閃光。
 響き渡るは裂空の悲鳴。
 高く澄んだ音を奏でる打撃。
 そして、
「…………あれ?」
 それは幾度目の攻防か。
 俺の振り上げた拳にはいつの間にか金色の光と紫電とが纏われ、徐々にだがカラスへとダメージを与え始めていた。
 ……フェイトさんの仕業かな?
 次第に纏う光が強まっていく拳。そして、それに比例するように威力を増していく打撃。
『「サンダーアーム」。今の敬人だと魔力の最大出力が足り無いから、ちょっと危ないけど同調してるジュエル・コアの方から魔力を引き出してる最中なの』
 ……良く判らないけど、
「成程!」
 要するにジュエル・コアを使ったドーピングで無理矢理強化してるってことかな?
 それだけを聞けば確かに危なそうだけど……ま、何はともあれ、
「これなら行けるかも!」
 と、言う間に、

 バキゥィィイイイー―っ!!

「良し! 魔法陣を貫いた!」
 やっと一撃を入れた。
 それは何度も何度も同じ箇所を集中的に殴って、初めて数センチのキズを入れたという程度だったけど――これにより、相手の優位性が崩れた事に替わりは無い!
「――っと、何処へ?」
 勝利を確信するのも束の間。カラスはいきなり転身。俺から距離を取る――というか、逃亡!?
「あれ? 逃げた?」
 首を傾げる。ま、逃げても追うんですが――
『いけない! あっちは――!!』
 ――っ! あれは、
「なのはちゃん!? って、カラスの狙いはもしかして彼女!?」
 カラスが一目散に目指す先。
 そこに居るのは家から道路に出て、コチラを見上げるなのはちゃんとそのお母さん。
「な、何で外に――って、あ〜……そう言えば俺、二人の目の前で魔法使って飛んで来た気がする」
 ……そりゃあ、気になって外に出て来るよねぇ。
 そうしみじみと呟く間も有らばこそ、
『――っ! そうか、この鳥の狙いはなのはなんだ! 敬人! 急いで止めて!!』
「了解!」
 ……とは言え、
「……何で今頃、なのはちゃんの元へ?」
 頭を捻る。
 彼女が俺と同じジュエル・コアの適正者で、暴走体に狙われる可能性が高いことは聞いていた。そして、だからこそ俺はなのはちゃんのもとへ訪れたんだけど……てっきりジュエル・コア二つを持ってる上に攻撃してくる俺を優先すると思ってたんだけどなぁ。
 などと考えてる間にも怪鳥に殴りかかり、少しずつではあるがキズを増やす。しかしカラスは尚も俺を無視して滑空し続ける。……まずいな、このままじゃ――
『……多分、なのはのリンカーコアが狙いなんだと思う。幼いながらも、この世界のなのはの魔力は今の私達はおろか暴走体をも上回ってるから!』
 ……それは凄い。
「そう言えば、フェイトさんの居た世界にもなのはちゃんは居るんだっけ? やっぱりなのはちゃん――さんも魔法を?」
 攻撃の手は止めてない。
 傷だった入れてる。
 だけど――
『うん。前の世界で、なのはは私より魔力があっ――っ!? 駄目っ! 止まらない!!』
「ぅをっ!! これは流石に……――」
 マズイ、とは続けられなかった。

「――――ッ!!」

 ――……ドクン。

 血流が、知覚が、感覚が、記憶が、精神が、

 ――……ドクン。

 加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する……――。

「――…………ろ」

 視点が固定され、

 視界が反転し、

 時間が巻き戻り、

 記憶が――再生される。

(――……わく……から)

 ――ドクン。

「…………ヤ……メ、ロ」
 怪鳥が狙うは一組の親子。
『……敬人?』
 怖がって母にすがる少女。
娘に対して言っているだろう言葉。

 ――ドクン。

 それは遠く日の、

(――……大丈夫、)

 朱イ景色二染マル――。

「ッ!!!!」

(……怖く無いから)

 ――ドクン。

(だからね、敬人……)

 ドクン!

(――ままと一緒に、)

 ドクン!!

「――ヤメロォォオオオオー――っ!!」



(死んで)



 ――……世界が、弾けて消えた。




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《ケイト〜knight of nightmare〜》6

《ケイト〜knight of nightmare〜》







 玄関のチャイムを鳴らして待つこと数秒。すぐに、は〜い、という年若い女性の声と共に玄関の扉が開けられた。
「こんばんは。あの、なのはちゃん居ますか?」
「はい、こんばんは。……あら、あなたはなのはのお友達?」
 玄関を開けたのはどうやらなのはって子の母親らしい。
 彼女は、外見だけを見れば娘と同じ歳頃の少女である俺の、やけに大人びた雰囲気を感じ取ってか不思議そうにしていた。
 ……ま、中身中学生だしね。
「初めまして。私はケイト・テスタロッサ。こんな時間にすみません」
 内心で苦笑を浮かべつつ、そう笑顔で言って一礼。頭の両脇で束ねられた金色の髪がサラリとその動きに合わせて流れた。
「あの、今日はウチのリスがお宅のなのはちゃんにお世話になりました件で、お礼を言いに来ました」
 言って、俺は肩に乗っているリス――フェイトさんを示した。
「なのはが……お世話?」
 首を傾げるなのは母。ま、その気持ちをわからないでもないけど、
「はい。ウチのフェイトって、いっつも目を離すとどこかに行っちゃうんです。それで今日も町中を探して歩いていましたら、お宅に入る所をご近所の方が見たって。なので、失礼かと思ったのですが勝手にお邪魔させて頂いたんです。そうしたら、寝ているなのはちゃんの横でフェイトも一緒に寝ていたんです。なのはちゃんを起こすのも悪いと思いましたので、その時はそのまま私は帰りました。それで、お世話になった、というよりご迷惑をおかけしたなのはちゃんに一応ご挨拶したいと思いまして、この度はお邪魔させて頂きました次第です」
 ザーっと相手に言葉を挟ませ無いよう嘘を並べ立てる俺。それから、言い終わった頃合を見計らって、フェイトさんが俺の肩から跳び降りた。
「あっ、フェイト!」
 そのままフェイトさんはなのはって子の元へ走って行く。……うん、作戦通り。
「あっ、あのっ……」
 若干、涙目になってなのは母を見あげた。
 それに、
「はい、どうぞ」
 まったくこちらを疑うことなく中へ導くなのは母。しかも、
「……ごめんなさいね、玄関で長話させちゃって。さ、さ、上がってちょうだい」
 などと、初対面でありながらやけに友好的な態度で言った。
 ……おや? どうやら信用してもらえた模様。
「し、失礼しますっ!」
 慌てた風を装って、俺は室内へと上がらせてもらう。
 それとほぼ同じタイミングで、遠くから『ふぇいとちゃんだぁ』という女の子の声が聞こえた。
「ケイトちゃんて日本語お上手ねぇ。何処から来たの?」
「いえ、私はこの国で生まれたんです。両親の出身はアメリカの……」
 そこまで言って、首を傾げる。
 ……あれ? アメリカって、なんて都道府県があったっけ?
「え〜と、たしか……『ミッドチルダ』?」
 ……嘘じゃない、はず。
 俺はあたかも申し訳なさげな微笑を浮かべて言った。
「……すみません、今度確認しておきますね」
「いえ、良いのよ気にしなくて。そう、日本で生まれたの。まだ小さいのに言葉使いが丁寧で、偉いわねぇ」
 ……まぁ、中身は十四の純日本人ですから。
「ありがとうございます」
 俺は笑顔を作って答えた。

