嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

一章  【目次】

ゼロの使い魔〜雷槍の騎士〜


                 一章


 この作品は『魔法少女リリカルなのはStrikerS』という作品のキャラクターを『ゼロの使い魔』という作品に登場させるという形のクロス小説です。途中、『魔法少女リリカルなのは』及び『ゼロの使い魔』という作品をご存知ない方には非常に解り難い表現が含まれていますのでそれを承知の上でご覧下さい。

 また、作中に著者による独自解釈、設定、世界観、オリジナルキャラクター等が描かれていますが、こちらも事前にご了承の上でご覧になって下さい。



                 → 【予告】

第一話/第二話/第三話/第四話/第五話/第六話/第七話/第八話/第九話/第十話/第十一話/第十二話/第十三話/第十四話/第十五話/第十六話/第十七話/第十八話/第十九話/第二十話/第二十一話/第二十二話/第二十三話

後書き対談?/おまけ/おまけ2

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ゼロの使い魔〜雷槍の騎士〜おまけ2

《ゼロの使い魔〜雷槍の騎士〜》






○ エリオとラブレター1

 その日も朝一でルイズの洗濯物を手に部屋を出るエリオ。ドアを開け、廊下に一歩――
「ん?」
 ドアと床との間に一枚の紙切れが。
 エリオはそれを持ち上げ中身を一瞥。
「……………………読めない」
 どこぞの遺跡発掘フェレット族ならいざ知らず。基本的に調査よりも戦闘などの荒事を専門とする彼には異世界の文字を解読する術など無かった。
 エリオはとりあえず今は洗濯物を優先しようと手紙をテーブルへと置き外へ。
 ……ルイズへの手紙なら僕が読めなくても問題ないし、僕への手紙なら後で中身を聞かせてもらえば良いかな。
 別段、深く考えずエリオは朝の日課を済ますべく洗い場へ。
 そして――
「なっ!?」
 洗濯を済ませて戻ると、部屋の中で何かが爆発でもしたように荒れていた。
 元はテーブルがあったのだろう。見るからに爆心地らしいその前で、ルイズが頭を抱えていた。
「ルイズ!!」
 エリオは血相を変えて少女に掴みかかった。
「エ、エリオっ!? あ、あんた手紙――!」
「! 手紙が爆発したんですか!?」
 青年の呼びかけにガバッと起き上がりルイズ。彼女の言葉で、手紙をテーブルの上に置いたことを思い出すエリオ。
 ……まさか、アレが爆発を!?
「え、あ、うん……」
 そんな青年の反応に目をパチクリとしてルイズ。彼の態度があまりに予想外だったのか困惑していた。
「くっ!! あの手紙は僕宛てだったんですね!?」
 苦々しくエリオ。彼は手紙が爆発したのは自分を狙っての質の悪い悪戯と判断した。
「ぇ、あ、うん。あ、あんたにって書いてあったけど……」
 その剣幕に半ば飲まれつつルイズ。
「……もしかして、読んでない?」
 引きつった表情でルイズ。それにエリオは深々と頭を下げて答えた。
「すみません。僕、こちらの文字は読めませんので……」
 ルイズはそれを聞いて思いっきり青ざめた。
 手紙。それの中身はただのラブレターであり、爆発はただ単に少女が思わず使ってしまった魔法のせいだったが――。
「……良かった。ルイズに怪我が無くて本当に良かった」
「…………」
 少女はついに言い出せなかったのだった――。



○ エリオとラブレター2

 性懲りも無くまた手紙があった。
「……デルフリンガー。何て書いてあるかわかる?」
 やはり字が読めないエリオは仕方なく肩に背負った大剣に問うた。
「この前の手紙の返事が欲しいから中庭に来いってさ」
 だめもとで訊ねたのだがデルフリンガーはあっさりと中身を読んでくれた。
 それにエリオは『ありがとう』と返しつつ手紙をグシャリと握り潰した。
「……決闘の申し込みにしては質が悪過ぎる」
「は?」
 そんな青年の態度に思わず間の抜けた声でデルフリンガー。
「今回は相手に二度とこんな手紙を出させないように徹底的に懲らしめよう」
 それに青年は義憤に燃えた声で言って手紙を屑籠に放った。
 そして――
「――ご、ごめんなさい! ぼ、僕の勘違いで……!! ほ、本当にごめんなさいっ!」
 紫電散らす大剣を手に開口一番『もうこんな手紙を書けないようにしてやる!』なんて言われた哀れな女の子は泣きながら走り去り、それを見たデルフリンガーがたまらずラブレター爆破のあらましを説明。
 結果、エリオは走り去る少女を追いかけ平身低頭で謝り続け、青年は後で必ず文字を習おうと固く決意するのであった――。



