嗣希創箱の消閑

小説、落書き、二次創作、etc…。 あなたの暇潰しのお供にどうですか♪ 

《魔法少女リリカルなのはStrikers〜postscript〜》13

《魔法少女リリカルなのはStrikers〜postscript〜》









 照明は消され、外からの光を防犯用の重厚なシャッターに遮られた店内は、今が昼だというのに薄暗かった。
 すべては突如として現れた武装集団のせい。出入り口、通信設備、そして『AMF』による魔法封じといった念の入った工作を持ってレストランを占領した彼らは、
 しかし、たった一人のイレギュラーを前に、皆凍り付いていた。
 店内を満たす純然にして冷徹な殺意の奔流――その中心に佇むのは一人の少女。加害者、被害者問わず、すべての人間を凍り付かせたイレギュラー――月村雫は、しかし彼らなど見向きもしない。
 彼女が注意を向けるのは最初からその一点のみ。店内隅の席に座し、このような状況下で尚優雅にコーヒーカップを傾けている子供が居るそこだけ。
「……アレは戦闘機人か?」
 目深に被った大きな帽子と黒いサングラス。全身をすっぽりと隠す、まるで雨合羽のような赤いコートを纏ったその子供は、しかしそんな少女になど注意を払わない。
「……動きに機械的なものを感じない。おそらくは人造魔導師の類だろう」
 子供は一人、誰にともなく呟いている。
「……だけどさ。アレから一瞬だけど『レリック』みたいな力を感知したよ?」
 まるで話相手が複数居るように。
 まるで自分自身と話すように。
 子供は一人、口調を変えて呟き続けていた。
「……要するにアレが例のデバイス持ちなんじゃない? ……つまりは実験体だにぃ」
 少女からの冷ややかな殺意を受けて尚、その子供は動じず、やはりこちらも先ほどから注意を向けている先を変じない。
「……厄介なぁ。……これじゃ本命の奪取も難しいにゃあ」
 子供の視線の向かう先――一人佇む少女を眺めている高町ヴィヴィオは、しかし今はまだ気付いていない。
 今は、まだ――。








 第七話 原罪



 ――一年前。
 その時の少女は、まだ強さに憧れていた。
「……………………ぅあ?」
 ぼやけた視界に移るのは青空。体に感じるのは春の微風と草木の優しい香り。そして穏やかな陽気よりもなお穏やかな温もり。
「お、やっと起きた」
 少女が目覚めたことにいち早く気付いたオレンジの髪の女の子――アルフは、そう言って満面の笑みになった。
「…………あ」
 果たして、その言葉に少女が反応するより早く、少女の頭を膝に乗せた女性――フェイト・テスタロッサ・ハラオウンが、少女の顔を心配げに覗き込んだ。
「……ヴィヴィオ、ごめんね。どこか痛いところ無い?」
 自分の頭を優しく撫でる彼女に、少女――高町ヴィヴィオは気持ち良さそうに瞳を細め、
 そして、花が咲くように無邪気に笑って言った。
「うん! 大丈夫だよママ!」

 ――高町ヴィヴィオ、八歳。
 好きな食べ物、ママが作ったキャラメルミルク。苦手な食べ物、ピーマン。
 教会系列の魔法学校――St.ヒルデ魔法学院の初等部に通う、ちょっと特別な女の子。

「……本当? でも――」
「本当に大丈夫だよ」

 ――その日も片親であるフェイトママに魔法の基礎と空戦を一通り習い、
 そしてアルフから実戦さながらの実技指導を受け、少女は着実にその力を伸ばしていた。

「……まぁた始まったよ。相変わらずフェイトママは心配性だねぇ」
「だねぇ♪」

 ――少女は強くなりたかった。
 強くなるともう一人のママ――高町なのはと約束したから。
 そして、何より――

「もう……。私はママなんだから心配性でもいいの――って、あ! アルフ、ヴィヴィオ。そろそろ病院に行く時間!」
「「あ!」」

 ――少女は見て欲しかったから。

「ああ〜どうしよう!? まだお見舞いの品って買って無いよねアルフ!?」
「ひゃっ!? フェ、フェイトママ……!? ヴィ、ヴィヴィオ、自分で歩けるよ……!?」

 ――ただ、そう。
 少女はただ、年相応にそう望んだだけ。

「や、やっぱり酸っぱい物かな!? あ、でも病院ってちゃんと栄養バランス考えてるし余計なもの食べさせるのも駄目だよね!?」
「目ぇ……目が回るよ〜……」
「……あ〜、少しは落ち着こうフェイト。とりあえず小脇に抱えてるヴィヴィオを下ろしてからグルグル回ろう」