 ――あ、ちなみに現在俺は、フェイトさんに変身しています。

 ◇◆◇◆◇

 ……女の人って、どうしてこう、一緒にお風呂に入りたがるんだろう?

 夕暮れ時にフェイトさんのお願いを聞き、俺はフェイトさんに変身して高町家へとお邪魔する事にした。
 流石にぶかぶかの制服や、まして男ものの下着なんかをはいて訪れるワケにもいかないので、それらを事前に調達&着替えて、とりあえず見れる格好にしてから来た。
 正直、子供――それも女の子の服なんてよくわからなったが、そこはそれ、フェイトさんの意見を鵜呑みにするというかたちで事なきを得た。
 そして現在、それらは他の衣類と同じく脱衣所の籠の中。
 つまり、俺は今――真っ裸であった。
「……長居するつもりは無かったのになぁ。ぶくぶく……」
 薄靄のかかる高町家の湯舟につかりながら、呟く。
 眼前ではなのはちゃんがフェイトさんの体を洗っていた。両者、とても楽しそうだ。
「こ、こらっ、なのはっ。じっとしてないと背中が洗えないだろうっ」
 その、全く動きを止めない少女の体を四苦八苦しながら洗おうとしているのは高町 恭也さん。今年、高校に上がった、なのはちゃんのお兄さんだ。
 そもそもの事の起こりはなのはちゃんの、『ふぇいとちゃんとけいとちゃん、一緒にお風呂入ろう?』という言葉から始まった。
 それをやんわりと断ろうとしたら、なのはちゃんのお母さんが何故か乗り気になってしまって、あれよあれよという間に『じゃあ夕飯も食べて行ってね』という事になってしまった……。
 賑やかで和やかや夕食。家族の団欒。
笑顔が場を満たす、暖かな空間。
それは、

 ――俺の知らない、『家族』の一時。

 夕食後、どうにかそのまま御暇しようと思ったのに……なのはちゃんのお母さんに捕まった。
 諦めて一緒に入る事にした俺だが、そこへ更になのはちゃんのお母さんまで入ると言い出してさぁ大変。
 本調子じゃないなのはちゃんをお客様であるケイトさん一人に押し付けるワケにはいかない、というのがその理由。
「……でも、中身は男……ぶくぶく」
 ……紆余曲折の末、どうにか保護者を恭也さんに出来たのは我ながら頑張ったと思う。
「『死んだお兄ちゃんに似てるから……』我ながらナイス演技……ぶくぶく」
 ……今日一日でどれだけの嘘をついただろう?
 仲の良い二人と一匹を視界に、俺は湯舟につかる口元に苦笑を刻んだ。

◇◆◇◆◇

「すみません、長居してしまって」
 そう言って、俺は玄関まで見送りに来ていたなのはちゃんとそのお母さんにお辞儀した。
「いえ良いのよ。またいつでも来てね、ケイトさん」
「バイバイけいとちゃん、ふぇいとちゃん」

 ぶんぶか大きく手を振るなのはちゃんに手を振り、俺はそれでは、と言って玄関から一歩外へ出た。

 ――その時だった。

『っ! 敬人!!』

 脳内というか、俺の身の内から響くフェイトさんの緊迫した声。
「ぅをっ!? ふぇ、フェイトさん?」
 突然キョロキョロし始めた俺になのはちゃん達が首を傾げているのが見えた――って、それはともかく、
「……な、何?」
 二人には聞こえないよう小声で俺は肩に乗ったフェイトさんに問うた。
『来る……!』
 ……は?
 首を傾げる俺を無視して、ソレは高速で来た。

 ――キィィイイイー―っ!!