○ カルディナとシンデレラ2

 意地悪な継母ズがお城の舞踏会へと行き、残されたシンデレラ=カルディナの元には二人の魔法使いが現れた。
「……もしかしてわたし達の扱いって……ワンセット?」
 乾いた笑いを浮かべて魔法使いA=キャロは言った。
「それよりカルディナ……その包帯ってやっぱり?」
 多少引きつった表情で魔法使いB=ルーテシア。
「文字通りの愛の鞭?」
「その問いへの回答は必要性を感じません。それより馬車とドレスを要求します」
 所々包帯を巻いてなお無表情にカルディナ。それに魔法使いズは顔を見合わせ、それからそれぞれ手に持った杖を振るった。
「来よ。我が竜フリードリヒ。竜魂、召喚」
 魔法使いAが振るった杖=レイジングハートが無意味にピカピカと光り、その手のケリュケイオンがなるべく雰囲気を壊さないように小さく光り、それに反応してかその辺にいた小さなネズミ=フリードは大きくなった。
「えっと……『我、使命を受けたもうものなり』……以下略」
 ルーテシアが持った、如何にも魔法少女チックなピンクでハートでファンシーな杖を振るうとカルディナが光に包まれた。
「……………………これはドレスでしょう?」
「うわ……それ――」
 自身を見下ろし、若干遠い目になるカルディナ。彼女の格好を見て引きつった表情になるキャロ。
「……昔のフェイトさんが着てたバリアジャケット?」
「あ、間違えた。『我しめ』――以下略!」
 ルーテシアがそう唱えるとまたカルディナは光に包まれ、そして黒マントに薄手のそれは瞬時に白い悪魔のバリアジャケットへと変わった。
「……ま、まぁドレスに見えなくも無い……の、かなぁ?」
 冷や汗を流しながらキャロ。カルディナは自身を見下ろし、先ほどのよりはドレスっぽいと判断。そして――
「ではフリード。城へ」
 シンデレラは飛竜へと跨り、夜空へと――



「…………………………………………もしかして続くんでしょう?」
 ルイズの隣で横になりながら、カルディナは誰にともなく呟いた――。

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ゼロの使い魔〜雷槍の騎士〜おまけ

《ゼロの使い魔〜雷槍の騎士〜》



○ カルディナの夢

 その日もルイズの横で眠るエリオは、珍しくうなされていた。
「カ、カルディナ……それは確かに遊園地の領収書……え? ち、違うよ……女の子? ……いたけどデートじゃ…………そ、そんな……小遣い無しは酷……う、うん……次の休みに……カルディナ……」
 あんまりにもあんまりな寝言に隣でたまたま聞いていた少女はとても不機嫌になったとさ。



○ カルディナの呼称

「母」
 フェイトの意。後見人なのだから間違いでは無い。
「父」
 エリオの意。悪い虫が付かないようにとお兄ちゃんでは無くこちらを推奨した虫使いがいたとか。
「ルー姉」
 ルーテシアの意。ナンバーズたちといた時の影響かと。
「お姉ちゃん」
 名前のわからない年上の女性全般。もしくはキャロの意。
「アルフ」
 そのまんまアルフの意。本人が呼び捨てで良いと言ったのでそのまんま。
「お兄ちゃん」
 名前のわからない年上の男性全般。もしくはクロノの意。本人は嫌がるが、嫁がそう呼ばせたとか。
「エイミィお姉ちゃん」
 エイミィの意。他の『お姉ちゃん』呼称がいない場合はただの『お姉ちゃん』。
「先生」
 なのはの意。三年B組のアレを見てエリオにも先生はいるかと聞いたら『なのは』と答えたので以来こうなったとか。