 ――ただもう少しだけ自分を見ていて欲しい。
 もう少しだけでも自分だけのママであって欲しい。

「ど、どうしよう……!? や、やややっぱり母さんに聞いて――嗚呼! でも時間が……!?」
「…………き、気持ち……わる……」
「落〜ち〜着〜け〜って!」

 ――少女は強くなろうと思った。

「で、でもでも! わ、私はまだ、赤ちゃんなんて出来たこと無いし、出産の経験なんて――!」

 ――それは、
 もう少しで生まれる『妹』のために……じゃない。

「落ち着けってばフェイト! まだなのはの赤ちゃんが生まれんのはずっと先だろう!?」

 ――それは幼い少女が抱くに相応しい、稚拙な独占欲の形。
 幼い少女が自分なりに考えた『自分を見て』というアピールの形。

「ど、どどどうしようどうしようどうしよう!? ――ってヴィヴィオ!?」
「……マ、ママ。ヴィヴィオ、も、だめ」

 ――強くなりたかった。
 少女――高町ヴィヴィオの動機なんてその程度のもの。
 だけど、
 ……それでも――

「お、おいヴィヴィオ!?」
「ぁああ!? ヴィヴィオヴィヴィオヴィヴィオ……!?」

 ――――ヴィヴィオは決してヴィヴィオを赦さない。

 決して――

 ◇◆◇◆◇

 ――店内に満ちる静寂は果たしてどれくらいだったのか。
 数秒か、それとも数分か。どちらであれ、その静寂は唐突に終わりを告げた。
「ガキが! 舐めた口を――!!」
 雫ちゃんが外見だけならただの子供なのだと気付いて逆上したのか、それとも雫ちゃんから発せられるプレッシャーに耐えられなくなったのか。
 武装した集団の中の一人がいきなり叫び声を上げ、銃口を彼女へと向けたことで静寂と僅かばかりの均衡は崩れた。
「ぅ、ぅわぁああ――――っ!!」
「キャァアアア――――ッ!!」
 悲鳴が、爆発する。
 混乱が、狂騒が、店内を新たに染めて行く。
 そして、
「――ぎゃぁあああ!!」
 その騒乱の中心はやはり雫ちゃん。自分へと向けられた敵意を、その手の銃はおろかそれを持つ腕ごと斬って捨て、残像すら見えそうなぐらいの高速移動をしてテロリストの人たちを次々に潰して行く。
「ぁ゛ああああ!!」
 小太刀二刀を手に駆ける雫ちゃんに対し、彼らの獲物は銃。それも魔力以外の力を使って小さな弾丸を高速で射出するタイプの、それこそ音速を優に超える速度を持つ殺傷兵器。
「ぅ、腕が!! 俺の腕がぁあああ!!」
 しかし、それはただの一つとしてその真価を発揮出来ない。
 弾速よりは遅いまでも普通の人ならすぐさま見失ってしまうだろう速度で駆ける雫ちゃんを彼らは捉えられない。結果、その向けられた銃口は明後日へと銃声を轟かせ、そしてその呼び声によって刀の洗礼を受ける。
「い゛ぎゃぁあああ!?」
 まさに圧倒的。閉鎖的な空間に置いての対多人数、対AMF戦で雫ちゃんはその力の真価を発揮する。
「――御神流を前にしたことを不幸に思いなさい」
 魔法が使えない空間など普通。相手が多数いようと関係ない。
 銃を持った武装集団だろうが、雫ちゃんには勝てない。
「く、来るんじゃねぇ!!」
「ヒィ……!?」
 例え、逆上した一人が人質を取ろうと――
「……愚か者」
 ――雫ちゃんは迷わない。
 それがヴィヴィオだったら――躊躇っていた。
 それがカローラちゃんなら――人質を前に降伏する道を選んだかも知れない。
 だけど――雫ちゃんには通じない。
 人質が居ようと居まいと関係ない。その前に敵として立ちふさがった時点で最後――そう告げるかのように、雫ちゃんは敢えてゆっくりと歩み寄り、
「どこぞの偽善者やここには居ない正義の味方ならいざ知らず。ただ敵対する輩を葬っているだけの私にそんな盾が有効だと思いますか?」
 ニヤリと狂気すら宿る笑みを形作り、雫ちゃんはひたひたと人質を取る男へと近付き、
「く、くくく来るな……!」
「……あなたは馬鹿ですか? そもそも銃口を向けるのはそんなもので良いのですか? もしかして私に、それと一緒に殺して欲しいのですか?」
 ――それが、雫ちゃんの戦い方。
 それが、雫ちゃんが見出した強さの形。
「では早く開始の合図を」
「あ、ああ、あ……!」
 それが――雫ちゃんの守り方。
「どうしました? あながホイッスルを鳴らしてくれないと私はあなたを殺しに行けないんですよ?」
 被害者を減らし、加害者を減らす――そのために最凶たらんと努め、すべての敵意を自分に集めるという戦い方。
「殺して欲しいのでしょう? 大丈夫、私はちゃんとあなたの腕を斬り、脚を貫き、腹を裂き、内臓を――」
「ぅ、ぅわぁああ――ッ!!」
 悪行をより強大な悪行で正す。
 諸悪を巨悪で改善させる。
「……死にたく無ければ武器を捨て、大人しくしていなさい」
 雫ちゃんのプレッシャーに半狂乱に喚いていた男は、果たして一瞬の隙を突かれて昏倒。雫ちゃんに襟首を持たれ、呆然と彼女たちを見ていたテロリストの一人へと投げ飛ばされた。
「もう一度忠告します」
 そして、誰も彼もが最早、言葉を失って雫ちゃん一人を注視するその中で、
「私に敵意を向ける者。未だに武器を手にする者を――」
 ヴィヴィオは、誰かに呼ばれた。
「――私は、斬る。故に、命が大事と思う輩は、」
 だから、呆然とそちらを見た。
「?」
 ただ、ぼんやりと。
 こちらを見る子供が、その瞳を隠す黒いサングラスを外すのを。
「『ィヴル・アイ』――悪夢に喰われろ」
 そう小さく零して笑う子供の瞳を、ヴィヴィオは――