「――っ!?」
 空気を切り裂くその音で、俺もようやくソイツの襲来に気付けた。






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《THE SECOND LIFE》17

《THE SECOND LIFE》






 橋の上の上。麻帆良学園端にある橋の、それを支える支柱の上。
 本日、一斉停電となったおかげで映える夜空のよく見える場所に私とお嬢様はいた。
「お嬢様……やはりお身体が――」
「あー! またお嬢様言うたー!」
 夕方に倒れたお嬢様――このちゃんを心配して幾度目ともなる問いを発するも、ご覧の通り、聞く耳を持ってくれない。
「で、でもな、このちゃん! ここ、寒いやん? うち、このちゃんが心配やねんけど……?」
「大丈夫やて」
 双眼鏡を下ろし、私へと振り向くこのちゃん。あぅ……だからその笑顔は反則やん……。何も言えんくなる……。
「ここ、せっちゃんがお札貼ったからあんま寒ないで?」
「それは……」
 視線を逸らして口ごもる。た、確かに最小限の防寒と退魔の符は貼ったけど……それでも心配は消えない。
 なにせ倒れたのだ。少なくとも私としては一晩ぐらいゆっくり休んで欲しい。
「ほわぁ……やっぱり凄いなぁネギちゃんは」
 また説得しようと視線を戻せば、このちゃんは双眼鏡を通して下を――エヴァンジェリンや神楽坂さん達の試合を見ていた。
 ……いや。正確には『決闘』、か。
 そこにルールなどなく、恐らくはギブアップするまでやり合うだろう月下の決闘。私はそれを見るとはなしに見ながら、
「……驚きました。ネギ先生は魔法だけでなく棍棒術――いや、槍術まで使えるんですか」
 軽く目を見開いて、驚く。
 熟練度こそ低いものの、素人にしてはやや鋭く完成に近い感がある。更に、以前拝見した際も驚いたのですが……あの歳で縮地まで使えるなんて凄すぎです。
「……でも、やっぱりアカンな」
 え? 寂しげに、悲しげに呟くこのちゃんを、見た。
 このちゃんは真剣な顔で双眼鏡から下を見つつ、
「ネギちゃん……無理しとる」
 視線をネギ先生と茶々丸さんの戦闘へと戻した。
「あ……」
 気付いた。
 確かに少女の振るう杖は鋭く、あのエヴァンジェリンの従者たる茶々丸さんをもってしても御し難いようだが――その杖を持つ両手は血で真っ赤だった。
「……せっちゃんはネギちゃんの裸、見たことある?」
 え? 呆然とこのちゃんを見る。
「ネギちゃんな……。体中に傷があんねんて」
 双眼鏡で顔の半分は隠れていたが、わかる。このちゃんは今、もの凄く悲しそうな顔をしている。
「アスナが言うとったわ。他ん人には気ぃ使われたないから、ネギちゃんがお風呂誘われたらなるだけ自然に断ってなー、て」
 ネギ先生を見た。
 ……その気持ちはわかる。ネギ先生だって女の子だ。体に消えない傷があれば、なにはなくとも気にして当たり前だ。コンプレックスになっていても不思議はない。
 『でも……』と思う。そのコンプレックスを神楽坂さんは知っているんだ、と少し驚く。
 このちゃんの口振りや彼女たちの態度からも分かるとおり、神楽坂さんとネギ先生は凄く仲が良いのだろう。
 それこそ――例えば、自分の醜い姿を見せてしまえるほどに……。
「……春休みにな。ネギちゃんと手ー繋ごうとしたんよ」
 ……なんとなく、言わんとしていることがわかった。
「そしたらな……ウチ、いきなり突き飛ばされたんや」
 ため息を、吐いた。
「『なんでやの?』って不思議に思たんやけどな……ネギちゃんがそん後に必死んなって謝るから訊けんくて。それでそのこと、後でアスナに話したんよ」
 そしたらな……。そう悲しげな微笑をたたえて語るこのちゃんの台詞を、
「――ネギ先生の手は、ボロボロだった」
 遮るように、次ぐ。
「……やっぱりわかる?」
 笑みに苦みを少しだけ加味し、このちゃん。それに「はい……」と返し、視線を件の少女へと戻す。
 ……見ればわかる。
 少女の戦い方を見れば、簡単に知れる。
 ……ネギ先生は自分の体を労らない。
 全力で、一切の手加減を無くその技能を使う。
 結果――体は傷つき、心もまたボロボロになっていく。
「……ネギちゃんが寝た後に、な。悪い思たんやけど……アスナと二人で見たんよ」
 そう言って、小さなため息を零すこのちゃん。私はそちらへの視線を向け、
「だけどそれは……」
 このちゃんが気にすることじゃない――と言っても恐らく無駄だろう。
「まったく、ネギちゃんはむちゃくちゃなんや。ホンマに」
 ……だってこのちゃんはもう、笑顔を作っていたのだから。そう、わざと明るい声を作って会話を結めてしまったのだから。
 だから――

「…………あれ?」

 首を傾げるこのちゃん。そして、
「あれー? せっちゃん、せっちゃん」
 双眼鏡を四方八方に向けてキョロキョロ。
 ? このちゃん、どないしたんやろ?
「……このちゃん?」
 私の呼びかけに双眼鏡を下ろして首を傾げるこのちゃん。不思議そうな顔で私を見て、
「あんな……。アスナがな……、見当たらへんのや」
 え?
 下を見た。
 ……確かに神楽坂さんが見えない。それに彼女が相手をしていたエヴァンジェリンもいない。
 ……これは――

   ◇◆◇◆◇

 ――作戦は単純明快。
 “一番(いっちゃん)”厄介なエヴァンジェリンの奴を姐さんに遠ざけてもらって、そんでもってまずは従者の方を叩く!
「ふっ!」
「っ」
 しっかし……ネギの姉貴の棒術にも驚いたが、姐さんには驚かされっぱなしだぜ。
 姉貴が苦労して無理して暴走してまでして倒せなかったエヴァンジェリンのヤローを一般人である姐さん一人で抑えてもらえるたー思わなかったぜ。……まぁエヴァンジェリンが手加減してる上に遊んでるっつーのもあるが、正直ありがてーことに変わりはねー。
「ハッ!」
「――――」
 そんでもってエヴァンジェリンの従者であるこのロボ。姉貴の刺突を難なくかわし、姉貴と違って瞬動術なんて出来ねークセに、姉貴の動きについて来やがるバケモンだ。
 ……だけどまー、コイツにならまだ勝てる。
 姉貴単体じゃあ、ちぃ〜っと難しいが、姐さんと二人でボコにすりゃあ簡単なんとかなる。
 そしてそのための手は打ってある。だから、あとはそう――
「はっ!!」
 ネギの姉貴の刺突がついに命中! そんでもって思いっきり吹き飛ぶロボ。
 ッシャー! 心ん中でガッツポーズをしつつ、
「姉貴!」
「うん!」
 以心伝心。俺っちの言いたいことを正確に読み取る姉貴。……まぁ事前に作戦を言ってあるからなんだが、しかしこいつはタイミングが命だ。ついでに言やあ、失敗は許されねー。
 姉貴は一旦瞬動で距離を稼ぎ、スーツの内から姐さんの仮契約カードを取り出す。
「“召還(エウォケム・ウォース)!! ネギの従者、神楽坂明日奈”!」
 呪文と同時、発光するカード。そして浮かび上る魔法陣とそこに召還される姐さん!
 ネギの姉貴は姐さんを見て笑い、
 姐さんは姉貴に微笑んで頷き、
 そして、
「「ハァアアア!!」」
 同時に駆け出す二人。
 ウォッシャー! どうでい! これならさしものエヴァンジェリンでも間に合わねーだろうが!!
 二人はロボを挟むように迫り、
 大剣を、杖を、
 構えて切りかかり、向けて突き出し、
 そして――



「――甘いな」



 ――ロボへと向けられた姉貴の刺突を、奴の影から出て来たエヴァンジェリンが捌き、吹き飛ばした。

 ◇◆◇◆◇

 しずな先生などには『過保護ですね』とよく言われるが、俺としては過保護のつもりなどない。
 あの日――俺がウェールズを起つ時だって、珍しくわがままを言うネギを叱ったり強引な手で無理矢理別れるのではなく、現実の厳しさと世界の広さというものを実力でもって教えたし、次に会う時までに多少は強くなるように約束までして自発的に別れるように仕向けたのだ。
 それに……神楽坂にも言ったが、俺は少女の目標にならないといけない。故に甘やかすつもりなんて無い。
 だからこれは……――そう。ただほんの少しだけ心配になって――いや、ネギの成長が見たいだけだ。
 ビルの屋上から橋を見る。
 ……確か、近衛が教えてくれたのは橋の上で十時開始だったハズだ。もう結構な時間がたったから、そろそろ終わる頃か?
 魔力を込めて視力を上げる。
 さて……ネギは?