○ エリオのバイト

 いつまでもヒモ状態というのはあまりにも情けない。そんなワケでエリオはルイズが学業に勤しむ間や食事時などは基本的に厨房で働かせてもらっていた。
 しかし――
「あ、エリオ様。シャンパンのおかわりをお願い出来ますか?」
「エリオ様。こちらはワインのロゼを」
「エリオ様〜」
 給仕服で働く青年に女生徒の注文は殺到。エリオはせかせかと自分が役に立っているのが嬉しいのか微笑をたたえて働き、そしてそれを皆がうっとりと眺めていた。
「……いっそそっち系の店で働かせたら?」
「……客に持ち帰られそうだから嫌よ」
 ルイズとモンモランシーはそれをため息を吐いて今日も眺めていた。



○ コロシアム

 いっそ賭け試合で儲けたら良い。
 そんな理由でやって来ました城下町。その裏路地の怪しいお店。
「……い、いや、流石に自衛以外の理由で魔法を使うワケには――」
「あ、コレ被って」
 冷や汗を流すエリオにルイズは予め持って着ていたマスクを渡した。
「…………虎?」
「顔隠して素手で倒せば問題無いでしょう?」
 そんなワケでその日、非公式賭け試合に伝説の覆面ファイターが誕生したとかいないとか。



○ カルディナと桃太郎

「父。読みました」
 娘の情操教育のために少女の住まうハラオウン家にて昔話を買い与えたエリオ。
「どうだった?」
「まず『どう』という問いの範囲を――」
「カルディナは本を読む時、登場人物になって読んだりする?」
「否定」
 カルディナはエリオの言葉に数秒で読み終えた本をまじまじと見た。
「父。そうして読んだ方が良いのでしょう?」
「うん。例えば桃太郎は強くて優しい主人公だから――」
「では『父』と」
 カルディナの頭の中で桃太郎はエリオになった。
「ぇ、あ。じゃ、じゃあ、犬は――」
「『アルフ』」
 カルディナの頭の中でエリオにきび団子を貰うアルフの図が浮かんだ。
「キジはフリード」
 バッサバッサと羽ばたく飛竜が一行に加わった。
「…………さ、猿は?」
「晶お姉ちゃん」
「……誰?」
「ではスバルお姉ちゃんで」
 エリオ、アルフ、フリードの部隊にスバルが加わった。
 青年は頭をひねりつつ最後に『鬼は?』と尋ねた。
「先生」
 ※先生=なのはの意。
「……………………」
 エリオの頭の中に仁王立つ白い魔王の映像が浮かんだ。
 ……勝てないよ、桃太郎。



○ カルディナとシンデレラ

 エリオの買い与えた昔話の絵本を手に、カルディナは今度は自分を主人公として物語を進めることにした。
「ほらほら、カルディナちゃん! ここがこんなに汚れていますわよ!」
 窓の冊子にツゥーと人差し指を滑らせてリンディ。
「さぁさ、今日は楽しい舞踏会よ! あ、でもカルディナちゃんはお留守番ね! しっかり掃除しなさい!」
 とても楽しそうにエイミィ。
「そ、そんな。母さんもエイミィもちょっと……」
 とてもオロオロしつつフェイト。それを呆れたように見るエイミィ。
「ほら、フェイトちゃんも役になりきって! 自分がやられて悲しかったことをここでは敢えてするのよ!」
「で、でも……」
「フェイト。これも情操教育のため。ここは敢えて心を鬼にするべきよ」
 意地悪な義母役のリンディまで加わりフェイトを説得。そしてそれに渋々頷くフェイト。
「ご、ごめんね、カルディナ……」
 そう言ったフェイトはとてもとても悲しそうな顔をして――
「母。何故、カルディナは両手を拘束されているのでしょう?」
「自分がされて悲しかったこと……それを人にするなんて……」
 フェイト、聞いちゃいない。
「母。その手の鞭をどうするのでしょう?」
「これも情操教育のため……きっとプレシア母さんも私を思って……」
 フェイト、やっぱり聞いちゃいない。
 そして――
「……………………配役を変更」
 カルディナは自分の想像を振り払うように若干血の気が失せた顔を左右に振った。

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ゼロの使い魔〜雷槍の騎士〜 後書き対談?