 ◇◆◇◆◇

 ――半年前。
 白い、白い、病室で、高町ヴィヴィオは『それ』を見た。
「――――」
 言葉を、失う。
 視線を、逸らせない。
 それは本当に、ごくごく普通の情景の一つ。
 ただ、ヴィヴィオの母親である高町なのはが幼子を抱き、母乳を飲ませているというだけ。
「――――」
 それだけ。ただそれだけの情景にヴィヴィオは言葉を発せず、ただ立ち尽くしていた。
 ……なんで? そう疑問に思いながら、しかし心を締め付ける幻痛に答えは自分にあるのだと知っていた。
 体を縛る、目を離せない光景。それは紛れもない、母と子の光景で、
 そしてそれは、ヴィヴィオが何よりも望んでいた場所だった。
 ……そん、な。
 胸の痛みの正体に気付く。気付いて、さらに暗い気持ちになる。
 心を締め付ける感情の正体は――羨望。ヴィヴィオは生後間もない妹に嫉妬していた。
 …………いや。
 ヴィヴィオは自身の抱く醜い感情に蒼白となる。
 羨望と嫉妬。それらから派生した、妹の存在を邪魔に感じている自分自身に、ヴィヴィオは絶望した。
「……ヴィヴィオ? どうしたの?」
 そう、こちらを心配そうに見やるなのはママの言葉に、
「な、なんでもないよ……!」
 と慌てて返し、返せたことでようやく金縛りから溶けた。
 ――笑え。
 首を傾げるなのはママに必死で笑顔を作って返す。
「あ、あのね! 今日ね、学校でテストがあってね……!」
 ――笑え。
 笑え、ヴィヴィオ!
「ヴィヴィオね……! が、がんばっ……て……」
 ――泣くな!
 泣いちゃダメだよヴィヴィオ!
「がん、ばっ…………」
 ――笑って!
 笑って言わなくちゃダメ!
「…………ぅ、ぁ!」
 笑え、と必死で言い聞かせる。泣くな、と自身を戒める。
「っ、ぁ…………!」
 だけど――……もう、言葉が出ない。
 ポロポロとこぼれ落ちる涙を止められない。
 それでもどうにか嗚咽だけは漏らさないように努力する。
 ……早く泣き止め!
 後ろを向いて、うつむく。
 ……お願いだから、止まって!
 目を丸くしているなのはママにヴィヴィオはもう顔を向けられない。ぐしぐしと必死で擦っても、涙は止まってくれない。
「……ヴィヴィオ」
 振り向けない。取り繕うだけの余裕が、ない。
 心をぐちゃぐちゃに乱している今は、
 ヴィヴィオは――
「っ!! ヴィヴィオ――!?」
 なのはママの呼び声を無視して駆け出す!
 荒れ狂う心を少しでも鎮めるために、ヴィヴィオはなのはママの病室を飛び出して――

 赤ちゃんの泣き声を耳にして、固まった。

 再びの金縛り。それは病室を出てすぐに――廊下に出てすぐに、まるでヴィヴィオを止めるようにして響いた泣き声。
 …………逃げちゃ、だめ。
 拳を握り、握りしめた拳を抱いて自分自身に言い聞かせる。
 ……ヴィヴィオは、強くなるの。
 深呼吸を数回。涙の残滓を拭い去り、床に根を生やす両足をどうにか動かす。
 ……ヴィヴィオはもう――

 お姉ちゃん、なんだから……。

 笑え。泣くな。そう最後に言い聞かせ、ヴィヴィオは体を引き摺る思いでなのはママの病室へと戻った――。

 ◇◆◇◆◇

 ――悪夢を見出したのはいつからか。
 何も無い、暗い広い空間で、ヴィヴィオは毎晩のように『それ』と対峙していた。
「――……よく、のうのうと生きていられるね」
 黒い騎士甲冑を纏う、女の人――『聖王のゆりかご』内でなのはママと対峙した時の、ヴィヴィオの成長した姿の彼女はわたしに嘲笑を向けて告げる。
「何人もの人間を不幸にし、幾人もの魔導師を傷付けた忌むべき『器』――……それがあなたでしょう?」
 『それ』は言うなればヴィヴィオの影。自身を嘲笑し罵倒し否定する、ヴィヴィオの暗部。
「……違うよ」
「違わないよ、『聖王の器』」
 このヴィヴィオに否定は意味を持たず、言葉もまた意味を持てない。
 ヴィヴィオはわたしに蔑みに満ちた視線を向け、僅かに笑みすら浮かべて返す。
「忘れたの? ヴィヴィオはあの人を傷付けたんだよ?」
 彼女がそう言うや、今まで闇しか無かった空間に映像が浮かぶ。
「――――っ!」
 その映像とは、ヴィヴィオが『聖王のゆりかご』内でなのはママと戦った時のそれ。ママの必死の呼びかけをすべて否定し、拳を、魔法を返事としていた時の記憶映像。
「ヴィヴィオは何度、あの人を傷付ければ気がすむの?」
 この悪夢において対峙するヴィヴィオの言葉は、わたしの心を斬りつけるナイフのよう。
「……違うよ」
「どうして、あの人は病院に居るの?」
 わたしの返事は意味を成さない。
 これがわたしの悪夢であるからこそ、対峙するヴィヴィオに容赦など無い。
「…………それ、は――」
「ヴィヴィオが殺しかけたせいだよ」
 わたしを否定するヴィヴィオ。そんなわたしを傷付けて愉悦に浸るヴィヴィオを見て、わたしはどうしょうもなく吐き気がした。
「ヴィヴィオは自分だけを見て欲しかったんだよ」
 ……違う。
「あの子が邪魔だったんだ」
 …………違うよ。
「そうだよ、ヴィヴィオが強くなろうとしたせいだね」
 ……っ!?
 ハッとしてヴィヴィオの顔を見る。
 それに、
「ヴィヴィオは強くなって何がしたかったの?」
 ヴィヴィオはどこまでも狂喜に満ち満ちた笑みを湛えて、問うた。
「わたし、は……――」
 そしてその問いに対する答えを、わたしは持たない。
 だけど――
「そんなの決まってるよ」
 このヴィヴィオは笑って、言える。