 ◇◆◇◆◇

 夕食後。
 どーいう経緯でこうなったんかは定かじゃないが、あたしは今だにあやかと一緒に居た。
「……ケイトさん、遅いですわね」
 リビングのこたつに向かい合うように座り、時折そう言って時計を確認するあやか。……ああ、そうか。たしかあたしが何かの拍子にケイトが外出してて今晩は一人だって言っちまったんだった。
「……今さらだが、あたしは一人で平気だぞ?」
 停電のせいか、あたしとケイトの住まう部屋の光源はテーブルの上に立てられた蝋燭のみ。そしてその頼りない灯火の向こう――あやかはどこか複雑な表情になって「……ですが」と戸惑い混じりの声で返した。
 ……ああこいつはまた、なんか勘違いしてやがんな。あやかの表情や雰囲気からそう判断し、ため息。
「なにをまた勘違いしてんだ、あやか?」
 担当直入に訊く。どっかの馬鹿と違ってあたしは表情一つで内心を見て取るなんて芸当は出来ねーし、あやか相手に腹の探り合いなんてしたくねーからな。担当直入上等だ。
 そしてそんなあたしにあやかは小さく目を見開き、それから微苦笑へと表情を改めて、
「『勘違い』ではありませんわ。私はただ、もっとお二人とお話がしたい、そう思っているだけですわ」
 ……はあ? あやかの台詞に怪訝顔になって首を傾げる。
「話って……それこそ明日でも良かないか?」
 明日は……まあ、学校が休みではあるが、それでも今日に拘る理由にゃなんねーだろ?
「今日は停電とかで危ねーんだし、さっさと帰って寝た方が――」
「そうですわ!!」
 不意に遮るあやか。って、いきなり大声出すな!
「……おい。もう今日は遅い時間なんだから――」
「はい! ですから私、今日は泊まらせていただきますわ」
 再び遮られる。
「……あ゛あ?」
 今こいつはなんて言った?
 泊まる? いきなりなんでだ?
「――って、よく見りゃでっけーバッグ持って来てやがるし!」
 あやかの背に置かれた四角くて固そうなバッグを指差して叫ぶ。こいつ始めっから泊まる気だったのか!? 準備万端かよ!!
 そんなあたしの突っ込みに「ふふふ」と上品に笑うあやか。それから、いつもの自信に満ちた表情になって、
「ヴィータさんも仰いました通り、すでに遅い時間ですし、停電のため夜道は危険ですわ」
 ……いや、夜道て。薄暗いとは言え帰り道は寮の廊下だけだろ? しかも五分もかかんねーだろ?
「……危険か?」
 すっげー怪訝な顔んなってあたし。それに、
「はい!」
 元気いっぱい頷くあやか。その上、
「これはもう泊まるしかありませんわ」
 …………いいや、それで。
 あたしは面倒んなってあやかの言葉を受け入れ――携帯が着信を知らせる。
「ん?」
 あたしは何の気なしにポケットのそれを見――『ケイト』の表示に目を剥き、慌てて出る。
「な、なんだ?」
 若干上擦った声であたし。……どうやら、知らず知らずの内にケイトのことを心配していたらしいな。
 そして、
「…………? おい、ケイト……?」
 声が、返って来ない。変わりに『ヒュー、ヒュー』という、まるで全速力で走った後の呼吸音のような『音』だけが聞こえる。
「…………おい」
 普通なら悪戯電話を疑うのだろうが――そんなのは有り得ない。
 あの馬鹿はその手の稚拙な悪戯をしないし、その電話を他人に使われるなんてことはもっとしない。ケイトはその辺、キッチリしてやがるから自分以外が勝手に電話を使えないようにぐらいはしてるだろうし、少なくとも危険性のある電話をあたしの携帯にかけさせるなんて事態を未然に防げない筈が無い。
 だから、電話の向こうに居んのはケイトで間違いなくて、
 つまり、この空気の漏れるような呼吸は奴のもので、
「っ! ケイト!!」
 声が出せない。
 それでも電話をかけなければならない状況。
 それはつまり――

『――失礼』

 ――不意に、言葉を伝え始める電話。
『お電話代わりました、ケイトさんの代理の者です』
 目を剥く。
『現在、ケイトさんが“諸事情により話せない”ようですので、僭越ながら私が“彼”の言葉を代弁させていただきます』
 驚愕に言葉が出ない。心境的には、それこそ心臓が飛び出そうなぐらい驚いている。
『あなた様が現在、どちらに居られるかは存じませんが――』
 声は、少女のものだ。
『――今すぐ、外へ出て下さい』
 知っている声。
『……聞いていますか?』
 知っているからこそ、有り得ない声。
『…………繰り返します。今すぐ外へ出て、ランサー様と合流して下さい』
 生きているはずの無い人の声。
 生きていたら、こんなにも幼くは無いだろう。だけど――何よりも大切で大好きだった人の声に、それは酷似し過ぎていた。
「……………………うそ、だろ?」
 それは、
 その声は、
 まるで、
 子供の時の、

 ――はやての声、だった。







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《ケイト〜knight of nightmare〜》5

《ケイト〜knight of nightmare〜》








 放課後。夕日に包まれ、オレンジが染める道を俺は常人よりゆっくりと歩いていた。
「……薫と恵は、一体部活を何だと思ってるんだろう?」
 呟く台詞の内容は、先程交した会話の事。帰宅する準備をしていた俺に恵が、『今からバッティング・センターに行こう』と誘って来た時の事だ。
 それを耳にした同じクラスの薫は、『良し、敗けた奴は翠屋のパフェをおごりな!』何て乗って来た。
 今日は部活無いのか、と聞いたら二人して、サボるとか言うし……。