嗣希創箱(以下、嗣)「とあるSSサイトや某有名ドラまた魔法少女の小説の後書きなんかで作者と作品内のキャラクターが対談するような形での後書きがありますが、それに密かに憧れていたので今回はその形で」

キャロ(以下、キ)「そ、それでわたしたちですか……?」

嗣「はい! 今回は『なのは』サイドのオリキャラ、半オリキャラの三人をお呼びしました!」

カルディナ(以下、カ)「……カルディナはまだ喋れない筈では?」

ルーテシア(以下、ル)「それより、エリオをどうにかするのが先。あの終わり方は個人的にとても不満」

嗣「では早速本編の裏話から始めましょう!」

カ「無視ですか……」

嗣「まずは我らが主人公、エリオから。……実は、天然女殺しスキルは書いてたらいつの間にか付いた、いわば予定外のスキルです」

キ「……作者が読者様に指摘されるまで『最強主人公ハーレムもの』っていうことに気付かなかったぐらいですしね」

ル「しかもプロットには私や艦長の登場なんて無いし、モンモランシーやギーシュにしてもああなったのは成り行きみたいだし」

嗣「エリオはですね。どれだけ弱くするかで悩みました」

カ「また無視ですか」

キ「確かにゲームバランスを崩し兼ねないですね……AAA魔導師は」

ル「『なのは』側では割と多いけど。ニアーSランク」

嗣「そもそもデルフリンガーが無意味なんですよ。最初はあの剣のイベントはスルーするつもりでしたし」

ル「ストラーダがあれば七万のアルビオン兵とも渡りあえそう。AAA」

カ「それ以前に二巻のワルド様すら瞬殺では? AAA」

嗣「そんなワケでエリオは要所要所で弱く、または居なくなってもらいました」

キ「そ、そのためのカルディナちゃん登場ですか?」

嗣「悲しい過去を持つ女の子って萌えませんか?」

カ「……そんな理由であの仕打ちでしょう?」

ル「……実は作中、もっとも悲劇に見回れたのがカルディナだったり」

嗣「ですがカルディナ無くしてこの話は進行しません。なにせリミットブレイクした主人公って物語を破綻させかねないジョーカーですから」

キ「……一章のボスとも言うべきフーケさんにも楽勝でしたから、AAA」

嗣「そんなワケで二章以降もエリオには要所要所で弱く、或いは居なくなってもらいます」

カ「……父は本当に主人公でしょう?」

ル「二章以降……もしかして私たちの出番ない?」

嗣「はい」

キ「がーん」

カ「カルディナの復帰は?」

嗣「当然、あります。そして同時にオリキャラが二人登場します」

ル「ちなみに作者は『なのは』関連のSSは全てリンクさせるという悪癖があるけど……もしかして?」

嗣「はい。当然、リンクさせます、そこから持って来ます、SSS」

カ「……何故、ジョーカーを増やすのでしょう?」

嗣「これからサイトならやるだろうけどエリオじゃ絶対しないことが増えます。その対策です」

キ「……セーラー服とか管理外世界のこととかですか?」

嗣「はい。ちょうど動かし易いのが居ましたので」

ル「……完全に内輪ネタ気味なので軌道修正。次回作はいつ?」

嗣「嗣希創箱が二巻を買ったら書き始めます」

カ「……早急な購読を要求」

嗣「……給料日前で現在財政がピンチです。来月以降まで待って下さい。と言うか、一章の改訂版を書き終えてからなのでもっと待っていただきたい所存です。ちなみに改訂版は『なのは』本編が終わって、漫画が終わって、ドラマCDが出揃ってからなのでいつになるか……」