「ヴィヴィオはママを独り占めしたかったんだ」

 ――だから、ヴィヴィオは強さを求めたんだよ。
 なのはママに自分だけを見て欲しくて。
 だから、ヴィヴィオは妹なんて疎ましいんでしょう?
 いっそ居なくなって欲しいんだよね?
「わたし、は……――」
 言葉に意味は、無い。
 反論も、反感も、無駄。
 傷付くことも、悲しむことも無意味。
「わたしは――!」
 何故なら、

「ヴィヴィオなんて死んじゃえ」

 そう笑って告げる彼女はヴィヴィオで、
 これは紛れもなくわたしの夢、だから……――









前話

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ヴィヴィ×ネギ対談2!?

ヴィヴィオ(以下、ヴ)「……もしかしてコレ、レギュラー化させるつもりなのかな?」

ネギ(以下、ネ)「(手元の資料を見つつ)……『今回も各話のヒロインたるお二方による対談でお送りします』……だ、そうですよ?」

ヴ 「(ため息)……じゃあ今回もとりあえず『2nd』についてネギちゃんにお話を伺いましょうか?」

ネ 「……やっぱりケイトさんは優しい子だなぁ(何やら感慨深げ)」

ヴ 「……え〜と、ネギちゃん? もしかしなくても、すっかり…………騙されてる(汗)?」

ネ 「そんなことはありません! ケイトさんは本当に良い子です!!」

ヴ 「だ、断言しちゃった……(汗)」

ネ 「もう! だってケイトさんはお姉さんのために一途に頑張ってるんですよ? それなのにどうして皆さん、彼女をまるで嘘つきみたいに言うんですか!?」

ヴ 「(遠くを見て)……ああ、さすがはケイトさんだぁ」

ネ 「ボクは彼女の担任として――いえ! 同じ、一人の人間として彼女のことを信じてあげたいと思いますっ!!」

ヴ 「う〜……ヴィヴィオがここでネギちゃんの発言に突っ込んだら完全にネタバレになっちゃうから――……スルーしよう。(手元の資料を覗いて)では、次回のヴィヴィオの話について予告を」