「片や、女子ソフト・ボールのエースで四番。片や、男子野球部のキャプテンでピッチャー」
 ……あの二人は周りにどれだけ期待されてるかを判って無い。
 というワケで、俺が両クラブのマネージャーに頼まれていた、その役割を果たす事になった。即ち、『部活出ろ』という説得。
「……聞き分けが良いのは単純に楽で良いけど。複雑だよなぁ」
 俺は苦笑を浮かべつつ、不自由な左足を引きずって歩く。
「……さりげ無くバッティング・センターに誘う辺りに同情が見え隠れしてるんだけど、」
 純粋に、その心遣いは嬉しい。
「……とは言え、これからを考えると放課後の交遊は避けるべきかなぁ?」
 これから――つまり、フェイトさんとのジュエル・コアの探索。
 フェイトさんの話では、ある程度まで近付けば判るというんで、今日から俺は、晴れて藤見町周辺のパトロールを義務付けられたってワケだ。

「……ま、やる事は散歩なんだけどね」

 ◇◆◇◆◇

 ――私のお友達になって下さい。
 その私の言葉に、なのはは本当に嬉しそうな顔をして笑った。
「うんっ! ふぇいとちゃんはなのはのお友だちだよ!」

 ――……それから、私はなのはとたわい無いお喋りや、お絵書き等をして遊んだ。

 お昼には、なのはが電子レンジで温めたお粥を一緒に食べて、
 薬のせいか眠そうにしているなのはに本を読んで聞かせて、
 一緒の布団に横になり、
 そしてその間、なのはは終始笑顔で、
 とても、嬉しそうだった。
「……この時代のなのはは、一人の時間が多い時のなのはなんだね」
 安らかな寝顔を見つめて、私はそっと呟いた。
 前になのはから聞いた事がある。なのはがまだ小さい頃、父親が生死を別けるような事故に合い、父親は長く入院し、母親は夫の見舞いと喫茶店、兄と姉は学校と父親の見舞い、それから店の手伝いで忙しく、必然的になのはが一人になる事が多くなった時期があったと。
「……まだ、アリサやすずかに出会う前。ユーノや私と出会う前の、一人の時のなのは」
 それが今、私の目の前で眠る、幼いなのはなのだろうか?
 そして、もしそうなら――……ううん。もし、そうでなくても、 
「……私は、なのはの友達になりたい」
 そう、思った。

 ◇◆◇◆◇

「――『平行世界』?」
「……うん」

 藤見町にある商店街。夕暮れ時の雑踏を肩にリスを乗せて歩く奇妙な少年が歩いていた。……と言うか、フェイトさんと俺なんだけどね。
「……私も、前に少しだけ文献で読んだ事しか無いから自信は無いんだけど、多分間違い無いと思う」
 現在、目下精力的にジュエル・コア探しの巡回中。
「『平行世界』……これまで机上の空論とされ、在ると言われながら誰一人それを立証出来なかった無限に連なる、同時空、異位相の世界。こことは似ているけど、違う世界。もう一人の自分が居る世界」
 ……うわぁ、また難しい事を仰ってます。
「……それが俺の住む世界って事?」
「うん。ケイトの居るこの世界は、なのはの住む世界の同時空、異位相の世界だと思う」
 はい、チンプンカンプンですね。
「……ふ〜ん。良く判らないけど、とりあえず一個質問。『なのは』って誰?」
 内心のハテナマークをおくびにも出さずに問う。正直、わからないことだらけだけど、『説明されてもどうせわかんないし』と半ば諦めモードの俺。あはは、馬鹿っていうなよ。泣いちゃうぞ?
「……前に居た位相の世界で私と同じ学校に通ってた大切なお友達。……そのなのはが、ここにも居るの」
「は?」
 フェイトさんの台詞にさすがの俺でも間抜け面になるのを禁じえなかった。……え〜と、確かフェイトさんは異世界から来た魔法使いで、言動から察するに前の世界――要するに俺の居る世界とは違う世界で同じ学校に通う友達がなのはさんで、それがここにも居るとすれば、
「……ど、『ドッペルゲンガー』?」
 煙を吹きそうなぐらいに頭をフル回転させて俺。そこ、笑うな! 俺だって半信半疑なんだよ、必死なんだよ、頭悪いんだよ! ……泣きそう。
「多分、近いけど違うと思う。ここに居たなのはは、私の知ってるなのはより十歳は幼いから」
 そんな俺の内心を知ってか知らずかフェイトさん。またもや意味不明なことを仰いました。
 ……ええと、要するに、
「フェイトさんは……『タイム・トラベラー』?」
 自分で言っといてなんだけど……恥ずかしいなあ。
「……それも近いけど、違う」
 え、近いんですか!?
「私達魔法使いは『時』に関する魔法を今だに使えないから。時空を跳べても、時限は跳べないの。……だからここは別の時間軸を進む、なのはの世界と全く同じで、でもなのはの世界とは異なる位相の世界――『平行世界』だと思う」
 …………頭が痛いかも。
「……あれ? でもさっき『平行世界』は机上の空論だって言ってなかった?」
 ショート寸前の頭でそう問い返す俺を、誰か褒めてはくれまいか?
「……うん。私達は今だに別の時空には行けても、異位相の世界へは行けないし、そもそも世界に異なる位相があるのかすらも判っていなかったから」
…………う〜ん?
「……俺には『位相』と『時空』、それに『時限』の違いが良く判らないんだけど?」
 ごめん、俺って馬鹿だから。……心の中で滂沱の涙を流すようですよ。
「……えっと、じゃあケイト。この先に流れる川を見て」
 言われた通り、俺は視線を川へと移す。 
「その流れる速さを『時間』の流れとするの。……川は速さが一定じゃないけど、ここでは一定の速さで流れていると考えて。それで、その川に浮かぶ船が私達だとすると、私達の使う転移魔法――『時空』を越える魔法で行けるのは『真横だけ』という事になるの。真横に流れている別の川――別の世界。前や後ろという川の流れに逆らった『時限』を越える術は無いの」
 ……なんとなく理解して来た。
「じゃあ、異なる『位相』って言うのは川に対してどっちにあるの?」
「縦」
 ……は?
「真上と真下に無限に同じ川が連なっているの。……あくまでもこれは例えだし、立証されてない理論では、の話になるんだけど」
「……要するに“川(時間) ”に浮かぶ“船(俺達)”には別の“川(時空)“には行けても“空や水中(異位相)“には行けないし、フェイトさん達魔法使いにも川の流れに逆らう事は出来ない、と」
 おや? 俺が頭よさそうですよ? ……ま、いい加減慣れたってだけだけどね。
 俺はフェイトさんの言葉をどうにか整理、理解しようと勤めて、
 そして、その矛盾に気付いた。
「……あれ? そうなるとドチラも行けないんだから、もし行けたとしても『時限』を越えたのか『位相』を越えたのか何て判らないんじゃないの?」
 その俺の問いに、
「……うん。本当ならそう」
 そう答えたフェイトさんは……とても哀しい目をしていた。
「……なのはは小さい頃、一人で居る時が多かった、って話してくれた事がある」
 それは、遠い眼差し。
懐かしむような、遠い遠い、もしかしたら時間すら越えているかも知れない、哀しい視線。
「……そのきっかけは、なのはのお父さんが生死を別けるような酷い事故にあったからだって教えてくれた」
 …………なんとなく、先が読めた。
「……でも、ここで出会ったなのはの家に『ソレ』を見付けた。私の知ってるなのはの家には、あるハズの無い物」
 それが『時限』と『位相』とを区別する決定的な差異。
「なのはのお父さんの――」