ル「……ではそれまで何も書かない、と?」

嗣「いえ。明日以降は『なのは』SSの『ep1』を載せようかと。二章以降登場のオリキャラの説明にもなるし一石二鳥かと」

キ「……なんだか裏話というよりこれではCMでは?」

カ「それ以前に後書きですら無いでしょう?」

嗣「まあ所詮はネタです。これは本編に関係があるようで無い、嗣希創箱の日記みたいなものです。あ、では裏話を一つ。カルディナは家の車の名前です」

カ「文字通り取って付けたような裏話です」

嗣「さて、ではこの辺で今回は筆を置かせていただきます」

ル「筆……作者は基本的に携帯で書くのに、筆?」

キ「それより、カルディナちゃんの扱いが後書きまで不憫な気が……」

嗣「今まで《ゼロの使い魔〜雷槍の騎士〜》をご愛読いただき、誠にありがとうございました! 以上、後書き対談でした」

カ「……最後まで無視でしょう?」

ル・キ「……可哀想に」

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ゼロの使い魔〜雷槍の騎士〜23

《ゼロの使い魔〜雷槍の騎士〜》





 フーケを宮廷の衛士に引き渡し、そしてルイズが破壊した秘宝『破壊の杖』の残骸を学院へと引き渡した少女たちはその功績から『シュヴァリエ』の爵位を貰えるという話になった。
 ただし、タバサは既に『シュヴァリエ』の爵位を持っていたので変わりの勲章を。そしてただの平民であり使い魔という扱いであるエリオはそれら勲章などの褒章は無し。それにルイズらは不平を申し出たが、青年としてはあまり目立ちたくなかったのでそれを了承。
 そして時間は過ぎ、夜――。