ネ 「(同じく資料を覗いて)……『ヴィヴィオ、大暴れ♪』――え?」

ヴ 「え――――ッ!? し、雫ちゃんじゃなくてヴィヴィオがぁあ!?」

ネ 「『次回から物語はようやく起から承へと転じます』だ、そうですよ?」

ヴ 「……まだ『承』にすら入って無かったんだ(遠い目)」

ネ 「(苦笑)……まぁ、そう言われて見れば主人公であるヴィヴィオさんの説明が今一つでしたね」

ヴ 「う〜ん……(首傾げ)確かに前回はカローラちゃんの話だったけど……」

ネ 「更に言えば結構な数の伏線を張りっぱなしで回収してませんでしたね? 筆頭、『元・六課メンバーのその後』ですとか」

ヴ 「(資料を覗き見て)えっと、なになに……『次回はついにヴィヴィオの設定の一部が公開!?』って、引っ張り過ぎじゃないかな!? 主人公だよヴィヴィオ?」

ネ 「……ボクなんて謎設定皆無なのに」

ヴ 「……あれ? でもさり気なくネギちゃんにも謎設定みたいな伏線があったような……?」

ネ 「『2nd』で謎設定と言えばケイトさんが筆頭ですからね……(ため息)。シロウやボク、ヴィータさんといった主人公格三人にはその辺皆無です」

ヴ 「(ボソッと)……でも実はそれ程あのケイトさんの設定には謎が無かったり」

ネ 「……はい?」

ヴ 「(手元の資料を眺めて)えっと? じゃあ『2nd』の次話についての予告を」

ネ 「(同じく資料を見つつ)――っ!? えっ、まさか遂に――」

ヴ 「うん。どうやら予定では次回、『2nd』の一章は最後みたいだね」

ネ 「おお!!(パチパチパチパチー!)」

ヴ 「『……ま、あくまでも予定ですが(笑)』って書いてあるけどね(苦笑)」

ネ 「ちょっ……!? か、『(笑)』ってなんですか……!?」

ヴ 「……気にしたら負けだよネギちゃん。ささ、気を取り直して最後の予告をしましょうか」

ネ 「ぅぅ……(資料を見つつ)次回の『2nd』では、シロウが『大・活・躍!!』で――」

ヴ 「(資料を眺めて)――その次は『二章 修学旅行編』にするか『外伝 始まりの話』にするかで悩み中だって」

ネ 「が、『外伝』って一体……!?」

ヴ 「ほら、『2nd』のスタートが本家の『三巻』からでしょう? で、『外伝 始まりの話』は本当に最初――『一巻』の最初から『三巻』までの間を補完する話だって」

ネ 「…………それ、シロウ出ないよ?」

ヴ 「どころかヴィータすら登場しないね(苦笑)」

嗣希創箱(以下、嗣)「――代わりに『2nd』本編で出番を全面カットされた面子が出ます」

ネ&ヴ 「「!?」」

嗣 「筆頭、探検部の連中やバカレンジャーの面々ですね」

ネ 「……い、いきなり現れましたね(汗)」

嗣 「ちなみに外伝を読まなくても本編には過去の出来事としてそれなりに書きますのでご心配なく。こちらはあくまで本編では活躍しないキャラクターのための話ですので」

ヴ 「……なんで始めっから出なかったのかな(汗)」

嗣 「事前に一つ忠告しておきますと、憑依物が駄目な方は『外伝』を読まない方が良いです」

ネ 「……『2nd』の本編以上にマニアックな話になるんですね」

嗣 「ちなみにヴィヴィオの話の方にも『外伝』を幾つか用意してありますのでご期待下さい」

ヴ 「……相変わらず、話作りは速いのに執筆は遅い作者様だね」

嗣 「…………(ボソッと)いっそ二人の話そっちのけで『らいそー』の『三章』書こうかな。アニメもまた始まったし」

ヴ&ネ 「「せめてこっちを完結させてからにして下さいっ!!」」

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《THE SECOND LIFE》23

《THE SECOND LIFE》







「きゃぁああ――――ッ!!」
「アスナさん!」
 ヴィータさんの一撃に吹き飛ぶアスナさん。
 そして、
「――調子に乗るなよ小娘!!」
 即座にヴィータさんの背後へと跳び、冷気纏う左手を彼女へ振るうエヴァンジェリンさん!
「……改めて先に謝っておきます」
 そしてその手をいともたやすく掴み止めてケイトさん。僅かに眉根を寄せて驚愕に目を剥くエヴァンジェリンさんを見つめ、
「ごめんなさい……」
 掴んだ、エヴァンジェリンさんの腕を――

 切断、した。

 ◇◆◇◆◇

 ――わけが、わからない。
「……どういうつもりだランサー。まさか――敵対する気か?」
 ウチの見ている前でアスナとネギちゃん、エヴァちゃんがいきなり消えて、
「まあ、なに。オレとしてはそれも悪く無いんだが――生憎と別件だ」
 衛宮先生と茶々丸さん、せっちゃんが戦こうてるそこに青い服の赤い槍持った男の人が現れて、
「な、なんなんスかアレ……?」
 そんで、そん人が現れた瞬間に状況がウチらと悪魔たちと槍持った人とで三分されて、
「……状況は未だに改善されていない、か」
「そのようですね」
 そして、
 そんなわけのわからない状況の中心に、

 ――三人は現れた。

「――――ッ!?」
 息を呑む。
 いきなり『ランサー』いう男の人の後ろに現れたんは、さっき消えた三人の内の二人――アスナとエヴァちゃん。それも二人ともなんや気ぃ失っていて、それを三人目の女の子――八神ヴィータちゃんが小脇に抱えてた。
 それだけでも驚きやのに、ヴィータちゃんが抱えるエヴァちゃんの状態が、もう……最悪やった。
「な、なんでや……?」
 知らず言葉が漏れる。
 なんでや?
 なんであのエヴァちゃんが――“左手のあった場所から血流して”気絶してるん? なんで左腕が無くなっとるん……!?
「……どうやら連中は味方じゃあないみたいッスね」
 どうして?
 どうしてこないな場所に“転校生(ヴィータちゃん)”が居るん? どうしてその手に二人を抱えとるん……?
 それやとまるで――

「近衛このか!」

 いきなりそのヴィータちゃんに呼ばれて、心臓が跳ねた。
「は、はひ!?」
 あ、アカン! 混乱し過ぎて目ー回しそうや……。
「――と、ついでに桜咲刹那に絡繰茶々丸……だったか?」
 果たしてそんなウチなんか無視するように、ヴィータちゃんは、
「いつまであたしにこいつら抱えさせる気だ? ボサっとしてねーでとっととこっち来い! いい加減放り捨てんぞ!?」
 苦笑するようにそう叫んで肩をすくめた。

 ◇◆◇◆◇

 ――結界の中に残されたのはボクとケイトさんだけ。
 そしてなんとなくだけど、彼女の目的にも気付いた。
「……ボクの左手も切り落とすんですか?」
 未だにエヴァンジェリンさんの左腕を持っているケイトさんに苦笑を向けて、問う。……そっか。そう言えばアスナさんの案を却下するって言って現れたんだっけ。
「……先生」
 沈痛な表情をボクに向け、ケイトさんはゆっくりと近付いて来る。
「……わたしたちは学校に通ったこと、無かったんです」
 一歩、一歩。その手に血の滴る腕と機械的なデザインの剣を持って、ケイトさんは近付いて告げる。
「……わたしはおねえちゃんに、普通に学校に通って欲しい」
 その言葉にはどうしようもない矛盾があった。
 だって『普通に』と言うのなら、彼女たちがこんなところに居てはいけない。こんなことになんて関わらずに過ごさなくちゃいけない。
 ……だけど――
「だから――……強くなってください、先生」
 ――結局はボクが弱いからいけないんだ。
「……ごめんなさい」
 たぶん、ケイトさんは無視出来た。こんな血なまぐさい事件に関わらず、それこそ普通に明日を迎えることだって出来たんだ。
 その願いが『普通に学校に通う』というなら、関わらないのが自然だし、だからこそエヴァンジェリンさんは彼女たちのことを信じられなかった。
「……ごめんなさい、先生」
 だけど、ボクは信じてあげられる。ボロボロと涙を零して謝り続けるケイトさんを見つめ、
「いいよ」
 と、ボクは笑って告げられる。
「ボクの手を……おねがいします」
 石となりつつある腕をどうにか水平に持ち上げて、笑いかける。
「……先生? で、でもわたしは――」
 その態度に、逆に狼狽するケイトさん。
「ボクは信じてますから」
 そしてその台詞を遮って、ボクは尚も言葉を続ける。
「だって、ボクはあなたたちの担任の先生だから」
 ボロボロと涙を零す少女を見つめる。
 ……ごめんね。たぶんボクが弱いからいけなかったんだよね?
 きっと、本当はこんなことに介入なんてしたくなかったんだよね? ヴィータさんを巻き込みたくなんてなかったんだよね?
「……強く、なります」
 普通に。ただ普通に学校に行きたい。だから“先生(ボク)”には絶対に強くなってもらわないと困る。
 ケイトさんたちが介入してきた理由は、つまりそういうこと。
 担任である先生が変な事件に巻き込まれてしまった。だから助けなくちゃいけない――そんな風に今後ならないように、彼女たちは今回の件に最初で最後だろう介入をしてきた。
「で、でも……! 先生はその代わりに人では無くなるんですよ……!?」
 ケイトさんの目的は初めから彼女の言葉通り、ただ普通に学校に通うこと。
 そしてその願いのために、ボクを強くすること。
 つまり――ボクの石となりつつある腕の代わりに“真祖の吸血鬼(エヴァンジェリンさん)”の腕をくっつけて、ボクを吸血鬼にすること。
「せ、先生は……“吸血鬼(バケモノ)”になって……、不老不死になって……!」
 そのために彼女たちはみんなを敵に回すような言動をとってまで介入した。
 それこそ無視して然るべき事件に、その願いに反するような形で介入してきた。
「……いいですよ」
 すべてはボクが弱いから。
「ボクは強くなりたかったんです」
 だから泣かないで。
 そんなに自分を責めないで。
「それに、ボクはあなたたちの先生です。だからもう、心配なんてかけないように強くなります」
 強くなる。
 これはただそのための方法。これはただ、彼女たちがボクのことを心配した結果。
 だから――