 ――遺影。








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《THE SECOND LIFE》16

《THE SECOND LIFE》







 今日はついにアスナとエヴァちゃんの試合ん日。
 放課後になるや教室からさっさと出て行くアスナとネギちゃん。それを見送っていたウチん所にエヴァちゃんと茶々丸さんが来て、
「で、だ近衛このか」
 腕を組んでウチを見上げてエヴァちゃん。
「お前も知っての通り、今日私は神楽坂明日奈と小娘と“戦(や)”り合うが――」
「ウチも見に行って良えか?」
 遮る。うん……エヴァちゃんがなんと言うてもウチは見に行くで!
 見習い魔法使いのウチ。すんごい魔法使いのエヴァちゃんや先輩魔法使いのネギちゃんの、魔法使い通しの試合や。見て損はないはずや。
 それに……心配や。ネギちゃんが参加しとるんがアスナの負担になっとると思うねん。
 アスナは絶対無茶しよる。だからウチが、教えてもらったばかりの魔法でケガしたら治してあげたいんよ。
 そんな風に思っていたウチにため息を一つ吐いてエヴァちゃん。クールな無表情のまんまで再度口を開いた。
「――あぁ、私もそのつもりだ」
 ウチはその意外な返答にキョトンとしてエヴァちゃんを見た。あれ? ウチはてっきり駄目や言われると思っとったのに。
 エヴァちゃんはそんなウチにニヤリと笑って、
「貴様は見習い中とは言え魔法使いだ。しかも私に教えをこうた、言わば私の弟子。ならば私と小娘の戦いで何がしか得るものもあろう」
「ご安心下さいこのか様。このか様の安全は私が保証します」
 エヴァちゃんの言葉を継いで茶々丸さん。無表情のままウチを見てお辞儀。
「あっ。茶々丸さんも参加するんか? もうケガは良えん?」
「はい。ハカセに治して頂きましたので支障ありません」
「そう言うことで、だ。当然、貴様も近衛このかに同伴するのだろう?」
 横目でウチの背後を見るエヴァちゃん。目をパチクリして振り向くと、いつの間にかいたせっちゃんと目があった。
「せっちゃん――」
「先に断っておくが、」
 無表情のままにウチの前に出るせっちゃん。
「私はネギ先生や神楽坂さん、あなたや絡繰さんがどうなろうと、それが試合であれば手を出しません。しかし――お嬢様に危害が及べば話は別だ」
 肩に担ぐ野太刀を手に下げてエヴァちゃんに示すせっちゃん。
「相手が誰であれ――私は戦闘に介入する」
 せっちゃんの言いように慌てる。
「あわわわ……! せ、せっちゃん、それは――」
「構わんよ」
 エヴァちゃんに遮られる。見ると彼女はクツクツと笑ってせっちゃんを見ていた。
「なんなら三つ巴でも一向に構わん。それに――」
 振り向くエヴァちゃん。その視線の先で――
「貴様も参加するか? 月下の舞踏(ダンス)に」
「まさか」
 衛宮センセは苦笑しながら立っていた。
「まぁ行き過ぎない程度に頑張れ」
 肩をすくめて見せるとさっさと教室から出て行くセンセ。それを見送り、『フン!』と鼻で笑うエヴァちゃん。
「……行き過ぎた場合は出て来る、か」
 呟きエヴァちゃんも教室から去ろうと歩き出し、
 途中で振り向く。
「そういうワケだから今日は私の所には来るな、近衛このか」
 ニヤリと笑って、
 そして、次の瞬間――

 ――ゾクリ、と背筋に悪寒が走った。

「あ……」
 エヴァちゃんは教室から去り、
 ウチは青ざめた顔でそれを見送って――
「っ! お嬢様っ!?」
 せっちゃんの声が遠くなり、
 ウチは、

 ――意識を、失った。

 ◇◆◇◆◇

 ――その日はあたしにとって、別段特別な日じゃなかった。
 それこそ、夜、一斉に電気が消える――それぐらいしか特別と言えない、そんな日のハズだった。
 ……だけど、
「――ごめんなさい。今日はわたし……ちょっと用事あるから」
 あやか達の部屋での夕食が半ば習慣化されつつあったその日、
「あら、そうですの……」
 よりにもよって目立ちたがらないハズのケイトがそう言った時に、
「……なんだよ一体?」