「い、いや、だから……その……」
 場所はアルヴィーズの食堂の上階。その日はちょうど『フリッグの舞踏会』という催しがあったらしく、エリオたちはそれに参加していた。
「あ、あれは事故です……! た、たまたま倒れかかった時に……」
 周りを見渡せば着飾った生徒や教師が、テーブルを見れば豪華な料理の数々が並べられている華やかな会場において、エリオはバルコニーで三人の少女たちに詰め寄られていた。
「それは無い。エリオはもう少し、自分の悪癖を自覚すべき」
 黒いリボンと同じく黒いゴシック調のドレス――のように見えないこともないバリアジャケットを纏ったルーテシアが、下から睨み上げるようにして青年に言った。
「い、いや、悪癖って――!?」
「そ・れ・よ・り! なんで何も言わないで帰ってるの! おかげでいろいろと大変だったのよ!」
 ルーテシアの言葉に表情を引きつらせる青年に詰め寄りモンモランシー。彼女もやはりきらびやかな真紅のドレスを纏い、腰に手を当てエリオを睨む。
「あ、それとエリオくん! 聞きましたよ? ルイズさんのために無茶して死にかけたり、決闘の度に魔法使ったりしたそうですね!?」
 少女二人に詰め寄られバルコニーに追い詰められている青年に追い討ちをかけるようにキャロ。本当ならエリオを置いて帰るだけだったため当然ドレスなど無く、ルーテシアのようにバリアジャケットを纏うワケにも行かず管理局の制服姿で頬を膨らませて青年を睨んでいた。
「……ダーリンも大変よねぇ」
 それを遠目に眺めながらキュルケ。シルフィードに乗ってルイズのもとへ向かっていた途中で同じく少女のもとへ急いでいた彼らと会い、キャロに治癒魔法をかけてもらったため傷は完治。一応、ダンスの申し出は自粛しつつも綺麗なドレスを纏い舞踏会には参加していた。
「自業自得」
 その傍らで料理と格闘しつつタバサ。黒いパーティドレスを纏い、チラリと青年を見て一言。
 キュルケはそんな少女の態度が意外だったのか目を丸くし、次の瞬間には『確かに』と言ってケラケラと笑い出した。
「――ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエール嬢のおな〜〜〜り〜〜〜!」
 門に控えた衛士の言葉にそちらを見るエリオやキュルケたち。
 ルイズは長い桃色がかった髪をバレッタにまとめ、ホワイトのパーティドレスに身を包んでいた。
 キャロの魔法により怪我は完全に治っている。ルイズはしずしずと高貴な家柄だということが一目でわかる歩き方で会場入りした。
 その少女の登場により主役が揃ったのだろう。楽士たちが小さく、流れるように音楽を奏で始めた。
 それに呼応してかルイズの周りには少女の姿と美貌と驚いた男たちが群がり、その肘までの白い手袋越しの手を取ろうとするが、彼女はそのすべてを歯牙にかけない。
 ホールでは既に貴族たちが優雅に躍り出すが、ルイズはそれらを気にせずキョロキョロ。そして青年を見つけて近付こうとし――
「ルイズ」
 呼び止められる。
 さすがに無視するワケにも行かないので振り向くと、見知った少年――ギーシュとそして彼の横に佇む女性が目に入った。
「初めまして、ルイズさん」
 そう『にこり』と微笑む妙齢の美女にルイズは見覚えが無い。格好もドレスではなくどこかの制服だろう、黒の上下を着ていた。
「……誰?」
 それを眉をひそめて見つめ、隣の少年に問う。
 対し白いタクシードと胸元に飾られた赤い薔薇が物凄く似合っているギーシュは、苦笑するように肩をすくめて答えた。
「エリオの元上司で保護者」
「なっ――!?」
 その言葉に思い切り驚愕の表情になるルイズ。目を丸くしてまじまじと女性を見れば、確かにその服装が彼らの着ていた制服にデザインが似ていた。
「フェイト・テスタロッサ・ハラオウンです。初めまして」
 そう言って微笑む女性――フェイトに、ルイズは即座に背筋を伸ばす。
「はっ、ははははじ、初めまして! ル、ルルルルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエールですっ!」
 そう、これでもかという程に緊張しながら名乗る。
 対してフェイトは苦笑するように微笑み、口を開いた。
「あの、そんなに緊張しないで下さい。今日はただ、エリオのことで挨拶したかっただけですので」
「いっ、いえいえそんなっ! エ、エリオ――さんには、いつもお世話になっていますと言いますか、守られっぱなしで申し訳ないと言いますかっ!」
 そんなやりとりを『くつくつ』と笑って眺めるギーシュ。ルイズは横目でそんな少年を睨みつつ、緊張の眼差しでフェイトを見た。
 長い金の髪の、とても美しい女性だった。彼女の持つ独特の雰囲気は、なるほど青年と似た柔らかくて暖かいそれに通じるものがある。