「ですから、ボクからもお願いします」

 ――ボクは笑って、

「ボクをあなたたちの先生にして下さい」

 人の道を――捨てた。

 ◇◆◇◆◇

 ――手を抜いたつもりなど無かった。

 ランサーが現れ、ネギたちが消え。そして神楽坂とエヴァンジェリンを抱えたヴィータが現れた。
「あなたは味方、なのか……?」
「……あのな、桜咲。そーいうんは聞くもんじゃなくて判断するもんだぜ?」
 負傷したエヴァンジェリン。そして気絶する神楽坂のためにそちらに行った近衛、桜咲、絡繰。ランサーはそんな連中をまるで守るように佇み、悪魔たちを牽制する。
「……マスターの負傷の理由は説明して貰えますか?」
「そ、そや! な、なんでエヴァちゃんの手が無くなってはるん……!?」
 現状は、そう。先ほどとは比べるまでもなく混沌としていながら、最悪の展開とはほど遠い。少なくともランサーがこちらの陣営に肩入れしている時点でほぼ勝敗は決した――そう思っていた。
 少なくとも、次の瞬間に現れた二人を目にするまでは。
「――――!?」
 予想はしていた。ネギとケイトの二人が現れることはだけは予想出来ていた。
 ネギが消え、ヴィータたちが現れた瞬間にケイトの介入は読んでいた。それでなくてもランサーが現れた時点で彼女が何らかのアクションを起こしていることぐらいは予想していた。
 しかし、
 それでも――

 まるでバケツいっぱいの赤いペンキを乱暴にかけられたように服を汚したネギと、
 その小さな手に抱かれ、ぐったりとその体を少女に預けるケイトに、

「……なんだ、これは」
 俺はそう零さずにはいられなかった。
「…………ぁ」
 そしてその呟きに気付いたのか否か。ネギはこちらに視線を向け――倒れた。
「っ! ネギ!!」
 それを見た瞬間、すべての懸念を無視して駆け出す!
 悪魔たちのことなど露程にも鑑みず。そしてそれらすべてをランサーが抑えていることにすら気にせず、俺は倒れた少女のもとへと駆け寄り、
 そして――言葉を無くした。
「……シロウ」
 ネギの状態に異常は見られない。少なくとも外見上の問題は俺には見受けられなかった。
 しかし――その胸に抱くケイトは違った。まるでネギの服を染める血が彼女のものかのように、一見してわかるほど青白く、そして冷たくなっていた。
「……ネギ。これは――」
 言葉が、続かない。
 混乱する。わけがわからない。
 俺がわかるのはせいぜいでケイトが過剰に血を失ったのだろうことぐらいだ。
 だから、わからない。
 だから、気付いてはいけない。
 ネギの石化しつつあった左腕が治っている理由も、
 エヴァンジェリンの左腕が無くなった理由も、
 ケイトが血を失い、それとは逆に血色の良くなったネギの状態にも、
 考えてはいけない。その答えに辿り着いてはいけない。
「……ごめんね、シロウ」
 涙を流し、それでも笑顔をこちらに向けるネギ。
 その口元の血が――やめろ。気付くな。
 倒れたケイトの首もとの――違う! そうじゃない!
 ネギの左腕は――それ以上考えるな!!
「……ごめんね。ボク――“人じゃなくなっちゃった”」

 ――なあ、衛宮士郎?

「ごめんね。ボク……もう、大きくならないんだって……」

 ――なんだ、この状況は?

「……ごめんね。ボクは……もう、ずっと……このままなんだって……」

 ――何故、こんなことになった?

「……ごめん、ね。ボクのおっぱい……小さいままで、ごめんね……。もうボク……赤ちゃん、出来ないから……ごめんね……」

 ――この女の子は何故泣いている?