 ――気付くべきだった。

 あたしの質問に「お仕事」と、

 あたしにしか聞こえないよう小声で答えたケイトに、

「……そうか」

 もう少し、食い下がっておけば良かった。

「大丈夫だとは思うが……気ー付けろよ?」

 そう後悔することになるとは、

「……うんっ!」

 当然、その時のあたしは、思ってもみなかった――。

 ◇◆◇◆◇

 ――街が闇に包まれ、
 明かりと言えるものが空にある月と星しかなくなる頃、
 私とネギは学園都市の外れにある陸橋の上にいた。
「……確か十時って言ってわね」
 橋の手すりにもたれ、腕時計を見ながら私。
「は、はいっ」
 私の横に立ち、杖を両手で持ってキョロキョロしながらネギ。返事の声が裏返ってる上に表情が固い。あ〜あ……すんごい緊張してるわねぇ、ホント。
「開始まであと五分を切りやしたが、姐さんたちは何か作戦とかあるんスか?」
「あ〜……作戦ね〜。え〜と……?」
 ネギの肩の上に乗るエロオコジョの問いに、明後日を向いて回答。
 ……そっか作戦か。強くなることしか考えてなくてどう戦うかなんて考えてなかったな〜。
 『ネギは?』とチラリと横を見て、ため息。ガチガチに緊張に固まり、なんだか目を回してるように見える。……訊くだけ無駄か。
「なに緊張してん、の、よっ!」
 バシッと一発。
「いっ!?」
「あんた、長瀬さんと古菲に鍛えてもらったんでしょ?」
 涙目で見上げる少女に苦笑を向けて、
「しっかりしなさいよね。あんたは私の“相棒(パートナー)”なのよ?」
「あ……」
 腕を組んでそっぽを向く。……なに嬉しそうに笑ってんのよ。は、恥ずかしいわね。
「はいっ!」
「くくく……そんなあからさまに照れなくても、姐さん」
 う、うるさいわねエロオコジョ! べ、別に照れてなんかないわよ!
「ま、まぁ……あんたが使えないんなら私一人でやるから別に良いけど」
 そうよ。私だって今日まで頑張ったのよ。バイトとかあってあんまり時間なかったけど、それでも朝には桜咲さんに神鳴流習って、暇さえあればヘルパーに不意打ちしてって頑張ったのよ!
 そうよ……別に一人だって――

「――それはまた、大きく出たな神楽坂明日奈」

 ――っ!
 声に私たちは揃って夜空を見上げた。
「あ、あああ……!?」
「な、なんで……!?」
 そこにエヴァンジェリンと茶々丸さんがいた。
 二人を見上げて――戦慄く。
 ゾッとした。纏う空気が違う。前にやった時とは比べられないぐらい、怖い。
 知らず、一歩後退していた。
「先に忠告しといてやろう、小娘たち」
 『ふわり』と、橋へと降りてエヴァンジェリン。ニヤニヤと私たち二人を嘲笑い、
「前回の時の私は学園に張られた結界のせいで魔力を封じられていた」
 パキパキと、彼女の周りの空気が凍っていく。
「だが、今はその結界が無力となり私を縛るものは無い。……まぁ学園から出られぬ忌々しい呪いは残っているのだがな」
 肌が泡立つ。これは――こいつは、ヤバい!
 それなりに鍛えたから解る。エヴァンジェリンとやっては駄目だ。格が違う。勝てない。絶対に、ただではすまない――!!
「それもこの勝負でなくなるだろう。小娘の血を頂いて、な」
「ひっ!!」

 ――頭がスーッと冷えた。

「……要するに前と同じだと思うなってことでしょ?」
 怯え、涙目になりつつあるネギの前に、出る。
「おあいにく様。それはコッチも一緒なのよね」
「ほう?」
 スカートのポケットから仮契約カードを取り出す。その動きに合わせてか、茶々丸さんがエヴァンジェリンの前へ一歩踏み出した。
「もう、開始時間よね?」
 私は『ニヤリ』と笑い、
「フッ。そうだな」
 エヴァンジェリンの返事と同時に――駆け出す!
 最初は無手で。相手を油断させるために、ただ仕掛ける!
「――“契約執行90秒間(シス・メア・パルス・ペル・ノーナギンタ・セクンダース)”!! “ネギの従者(ミニステル・ネギィ)”『神楽坂明日』!!」
 ネギの支援でグンと動きが早くなる! それに合わせて茶々丸さんの動きも、より俊敏に、鋭くなる。
 だけど――
「ハッ!」
 先手は私! 茶々丸さんに“回し蹴り(ハイキック)”!
 ガッ! それを片手で受け――吹き飛ぶ茶々丸さん。ふん! どうやら私を甘く見過ぎてたみたいねっ!
「油断しました。とても素人とは思えません」
 無表情に呟く彼女に追撃! 吹き飛ぶ茶々丸さんに向け、正拳!
「これは少し本気を出す必要があります」
 っ!? 空中で姿勢を変える茶々丸さん。着地と同時、私の正拳を弾く!
 ……そっか、茶々丸さんてロボットなんだっけ!
 追撃のフックも同様に弾かれ、茶々丸さんが一歩私に踏み込む。
 裳低! それを半身になって避け、その円運動をそのままに――回し蹴り!
「たぁ!!」
 ガッ! 今度は片手で受けても吹き飛ばない茶々丸さん。私の足を、受けた手で掴み、引き、軸足を刈るように、しゃがんで――ローキック。
「――合成!」
 『パン!』と両手を合わせてかん卦法! 刈られる前に軸足で地面を蹴って、サマーソルトキック!
「――――ッ!?」
 うそ! 避けられた!?
 私の足を離し、しゃがんだ上体を無理矢理逸らして私の一撃を避ける茶々丸さん。そのまま両足のバーニアを吹かして一旦距離を離し、宙返りして着地。と、殆ど同時に私へと疾駆する!
 やっぱり速い! そして強い!!
 だから――手加減なんて出来ないッ!!

「――“来れ(アデアット)”!」

 こっからは全力で行くわよ茶々丸さん!
「!」
「ハァアアア!!」
 手に持つハリセンで迎撃! それを横に飛んで避ける茶々丸さん。
「てい!」
 振り回したハリセンの動きに乗せて――“中段蹴り(ミドルキック)”!
 ガッ! それを止め、踏み込む茶々丸さん。肘を突き出し、
「フッ――」
 バシン! ハリセンで迎撃! そして弾き合うようにお互い距離を離す。
 ……これは、なかなか難しいわね。
 額の汗を拭って私は、『困ったなぁ』と笑う――。