「ふふ。エリオから貴方のことは窺ってます。あの子が怪我した時に治癒を手配してくれたとか」
「そ、そんなっ! あ、あのそれはわたしが原因で――!」
 微笑のままに言うフェイトに両手を振り乱してルイズ。『あわあわ』と焦りまくる少女を、フェイトは静かに見つめ、
「ルイズさん」
 そっとその手を取って真剣な瞳を向ける。
「エリオとカルディナは私の大切な家族です。どうかよろしくお願いします」
 そう言って頭を下げるフェイトに、ルイズは大慌てで答えた。
「は、はいっ! こ、こちらこそお願いします!!」
 『だ、だから頭を上げて下さい!』と、もはや泣きそうな声で懇願するルイズ。
 フェイトはその言葉にゆっくりと顔を上げて最後に微笑んで言った。
「……まあ、親ばかなおばさんのお願いですから、そんなに気負わないで下さいね」
 『それでは』と断り、フェイトは歩き去った。
 それを見送り、『くらり』とめまいを起こしたようにテーブルにもたれかかるルイズ。どうやら心底緊張し疲れたらしい。
 そんな少女を本当に楽しそうに眺めてギーシュ。肩をすくめて、歩き去ったフェイトの方を向きたまらず口を開いた。
「『おばさん』て……まだまだお姉さんで通じると思うけどね」
「て言うか、あいつの憧れの人ってあんなに美人なの……?」
 ギーシュの言葉により落ち込んでルイズ。母親だか姉だかは知らないが、身近にあんた美人な人がいたのでは自分なんて――と少しだけ女としての自信を喪失する。
 先ほどまでの煌びやかさが嘘のように縦線を背負う少女に苦笑し、その肩を叩いて去って行くギーシュ。
「どうかしましたか?」
 果たして、少年と入れ替わるように声をかけて来るのは、顔を上げなくてもわかる、大切な使い魔の青年だった。
「……どうしてフーケを攻撃しなかったの?」
 ルイズは顔を上げずに問う。
「怒ってたのに……あいつはあんたの娘を――」
「悲しいからって、人を傷付けて良い理由にはなりません」
 顔をゆっくり上げる。エリオは笑っていた。
「僕らは人が傷付くと悲しいということを知っています。だから僕らは、その連鎖を断ち切る」
 だからルイズも笑う。意地悪く、悲しみなど無いというように笑う。
「だからってキスする? 普通」
 その台詞に表情を引きつらせるエリオ。さっきまでそのことで散々、ルーテシアたちに詰め寄られていたことを思い出し、冷や汗。
「い、いや、あれは事故で! ……あ! そうです、まだ言ってませんでしたね」
 焦りつつ言葉を紡いでいたが、ハタと何かに気付いてか再びいつもの微笑を取り繕って言った。
「ドレス、すごく似合ってます。綺麗ですよルイズ」
「〜〜〜〜っ!」
 その一言で『ボン!』と音が出るほどに顔を真っ赤に染め上げるルイズ。そして照れを隠すように苦々しい表情になってそっぽを向く。
 相変わらず、この青年はずるい。
 その言葉が嘘じゃないのはわかる。そして他意が無いことも。
 だからこそ始末におえない。その顔、その微笑でそんな台詞を言われて正常でいられる女性などいないだろうに。
「ルイズ? どうかしましたか? 顔が赤いみたいですし……さっきも目眩を起こして……大丈夫ですか?」
 そっぽ向く少女の顔を覗き込んでエリオ。その相変わらずの鈍感ぷりに頭を抱えたくなりながら、ルイズはため息を一つ。若干まだ頬を染めつつ、不機嫌顔を向けて口を開いた。
「きょ、今日はぶぶぶ舞踏会よね? あ、あんたは踊らないの?」
 その問いに苦笑を浮かべて頭をかきかき答えるエリオ。
「いや、僕、こういった行事に参加したことなくて。踊り方とか知らないんですよ。ルイズは?」
 言ってキョロキョロ。
「先ほどからルイズに声をかけようとしている人がたくさんいるみたいですよ。踊らないんですか?」
「そう言うあんたは?」
 訊きつつ、不機嫌顔で辺りを見回すルイズ。モンモランシー以下エリオファンクラブ一同が青年に声をかけるタイミングを計り、なんとも恐ろしい視線を自分に向けていた。
「いえ? 誰も僕みたいな平民と踊りたいなんて言いませんよ」
 『それに着ているのが局の制服ですし』と苦笑する青年の言葉に今度こそ頭を抱えた。
 ほ、本当に無自覚なのね、自分がモテるってことに……。
 ルイズは深く深くため息を吐き出し、何故かこちらを心配そうに見る青年を睨み、口を開く。
「じゃ、じゃあ、仕方ないわね」
「?」
 首を傾げる青年に真っ赤な顔を向け、ドレスの裾を恭しく両手で持ち上げ、膝を折って一礼。
「わ、わたわたわたくしといっ一曲、お踊ってくだ、ください、ませんこと。ジェントルマン」
 その言葉に一瞬目を丸くするエリオ。そうしてから微笑を取り繕い、誰が見ても紳士然とした立派な仕草で一礼。
「喜んで、お相手いたします」
 少女の手を取った――。