「……ごめん、なさい」

 ――何故、この子はお前に謝っている?

「……ボクは、それでも――」



 ――――そんなのは決まっている!



「――……シロウのこと好きで、……ごめんなさい」



 ――――すべては貴様のせいだ“衛宮士郎(おろかもの)”!!



「……嫌いに、ならない、で」
 最後にそう呟いて、ネギは気を失う。
「…………ああ」
 俺は頷き、
 眠る少女の口元についた血を拭い、
 ようやく、立ち上がった。
「……決心は着いたかよ、先生」
 そんな俺に無表情を向けてヴィータ。それに「ああ」と頷いて返し、
「みんなを頼めるか?」
 俺はスーツの内へ――“聖骸布(ふういん)”へと手を伸ばし、
「ハッ! もともとこっちは平穏無事が目標なんだぜ? 言われなくたって守ってやらぁ」
 ヴィータの乱暴な言葉に笑みを返し、
「そうか。なら――」
 後は任せる。
 そう言って俺は、完全に聖骸布を――外した。







前話

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……夏バテでしょうか?

なにやら酷く無気力な今日この頃。これもある種のスランプなのか、長編を書く気力が……。

――さて、話は変わりますが、なにか面白いSSなり小説を嗣希創箱に紹介して下さい。

後で読みに行きます、気力を分けてもらいます、ついでにパクr――スランプ(?)脱出の足がかりにさせてもらいます。

SSはコメント、もしくは設置しといて放置しっぱなしのBBSの方へリンクを貼っといて下さると助かります。いっそ、訪問者さまのサイトを紹介してくださっても構いません。と言うか、大歓迎ですので、よろしくお願いします。

それでは♪

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《THE SECOND LIFE》没稿2

 ……はい、突込みどころ満載ですね(苦笑)
 一章の改稿と相まって、完全に変更される『修学旅行編』の名シーンでした(涙)





 ◇◆◇◆◇

 百を超える魔の献族が蔓延るそこで、ワインレッドの魔術師は笑う。

 ――もはや遠慮容赦、一切無用。

 月の光を浴びて、それは神々しく聳える。
 士郎とエヴァンジェリンの二人が居る湖畔からは遠く、遥か彼方で召還されたそれ――古の魔神を睨み据えて、彼はニヤリと笑った。
「……士郎?」
 先ほどまでの諦めとは違う不思議なものでも見るような彼女の視線に、衛宮士郎は不敵に笑って返す。
「エヴァンジェリン。確かにお前の言う通り、俺はネギにとって邪魔な存在だろう」
 ――それは、前に彼女と激突し、そして言われた台詞。
『確かにお前は強いよ。だがそれ故に小娘には過ぎた存在だ。はっきり言って、お前は小娘の成長を阻害する邪魔な存在だよ』
 それは無力な者が持つには過ぎた力。
 諦め、絶望し――しかし前へ自力で進もうとする者が絶対に使ってはいけないカード。
 衛宮士郎という名の“切り札(ジョーカー)”は、強いが故に弱者が持ってはいけない最悪の存在。
「だから、これが彼女を助ける最後だ」
 ジリジリと包囲網を狭める魔族の軍勢。
 それを先ほどまで絶望として見ていたエヴァンジェリンは、しかし今や既に彼の烏合の集など見ていなかった。
 ボロボロにされ、機能を停止した自らの相棒を抱き、真祖の吸血鬼が見つめるは紛う事なき“正義の味方”。
 己がパートナーを信頼し、パートナーである未熟な魔法使いでは無く無力な少女のためにこの場に残った馬鹿な魔術使い。
 ワインレッドのスーツの内から、士郎は仮契約カードを取り出し、
 そして、
「――“来れ(アデアッド)”」

 ――彼の剣が顕現す。

「なっ――!?」
 それは絶対的な希望の光。
 幾百の闇を並べようが色褪せる事なく屹立する最強の剣。

 ――蒼衣が翻る。

 それを見てエヴァンジェリンは絶望を忘れた。

 ――金の髪が夜風になびく。

 それを見て悪魔達が絶望する。

 ――鋼の鎧が月下で光る。

 それを見て士郎は笑う。
「――お久しぶりですね、シロウ」
 希望の化身である彼女は、そう言ってワインレッドの正義の味方に微笑む。
「ああ。久しぶり――セイバー」
 彼女の背に百を越す魔を、神の如き災厄を目にしながら――士郎は微笑んで彼女を見た。
 そんな二人を戦慄と共に眺めるしかないエヴァンジェリン。
 世界屈指の魔法使いにして最強最悪と唄われた悪の魔法使いが――心の底から震え上がった。
「? シロウ? 彼女は?」
 と、エヴァンジェリンの視線に気付き、士郎に問うセイバー。
「じつはな、セイバー。俺はコッチじゃ、柄にも無く教師をやってるんだよ。それで、この子は――」
 言いながら、士郎はエヴァンジェリンの頭をポンと叩く。
「大切な教え子さ」
 ――それは、どんなに凄い魔法よりも素晴らしい魔法の言葉。
「…………良いのか?」
 それは幾度目とも知れない確認の言葉。
 エヴァンジェリンは今やボロ切れとなりかけたゴシック調の黒いドレスの裾を握り、顔を伏せて士郎に問う。
「私は悪い魔法使い……『闇の福音』だぞ?」
 それでも貴様は助けるのか? 正義の味方――衛宮士郎に吸血鬼は問う。
「私は貴様達“正義の味方”の――」