 ◇◆◇◆◇

「――『“魔法の射手・連弾・光の29矢(サギタ・マギカ・セリエス・ルーキス)”』!!」
「――『“魔法の射手・連弾・闇の29矢(サギタ・マギカ・セリエス・オブスクーリー)”』!!」
 総勢五十八もの光と闇の矢が互いを打ち消し合い、ぶつかり合う。
 ククク! そうだ、そうこなくては面白みが無い!
 瞬動! 橋を駆け、小娘の後ろへ。
「っ! ハッ!!」
 ! ほう! 棒術とは面白いな!!
 振り回される小娘の杖を魔法の障壁で弾き、距離を――
「たぁあああ!!」
 パキン! 小娘の突き出した杖が障壁を貫き、迫る!
 ――なるほど! 杖に魔力を通し、槍としたか!!
「だが!」
 くるん、と。合気術でもってその一撃を捌き、その勢いを利用して投げ飛ばす!
「っ! ラ・ステル、マス・キル、マギステル!」
 地を転がり、距離を取って呪文を詠唱する小娘。フッ! 甘いわ!!
「“風の(セプテンギアム)”――って、ぅわぁああ!?」
 魔力の糸で小娘を縛り、引く!
 バランスを崩す小娘に向けて裳低! 対し、杖を振って迎撃しようとする小娘。だが私の『糸』にそれを邪魔され、
「で、“風楯(デフレクシオ)”!!」
 ドン! 小娘の障壁ごと吹き飛ばす!
 フッ。吹き飛ばされた小娘を、無理矢理『糸』で引っ張る。
「なっ――!?」
 再び肉迫。そして追撃!
「がっ……!」
 三度飛ばされる小娘を『糸』で振り回し――叩きつける!
「っ!」
「どうした! そこまでか、小娘!」
 手を上げ、大気を凍らせ――
「『“氷神の戦鎚(マレウス・アクイローニス)”』!」
 長大な氷球を小娘に向けて飛ばす!
「ヒッ――!?」
 目を剥く小娘。さぁどうする? 動きを封じられ、呪文は間に合わず、そして障壁程度では打ち消せんぞ?
 小娘をニヤニヤと見る。
『さぁどうする?』と、期待して見る。
 しかし――
「……………………シロウ」
 小娘はギュッと目を瞑り、
 呟き、諦め――

「ハァアアアーーーッ!!」

 ――バシン、と。一瞬で打ち消される私の魔法。
「……ほう?」
 小娘の前に仁王立ち、ニメートルに迫る大剣を持って私を睨む――神楽坂明日奈。
 ……なるほど。神楽坂明日奈は魔法を打ち消す力を持つのか。
 小娘を縛る『糸』を消し、私は神楽坂明日奈の背で泣きべそをかく小娘を睨む。
「……いささか失望したよ」
 呆れ混じりに嘲笑。
「所詮はガキか。怖くなったら助けを呼び、泣くのか? まったく、よくそんなので『“立派な魔法使い(マギステル・マギ)”』になるだの言えるな」
 やれやれ、と手を振り。一歩、近付く。
「ほら、どうした? 助けを呼ぶのだろう? だったら早くしろクソガキ。貴様みたいなグズはとっとと――」
「――黙れ!」
 言葉と同時、私に迫る神楽坂明日奈。それに視線を向けず――投げ飛ばす。
「ほら、呼べよ泣き虫」
「黙れってんでしょーがぁあああ!!」
 受け身を取り、追撃を仕掛ける神楽坂。それを茶々丸が受け、迎撃。
 その一切を無視して小娘に近付く。
「甘ったれのグズが。どうした? なにもせぬのか?」
「…………」
 うつむく小娘に近付き、胸倉を掴み上げる。
「ネギ!」
「…………」
 神楽坂の声にも無反応の小娘。虚ろな瞳を私に向け、ブツブツと何かを呟き続ける。
「……なる」
「なんだと?」
 怪訝に小娘を覗き見る。と同時、
「ボクは『立派な魔法使い』に――なるん、だぁああああ!!」
 ヒュン! 近距離からの杖による突きを小娘を突き飛ばして避ける。
 ……く!? なんだコイツ……精神がおかしいのか?
 一旦、距離を離して様子を見る。小娘は虚ろな瞳の中に狂気を混ぜて私を睨み、ゆらりと立ち上がって、
「……甘えない。甘えられない……! 甘えちゃいけないっ!」
 瞬動! 即座に肉迫する小娘。その手の杖が魔力を纏ってか輝く!
 バッ! 鋭く早い刺突を避け、迎撃を――
「ボクが! ボクだけが無事で! だからっ!」 っ! クッ……!? 刺突が早過ぎて迎撃が――
「ボクは! ボクはっ!!」
 小娘が杖を振るう度に『ポタポタ』と血が滴る。だと言うのに小娘の表情に変わりは無く、纏う魔力は依然爆発的なまでに多く――気付いた。
 これは魔力の“暴走(オーバードライブ)”!?
 バカな! だとしたら何と言う脆い精神だ! クソ!
「貴様――」
「ネギ!」
 ビクッ、と。神楽坂明日奈の呼びかけで停止する小娘。
 ? なんだ?
「あ、アスナさん……?」
 表情を困惑のそれに変え、神楽坂へと向く小娘。
 そこに駆けつける神楽坂。どうやら私と同様、茶々丸も奴を見逃したようだ。
 そして、
「……あんたは茶々丸さんの相手して」
 小娘の前に立ち、神楽坂。それに狼狽しながら小娘は、
「えっ、あっ、でも……!」
「良いから言うこと聞きなさい!」
 小娘の背を押し、茶々丸へと向ける神楽坂。それを見て私を見る茶々丸。
『マスター……?』
『ああ。小娘の相手をしてやれ』
『……了解』
 念話で言葉を交わし、私は神楽坂にニヤリと笑って見せた。
「……そう言えば、これは私とお前の勝負だったな?」
「そういうこと」
 剣を構え、私に挑発的な笑みを向ける神楽坂。ククク……やはり貴様は面白いな。
「で? 策はあるのか神楽坂明日奈?」
「ふん。あんたなんか相手に無駄な作戦なんて、要らない、わ、よっ!」
 バッ! 高速で駆け、剣を振るう神楽坂。なるほど! 一週間でここまで強くなるとは驚きだ!
 純粋な体術でそれを避け、魔力の糸を――と、コイツには効かないんだったな!
「ハァアアア!!」
 ザッ! 鋭い太刀筋を避けながら、少しだけ目を剥く。
 これは――神鳴流か!?
 まだまだ未熟ながらも桜咲や詠春らの使うそれに似た太刀筋。なるほど。桜咲刹那に師事し、学んだか!
「私に魔法は効かないわよ! どうする、エヴァンジェリン!?」
「フン! 魔法など貴様相手には不要だ!」
 剣を避け、懐へ。右手に魔力を乗せて裳低!
「くっ!?」
 対し、腕をクロスして防ぐ神楽坂。……ほう? どうやらある程度は気を使った戦闘も出来るようだな。
 私の一撃に少し後退する神楽坂。そして私を睨み、『パン!』と両手を合わせ――んなっ!?
「バ……バカな!! 貴様、一体それをどこで――!?」
 目を剥く。神楽坂明日奈のやった『それ』――『“気と魔力の合一(シュンタクシス・アンティケイメノイン)”』はタカミチですら数年という月日を私の別荘でかけて習得したものだ。一介の女子中学生がお