 ◇◆◇◆◇

 青年と少女のダンスをバルコニーにて眺めるフェイトたち管理局の三人。
「カルディナは大丈夫。二週間もすれば完治するそうよ」
 そう言って通信を切り、フェイトは二人の部下に微笑んだ。
「後であと二人、エリオたちのサポートに来るわ。私たちは彼らが来るまでこちらで待機します」
「……艦長。それは女ですか?」
 フェイトの言葉にエリオたちから視線を外さずにルーテシア。それに苦笑するように微笑みフェイトは答える。
「女の子とその夫よ」
 それに『それなら安心だ』とばかりに頷くルーテシア。見ればキャロも同じような表情だったが、おそらくは本人は気付いていない。
 ……キャロとエリオって、なのはとユーノの時みたいに進展しなさそうね。
 フェイトは小さく苦笑するように笑い、ホールで踊る二人へと視線を戻すであった――。

 ◇◆◇◆◇

「君たちはエリオと踊らないのかい?」
 ホールで踊るエリオとルイズを眺めながらギーシュは問う。
「……まあ、わたしは後で良いわ」
 それに若干悔しそうな表情でモンモランシー。
「あたしは今日は良いわ」
「決闘に負けたから誘う理由がない」
 と、キュルケとタバサ。テーブルに並ぶ料理を食べつつ、チラリと二人を見て返す。
「そうだね。僕もなんだかそういう気分じゃない」
 見れば給仕をする少女――シエスタも隙あらば青年と踊ろうとしているようで、ギーシュは苦笑した。
 視線を傍らの三人に戻すと、何故か皆、若干引いていた。
「……ギーシュ。やっぱりあなた、そっちの趣味が……」
「た、たまにいるらしいわね。ま、まあダーリンは美形だし、し、仕方ないわ……」
「…………男色」
「……………………君たち。だからそれは誤解……」

 ◇◆◇◆◇

 ホールで踊る青年と少女は、いつの間にか注目の的であった。
 着飾り、澄ました顔でステップを刻む美少女とその相手をする赤い髪の美男子。エリオの踊り方はルイズの『わたしに合わせて』という言葉に従っているだけだが、持ち前の運動神経と飲み込みの早さで、今はホールで踊るどんなカップルより華麗に踊っていた。
「ねえ、エリオ。あなたはどうしてわたしのためにそんなにしてくれるの?」
 ステップを刻みつつルイズ。それに微笑を浮かべたままエリオは口を開く。
「初めは異世界に喚ばれて寄る辺が無かったので仕方なく。でも今は違います」
 手を引き、右へ左へ。そしてターン。
「ルイズは見ず知らずの、ワケの分からない僕なんかのために食事や衣類、武器や治療費を出してくれました」
 踊るながら、ステップを刻みながら笑顔で答える。
「それにルイズはカルディナのために悲しんでくれた。僕の娘のために怒って、戦ってくれた。だから僕は――」
「ねえ」
 曲が終わる。
 次の楽曲が始まるまでの間、ルイズとエリオは立ち止まって見つめあった。
「誓いを、もう一度……。今度はちゃんと、流されてとか、仕方なくとかじゃなくてちゃんと……しよう……?」
 少女は多少頬を染めた潤んだ瞳で青年を見上げて言う。
「使い魔契約の儀式……あ、あれがわたしの、ファ、ファーストキス……だ、だから……ちゃんと、やり直したい」
「え……!」
 目を丸くして赤面する青年の服を掴んで、不機嫌顔で言葉を次ぐ。
「フ、フーケとはしたじゃない……! だ、だから……」
 言って瞳を閉じ、深呼吸を一回。
 その鳶色の瞳を青年に向けて、今度は真剣に、そして神聖な儀式として少女はそれを言葉にする。
「――我がは名ルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ……」
 そう言って顔を上向け、静かに瞳を閉ざすルイズ。
 対し、エリオは顔を真剣なそれへと変え、あの日少女に誓った言葉を、今度は自分の意思で、それを望んで口にする。
「――どんな外敵からもルイズは僕が守ります」
 肩に手を置き、膝を折って少女の顔に顔を寄せる。
「――使い魔、エリオ・モンディアルとその能力のすべてを持って、」
 周りに見ていただけだった全ての人間が息を飲んで二人を見た。
 ルーテシアがたまらず駆け出し、モンモランシーが眉をつり上げ、キャロが目を丸くし、シエスタがトレイを落とす。
 しかし二人はそんな周りのことになんて気付かない。何故なら既に、二人は瞳を閉じていたから、
 そして――
「我が主を守り抜くことを、ここに誓います」
 宣言し、エリオはそっと少女の唇に自分のそれを当てた――。

 楽士が、次の曲を奏でる。
 次の、舞踏のために――



 ――――《ゼロの使い魔〜雷槍の騎士〜》・完――――



※ 後書き

 この度、嗣希創箱の《ゼロの使い魔〜雷槍の騎士〜》を読んでいただき誠にありがとうございました。
 これにて《ゼロの使い魔〜雷槍の騎士〜》はいったん完結とさせていただきます。皆さまからいただいたご意見、ご指摘、感想は後日改めてこちらの作品の改訂版を書く際に参考とさせていただきます。
 最後に、この作品を読んで下さいましたすべての方に感謝をもう一度。
 ありがとうございました。





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