「だからどうした」

 遮り、衛宮士郎は笑う。クツクツと意地悪く、優しく、嘲笑う。
「エヴァンジェリン。俺が女の子を助けるのにそんな事を気にすると思うか?」
 腰を折り、目線を合わせて士郎は問う。
 そこが敵地の真っ只中とは思えない程に――そう、そんな些細な事など気にする事無く、衛宮士郎はエヴァンジェリンを見つめる。
「……お前は馬鹿だ」
「知ってる」
 顔を伏せる彼女に笑って返し、士郎は立ち上がる。
 そして彼はセイバーを見て、ニヤリと笑う。
「あれを任せる」
 視線で彼方に聳える魔神を差して士郎。セイバーはそれに笑顔で頷き、

 ――躊躇無く、その場から跳び去った。

「良いものを見せてやるよ、エヴァンジェリン」
 切り札を手放し、敵地のど真ん中に居ながら、士郎は威風堂々と告げる。
「これが本気の――」
 最悪の驚異が去り、悪魔の群れが二人に迫る。
「正義の味方――衛宮士郎の剣の全てだ」
 人外の咆哮と殺気の軍勢にハッと顔を上げるエヴァンジェリン。
 百の魔物は死の津波となって彼らへ迫り、弱者を飲み込み最悪の具現にならんと勇み寄る。
 だがしかし、衛宮士郎に恐怖など微塵も無く、
「――――“投影、開始(トレース・オン)”」
 はらり、と彼の左手を縛っていた赤い布が夜風に舞い、

 ――遠く彼方で魔神が光に呑まれ、

 圧倒的な魔力の奔流を感じて全ての邪悪が動きを僅か鈍らせ、

「――“体は剣で出来ている(I am the bone of my sword.)”」

 紡がれる、ワインレッドの魔術使いの祝詞。

「――“血潮は鉄で 心は硝子(Steel is my body,and fire is my blood.)”」

 衛宮士郎が体得する異界の神秘を喚ぶ呪文。

「“幾たびの戦場を越えて不敗(I have created over a thousand blades.)”」

 彼にしか使えず、また彼にしか意味の無い旋律を紡ぐ。

「“ただ一度の敗走はなく(Unaware of loss.)、ただ一度の勝利もなし(Nor aware of gain.)”」

 それは大切な少女を守って喪い、そして新たに手にした奇跡の顕現。

「“担い手はここに孤り(Withstood pain to create many weapons.)”」

 ――その世界には赤い、宝石の魔術師がいた。
 その魔術師は衛宮士郎の魔術の師であり、大切な人の姉であり、最高の仲間だった。
 ――その世界には白い、雪国のお姫様がいた。
 そのお姫様は衛宮士郎の妹であり姉であり大切な人の対局に位置する存在だった。
 ――その世界には衛宮士郎の愛する女性がいた。
 その女性を救うために、その元凶を破壊した余波で世界から弾き出された。
「“剣の丘で鉄を鍛つ(waiting for one's arrival.)”」
 この世界で彼は幼い魔法使いと出会い、そしてその子のために第二の人生を歩む決心をした。
「“ならば我が生涯に意味は不要ず(I have no regrets.This is the only path.)”」
 禁断とされた知識の林檎をかじるようにして手に入れた未来の自分の力。
「“この体は無限の剣で出来ていた(My whole life was "unlimited blade works")”」
 ――世界が衛宮士郎に切り取られる。世界が衛宮士郎に浸食される。
「こ、れ……が……!」
 戦慄と共にエヴァンジェリンは彼を――ワインレッドの魔術使いが生み出し、線引き、飲み込んだ世界を眺めた。
 どこまでも荒廃した、剣の丘。
 ――固有結界『“無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)”』を真祖の吸血鬼は畏怖を持って眺め回す。
「エヴァンジェリン。まだお前は、百の悪魔を前に絶望するか?」
 世界屈指の魔法使いを背に庇う、世界でただ一人の魔術使いが笑みを浮かべて問い掛ける。
「今だ少しでも怯えると言うのなら――教えてやろう」
 さながら教壇に立つ教職者のように、この世界の主は言った。
「相手はたった百有余。対するコチラは――無限だ」
 混乱し、辺りを見回す悪魔達。それを正に見下すように彼は告げる。
「量より質という言葉もあるが――そこは安心して良い。例え相手が先ほど召還された魔神とて、この剣に勝てる道理は無い」
 言って、士郎は一つの剣を手に取った。
 それを見てエヴァンジェリンはギョッとする。
 衛宮士郎の持つ剣。装飾の凝った金の刃のそれには見覚えがあった。
 そんなエヴァンジェリンにニヤリと笑って、彼は無造作にその剣を振るった。
「――“約束された勝利の剣(エクスカリバー)”」
 光が、走った。
 それは夜を終える朝日のように――光が通り抜けたそこに、影などは無かった。
 数瞬前まで居た数十の悪魔を消し去った極光。迸った魔力の高さに一種の恐怖すら覚えてエヴァンジェリンは士郎を見た。
「さて、これから課外授業を始めるぞエヴァンジェリン」
 そんな彼女に彼はクツクツと笑い、両手を広げて剣の丘に突き刺さる無限の剣を示して告げた。
「ここにあるのは全て神話に登場する宝具の模造刀。しかして性能は見ての通り。ではエヴァンジェリン」
 それは馬鹿げた授業だった。
 一人の生徒に教えるは神世の魔剣。教材は無限の模造刀に百に迫る悪魔の群れ。
「この剣は何だか解るか?」
 真祖の吸血鬼にして世界屈指の魔法使いは、知らず笑顔で答えていた。
「知るかよ、先生」

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